Prospect of SIG DAK : SIG DAKトリガーの見通し
                                      2007年8月15日掲載

 スイス軍は、1975年、従来の美しいP49(SP47/8: SIG P210)に代わって、P75(SIG P220)を採用した。SP47/8は製造工程が複雑で、単価が高かったからである。
 P220はスイスのSIGが設計、ドイツのSauerが製造したものだ。徹底的にコストダウンが図られ, フレームはアルミニューム、スライドはヘビーゲージ・シートメタルからプレス加工で作られた。スイス軍用は9mmであったが、最初から45ACPにも適用できるように大きく設計されていた。アメリカ市場に売り込むには45ACPモデルが有利と判断したからだ。
 アメリカ市場には1978年頃、ブラウニングUSAが販売代理店となって、BDAの商品名で登場した。しかし当初、BDA(SIG P220)はアメリカ人に受け入れられなかった。当時のアメリカ人はスチール削り出しを好んだ為、P220はブリキ細工のピストルに見えたのだ。
 あれから40年、現在SIGセミオートピストルは、アメリカ市場で非常に高い評価を獲得している。約7年の歳月を費やしたアメリカ軍制式ピストルトライアルJSSAPでは,制式モデルM9の座を巡り、ベレッタM92Fと最後の熾烈な争いを演じたのは,P220をベースに、9mmサイズ化、ダブルカアラムマガジン仕様としたSIG P226だった。その間、SIGはアメリカ現地法人を設立し、本格的にアメリカ市場への売り込みを図った。
 アメリカ軍は1985年、ベレッタを採用したが、SIGの評価は高く、P226を小型化したSIG P228がM11として限定的に採用された。その他、Navy SealsもP226を少数採用している。SIGの220系の評価が高まったのは、このトライアルによるところが大きい。
 その後、SIGセミオートマチックピストルは世界中の軍や法執行機関に制式モデルとして採用されている。
 日本の自衛隊もP220を採用し、SATもP226を一部で装備している。イギリス軍はP226を、ブラゥニング・ハイパワーL9A1の後継モデル候補、L105A1として限定使用している。
 1998年、フレームのポリマー化の流れを受けて、SIGもSIG Proシリーズを展開し始めた。
 2004年12月、the U.S. Army Tank-automotive and Armaments Command at the Rock Island ArsenalはSIG SP2022 9mmを採用した。SP2022はポリマーフレームで、M1913ピカティニーレイルを有し、ステンレス・スライドを持つモデルだ。
 フランスの国家憲兵隊Gendarmerie nationale(ジャンダルムリ)は2003年、SIG SP2022を採用した。
 しかし、新しいポリマーフレーム・モデルより、旧来のアルミニュームフレームの方が市場の反応は活発だった。ポリマーフレーム・モデルと区別する意味で、これらはクラシック・ラインと呼ばれている。世界中の法執行機関が採用しているモデルの大半は、アルミニューム・フレーム・モデルだ。
 2003年には、クラシック・ラインに新しいDAKトリガー・モデルも加わった。シンプルな操作性を目指して、マニュアル・セフティを廃し、フレームにマウントされたデコッキング・レバーがP220から始まるSIGの近代セミオートマチック・ピストルの特徴であった。しかし、そのデコッキングレバーすら、操作を複雑にするマイナス要因と見做されたのだろう。

P226 AL SO DAK, P228 AL SO DAKはSauerの名称で、アメリカ市場に供給しているSIG ARMSでは、AL SOのコードは着けず、P226R DAK, P228R DAKとしている。

 2003年、ロードアイランド(Rhode Island)州警察はP226R DAK 357SIGを採用した。DAKモデルの制式採用はこの州が最初である。
 2004年8月、国土安全保障省(The U.S. Department of Homeland Security :DHS)の入国・税関取締局(Immigration and Customs Enforcement :ICE)の,は、DAKトリガーの40S&Wおよび9mmP226R, P229R、そしてP239DAOを採用した。

The DAK Advantage
 DAO(Double Action Only)とは、常にダブルアクションで発射する特殊なセミオートマチック・ピストルの機能を意味する。
 セミオートマチック・ピストルの特徴は、銃弾を発射した際、スライド、もしくはボルトが発射の圧力で後退し、その際、ハンマーもしくはストライカーが、自動的にコッキングポジションになる。スライド、もしくはボルトがスプリングのテンションで元に位置に戻る際、次弾がシャンバーに送り込まれる。
だから、次弾を発射するには、わずかにトリガーを引くだけで可能となる。
 ところが、長期にわたりダブルアクション・リボルバーを装備していたアメリカの警察官にとって、このセミオートマチック・ピストルのトリガーは危険なものと映った。
 ダブルアクション・リボルバーは長く重いトリガーを引いて、次弾を発射する。あるいは指でハンマーをコックしてから発射する。これなら、間違って次弾を撃ってしまう失敗は起こり難い。リボルバーを使用してきた警察官がセミオートマチック・ピストルを使用すると、トリガー・ドライブが短すぎ、またプルが軽すぎて、撃つつもりがないのに、発射してしまう事故が多発した。
 セミオートマチックが20世紀初頭に実用化されて以来、ヨーロッパの警察官は、セミオートマチックの特徴を理解し、扱ってきた。事故もあっただろうが、それは使う者のミスと解釈された。
 しかし、アメリカの警察はそのように考えなかった。トリガープルが軽い、トリガードライブが短いのが悪い。考えようによっては“言いがかり”だ。自分でコーヒーをこぼして火傷を負っても、“コーヒーが熱かったのが悪い”こんなヘリクツがまかり通る。
 よってメーカーは、ハンマーがコッキング・ポジションに止らないセミオートマチック・ピストルの奇形を作った。これがDAOだ。
 セミオートマチック・ピストルの持つ大きな特徴、アドバンテージの一つを自ら潰したのだ。DAOになってもセミオートマチック・ピストルは、マガジンキャパシティの多さと、弾薬を撃ち尽くしてもマガジンを交換すれば、素早く再装填されるという利点がある。
 しかし、DAOは錬度低いシューター向けの仕様だ。訓練の行き届いたプロフェッショナルは、こんな素人臭いトリガーなど必要としなかった。
 グロックも一種のDAOだが、2/3までハンマーは起きた状態だ。これならトリガープルは軽い。これはsafe actionと呼ばれた。
 発射後、トリガーを完全に戻さないで、少し戻した状態で再度トリガーを引けば、更に軽く落ちる。連射速度も上がり、正確に撃てる。マニュアル・セフティも無いため、操作はシンプルだ。
 これはむしろ従来のダブルアクション・セミオートマチックに優るかもしれない。プロフェッショナル・シューターがGlockの優秀性を評価した結果、似たシステムが次々登場するようになった。ヘッケラー&コッホのLEM(Law Enforcement Modification),ワルサーP99QA (Quick Action)などだ。
これに対するSIGの回答がDAKだ。DAKとはDouble Action Kellermanの省略語だ。ドイツSauerの技術者Harold Kellermanによって開発された。

 基本的にはDAOだ。しかし、SIGのDAOモデルのトリガープルは4.5kg(10lbs.)もある。SIGのコンベンショナル・ダブルアクションもほぼ同じぐらいの重さだ。しかしDAKは3kg(6.5lbs.)しかない。
 モデルにもよるが、一般的にセミオートマチックのダブルアクションは、3.6kg〜5.5kg (8lbs.〜12lbs.)ほどの重さがある。
 DAKが装備する3kgのスムーズなプルのトリガーは、Glockのそれに近い。
 DAKはテコの作用で動く長いアームがハンマーから離れた軸から伸びている。シーソーに乗るとき、少しでも後ろ側に乗ることで、楽な力でシーソーを動かせることを知っているだろう。SIGはクラシック・ラインのフレームの中に、このシーソーの原理を応用したleverage armを組み込んだ。
 1発目を撃った後、2発目を撃とうとするシューターは2つの選択肢を持つ。一つはトリガーを途中まで戻す方法だ。その状態から再度、トリガーを引けば、トリガープルは短い。しかし、900g(2lbs.)ほどトリガーは重くなる。もう一つは完全にトリガーを戻す方法だ。トリガードライブは長いが、軽いトリガープルが得られる。
 DAKハンマーはレストポジション時、スライド後方にほとんど隠れた状態となる。スパーレス・ハンマーなので、ハンマーを指でコックはできない。
 SIG の従来型DAOモデルの場合はハンマー・レストポジション時でもスライド後方から少し見える。
 現在、SIGのDAKトリガーはP226とP229,P220, P239に設定されている。以前はP226とP229だけだったが、適用範囲は拡大され、従来型DAOは一掃された。
 DAKと名称に付いているモデルはP220R DAK, P220R Carry DAK, P220R Two-Tone DAK, P226R DAK, P229R DAK, P239 DAKだが、その他にもP220SAS, P220Carry SAS, P226SAS, P226COPS,P229SAS, P239SASがDAKモデルだ。
 現在、SIGはその製品をどんどん拡大している。以前はダブルアクション仕様のみだった一連のP220系もSAOモデルを追加した。SAOとはSingle Action Onlyだ。アンビデクストラウズ・マニュアルセフティをフレーム後方に置き、Cocked-n-lockedを可能にしたモデルを多数登場させた。
 そのほか、バレルを伸ばしたMatch仕様や、SRT(Short Reset Trigger)を有するElite modelがある。そしてM1911タイプのRevolutionも驚くほどの種類が供給されている。
 反面、イマイチ、評判にならないポリマーフレームは、ショーケースの片隅に追いやった。そしてSIGの戦略商品としてクラシックライン・DAKモデルを打ち出しているかのように見えた。

New DAO P250
 ところが2007年新たな展開が始まった。P250の登場である。P250は既に2004年のIWAに登場していたが、その後、表に出てこなかったモデルだ。


P250DCcは、Sauer系列での販売名。SIG Armsのアメリカ市場ではP250DCcではなく、P250として市販する予定。“DC”はDefence Concept, “c”は、compactを意味するわけだが、おそらくフルサイズモデルも出るはずだ。そのときSIG Armsでは、どのようにして名称で識別するつもりなのかは不明

 インナー・シャーシーとリプレィシブル(replacible)・ポリマーフレームを有する。これは従来のポリマーフレームラインであるSIG Proに置き換わるものなのかもしれない。インナー・シャーシーの展開は特徴的だが、ここではP250がDAKではなく、DAOであることに注目したい。
 DAKの登場で従来のDAOを一掃したSIGが新たに送り出した新型DAOだ。P250のDAOはショート・リセット・トリガーである。わずか3mm戻せばトリガーはリセットされる。トリガーウェイトは4kg(9lbs.)だ。
 SIGは早くもDAKに見切りをつけたのだろうか? ドイツのSauer & SohnとアメリカのSIG Arms、それぞれの思惑もあるだろう。
 ひとつ言えることは、SIG SAUERはスイスの手を離れて以来、急速に商品の拡大を図っているということだ。一般論として、開発のスピードを高めることはマーケットを押さえる需要な要素である。銃器メーカーはどこも、果敢な商品展開を図ることなく経営を続けてきた。主力製品は20年、30年目立った変更を加えることなく造り続けることは当たり前だった。
 しかし、20世紀末から、一部のメーカーは製品展開のアクセルを思い切り踏み込んでいる。Heckler & Koch, Beretta, SIG(Sauer)・・・・
 一方で、圧倒的な新しさで市場を席捲したGlockは、1982年以来、ほとんど変わらず、製品展開を続けている。
 数年前の新製品は過去のものとなり、新たな製品に置き換わる。これは銃器界では、かつてほとんど見られなかった動きだ。SIGのDAKがどう展開されるのか、P250のDAOがどう発展するのか。しばらくの間、眼が離すことはできない。

2007年8月15日
Satoshi Maoka

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