Triple Trap Again

 2004年11月29日、新しい射撃競技Triple Trapを紹介した。その後、私が紹介した競技の形式が「本来のルールと違う」というご指摘を間接的に頂いた。
 今回は、その“本来のルール”について書いてみたい。
 Triple Trapは、我が国の法律でショットガンに許されている最大容量“3発”を生かした競技として生まれたものだ。
 かつては我が国でも、大容量マガジンのショットガンが一般に市販されていたが、1960年代から70年代にかけて相次いで発生した銃犯罪( “あの夏、1965”をご参照されたい。1965年に発生した“ロイヤル銃砲店乱射事件”について詳細に書かれたものだ。1960年代には、銃を使用した重大犯罪が何件も発生した。これはその一つとして、歴史に残る事件だ)の影響で規制が強化され、マガジン2発、チャンバー1発を上限とするようになった(ライフルの場合は、マガジン5発+チャンバー1発まで許可される)。
 クレー射撃競技はルール上、連射は2発までしか撃てない。一方、狩猟では、3連射する場合がある。
 それなら3発連続的に発射する競技を作れば狩猟の練習として役に立つ。これは理に適った話だ。射撃競技は純粋なスポーツであると同時に、多くのスポーツがそうであるように、レクリエーションとしての意味もある。そして、狩猟の為の練習としての要素も大きい。この練習とは、獲物を獲ると言う部分の他に、射撃を通じて銃器の安全な操作技術技能向上を図るといった目的もある。
 正式なクレー射撃競技は2連射までと決められている理由は、上下二連銃がその名の通り、2発しか連射できないため、必然的に競技のルールを2発までとしたに過ぎないのだろう(前回のTriple Trapの記事では、英国ジョージ5世が日本の若き皇太子に向けた言葉を紹介したが、実態としては二連銃の機能からできたルールだろう)。
 3連射できる銃が普及してれば、3連射競技ができるのは自然の成り行きだ。
 3連射競技としてのTriple Trapの企画は、全日本射撃場協会が中心になって進められた。どのような考えに基づいてルールを決めたかは、推測するしかないが、安全を最優先にしたことは言うまでも無いだろう。
 指摘があった(と聞いた)ルールと異なる部分は、クレーの放出順序だ。現在、正規のルールと言われているものは、右、正面、左となっている。これで固定されている。
 前回はこれとは異なる放出順序で競技を実施した。そのような放出順で決められているという情報が無かったからだ。


 全日本指定射撃場協会が昨年、全国の指定射撃場に送ったTriple Trapの資料には、放出方向を右、正面、左と固定するとは記載されていなかった。たぶんその時点では決まっていなかったのだと思う。
 仙台は率先してTriple Trapの普及に努めており、毎月競技会が開催されている。その競技会での射撃法が、実質的に正規のルールということになるだろう。
 そこではフロント撃ち、とセンター撃ちという2種類の競技がおこなわれている。フロント撃ちとは、自分が立つ射台の正面にある放出機からクレーが飛ぶ。射台から放出機までの距離は、5m, 10m, 15m, あるいは、5〜15mの間となっている。これはそれをおこなう射撃場の設備によって変わるし、主催者の判断、および競技会の性格で変えることができる。
 順番はすでに書いた通り、右、正面、左だ。射台には1人が立ち、残る射団のメンバーはその後ろに並ぶ。一人がコールすると3枚のクレーが飛び,撃ち終わったら次のシューターに交代する。その射台で全員が撃ち終ったら次の射台に移動して、5つの射台で順番に撃っていく。流れとしてはスキートに近い。
 射手は射台に入ってから装填を開始する。射台を降りる時は撃ち切っているので、銃はカラになっている。何らかの理由により途中で降りる場合はマガジン、チャンバーからすべての弾を抜くのは言うまでも無い。
 センター撃ちは中心にある3番射台の前方に位置する放出機からクレーが飛ぶ。1番射台から撃つときも、5番射台から撃つ時も、クレーの放出は常に3番からだ。放出順や撃ち方、射撃距離は、フロント撃ちと同じだ。
 クレーの放出タイミングは微妙だ。ルールでは、原則として射手が射撃準備を整えたことをプーラーが確認して次のクレーを放出する、とある。
 しかし実際には、射手が発射準備を整えたかどうかをプーラーが正確に確認することは難しい。実際、射撃場に各地の関係者が集まり、警察庁も参加して確認した競技運営方法では、1枚目のクレーを射手が撃ち、特に作動不良等の問題がない場合、すかさずプーラーは2枚目放出のボタンを押すということになった。3枚目も同様だ。
 概ね1秒間隔でクレーが放出されている。しかし手動でおこなっている関係上、多少のタイムラグが生じる。一定のリズムでクレーが飛ぶのと比べて、この方が難しい。
 もしルールに記載された文章が絶対のものだとしたなら、プーラーは毎回、射手が2弾発射準備が整ったかどうかを確認しなければならなくなる。その場合、完全に射手のペースで撃つことができるかもしれない。たとえば、“1枚目を撃ったまま、ゆっくりフォロースルーして、おもむろに銃を肩から外し、ゆっくり正面を向いて、再び銃を肩に着け、狙いを定める”ということが可能になってしまう。“射手が射撃準備を整えることをプーラーが確認して次のクレーを放出する”、これを厳密に解釈すれば、こういうことが通用する。これでは放出方向が予め定まっているシングルトラップと同じなってしまい、トリプルトラップの魅力は半減してしまうだろう。

 そこで出てきた答えが、1枚目のクレーを射手が撃ち、特に作動不良等の問題がないと思われたら、プーラーは2枚目放出のボタンを押すという形式になった。それが約1秒間隔の放出だ。これは猟用資材工業会、 射撃場協会、火薬連合会、大日本猟友会、全猟、日クレなどの業界団体及び警察庁関係者も同席して確認したものだ。
 今度は、「文書に記載されたルールと違う」、と指摘されても困る。
 些細なことになるが、作動不良が無いことを確認して、ということも難しい場合がある。ジャムを起こしても、撃っている本人が作動不良に気付かず、次弾を撃とうとして始めて気付くことだってある。
 だからルールのこの部分はあまり気にせず、“クレーは概ね1秒程度の間隔で3枚放出される”と考えれば考えれば良いだろう。
 出割れの場合は、その出割れが起ったところからやり直しとなる。2枚目が出割れとなったら、1枚目のスコアはそのままにして、改めて2枚目から放出する。3枚目が出割れなら、3枚目のみを単独で飛ばす。

以上がトリプルトラップの正式なルールだ。今後はこの形式で普及に努めることになる。
 本当はもう少しフレキシブルなルールで展開できたほうが面白いと思う。たとえば放出順などは定めず、ランダムに放出されたほうが良いだろう。しかしそうなると、競技者毎に多少の有利不利が出てくるかもしれない。
 世の中には、猟友会ルールの“トントン”と呼ばれる独自のダブルトラップ(公式のダブルトラップとは異なる)や、二の矢が認められているスキート (国際ルールのスキートに二の矢は無い)等、独自ルールの競技は何種類もある。
 トリプルトラップだって、将来的には独自ルールができるかもしれない。
 
 あいにくTriple Trapはまだほとんど普及していない。実施を検討している射撃場もまだ少ないと思われるし、競技として取り入れようとしている団体も少ないだろう。
 実際にやってみれば3連射は面白い。普及を妨げる要因はいろいろあるだろう。
・もっとも普及している上下二連銃では対応は不可能であること。
・セミオートやスライドアクションレピーター(ポンプアクション)を持っていない人は楽しめない。
・射団を組むほど射手が集まらないと、実施しにくい。
・公式競技ではない。
 …などだ。

 しかし、スポーツの楽しみ方はもっと多様であるべきだ。クレー射撃はトラップとスキートだけと決め付けないほうが良い。アメリカや海外のリゾート地の広大な敷地でおこなう豪快なSporting Clayは無理にしても、もっといろいろな形があってしかるべきだと思う。もちろん安全は最優先だ。

Triple Trapはクレー射撃の新しい楽しみ方として、ぜひ普及して欲しいと思う。

July 18, 2005 Yuji Takase

2004年11月29日に紹介したTriple Trapの記事はこちらです。
   “Triple Trap”

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