佐世保乱射事件をきっかけに、銃規制強化が叫ばれて約4ヶ月が経過した。
 日本の銃規制は、極めて厳しく、銃はだれでも簡単に所持できるものではない。
 佐世保の事件の容疑者は、銃を所持し続けることは不適切であると判断するに足る問題が報告されていたにも関わらず、銃所持許可の更新が認められていた。これは銃規制が不十分であったというより、許可および更新手続きが適切におこなわれていなかったことが問題だったといえる。
 しかし、あの事件に過剰反応したマスメディアの一部は、あたかも日本中に危険な銃が無管理状態で蔓延しているような、事実に反する報道を続けた。その結果、銃規制強化は社会的コンセンサスとなった。
 警察庁は“17万人/30万丁・総点検”をおこない、許可銃に対する個別訪問を実施中で、銃所持許可行政の厳格化を打ち出している。
 その一環として、2008年3月27日、“猟銃用火薬類の厳格な監督取締まりについて”という、新たな通達が警察庁生活安全局生活環境課長名で発信された。

 猟銃用火薬類等譲受許可は、合法的に銃を所持する者が、弾薬(装弾)、発射火薬、プライマー(雷管)等を購入する際に必要なものだ。
 従来の猟銃用火薬類等譲受許可証は、一個人に1回で許可される数量は数千発だった。多少の差はあるかもしれないが、普通は2,000発前後だ。この許可証の有効期限は、通常1年である。
 使用実績が多いシューターは、希望すれば10,000発までの譲受許可を貰える場合もあった。
 クレー射撃に本格的に打ち込んでいるシューターの場合、10,000発も数ヶ月で使い切る。許可証の有効期限は1年だが、使い切ってしまえば、譲受等許可証を返納し、また新たに申請する。
 ライフルの場合、10,000発を1年で消費するシューターは稀だ。しかし、国体選手クラスになれば、その程度は消費する。
 ほとんどの一般シューターの場合、申請は年1回で済んだ。各自、1年で使うであろう数量をやや多めにして申請していたからだ。
 その状況は今回の通達で大きく変わることになる。

 今回の通達で、猟銃用火薬類等譲受許可証発行に関する変更点は、要約すると以下のようになる。

1.消費等計画書を作成して提出する。
 これには購入の予定時期、予定数量、予定場所(銃砲店等の具体的名称)、消費の予定時期、予定数量、予定場所(射撃場の具体的名称)、ハンドロードの場合には、その予定時期、予定場所(自宅)、予定数量、申請時に自宅保管している弾薬数、次回の譲受申請時期等を記載する。
 複数の猟銃を所有している場合は、どの猟銃を使用するかを明確にする。

2.前回の火薬類等譲受許可証発行以降の消費実績を報告する。
 これは指定射撃場、日本ライフル射撃協会、日本近代五種・バイアスロン連合、日本クレー射撃協会等による証明書類等の提示、またはコピーの提出によっておこなわれる。

3.前回の火薬類等譲受許可証を確認し、火薬類の購入実績を確認する。

4.火薬類の保管に関して、適切な保管をおこなっていないと判断した場合、個人宅に対して立ち入り検査を実施する

5.1回の譲受等許可証の許可数量の上限は、原則的に、火薬庫外貯蔵の上限数値である800発とする。
 過去にじゅうぶんな使用実績があり、かつ射撃大会の選手である等の理由によって短期間の大量の弾薬を使用する予定のある場合は、この上限を超えた譲受等許可証の発行を受けることもできる。
 この場合であっても、許可の上限は特別な理由がない限り5,000個とする。
6.譲受許可証の有効期限は、消費等計画書の内容に応じた期間とする。これは消費計画書を確認して判断する。
 火薬庫外貯蔵の上限数値である800発を超えた数量を許可する場合は、短期間に大量に消費することを理由として許可するのであって、その期間を対象とすることから、有効期間は長くても3ヶ月から6ヶ月となる。

以上である。

問題は、消費等計画書だ。プライベートなスケジュールを厳格に管理している人は少ない。射撃大会等、日時の定まっているイベントは問題ないが、今後は購入時期や射撃をおこなう時期を事前に決めておかなければならない。
 火薬類等譲受許可証申請直後の購入する日は、かなり正確に特定しなければならないと思われる。その後の最初の使用時期も同様だ。
 それ以降の購入(またはハンドロード)、消費(射撃)時期は、何月の上旬、中旬、下旬といった予定時期を記入すれば良い。
 購入の場所や射撃場も記入する。これらは固定されている場合なら問題ないが、複数の射撃場や銃砲店を使っている場合は、予測を立てて記入せざるを得ない。
 何月のどの時期に、どこの銃砲店で何発購入し(あるいは、自宅で何発ハンドロードし)、何月のどの時期に、どこの射撃場で何発消費するかを書くわけだ。
 消費(射撃)するより、何週間も前に弾薬を購入することに関しては、何らかの指導が加わるかもしれない。「もっと直前に買いなさい(あるいは、ハンドロードしなさい)」となる可能性もある。
また購入する数量に関しても、指導があるかもしれない。
 すなわち、500発購入して、翌週200発を消費、300発を自宅保管として、その次の消費(射撃)予定は6ヵ月後というのでは、ダメなのではないだろうか。200発を消費する予定なら、200発を買いなさいというわけだ。ショットガンの装弾は、通常500発単位で買う場合が多い。射撃場で買う場合はもっと少ない単位となるが、銃砲店によっては、少数購入の客を嫌がる場合もある。台帳への記載が面倒だからだ。また500発単位で買うと割引となる場合もある。
 しかし、今後はそういうわけには行かなくなるだろう。

日本ライフル射撃協会は、数千発の譲受等許可証を必要とするナショナルチームおよびその候補、国体選手およびその候補には、推薦書を加盟団体から出すといっている。これはすなわち日本ライフル射撃協会の会員証だけでは、数千発の譲受等許可証は貰えないという事なのだろう。
 おそらく日本クレー射撃協会等も同じような書類を発効するものと思われる。
 日ラ, 日クレからの推薦書を得ても、譲受等許可証に記載される数量は特別な事情がない限り上限は5000発だ。射撃団体等からの推薦書が無くても、相当数の射撃実績があれば、800発を越える数量を、譲受等許可証に記載して貰えるはずだ。少なくとも、警察庁の通達を読む限り、大丈夫なはずだ。
 しかし通達では、800発を越えて許可されるのは、試合や合宿で短期的に大量に消費する必要がある為であるから、その期間は長くても3ヵ月から6ヵ月だとなっている。すなわち5,000発, 有効期限1年という譲受許可証は原則として無いことになる。
 一部には、火薬類譲受許可証の期限を一律3ヵ月にした所轄署もあるらしい。これは通達の文面を正しく読みとっていないことから生じた間違いであろう。通達を正しく読めば、通常の数量、すなわち火薬後外保管が認められる上限の800発以内で、その購入消費が1年間適切に計画されていれば、1年有効の譲受等許可証にすることは問題が無いことが判るはずだ。
 日ラが4月2日に出した “猟銃用火薬類の譲受許可について”というレターには、消費等計画書の記入例が載っており、そこで書かれているものは、2,000発の購入計画だ。
 ただ、どうであれ譲受等許可証の発行依頼に所轄署に足を運ぶ回数は確実に増えることは間違いが無い。年間4,000発消費するシューターは、800発づつの許可証とした場合、5回申請に行かなければならない。800発を越える許可証を獲得しても、その有効期間が最長6ヵ月となるならば、年2回は許可申請にいかなければならない。
 年間の消費数が800発以下というシューターのみ、1年間の購入消費計画を明確に出して年1回の許可申請で終わるわけだ。
 火薬類等譲受許可証の発行申請は、平日の定時間のみだ。土日夜間は受け付けてくれない。また担当者が不在の場合も認められない。申請には1回に付き、\3,500-を支払う。
 平日の定時間に所轄署に足を運ぶことは、一般の会社員にとって難しい場合が多い。銃所持に関して、所轄署に行かなければならないことは少なくない。火薬類等譲受許可証の発行申請以外にも、新規の所持許可申請や3年毎の更新でも所轄署に行かなくてはならない。

 火薬類等譲受許可証の発行申請に行く回数が増えることは、一般の会社員には辛いことだ。
 次回の譲受等許可証申請時には、前回提出した消費等計画書がその通り実行されたかをチェックされる。
 購入実績は、前回の譲受等許可証に記載されている。消費の実績はどう証明するか。クレーのスコアカード、射撃場の領収書等でも証明は出来るだろう。
 日ラは従来の射手手帳に代えて、新しい射手手帳を作成、これに消費実績を記載することができるようにしようとしている。おそらく射撃場の印鑑等が必要になると思われる。
 この新しい射手手帳は4月上旬から発行するとしているが、まだ誰も受け取っていない。日ラ系の客がほとんどを占める恵比寿のライフルショップ エニスにも届いていない。
 計画書に記載した購入消費予定と、実際の購入、消費日および数量が大きく違うとどうなるのか。

 その場合、次回の許可数量に影響が出る可能性もある。そのあたりは、生活安全課の担当者の判断に委ねられるようだ。
 日程の多少のズレは許されると思うが、消費予定が大幅に狂い、消費数が少なかった場合、次回に許可される数量に影響するようだ。前回、800発許可になったのに、今回は実績に基づいて400発に減らされる可能性がある。

 散弾、センターファイア・ライフル、リムファイア・ライフルの全てを持っているシューターは、それぞれの弾薬の購入(ハンドロード)計画と消費計画を全て立てて、消費等計画書にまとめなければならない。複数の銃を持っていれば、それぞれどの銃を使うかも記入しなければならない。
 プライマー(雷管)やパウダー(火薬)の数量、上限については、今回の通達には記載が無い。プライマーやパウダーは、そのままでは弾薬ではないので、あまり問題視はされていないと推測する。

 射撃実績の提出は、特に問題は無いと思う。スコアカードや射手手帳がその実績を証明するものとしたならばだ。ライフル射撃やスラッグ射撃の場合、発射数を正確に証明することはできない。クレー射撃でもトラップ射撃の場合、スコアカードだけでは発射数は倍程度の誤差が生じる。
 証明の手段はないが、各自、その日に何発射撃したかを明確に記録しておかなければならないだろう。ライフル射撃は簡単に数えられるが、クレー射撃の場合は、“持ち出した数量”マイナス“持ち帰った数量”プラス“射撃場で購入した数量”が、その日の使用数だ。
 立ち入り検査は、そのシューターが火薬類の保管を適切におこなっていないという情報を警察が察知した場合、実施されるらしい。どのような形でそういう情報が警察に伝わるのかはよく判らない。
 捜査令状をとった家宅捜索ではなく、あくまでも調査に赴くといったイメージだが、拒否することは得策ではないだろう。逆に家宅捜索ではないため、たんなる風評といったことだけでも、立ち入り検査は可能だと思われる。火薬類等譲受許可証の発行を何度も要求しているが、実際に射撃を行なっている気配がないと判断されるようなことがあれば、立ち入り調査を受けるだろう。
 どのような運用になるか良く判らないが、間違ったことをしていなければ、何も恐れることは無いだろう。

 火薬類等譲受許可証の申請に所轄書に足を運ぶ回数が増えることは嬉しいことではない。今回の通達で、射撃を楽しむためのハードルがまた高くなったと感じる。
今回の通達が、銃を使った犯罪の発生を防止することに、どれだけ効果があるかとなると、かなり疑問だと言わざるを得ない。しかし、銃を所持した後も、常に警察は所持者が適切に銃を使用しているかのチェックを怠っていないという意味では有効だろう。虚偽の申請をすることも可能だろうが、それが虚偽であることが発覚した場合、所持許可が取り消される可能性は高い。そういった圧力は、通常では犯罪発生の抑止力になる。犯罪者には、この常識が通用しないことが、問題を複雑にしている。
 銃および弾薬は、適切に保管、管理することが、銃を持つものに課せられた当然の義務だ。そして所持許可を得た目的に活用することも、所持者の義務である。
 合法的に銃を所持している私達は、この義務を果たさなければならない。

今回の通達は、Googleで、“警察庁 火薬類等譲受”で検索をかけると、警察庁のsiteにあるPDFファイルを見ることができる。Yahoo で同じキーワードで検索しても出てこない。

Apr.22, 2008

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