散弾銃を所持して10年が経過した。長かったのは間違いないが、振り返れば、アッという間に10年が過ぎたとも言える。年齢を重ねるたびに経過した時間を早く感じるのは、多くの人に共通することだろう。
 装薬銃所持連続10年で、私もついにライフルを所持出来るようになった。
 私は昔からライフルが欲しかった。散弾銃の世界にどっぷりと漬かる前に、日本ライフル射撃協会に所属してエアライフル競技をおこなっていた時期もあった。しかし途中で挫折した。そしてクレー射撃を始めたのだ。
 数年前、このサイトの主宰者であるMaoka氏と知り合った。彼は日ラの推薦を得て、ライフル射撃競技をやっている。大口径ライフルを所持する彼を見て、私は正直なところ、うらやましく思っていた。日ラを止めてしまわなければ、私もとっくに大口径ライフルを持てたはずだ。
 しかし、私にもやっとライフルを持てる日が来た。10年という歳月は、やっぱり長かったというべきだろう。
 ライフルにはスコープを載せたい。スコープのクロスヘアを標的に重ねる、これがライフル射撃の醍醐味だと私は思う(マイクロサイトやアイアンサイトで撃つ人、ゴメンナサイ)。
 雌伏?10年という時間の間に、スラッグ射撃も多少、かじっていた。だから、スコープは持っていた。しかし本格的に精度を追求していたわけではない。お遊びでデカい標的を撃っていたので、使ってきたのは安物スコープばかりだ。
 だから私はスコープに関して素人も同然である。そんな自分がスコープを真剣に考え、迷走し、コレだ!と言う物に巡り会うまでのドタバタ話。それが、私同様に10年年季明けでライフル射撃を始めるビギナーの方の参考になればということで、Shooting Tipsに記事を載せて頂くこととなった。

 初めて買ったライフルは、弱装弾を使うセミオートマチック・ライフルだった。
 たまたまスナイパースコープと称するものをショップで見かけた。X社の製品で、その形がカッコ良かった。ただそれだけの理由で購入を決めた。対物レンズ径40mm、倍率は6倍固定だ。ミリタリー規格品だという。過度な期待もしなかったが、一応、名前は通っているブランドだ。比較的低価格であったが特に心配はしていなかった。スコープとして使えれば、それで良い(格好も良いし…)。
 レティクルにはレンジファインダーという測距機能が付いていた。ここにも大いにそそられた部分だ。きっと実用性はないのだろうが、銃は実用性だけでは語れないものだ。
 しかし、このスコープとの蜜月期間は短かった。3〜4回射撃に使ったあと、どうもレンズが曇っていることに気が付いたのだ。拭いても消えない。どうも中の方が曇っているようだ。しかし、よーく見ると、とんでもない事態になっていることに気が付いた。
 曇っているのではなく、なにか粉のような物が接眼レンズの内側に付着しているのだ。なんだ!?と思いながらも、使っていると、今度は何か1ミリ弱の小さい物が接眼レンズの内側に転がっているではないか。よく見ると、ガラスのカケラだ。
 正体不明の粉はレンズの縁が割れて粉末化した物だったのだ!更に注意深く中を観察すると、接眼レンズ側から2枚目のレンズの外周が欠けているのが分かった。何故だ!ぶつけた覚えは全くない。外観にも使用痕程度の擦り傷が有るのみだ。全く身に覚えがない。
 非常にがっかりしたが、工業製品なら不良品が流通してしまうのは、一定の確率で致し方ないことだ。早速、問い合わせたところ修理をして頂けるというので(当たり前だ!)、修理に出した。当然修理は無償だ。
 しかし、修理中、待っていられないのでLeupoldのVari-X I 3-9×40mmを購入した。Vari-X Iといえば、Leupoldのズームスコープとしては、最廉価モデルだ。しかし、これは、今まで持ったことのあるどのスコープより像がクリアーでシャープだ。
 ズーミングによる狙点の狂いも殆どない(というか、気付かないだけかもしれない。ボアサイターを用いても、変化は目で見た限り、殆ど判らない)。
 Leupoldは主に、代理店経由地元銃砲店扱いと,某有名通販店との2ルートがある。勿論、某有名通販店の方が表示価格は安いが、代理店経由の品はフリップレンズキャップが付いていて、平行品には付いていない。正規品も少しは値引きしてくれるので、加えて、送料、振り込み料を考えると必ずしも平行品が安い訳ではない。値段にシビアな人は、よく調査する方が良いだろう。
 ちょっと話は脱線するが、決して、倍率や対物レンズ径は光学製品の善し悪しを表す物ではない。カメラとか天体観測に興味の有る方ならご存じだろうが、色収差という物とレンズとは切っても切れない関係がある。
 小学校のときに理科でやった記憶がある方もいらっしゃると思うのだが、プリズムという三角柱のガラスに光りを通すと、7色に光りが分かれるって言う実験だ。あれは色によって屈折率が違うと言うことを確認する実験である。光学製品の善し悪しは、如何にしてこの色収差が少なくしてあるか、なおかつ、透明度が高い事だと思う。
 レンズの中心部というのは余りこの色収差がでないが、縁に行けば行くほど、顕著になってくるので、望遠鏡やカメラレンズの類は中心部より縁ほど、その製品の真価を表してしてくる。
 セミオートマチックライフルに続いて、ボルトアクション・ライフルを購入した。私は長距離射撃に憧れていたのだ(日本の射撃場では300mが限界だ。諸外国の基準では300mは長距離ではないようだが…)。
 そこで再びX社の36倍ターゲットスコープを買った。高倍率スコープはやっぱり良い。6倍や9倍の世界とは格段に違う画像に私は単純に喜んだ(倍率がデカいので、大きく見えるのは当たり前だ)。それによく当たった。セミオートマチック・ライフルの精度は今ひとつだったが、さすがにボルトアクションのヘビーバレルだ。高倍率スコープであることも、少なからず貢献していると思う。
 壊れたX社製スナイパー・スコープも、すでに修理は完了していたが、しばらく出番が無かった。セミオートマチック・ライフルにはLeupoldが付いて一応満足している。しかしやっぱり派手な外観のスナイパースコープの魅力も捨てがたい。そこで再びセミオートマチック・ライフルに、このスナイパースコープを載せた。
 そして2〜3回撃ちに行った後、またもや接眼レンズ内に破片を発見した。同じ故障だ。よくよく見ると、前回、破損したレンズはあちこちで縁が剥離欠損している。どうやら、前回の修理は胴内の異物を除去し、ガスを封入し直しただけのようだ。また修理に出すのも面倒だ。ろくな修理は期待できない。このスコープはもう見限ることにした。
 しかし、納得が行かない。猟場で強打したこともないし、思い当たる節が全くない。自然にレンズが剥離欠損したとしか思えないのだ。これでミリタリー規格とは恐れ入った。これがミリタリー規格なら、兵士は任務を遂行することは難しいだろう。これじゃ、ミリタリー<規格>ではなく、ミリタリー<企画>だ。
 この2度目のトラブルが先だったら同じメーカーの36倍スコープは、たぶん買わなかっただろう・・・・。
 ケチが付きはじめると、どうにもX社製品に懐疑的になってくる。

上左 Nightforce, 上右 Leupold,  左 Weaver

 知人の持っているウェーバー 36Xを見せてもらったところ、なんだかウェーバーのほうがクリアな画像だ。
 X社製スコープで、自宅のベランダからあちこちを見てみた(銃から外して見た)。50〜60m位先にある道路の向こう側の自動販売機の銘柄が判別しにくい。見えるのだがクリアさに欠けるのだ。
 別の機会にMaoka氏にナイトフォース NXS 3.5-15×50と、Leupold Vari-X III ロングレンジ・タクティカルM1 8.5-25×50を見せて貰った。違う。全然違うのだ。どちらもX社製36倍より、格段にクリアだ。
 ナイトフォース NXSも、Leupold Vari-X III ロングレンジ・タクティカル M1も高価だ。銃よりも高い。どちらのスコープもX社の36倍を買う前に候補として上がった。しかしこの価格がネックになって見送ってしまった。
 ちょっと、高価なものになるとスパッと買えない。そのくせ、妥協して選んだものが気に入らないと、どうにも我慢が出来なくなる。優柔不断な自分の性格が恨めしかった。結局、余計にお金がかかってしまう。
 結構悩んだのだが、どちらも買えない金額ではない。「人生一度だし、欲しい物で買える物は買ってしまおう」と、自分で自分に言い訳をした。
 ナイトフォースの格好の良さは非常に魅力的だ。しかしMaoka氏からはLeupoldを勧められた。ナイトフォース NXSで15倍を越える高倍率スコープは対物レンズ径が56mmになる。これではスコープリングを背の高いものにしないといけなくなる。結果としてLeupoldを選択した。
 最近、アメリカの輸出規制で、スコープを個人輸入することが面倒になってきた。早く欲しかったし、違う物が送られてくると面倒だし…、そんなわけで普段の付き合いの店から買った。
 米国での実売価格が$1000前後で、国内では正規代理店の設定価格が18万円だ。
 買ったモデルは、Maoka氏のものと全く同じLeupold Vari-XIII ロングレンジ・タクティカルM1 8.5-25x50mmだ。
 個人輸入よりは高くついたが、少しは値引きもしてくれた(Maoka氏は個人輸入だそうだ)。まぁ、手間暇考えれば、仕方がないかなと言う値段だったので、良しとしておこう。
 注文した数日後、入荷の連絡を貰い、店で受け取りに行くと、店長が「これ、先に検品として見させて貰ったけど、高いだけあって凄く良いよ!」という。
 「そりゃそうだろうよ。この値段で、良くなかったら激怒もんだぜ!」と内心思う。
  しばらく雑談して、スコープとリングを受取り、店を後にした。(胴径30mmのスコープも初めてだ)LEUPOLDのブランド名が入ったバトラークリークキャップが付いていたのがちょっと嬉しい。
 早速家に帰って試してみる。勿論、撃つ気はなくても銃に付けて外を狙う訳には行かない。スコープで外を見るだけでも、覗き変質者と間違えられる可能性があるので、隙間から、例の自動販売機を見てみる。手持ちでは揺れて何だか分からないので、三脚にビニールテープで固定してみた(例の36×も、そうしていた)
 倍率は最大で25×とX社の36×スコープよりは低い倍率だ。だが、36×で判別しにくかった自販機の飲み物の銘柄がハッキリと分かる。
 販売機の見本棚の透明な樹脂部分の質感がわかる。クッキリしかもクリアに見える。自販機の照明ランプも視野内の縁でも殆ど滲んでいない。Vari-X I購入時もシャープさとクリアさに驚いたが今回のロングレンジM1にも感嘆した。
 スコープから覗いた画像を撮ってみた。同じ条件で取ったのだが、実際に見える感じ以上の差が、画像には出てしまった。何度やってもこうなってしまうのだが、悪意を持って撮影条件を変えたりは、決してしていない。写真にした場合の画質劣化はスコープの問題に加えて、カメラのレンズの収差などが加算されてしまうためだ。実際にはここまで悪くはない。しかしLeupoldとX社の製品に差があることはお判り頂けるだろう。

 左がLeupold Vari-X III Tactical M1 25倍、右がX社製36倍ターゲット・スコープ
実際に裸眼でスコープを覗いて見える像は、明らかに差があるが、この画像ほど大きな差ではない。これはカメラ側レンズの問題が、スコープの問題に加算されてしまうことによるものだ。

 価格差からすれば、前述の36×スコープとロングレンジM1は定価が3倍違う。今回痛切に感じたのは、「スコープはケチるな」である。同時に、ベースやリングも安物はやめた方が良い。
 高価と思われがちなLeuppoldだが、予算に応じてVari-X I クラスなら3万円台から、上級クラスのVari-X IIIも10万位から、最高級クラスでも20万円以下である(一部を除く)。
 ただ撃てればいい、と言う方にLeupoldを、ましてはロングレンジM1など勧めない。だが、納得いく物が欲しい人、結果を求める人、少しでも快適に撃ちたい人、少し予算が多く取れるなら、Leupoldを私ならお勧めする。



 “ライフル初心者のスコープ選び” これからライフル射撃を始める方に、少しでも参考になれば幸いである。Maoka氏が初めて買ったスコープはタスコのズームで格安の$89だったそうだ。その後、ブッシュネルズ, Leupold, ニコン, ウェーバー, ナイトフォースと9本のスコープを買ったという。彼もまた迷走をしてきたようだ。結局、満足出来るものを見つけるまでには段階を踏むことが必要なのかもしれない。

(補足: 問題のあったX社のスコープだが、アメリカ市場での評価は決して悪くない。撃っているだけでレンズが欠けてくるなどといったトラブルも聞いたことがない。また妙に甘い像であるといった悪評もない。今回、T.Nagamoto氏が運悪く購入してしまったものは不良品であり、市場に出ている同型製品では同じ問題はないハズだ。もちろん、不良品が出荷されてしまったということは大きな問題である。 Satoshi Maoka)

Feb.9, 2004  By Takuya Nagamoto

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