Versa-pod ベルサ・ポッド
by Satoshi Maoka

△ Remington M700 + Versa pod ▽ Remington M700 + Harris Bipod type S

高速移動目標ではなく、固定された、あるいはゆっくりとしか動かない標的を撃つ場合、どういう射撃姿勢を取るべきだろうか。当然のことながら、立っている状態よりも、テーブルを使うか、地面に伏せて撃つほうが、より正確な射撃が出来る。
その状態であるなら、銃は手に持っているより、何かに依託したほうがより安定し正確さは増す。その究極の射撃体勢はベンチレスト射撃だ。銃を保持することは、しっかりとしたライフルレストとリアレストに任せ、正確なエイミングとトリガープル、リコイルを毎回均等に処理することを重視する。そして、風を読み、銃を改良し、精度の高い装弾を作ること、時に温度や湿度まで分析する能力を競う。
しかし、重いライフルレストをいつも持ち歩くことは困難だし、しっかり固定できる頑丈なテーブルがどこにもあるというわけではない。そんなとき、依託射撃を行おうとするならば、手近にある上着を丸めたものや、リュック、樹木、毛布などを銃の下に置くことになる。これらを使用すればある程度は、正確な依託射撃が可能となる。バイポッドは、それらに代えて使う専用ツールだ。ライフルレストと比べれば、はるかに華奢で安定性に乏しいが、小型で軽いという利点がある。
バイポッド付きの銃を軍用銃だと誤解している人もいるらしい。確かに軍用銃にはバイポッドがついているものが一部にあるが、それは軍用銃の要件では全くない。むしろ狩猟用の銃やスポーツ射撃銃にこそバイポッドは付けられるべきものだと思う。
 
左:Harris type-S 右:Versa Pod Model 2 手前側に折りたたんだところ Harrisは一方向にのみ折りたたむ
小型軽量で折りたたみ式バイポッドは、狩猟中にほとんど負担無く,銃に付けて歩くことが出来る。獲物を発見した際には、バイポッドを使用して射撃すれば、腕で保持して撃つより正確な射撃が可能だ。そうすれば、半矢で獲物を逃す可能性は低くなる。狩猟を行う以上、獲物に不必要な苦痛を長時間与えるのは忍びないし、仕留め損なった大型獣は凶暴になり、人的被害を出すことにつながりかねない。動物を撃つ以上、即死させるだけの正確な射撃が必要なのだ。
スポーツ射撃用のライフルにおいても、バイポッドは有効だ。ゼロインを行う際にはライフルレストが手元にあればそれを使えば良いが、無かった場合、バイポッドを使用することで、ある程度までは正確に行うことが出来る。大きく重くかさばるライフルレストを射撃に行くたびに持っていくことは、ベンチレストシューターでない限り、難しいだろう。
標的に思ったように当たらなくなったという時、その原因を分析するには、バイポッドで銃を保持して射撃することで、問題点の洗い出しを行うことが出来る場合がある。またバイポッドを使って撃つ射撃競技だって実施可能だ。
だからライフルを所持しているなら、バイポッドも用意しておいた方が良いだろう。ベンチレスト専用銃の場合、バイポッドを装着することは出来ないが、通常の狩猟銃やスポーツ銃なら、ほとんどすべての銃に簡単に装着することが出来る。
 
左:右からParker Hale, Versa Model 2, Harris S-style 右:左からParker Hale, Harris Solid BR, Harris Solid L, Harris S-style L, Versa-pod Model 2
バイポッドはハリス(Harris)製が有名だ。他にもベルサ・ポッド(Versa-Pod)やBスクエア(B-Square)、ラグドギア プレミア(Rugged Gear Premier Bi-Pod)などの製品があるが、アメリカの公的機関のスナイパー達は、殆どがハリス製を使っている。バイポッドを使用する射撃競技の選手もハリスを使用している。アメリカではバイポッドといえばハリスという状態だ。
しかしヨーロッパでは、ハリス一辺倒ではなく、パーカー・ヘル(Parker Hale)タイプのバイポッドを装着した銃が多い。パーカー・ヘル・タイプではベルサ・ポッドが汎用品として一番入手し易い。
ハリスとベルサ(パーカー・ヘル)はどう違いのだろうか。
一番の違いは、バイポッドの足がrigidに(硬く)保持されるか、ゆるく保持されるかの違いだ。ハリスの脚部は強いスプリングでしっかり固定される。射撃の反動程度では、その脚部が動くことはない。一方、ベルサはこの部分に余裕をもたせてあり、ある程度まで動くようになっている。脚部を起こしている状態で、前後左右斜めにかなりの余裕度を持って動かせる。
 
Harris S-styleとVersa Pod Model 2 左のVersaは固定がゆるく、前後左右への多少のスイング、回転機能を持っている。右のHarris S styleは左右のみのスイング。両者とも、矢印のように大きく動かせるわけではなく、わずかに動くだけだ。判りやすいように、矢印の動きは大きく描いた。
 
VersaはParker Hale Bipodのコピー品だ。サイズも殆ど同じで、アダプターも共用可能。足の部分はParker HaleはV Grooved metal feetと呼ばれる金属製だが、Versaは、同じ形の金属製脚(Model 1)とnon-skid, non-marring rubber feetというゴム製の足(Model 2)とがある。このゴムの足はHarrisと同じ形だ。
 
パーカー・ヘルがこのバイポッドをデザインした際、動く余裕があることを重要視したのだろう。
銃を発射すればリコイルが生じる。ハリスのようにしっかり足を固定していては、このリコイルを受けて銃は動いてしまう。
これは私の場合、特に顕著なのだが、ハリスで撃つと銃が跳ね上がり、脚部が地面から離れ、再び着地したとき、スコープのエイミングポイントは変わってしまう。すなわち1発撃つたびに、狙い直さなければならない。
ベンチレスト射撃では、このリコイルで銃が跳ね上がることがないようにライフルレストの上で、銃をキレイにうしろに滑らせる。ハリスのように固く脚を固定してしまうとリコイル処理が上手くいかない。
パーカー・ヘル・タイプは前後の動く余裕があるので、ある程度までリコイルをうしろに逃がすことが出来る。リコイルが極端に大きなライフルの場合はムリだろうが、308程度のライフルなら脚が浮くようなことは無い。
 
またバイポッドを立てる地面は必ずしも平らであるという保証はない。自然環境で使うなら、平らであるということはむしろ考えにくい。ハリスは大きくわけて2種類あって、ソリッド(スタンダード)タイプはあくまでも平面に置くことを想定している。Sタイプは横方向へのティルトが可能で、地面が傾いていても、銃を水平に修正することが出来る。射撃距離が一定のポジションシューティングでもない限り、射撃時に銃を傾けることは絶対に避けなければならない。
すなわちハリスのスタンダード・タイプは殆ど使い物にならないというわけだ。通常、バイポッドはライフルのフォア・エンド部にあるスリングスィベル・スタッドに装着する場合が多い。このスタッドがストックの下面、中央に正確に付けられているという保証はない。またフォアエンド部は通常、アールが付いていて、その曲面に沿ってバイポッドが装着される。だからハリスのソリッドタイプをそのまま銃につけて使用した場合、銃は傾いてしまう可能性が高い。
ハリスを使う場合には、Sタイプを使用することが絶対に必要だ。
 
左:Harris S-styleを立てた状態 右: ストックのフォアエンド下部にあるスリング取り付け用のスタッド。バイポッドはこのスタッドを使って固定する。射撃競技用ライフル(ポジション・シューティング用)の場合、このスタッドがなく、代わりにUITレールがある。その場合にも、バイポッドを固定するためのアダプターがある。写真のストックはH-S Precision製でダブル・スタッドになっている。このストックの場合もスタッドはストックの真下に正確に付いてはいなかった。Harrisのスタンダード・タイプを付けると銃は傾いてしまう。
しかし、このティルト機構を嫌うシューターは多い。彼らは、ティルトすることは必要だが、一度水平になったなら、その状態で動かないように固定してしまうべきと考えた。そこでチィルト機構を簡単にロックするPod−Locというキットが売られている。
アメリカでバイポッドを使用する競技を行っているシューターは、ベルサ・ポッドは使い物にならないと言っている。それは、ベルサの特徴である前後左右斜めのスイング機構が問題だということだ。彼らはハリスのようにしっかり固定された脚を好む。ベルサのスイング機構を固定する改造を施した人もいる。しかし、私はこのスイング機構こそがベルサの利点だと考える。
 
左:上からVersa Pod Model 2, Harris S-style, Harris standard type いずれも足を最大限に延長させた状態。 右:Harrisの足にあるスイッチ部分。右側はスタンダード・タイプのもので、半円型の部分を押すと、内蔵スプリングで、足は最大延長状態まで飛び出し、ロックされる。縮めるときは、同じ部分を押しながら、足を押し戻す。左側のs-style用のものは、足を手で引っ張り出す。段階的なロック機構はなく、最大延長状態でロックされる。縮めるときは、半円型の部分を押すと、内蔵スプリングの力で足は収納される。途中で止めたい場合は、円盤状の部分を回せば、無段階で固定が出来る。
射撃方法には個人差がある。体型体格によって違いが生じるだろう。少なくともハリスは私には使い物にならなかった。ベルサやパーカー・ヘルを使ってみてその使いやすさを実感した。以後、全くハリスは使っていない。しかしアメリカのシューター達は私とは違う見解を持っている。
これについては各自使用してみて結論を出して欲しい。射撃スタイルは個人差がある。他人にとってベストなものが、自分にもベストかどうかはわからない。
 
左:Versa Podを使っているとナットが緩んできた。最悪の場合、外れて紛失ということも考えられるので注意が必要だ。その点、Parker Haleは何年も使っているが、そんなことば全くない。 右:Versaのハンドストップとの接続部分
アメリカ海兵隊のスナイパーが使用するM40A3には、ハリス製のバイポッドが装備されている。しかし彼らの間ではハリスの評判も良くない。こんなものを使用するより、リュックに依託して撃ったほうが良いという事だ。
標的は常に自分と同一平面上にあるわけではない。高い位置や低い位置にあるかもしれないし、自分の位置がバイポッドを立てられるような場所とは限らない。脚の長さを伸ばしたり縮めたりしてグズグズ調整をしている余裕はない。
余分なアタッチメントを付けて銃を太らせるより、出来るだけスリムな状態にしたほうが実戦では扱い易い。これはスコープにも言える。いたずらに大口径の大型ズームスコープをつけるより、ユヌートルの固定倍率スコープが彼らの好みだ。
命を賭けた実戦のためのツール、そこにはバイポッドなどというかっこいいオモチャの出る幕はない。
バイポッドは射撃場や猟場でのお遊びツールだ。我々の行う射撃は実戦ではない。スポーツであり遊びであるわけで、そこではバイポッドが役にたつということが出来る。
ベルサ・ポッドを国内で扱っている業者はあまり多くはないが、一部では販売されている。しかし妙に高価であったりする場合もある。アメリカ国内価格はたったの$64.95-でしかない(Parker Haleはその4倍程度で$250前後)。輸入する際に経費が掛かるのは理解出来るが、Versaが2万円前後の価格で売られているのは、ちょっと納得できない。しかし、まともな価格で販売している業者も存在する。

Feb.5, 2003
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