Whitney Wolverine .22 LR Pistol  ホイットニー・ウルヴァリン 22LR 
    2007年11月20日掲載

 ホイットニー・ウルヴァリンが市場に登場した時、“先進のスペースエイジ・ライトウェイト・セミオートマチック・ピストル”として紹介された。
 “space-aged”という言葉に時代を感じさせられる。そう、この銃は宇宙時代の幕明けといえる1950年代の製品なのだ。
 開発したロバート・ヒルバーグ(Robert Hillberg)は、第二次大戦中、航空機搭載用の軽量銃の開発に携わった。このピストルはその時、学んだ技術を投入してアルミニュームで作られている。重量はわずか1.3ポンド(590g)しかない。
 今日では様々な軽量金属や強化プラスチックが登場し、軽い銃は珍しくない。しかし、1956年当時、590gは、画期的な軽量モデルだった。
 22LRの10連発のターゲット・ピストルであることも、アルミニュームの多用を可能にした。
 ロバート・ヒルバーグはミシガン大学のフットボール・チームの大ファンだった。ミシガン大学のスポーツチームの名前がMichigan Wolverinesで、この銃に付けられた“Wolverine”の名前は、このチーム名からとったものだ(アメリカン・コミック“X-MEN”のキャラからとったのではない。そもそもX-MENは1963年スタートだし、人気キャラのWolverineは初期には登場していない)。
 “Wolverine”とは、もともとはクズリというイタチ科の、小さいが獰猛な動物の名前だ。

 1956年、この画期的な軽量ピストルは$39.95という価格で市場に送り出された。しかし13,000丁を作ったところで、経済的に行き詰まってしまった。1957年、早くもロバート・ヒルバーグは会社をたたみ、さっさとハイ・スタンダード(High Standard Gun Company)に移った。
 この時代の22LRターゲット・ピストルは、なんといってもRugerであろう。1949年にビル・ルガー(Bill Ruger)とアレクサンダー・スターム(Alexander Sturm)が市場に送り出したRuger Standardモデルは大ヒットしていた。1951年にアレクサンダーが他界し、グリップのメダリオンを赤から黒に変えた。1952年に5-1/4”バレル・モデルも登場した。
 コルトも有名なウッズマン(Woodsman)の3rd シリーズを1955年に投入していた。
 22LRのターゲット・ピストルを多数製造するハイ・スタンダード(High Standard)は、この時代には、100シリーズ、101シリーズのSupermatic, Sport King, Dura-Matic等を供給していた。
 S&WのModel41が登場するのは1957年だ。
 すなわち、ホイットニー・ウルヴァリンが発売された1956年、1957年のアメリカでは、かなり強力なライバルが市場に溢れていたというわけだ。

                     1956年当時の雑誌広告

 結果として、ホイットニー・ウルヴァリンは歴史に埋もれてしまった。ただ流れるような曲線で構成されたその外観は、見るものの記憶に強く残る。

装薬銃というより、SF映画に登場するブラスター(熱線銃)といった趣のあるデザイン、持ってみれば意表を突く軽さは、オモチャを思わせる。売れなかった理由はそんなところにあるのではないだろうか。時代に先んずることは良いが、進み過ぎていては市場が受け入れない。
 この銃の操作は、アッパー・レシーバー後部のP-08を思わせる丸いパーツを両手で摘まんで、ボルトを引く。このパーツは、コッキング・ピースというべきだろう。ボルトはアッパーレシーバー内に収まっている。スライドトップに斜めに走る曲線ラインがあるが、ここからスライド・カバーが分離するわけではない。

 約50年の時を経て、ホイットニー・ウルヴァリンは復活を遂げた。M16クローン・ライフルやM1911クローンを製造供給するオリンピック・アームズはポリマーフレームを用いた現代のホイットニー・ウルヴァリンを製造している。無意味?なベンチレイテッド・リブを載せたその姿は、オリジナルより凄みが効いている。20世紀中期のブラスターが、半世紀を経て21世紀に蘇った形だ。
 オリンピック・アームズは22LRだけでなく、.17HM2(Mach-II)のホイットニー・ウルヴァリンも作った。.17HM2は2004年に登場したあまり知られていないカートリッジだ。リムファイアだが、同じHornadyの.17HMR(Hornady Magnum Rimfire)とは違うし、.17HMRの銃で.17HM2は撃てない。
 .17HM2は22LRに近いサイズのボトルネック・リムファイア弾だが、17gr.の超軽量弾で脅威の2,100fpsをたたき出す。22LRがHVカートリッジでも、せいぜい1,255fpsであることから比較すると、凄いスピードだ。
 しかしオリンピック・アームズは既に.17HM2のホイットニー・ウルヴァリンの供給を中止した。現在は22LRのみである。
 もうひとつ、Samson Manufacturing Corp.もホイットニー・ウルヴァリンの製造を検討していると伝えられているが、現在のところ実現したとは聞いていない。

 現代のピストル・デザインは、製造の効率化、操作性の向上を狙ったものばかりになった。合理性の追求は決して間違ってはいない。しかし、その結果として、どのモデルも似通ったものばかりになってしまった。
 ホイットニー・ウルヴァリンのデザインは無駄が多いかもしれない。しかし、当時の人々が夢に描いた”未来のピストル”の匂いがする。現代の市場から、このような“味”のあるものが、ほとんど無くなってしまっているのは残念だ。
 22LRの銃は、警察用でも戦闘用でもない。射撃を楽しむためのものだ。ならば合理性ばかりを追いかける必要はない。民生品は、格好の良さや、美しいデザインの追求を忘れてはいけない(・・・と私は思う)。

Nov.20, 2007

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