日本のピストル射撃  Pistol Shooting Conditions in Japan by Satoshi Maoka

 銃愛好家でなくてもピストルを撃ちたい(撃ってみたい)と思っている人は多い。ハワイやグアムに射的屋のようなピストル射撃場がたくさんあるのは,そういった日本人観光客を対象としている。
 それらのほとんどは単なる体験射撃に過ぎないが、この経験をきっかけに,本格的にピストル射撃をやりたいと思う人も100,000人にひとりぐらいは出てくるかもしれない。
 ピストルは、海外に行かなくても日本でも所持出来る。警察官や自衛隊員に限った話ではない。こういうと怪訝に思われるかもしれないが,これは事実だ。
 日本ライフル射撃協会に入会し、エアライフル、またはハンドライフルから始めて、一生懸命努力すれば、数年後にはピストルの所持許可が下りる可能性がある。もっとも人数は50名までと限定されている上に、そこに至るハードルが非常に高く、これは誰にでも可能というわけではない。極めて優秀な射撃選手、及びその候補でないといけないのだ。そのためこの50人枠には常に空席があるらしい。またこの50名の枠内に、一般民間人はごくわずかしかいない。
 ピストルの射撃練習が出来る射撃場は限られている。また所持できるピストルは,目的にあった競技専用銃に限定される。
 その上,自宅保管は出来ない。競技に参加する日,または射撃練習をおこなう日、あるいはそれらの前日,警察署に行って自分のピストルを保管庫から引き取る。そして,競技および練習が終わったあとは,可及的速やかに警察署に戻してまた保管して貰わなければいけない(深夜でも構わない)。
 はたして,これでは“所持している”と言えるのかどうか,ちょっと疑問に思う。

 装薬銃の場合は,このように非常に高いハードルと制約があるが,エアピストルなら、比較的簡単に所持は可能だ(法的にはエアピストルは空気けん銃という。 法的な言葉では“拳銃”ではなく、“けん銃”だ。しかしここでは、一般的な言葉である“エアピストル”の呼称を使用する)。
 エアピストル所持は比較的簡単とは言ったものの、そこにはさまざまな障害があるし、所持出来るものは、やはり競技専用銃だけだ。
Beretta M92FSやGlock 17など大口径コンバット・ハンドガンでなければピストルでは無い、という人にとっては、競技用エアピストルなど問題外かもしれない。しかし、エアピストルもピストルであることは間違いない。
 Gun誌には、歳清氏のよるピストル射撃競技の紹介が何度も繰り返し掲載されている。競技風景の写真や結果、主要な選手の紹介やその装備が記事のテーマになっている場合が多い。まれに所持までのプロセスを書いている場合もあるが、それでもアウトライン程度のごく一般的な事しか書かれていない。おそらく誌面の都合なのだろう。
 そこで私は、日本のピストル射撃競技について歳清氏とは違う視点で、もう少し詳しく書いてみようと思う。

エアピストルが所持出来るようになった背景

 日本では、エアライフルやエアピストルを一般市民が購入することについて厳しく制限が加えられている。きちんと調べたわけではないが、エアライフルの所持を,これほどまで厳しく規制している国は、共産主義国家や独裁政権国家を除けば日本だけだろう。ほとんどの民主主義国家では、エアライフルやエアピストルは、無許可で購入が出来る。エアライフルの所持に関する部分のみを見た場合、日本は独裁政権国家並というわけだ。

   公式AP 4号標的 公式試合で使用されるもの。通常1圏的1発撃ち込み(標的1枚に1発のみ撃ち込み)

 エアではあっても、人を撃てば怪我を負わせてしまうし、当たり所が悪ければ、大怪我となってしまう。にもかかわらず、ほとんどの国でエア・ライフルが無許可で買うことが出来るのは、その危険性がゴルフクラブや野球のバット、キッチンナイフ、金槌(ハンマー)、斧、鋸(ノコギリ)といった道具と同等、あるいはそれ以下でしかない、と考えられているからだろう。
 野球のバットやゴルフクラブのほうが、エアライフルよりはるかに殺傷能力は高い(最近のハイパワー・エアライフルは別だが)。しかしバットやクラブを購入することに、警察の許可を必要とする国は無い。バットやゴルフクラブは使用目的が違う、といわれるかもしれない。しかしエアライフルだって、殺人用品ではない。バットやゴルフクラブと同じスポーツ用品だ。
 我が国は銃というものに対し、恐ろしく過敏だ。殺傷力の低いエアライフルに対してですら、所持許可制として、所持しようとする者の身元調査を徹底的に行う。
 昭和20年代後半の日本ではエアライフルが厳しく規制されていたわけではない。子供がエアライフルを肩に担いで自転車に乗っていても、警察官は、「人を撃っちゃだめだぞ」と、注意の一言をかける程度だったらしい。子供たちは、エアライフルでスズメなどを撃ち、それは母親によって料理され、その日の夜、家族の食卓に乗ったりもした。
 しかし昭和30年代になると、そんな寛大な扱いではなくなった。所持許可を得たものでないとエアライフルですら所持出来なくなったのだ。
 現在、然るべき手順を踏めばエアライフルなら比較的簡単には所持出来る。地域によって差はあるようだが、過去にトラブルを起こしたことのない善良かつマトモな市民で、住所が定まっているならば、原則的に所持許可は得られる。
 しかし、これはエアライフルの許可に限っての話だ。エアピストルになると話は全く違ってくる。
 戦後、日本はピストルの所持を厳しく禁止した。携帯性が高く、容易に隠し持つことが出来ることが、ピストルを禁止した理由だと思われる。エアピストルもその例外ではない。競技目的であっても許可は下りなかった。そういう状況が戦後、長く続いた。
 しかしその後、公式ピストル射撃競技の選手候補であれば、民間人でも50人という上限を設けて装薬ピストルの所持は認められるようになった。

Walther LP200
 既に旧型となっており、現在はLP300が後継機として登場している。このLP200はちょうどワルサー社がUMALEXに買収された頃に登場した。長期にわたりドイツ公用ピストルの名門として高いブランド性を持ち続けていたワルサー社も、新興のHeckler & Koch , SIG Sauerなどにシェアを奪われ、最後の砦であったドイツ国防軍の制式ピストルの座を奪われたことで、その路線をスポーツ分野に大きくシフトしたのが1990年代後半だ。
 そんな時期に
LP200およびLP201はワルサー・スポーツエアピストルの新型として登場した。エアシリンダーが銃身と平行ではなく、トリガーの前部から斜め下方に傾いて取り付けられていたLP201は、日本のトップシューターの一部が積極的に使用し、一時的に人気モデルだった。一方、銃身下部に平行にシリンダーを配置したLP200の日本での人気は極めて低く、ごく少数が輸入されたに過ぎない。
 LP201はそのシリンダー配置がバランスが良いと評判だったが、後継機のLP300はシリンダーの配置がLP200に近くなっている。シリンダーを下側に垂らす形式は今では全く流行らない。

 ピストル射撃競技は1952(昭和27)年、第7回国体で正式種目となったが、参加者が警察官のみという理由で3年後にはオープン競技に格下げになってしまった。しかし、関係者の努力で1958(昭和33)年、第13回大会から再び正式種目になった。参加者は警察関係者だけでなく、防衛庁、厚生省などピストル所持が出来る関係官庁から広く選出することとなった。民間人にもその門戸が開かれたのは、この流れによるものだろう。
 しかしピストルを撃つ機会が無ければ、誰が選手候補に相応しいかどうかなどということは判るわけはない。そこで、片手で撃つエアライフル競技が日本独自のものとして作られた。
 軽量エアライフルをピストルのように片手で持って撃つ。1966年、日本ライフル射撃協会は軽量エアライフルによる片手撃ち競技を公式競技としてスタートさせた。
 しかし、いくら軽量の狩猟用エアライフルといえども片手で握り、手を伸ばして撃つことは辛かっただろう。1969年にはハンドライフルと呼ばれる片手用エアライフルが国産化された。1971年以降には、エアピストルを改造してライフル並の長さの銃身スリーブと、ストックを付けたものに代わった。こうすれば、元はエアピストルであっても、全長、銃身長共に法的条件を満たし、エアライフル扱いとなる。
 1960年代はライフルの乱射事件や、モデルガンの改造事件が続き、銃刀法強化の動きが活発になった。銃刀法改正案は第65回国会を通り、ライフル銃の規制は1971年(昭和46年)5月20日、モデルガン規制は同年10月20日から施行された。
 ライフル銃は、装薬銃(通常は散弾銃)を10年間連続で所持したあとか、又は日本体育協会から競技選手として推薦を得たものだけが所持出来るものとなってしまった。モデルガンはピストルタイプの金属製モデルの場合、銃腔を閉塞し、表面を白または黄色に塗らなくてはいけなくなった。
 大幅な規制強化だったが、エアピストルの所持に限っては規制が緩和された。これはエアピストル射撃競技が1970年に世界選手権大会の正式種目になったことも少なからず影響している。1971年にはアジア射撃選手権大会の正式種目にもなっている。
 その結果、わずか250名という制限付きではあるが、戦後初めて民間人にエアピストルの所持が認められたのだ。エアピストルの所持は、エアライフルの立射、またはハンドライフルで初段を獲得した人が希望すれば、250名の許可枠の範囲内で、日本ライフル射撃協会推薦委員会よりピストル射撃選手候補として推薦状が発行される。これにより、エアピストルの所持許可が公安委員会より与えられる。
 エアピストルの推薦枠はその後、500名まで拡大した。

 個人的な感覚だが、このLP200が現在までに日本で市販されたエアピストルの中ではもっとも美しい形であると思う。それは角型のバレルカバーと、その側面左右に施されたシルバーの3本ラインに起因する。銃としての性能、機能とは全く関係のないラインだが、デザインとしてはバランスが良い。
 競技用の銃である以上、形の美しさより精度の良さ、撃ったときのバランスの良さが優先されるべきであることは言うまでもない。
 エアピストルとしての実力は上のテストターゲットを見れば判る通り、10m5発の結果は申し分ない。
これが登場したころ、アブソーバー付きのエアピストルが現れ始めた。撃った瞬間に発生する弾を飛ばしたことによって生じるわずかなリコイルを消すアブソーバーは競技用としてみた場合、大いに有利となる。LP200, LP201が比較的短期間で消えたのは、時代がすでにアブソーバー装着APを求めていたからに他ならない。

 上左:右側面     上右:購入時の箱入り状態。予備シリンダー1個やレンチ、圧力ゲージ等が一式入っている。
 下左:ローディングレバーを少し上げるとシリアルナンバーが見える  下右: マズル部分 一応、マズルコンペンセイターが切られている。

 

所持許可の更新

 500人という所持許可枠が更に広がるというウワサは時々出てくるが、いずれも事実では無かった。
 新たな所持希望者が500名枠に入るには、既にエアピストルを所持しているシューターが自ら許可を返納するか、許可が失効してしまい、結果的にエアピストルを手放さざるを得ない状態になって空席が出来ないといけない。
 所持許可を申請して、この500名分の推薦枠に空きが出るまでには、かつては約1年半から2年という時間が必要だった。欲しいと思ってから2年待つというのは、非常に長い。但し,この状態は近年,大きく変化した。

左:ピストル用の銃砲所持許可証  通常の“猟銃・空気銃所持許可証”とは違い、1挺毎に1許可証が発行される。また2年毎に新規の許可となり、更新は出来ない。
右:LP200の側面にあるドライファイア用セレクター。レンチでしか動かすことが出来ないのは欠点だ。競技のPreparation timeや、自宅練習時にこのセレクタを回して“T”にすることでドライファイアの練習が出来る。工具なしでも、セレクターを切り替えることの出来る機種が多い。

 エアピストルを所持しているシューターは2年毎に更新をしないといけない。具体的には2年毎に許可を取り直し、所持者は自分のエアピストルを自分に譲渡するのだ。その際、日ラの推薦状を取り直す必要がある。
 1999年、日本ライフル射撃協会推薦委員会はこの推薦状申請要件を変更した。
 従来は所持を受けてから3回目までの推薦申請時にエアピストル初段を獲得していなくてはならなかった。3回目の申請というのは、許可を受けて4年だ。その時までに初段に合格していないと推薦状が発行されなくなり、所持許可も消滅するわけだ。
 初段とは600点満点で510点だ。練習で510点を撃っていてもダメで、日ラ主催または公認の試合で段級審査を申請しているときに510点以上の点数を撃つということが必要だ。
 これが1999年より、2回目の申請時に初段が必要となった。すなわち所持してから2年以内に初段を獲得しないといけない。
 同様にその上の段に対しても,取得するまでの期間に大幅な変更が加えられた。
それは以下の表を見ていただこう。

   旧ルール     新ルール
許可を得てからの年数 推薦回数 更新に必要な点数と段 更新に必要な点数と段
2年 2回目 - 510点  初段
4年 3回目 510点  初段 525点  2段
6年 4回目 - -
8年 5回目 - 540点  3段
10年 6回目 525点  2段 -
12年 7回目 - -
14年 8回目 - -
16年 9回目 - -
18年 10回目 - -
20年 11回目 540点  3段 -

 3段を取得したシューターは、もはや段を更新しなくても所持を継続することが出来る。但し、2年の間に、公式試合で少なくとも1回は初段以上の点数を撃つことが義務付けられている。それ以上の点数を撃っていれば、推薦状を得て更新が可能だ。
 すなわち1999年以前はいったん所持許可を得てしまえば、ほとんどのシューターは10年、20年という単位まで所持し続けることが出来たということだ。2段を獲得することは、真面目に練習を繰り返せばそれほど難しいことではない。しかし3段はかなりのブレーク・スルーが必要だ。だが3段という壁が立ちはだかるのは、以前の更新要件では所持以来20年後の事だった。
 これでは推薦枠に空きが出来にくい。エアピストルを所持したほとんどのシューターが20年間持ち続けることになるからだ。そこで、腕が上がっていかないシューター(ようするに、競技者としてあまり見込みのないシューター)には、さっさとお引き取りを願い、新しいシューターに推薦を与えようと更新用件を改定したわけだ。
 これによりシューターの入れ替えが活発化し、推薦待ちのサイクルは大幅に改善された。500名枠に現在は空席も出来,推薦取得まで長期間待つことは無くなった(2004年5月現在というべきだろう。今後も常に空席があるとは限らないし、3段保有者が500名になれば満杯ということになる)。
 腕が上がらないシューターにはいつまでもエアピストルを持たせておかないよ、というプレッシャーは競技レベルの向上につながる。反面、これはシューターによっては、かなりマイナスのプレッシャーにもなり、これでは“楽しみとしての射撃”、という意識は育たない。
 3段ぐらいの点数が撃てないようではダメだ、という人もいるが、3段というのはかなり厳しいハードルだ。個人差もある。実際に、この3段がとれずにエアピストルの所持許可を失効する人は多い。

競技会

 エア・ピストルの所持者は年2回以上、競技に参加する必要がある。試合なら何でも良い、というのではなく、日ラ主催、または日ラ公認の試合でなくてはならない。これは銃刀法で決まっていることではない為、法的拘束力はない。しかし年2回以上参加していなければ更新の為の推薦書を発行してくれない為、結果として更新が出来なくなってしまい所持許可も失効する。したがって年2回は絶対に正式競技に参加しないといけない回数だといえる。
 年2回というのは簡単だ、と思われるかもしれない。しかし、日ラ主催、公認の競技会は回数が限られている。1年間のうち、予め定められた日に2回ということになる。エアピストルの場合、基本的に日曜日に競技会が開かれることが多い。
 仕事の都合で試合に参加できませんでした、ということは認められない。すなわち休日出勤が頻繁にあり、かつ自分の都合で仕事の日程を調整出来ないという人はエアピストルの所持は難しいということになる。夜中であれ、休日であれ、突然呼び出される、あるいは自分の都合で休みを選べない、あるいはサービス業で土日祝日の休みはなかなか取れない、というような仕事を持っている人はエアピストルを所持しても、継続することは難しい。

朝霞射撃場  
左上:朝霞射撃場全景  けっしてシベリアの捕虜収容所の写真ではない。一説には全国エアピストル・シューターのメッカとも言われている。ここに入るには許可証が必要だ。
右上:春には桜が咲く。これは隣にある大口径射撃場側。東京オリンピックの大口径ライフル競技会場だが、現在は日ラが借りることは出来ない。ときどき自衛隊がここで射撃訓練を行っている。64式、もしくは89式のフルオートマチック射撃音が聞こえてくることがある。
左下:これはかつて射手の成績を表示する黒板式スコアリングボードだったものだ。いまでは鉄骨の枠組みと、床板、階段だけが残り、あとは朽ち果ててしまっている。

右下:大会開催日にはこのような縦看板が出る。

 日ラ主催の競技会である全国ピストル射撃大会(春季、夏季、秋季、冬季)は埼玉県朝霞市の自衛隊朝霞駐屯地内にある射撃場で行われる。
 また地方でも,日ラ公認のピストル射撃競技会がおこなわれる場合もあるが,人数的な問題もあり,複数の県が共同で開催している。県内にピストル所持者が数名,場合によってはゼロという県も多く,いくつかの県合同でもわずかの人数と言うケースも多く、地方競技会の開催はあまり活発ではない。
 だからすべてのエリアで公認の競技会がおこなわれているわけではない。既に述べたように,3段を獲得するまで駆け足で1段ずつ昇段する必要がある。年2回の参加義務だけでは,2年間に4回しか昇段のチャンスがないことになる。こうなると地域の競技会だけに参加するのでは不十分だ。そのためエア・ピストル・シューターの多くは、全国から朝霞射撃場で行われる年4回の全国大会に集まることになる。

左:朝霞射撃場内部   右:女子ピストル種目の入賞者表彰式 体校関係者等わずかの人数でひっそり行われている。

 全日本選手権は広島県つつが射撃場で行われる場合が多い。西日本地域からは埼玉より広島のほうが近いため,この全日本選手権に参加する人が多いだろう。全日本選手権というと,あたかも上級シューターだけの試合のように聞こえるが,エアピストル所持者なら誰でも参加が可能だ。
 これとは別に全日本選抜という試合もあり,こちらはその名前の通り,上級シューターのみが参加できる。いずれにしても日ラ主催、公認のピストル射撃競技会は回数が少なく、開催されるエリアも限られている。地方在住者にとっては、競技参加の移動費や宿泊費が必要となって、経済的負担は少なくない。
 競技会には、全国の警察官や自衛官も参加している。彼らの場合は、経費は個人負担ではないだろう。個人のピストル・シューターの場合も、所属する各地区の射撃団体から補助が出ている人もいるようだが、一般的には個人で負担しなければならない場合が多いと思う。
 現実にエアピストルの所持者の多くが東京周辺地域に集中している。これは多くの試合が埼玉県の朝霞で行われるということと無縁ではない。

射撃競技会  胸に日の丸とオリンピックの五輪マーク、背中にJapanを背負ったシューター達とごく一般のシューターが、同じ射線に並んで撃つ。マイナー競技だからこそ、このようなことが出来る。
左下はGun誌の歳清氏だ。独特な射撃フォームで撃っている。

情報伝達

 朝霞の試合は朝9時に始まる。通常は3射群に分かれており、試合時間が1時間45分と長丁場である為、3射群目の試合は午後1時ごろから始まる。
 エアピストルの試合は、他人の標的交換を手伝ったりする必要はない為、シューターは自分の出場する時間にだけ射撃場にいれば良い。従って3射群になったシューターは昼ごろ朝霞に来れば良いし、2射群目のシューターは10時45分に来ていれば、じゅうぶんだ。
 以前は日ラのweb siteにピストル射撃大会の射座割り(どの参加者が、何射群目の何番射座で射撃をするかを記載したリスト)が掲載されていた。それを見れば、次回の試合に自分は何射群なのかがすぐに判った。しかしその後, 掲載されなくなってしまい、事前に自分の射群は判らなくなってしまった。午後1時に射撃開始というのに、朝8時半に朝霞に来ているというのは、かなり辛い。
 ところが、多くのシューターは予め自分の射群を知っていて、それに合わせた時間にやってくる。事前に自分の射群を知る方法について、日ラは何もアナウンスしていない。しかしシューターは予め個別に日ラの関係者に問い合わせ、自分の射群を聞いて,その時間に合わせて来ているのだ。日ラ事務局にe-mailで問い合わせれば教えてもらうことも出来る。
 この事を知らないと,朝早くから射撃場に行き,自分の射群になるまで,おとなしく待つことになる。オマケに東京およびその近郊に住むシューターは事前に要求しない限り,3射群か,2射群に優先的に組み込まれられる。これは地方から前日移動をしてきているシューターに早めに撃ってもらい,早い時間に帰宅してもらおうという考えで,地方在住者を優先的に1射群に振り分けているからだ。しかし,この射座割りの法則についても日ラは公にアナウンスしていない。
 事前に日ラに問い合わせれば射群を教えてくれるということ,射群は申し込み時に1射群を希望すれば,日ラが調整してくれる,ということは口コミでのみ広がっている。
 たった500人という非常に小さなコミュニティである割には、情報の伝達手段はあまり確立されていないと言える。
 試合日程が、日ラのweb siteに載るようになったのは、最近の事だ。各シューターが所属する射撃団体が親切なところは、所属するそれぞれのピストル・シューターに年度の初めに1年分の試合日程を送ってきてくれる場合がある。しかし、そんなことをやらない地方団体もある。そうなると各シューターは、日ラ発行の年間計画を有料で購入し、実施予定を調べなければならない。日ラはせっかくweb siteを持っているのだから,もっと会員向けに多くの情報を載せるべきではないかと思う。

 圧縮エアをAPのシリンダーに充填する方法は、ハンドポンプによる方法とダイビング用タンクから入れる方法の2種類がある。ハンドポンプは、自転車の手動空気入れのようなものだが、はるかに高い圧力で充填するので、その作業はかなりキツイ。それに大気中の水分を凝縮して入れてしまうので、銃を錆びさせる要因にもなりうる(対策として水抜きが出来るものもある)。しかし、日本では、このハンドポンプによる充填が主流らしい。
 
ダイビング用タンクから充填するには、アダプターを取り付け、エアピストルのシリンダーをねじ込む。そしてタンクの弁を開くと、一瞬にして200気圧近いエアーがチャージされる。ダイビング用タンクが空になったら、ダイビングショップに持って行って、タンクを預け、業者でチャージして貰わないといけない。しかしAPのシリンダーへのチャージは一瞬で終わるので、とても楽だ。
 写真のタンクは200気圧用の為、APのシリンダーに200気圧で充填することが出来ない。175気圧程度が限界だ。しかし、それでも実用上、全く問題はない。弾速も変わらない。違いが出るのは、発射可能弾数で、175気圧チャージでも200発は撃てる。

銃検査

 射撃場に付いたら、まず銃の検査がある。規定の箱(内寸 420×200×50mm)があり、その中に銃全体が収まるかどうかと、トリガーの重さのチェックがある。買った状態で、規格値より大きく、箱に収まらない、ということは通常はない。ISSFルールに適合したものをメーカーは製造しているからだ。しかし、グリップの感覚を改善しようと、パテなどをグリップに盛ったりすると、規定値を超えてしまう。そうすると規格の箱に収まらず、その場でヤスリでグリップを削る必要が出てくる。グリップを少し変えただけで,どれほどスコアを改善出来るか疑問もあるが、とにかく1点でもスコアを上げようと、ピストル・シューターはグリップをいじりたおす。パテを盛り、ダメなら削ってみる。削り過ぎたらまたパテを盛って整形し、また削る。かくしてグリップはツギハギだらけの満身創痍状態になる。

銃検査風景  銃検査を無事に終えたら、その日に使う標的が各自に渡される 
右上:規定の箱とトリガープルチェック用のトリガー・ウェイト。正確に500gとなっている。
右下:このようにして各シューターはトリガーにウェイトを引っ掛けて持ち上げる。ウェイトが僅かにでもテーブルから浮き上がればOKとなる。

 トリガープルの規定値は500g以上となっている。実用銃で500gなどという軽いトリガーを付けたら、撃った衝撃でシアーが外れて、フルオートマチックになってしまう。しかしエア・ピストルであれば500gは安全圏内だ。シューターは、少しでも軽いトリガーにしようと500g+アルファでセッテイングしている。
 検査では、エアピストルの銃口を上、グリップを下にして持ち、500gのオモリをトリガーに引っ掛ける。その状態で、オモリがわずかに持ち上がれば、審査官はオーケーを出す。シューターはそこで、ちょっと銃を上下に振動させるとオモリが振れてトリガーは落ちる。とにかくごく微妙なところにトリガーは調整されているわけだ。
 この銃検査が終わったあと、ひそかにトリガーを軽くして試合に臨むシューターがいる可能性もある。その為、一部のシューターには再チェックが行われる。試合中、ランダムに選ばれた数名のシューターに対して再チェックを示す印が置かれる。朝霞の場合は赤く塗られた単1型乾電池だ。
 射撃中のシューターからは見えない位置にこの印が置かれ、試合を撃ち終わったシューターに対して再度トリガーチェックが行われる。ここでもしトリガーが軽くなっていたら、そのシューターは失格となってしまう。

再チェックの対象として選ばれたシューターの後ろに置かれた赤い乾電池。誰を再チェックするかは、全くランダムに決められる。再チェックはトリガープルだけを見て、大きさのチェックはない。

 かつての人気機種、ステイヤーLP1は、射撃中にトリガープルが変化してしまうという評判があり、結構問題になった。故意でないのにトリガーが勝手に軽くなって失格してしまうというわけだ。しかし現行モデルのLP10は改善され,この問題はない。

服装とフォーム

 ライフル射撃競技は服装の規定が厳しい。射撃コート、射撃ジャケットと呼ばれる姿勢補助服を着用することが前提の為、著しく有利にならないよう着衣に関して細かい規則がある。
 一方、ピストル競技の場合、何らかの形で体を締め付け、有利になる加工が施していなければ、何を着ても基本的には問題ない。ライフル射撃で射撃ジャケットを着ていると、夏は猛烈に暑く、冬は非常に寒い。それを思うと、ピストル射撃は楽だ。気温に合った服装であればそれで良い。
 但し、靴については規定がある。くるぶしまで覆うような靴は駄目だ。日常履いている靴でも規定に合わない場合もある。
 試合の時は靴を履き替えるシューターも少なくない。単純な話として,底面が少しでもフラットであり、かつ硬いほうが有利だ。しかし,故意に大きな底面を持つ靴は規定違反となる。靴程度で,どれほど射撃が有利になるかわからない。しかし決まりは決まりなのだ。
 ピストル射撃競技をやってみると,片手で銃を保持することがいかに難しいということを痛感する。今時、実戦でピストルを撃つ場合、両手保持とする場合が多い。しかし、これは競技である。ルールで片手撃ちと決まっている。Eye level dueling stance, いわゆる決闘スタイルに近い。
 銃を構えていない方の手(通常は左手)はポケットに入れるか、腹部の位置に置き、指をベルトに引っ掛けておくことが一番安定すると言われている。腰に当てたり、だらんとたらしておくより、余分な力が掛からず、銃を持つ手(通常は右手)と体の安定に有効であるらしい。
 片手をポケットに入れながら射撃をする…実戦では、そんな不真面目な体勢で撃つ人はいない。しかしこれは競技なのだ。しかし全員が同じスタイルで撃っているわけではない。標的に対する身体の向き(足の位置)や上体の位置,銃を下ろした状態から持ち上げ,アイミング(aiming)までの動きなど射撃のフォームはかなり個人差が大きい。上級シューターも,決して同じフォームではない。
 ようするに自分が一番撃ちやすく,かつよく当たるフォームを見つければよい。答えは決してひとつではない。

競技進行

 標的に向いた方向にはテーブルとなる台がある。朝霞のそれは、単なる横板で、奥行きが非常に短い。そこに銃と弾のケースを置き、65枚(試射的5枚を含む)の標的を、1枚ずつ取りやすいように置く。さらに、後方のテーブルの上には所持許可証と射手手帳を置く。
 そうこうしているうちに、射場長から、「Preparation Begins, now」というコールがかかる。このコールがあったのち、初めて銃を構えてドライファイア(カラ撃ち)が出来る。エアピストルには、通常、ドライファイアモードが用意されていて、これに切り替えておけば、トリガーを引いてもエアーは出ない。試射的を手元の標的交換機にセットして、リールを手で回し、標的を10m先まで送り出す。
 そしてドライファイアを行い、競技開始に向けて、自分のコンディションを整える。
 10分間のプレパレーション・タイムが終了する時、「Preparation、stop」というコールが入る。銃をドライファイアモードから、ファイアリング・モードに切り替える。
 ここまでのコールは英語だったのに、ここからなぜか日本語になる。
 「ただいまより、 *季ピストル射撃大会 AP 第*射群の競技を行います。試射、本射前無制限、本射60発、1圏的1発撃ちこみ、競技時間1時間45分、ロード、スタート!」
 ローディング・ゲートを開いて、競技用4.5mm鉛弾を装填し、標的に向けて銃を構え、トリガーを引く。
 好天の日、屋外の射撃場であれば、標的に開いた4.5mmの弾痕が見える場合もある。良く見えない場合には、リールを回して、標的を手前に多少引き寄せれば、弾痕は見える。競技用エアの鉛弾はワッドカッター弾のため、キレイに穴が開く。
 試射に使えるのは、横に斜め線の入った試射的で5枚までだ。試射の状態が満足できたら、あるいはもうこれ以上試射しても状況に変化はないと思えたら、標的を本射的に交換する。試射的には、何発も撃ち込めたが、本射的は1枚1発だ。
 1発撃つたびにリールを回して標的を引き寄せ、標的を交換、そしてまたリールを回して標的を10m先に送りだす。慣れれば、大した事ではないが、標的を交換する作業は、面倒なものだ。
  今時、手動リールを使っているのは、世界広しといえども,先進国では日本だけ(それも朝霞だけ?)なのではないだろうか。このリール、たまに外れてしまうトラブルがある。基本的には電動が主流だ。
 標的は金属製の割り箸のようなものが左右にあり、そこに差し込む。これは電動交換機も同じだ。
 競技用の交換機は海外の室内射撃場によくある吊り下げ式標的交換機のように、標的をセットした状態で、左右にふらつくことはない。10m先で標的はしっかり固定され、原則的には揺れる事はない。

朝霞の手動式標的交換機  かなりの時代物だ。東京オリンピックの時はエア競技は無かったので、この交換機はその後に取り付けられたものだ。

 10枚撃ちおわると、それを1シリーズとして、10枚の標的に輪ゴムを掛けて、後方に投げておく。最初の10枚には、試射標的5枚もセットにして後方に投げる。既に本射に入ったのだから、もう試射することは許されない。そのためにも試射的を回収してしまうわけだ。後方に投げておいた標的は係員(大学の射撃部員が駆り出されて,これを担当する場合が多い)が回ってきて回収していく。
 標的10枚をまとめて、ゴムを掛け、後方に投げる際にはピストルを握る手を離すことになるが、その時もグリップから手を離したくなくて、片手で標的にゴムを掛け、後方に投げる器用な人もいるらしい。
 こだわる人は、足の位置も変えない。ベストと思えるポジションに足を置いたら、そこから絶対に足を動かさない。足の位置を変えずに60発、最長1時間45分立ち続けるのは、かなりツライと思うが…
 10発10的で1シリーズで、これを6シリーズまで繰り返し60発を撃つ。最高得点は600点だ。
 1時間45分の競技時間ギリギリまで粘って撃つシューターもいる。主に上級者だ。射場長は、残り10分の段階で、「Ten minutes, remain.」とコールする。
 その後、「5minites, remain」、「1 minute」, 「30 seconds」,と残り時間を伝え、1時間45分が経過したら「stop」のcallが掛かり、競技は終了する。

銃の変更

 エアピストルの所持許可申請の際に,どのモデルを購入するかを決める必要がある。射撃選手としての推薦の書類は,本人だけでなく,使用する銃もいっしょに組み合わさって出てくるからだ。申請中でまだ推薦書が発行される前であれば,モデルの変更は可能だ。また推薦書が出たあとでも,まだ銃を購入する前なら書き換えてもらうことは可能だが,これにはもう一度,理事会にかける必要があり,1〜2ヶ月待つ必要がある。また書き換え手数料も必要だ。
 ここで許可になるエアピストルは競技専用モデルに限定されるが,さらに推薦対象モデルというものも明確に規定されている。自分が欲しいと思っても,対象外のモデルでは許可はおりない。
 ドイツ,スイス,オーストリア等の主だったモデルは推薦の対象となっているので,あまり問題はないが,特殊なモデルを申請しようとした場合,結構手間が掛かるかもしれないし,推薦委員会を説得できるだけの理由も必要だ。いずれにしても,ここで競技銃として相応しくないと思われるモデルはrejectされる。
 そしていったん所持してしまうと,機種変更は難しい。実質的には3段を取得しないと2挺目の推薦は出ない。3段を取らないと2挺目は持てないのだ。最初に許可を得たエアピストルを返納して,新しいモデルに変更するということも出来ない。
 だから最初の1挺の選択は重要だ。新型が出たからといっても駄目だ。日本の場合,購入する前に試射することは出来ない。買って撃ってみたら,バランスが思ったほど良くなかったということもあるだろう。しかし,その時ではもう手遅れだ。結果として,3段を取るまで我慢するしかない。
 万一,まだ3段を取得していないシューターのエアピストルが故障し,修理不能となったら,どうなるのか。残念だが,そのシューターはその後,撃てないのだ。その段階で所持許可を返納するしかない。そして新たに推薦申請を出し,推薦が出たら新しい銃を買って出直しとなる。但し,それまでに取得していた段級はそのまま維持される。
 どうやら上級シューターの多くは,新型銃を次々導入しているように感じられる。試してみて,駄目なら新しいものにまた換える。競技者としての実績があるので,新しい銃の推薦も問題なく出るわけだ。
 上級シューターの多くが銃を頻繁に換えるのは,それだけ銃の良し悪し(銃との相性の良し悪し)が重要だからだ。少しでも良い結果の出るものを選ぼうというわけで,それは片手で銃を構えて,直径11.5mmの標的を撃つことがいかに難しいかということを表しているともいえる。


AP競技用弾。丸い缶はDynamit Nobel製 R10 AP用500発入り。\1,300程度。Safety-Boxと書かれた黒いものは、この丸缶が間違って開いてしまわないようにするカバー。通常丸缶は側面にシールを貼って封をしている。このシールが青いとAP用で黄色の場合はエアライフル用となっている。青いボックルは100発をキレイに並べて取り出し易いようにする箱

弾速

 競技用のエアピストルの威力はどの程度だろうか。非常にマイナーな機種だが,ワルサーLP200の弾速を測定してみた。マイナーではあるが,パワーに関しては,その他と同程度だ。
 使用した弾速計はOehler M35P、エアライフル用の簡易弾速測定器ではない。 測定ポイントが3ヶ所並んでおり、おそらく市販されている弾測測定器としては最も信頼性が高いものだ。銃口から約20cmの位置に第一の測定ポイントを置いた。おそらく最大初速が出ている地点だ。

10発測定した結果の値は以下の通り。
455, 455, 457, 456, 456, 456, 457, 457, 458, 462, 最大値462、最小値455 平均457fps, 標準偏差1.92となる
もう一度確認したところ
458, 451, 454, 457, 453, 456, 456, 454, 455, 457,となった 最大値458、最小値 451fps、平均455fps, 標準偏差 2.02だった。
 平均455fps, あるいは457fpsという初速をどう見るか。ちなみに22LR Lapua MIDASをライフルで撃った初速は1020fps程度,大口径ライフルの場合は,308で2700fps程度となる。エアピストルは、意外にも22LRの半分近い初速が出ている。
 だからといってエアピストルは22LRの半分ぐらいのパワーがあるというわけではない。
 パワーは弾速だけで決まるのではなく、弾頭の重量、形状、材質といった要素が加わってくる。アメリカ的にはここで銃口エネルギーを算出するところだが,今回はヨーロッパ的にジュールを使おう。

ジュール(J)の算出は,
弾速(m/s)の二乗×弾丸重量(g)÷2000

というものだ。口径の大小は直接考慮されておらず、弾丸重量に反映されている。
 エアピストルの弾側実測値 455fpsは138.679mだ。エアピストルの弾は7.7gr,グラム換算で0.5gだ。これでジュール値を算出すると,4.8Jとなる。余談だがエアライフルの弾は通常0.53gで、エアピストル用と比べて、わずか0.03gだけ重い。
 22LRの場合,弾速1020fpsは310.886mとなり,弾丸の重量は40gr.なので2.6gとなり,結果は125.6Jだ。
 参考値として,308Winの値も算出しよう。2700fpsは822.933m,168grは10.9g,すると3690.8Jとなる。
 ついでにグロック22で.40S&Wを撃った場合は,初速は1050fpsで、これは320.030m, 180grは11.7gで,計算結果は、599.2Jだ。
 比較値としてゴルフクラブをスイングした場合のパワーも算出してみよう。もっとも形状も大きさもまるで違うので、同じ次元で考える事は出来ない。あくまでも参考値として記しておく。
 ドライバーをスイングした場合、ボールへのインパクトの瞬間のヘッドスピードは概ね50m/s, ヘッドはチタニウムなど軽量の素材を使い、中は空洞であるため、見た目よりも軽く、200g程度のようだ。
 すると、値は250.0Jとなった。この数値を見る限り、ゴルフのドライバーをフルスイングしたときの衝撃は22LRよりだいぶ強力だ。
 ノックアウト・パワー・ファクター(KOPF)についても計算してみよう。KOPFは
弾丸重量(gr)×弾速(fps)×口径(inch)÷7000 によって求められる。

AP     7.7×455×0.177÷7000 =0.09
22LR    40×1020×0.22÷7000 =1.3
308Win  168×2700×0.3÷7000 =19.4
40S&W  180×1050×0.4÷7000 =10.8

 KOPFは口径が大きいと、大きな値が出る傾向があり、今回のような比較にはあまり馴染まない要素がある(308と40S&Wの値を比較すると御納得頂けるだろう)。しかしひとつの目安としては参考になる。

100発入りBoxへAP弾をセットする方法  箱のふたを開けて、左右にある黄色い突起を押し込んで固定する。するとAP弾がぴったりと収まる穴が100個出来る。丸缶からAP弾を100個取り出し、この箱に載せる。前後左右に箱を揺すると、AP弾がそれぞれの穴に収まっていく。上下逆さに入ることはない。全部収まったら、黄色い突起を押してロックを解除する。するとAP弾のスカート部分が出てきて、非常に取り出し易くなる。

競技用エアピストルには殺傷力があるのだろうか。これらの値だけで判断することは難しいが,至近距離であれば相手に怪我を負わせることは出来るだろう。小さな鉛弾であっても撃ち込まれれば,猛烈に痛いだろうし,身体にめり込むと思われる。しかし抵抗力を奪うというほど強烈ではない。
 人を死に至らしめる最小パワーの銃弾は25ACPだと仮定する。25ACPは97.5Jだ。これに対しエアピストルが4.8Jしかないということは、威力は非常に弱いといわざるを得ない。
 エアピストルで人を撃ったら相手は逆上し、反撃してくるだろう。連射が出来れば、事情は変るかもしれないが(それでもあまり期待出来ないが)、競技用は単発だ。2発目を撃つには、どんなに急いでも5秒は掛かる。普通はその前に相手に殴り倒されるのがオチだ。
 銃だから離れた距離から撃てる、と言われるかもしれない。しかし距離が離れれば、どんどん威力は落ちる。10mの距離を飛んだ後、エアピストル弾はおそらく紙の標的に穴を開けるのが精一杯というレベルだと思う。
 もちろん頭に当たると、事情はずいぶん違ってくるし、目に当たれば失明の可能性もあるので、危険性は十分ある。だから軽い気持ちで取り扱って良いものでは絶対にない。
 しかし最初に書いたように、エアピストルなどより、ゴルフクラブや野球のバッドのほうが、はるかに殺傷力は強く、武器として役にたつだろう。
 競技用のエアピストルは,武器と呼べるようなものではない。同時にオモチャでもない。
まぎれもなく射撃スポーツのための道具だといえる。


競技用のAP弾はWad-cutterなので、標的に非常にキレイな穴をあける。ちなみにこの弾痕は10点だ。X-pointからはわずかに外れている。

Wrap up

エアピストル競技は,ここまで書いてきたように,非常に地味なものだ。パワフルな銃が好きな人にとっては全く面白くないものかもしれない。しかし標的の中心を狙い,正確に撃つという射撃競技の基本を,少ない装備で楽しめる。
 わが国で,エアピストルを所持し,またそれを維持していくことは,簡単ではない。しかし,多少の努力を厭わなければ,この国でもピストル射撃を楽しむことが出来る。
 他のスポーツでは普通の人が全日本とか,全国大会といった競技会に参加することは難しい場合が多いだろう。ところがエアピストル競技は,所持しただけで,そのような大きな試合に参加出来,日本のトップシューターと並んで競技が出来る。まあ,これは競技人口が少ないからだが,考えようによっては,それも魅力的な部分と考えることも出来る。
 現状、500人という枠があるのでこれ以上の普及、競技人口の拡大は難しいが、すでに述べたように威力は非常に低く、所持許可人数の制限など、ほんとうは必要ないと思う。エアライフルと同程度の条件で、競技参加希望者には許可を与えてもよいはずだ。
 もちろん、エアピストルは小型で取りまわしが容易であるがゆえ、安全教育は徹底的に厳しく行うべきだ。射座に着くまで、そして着いてからも含め、射撃動作およびプレパレーションに入るまでは、常にローディングゲートをオープンにし、トリガーには絶対指をかけてはいけない。またいかなる時も(たとえ銃がカラだとしても)、絶対に人に銃口を向けてはいけない。こういう基本的安全操作を徹底すれば、ほとんどの事故は防げる。
 エアピストル射撃はもっと門戸を広げても良いはずだ。

May 13, 2004
Revise May 14, 2004
Satoshi Maoka

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