|
2005年11月26日掲載
2005年夏ごろ、某BBSを見ていたら、“銃所持更新及び新規所持の際、警察に提出する医師の診断書の書式が変わったのでご注意を”、という趣旨の書き込みがあるのを発見した。
某BBSと書いているが、どこのBBSか忘れてしまったというのが正直なところだ。私は多数のサイトを見ているわけではないので、どこのBBSだったか概ね判るのだが、すでにその記述は消えているらしく確認ができない。
そして,そのBBSには具体的にどこが変わったのかは言及されていなかった。
もし、診断書の書式が変わったことが真実なら、そのうちまた新しい情報が入ってくるだろうと思い、そのときは殆ど気にかけなかった。ところがその後、一向に新しい情報は入ってこなかった。
銃の所持許可の更新は通常、3年に一度だ。しかし複数の銃を持っている場合、更新の頻度は高くなる可能性がある。1銃1許可制のためだ。
私は毎年更新手続きをおこなっている。購入時期を調整して、更新が3年に1度になるように合わせると便利だ、という話を昔聞いたが、銃を欲しいと思うタイミングが3年に1度というわけではない。
それに複数の銃を所持している場合、更新のタイミングを一致させない方が良いという考え方もある。3年に一度であると、うっかり更新を忘れる可能性がある。銃の場合、うっかり忘れた、というexcuseは受け入れて貰えない。
しかし毎年更新であれば、うっかり忘れる可能性はずっと減る。それを実践したというわけではないが、とにかく私は毎年更新となった。
更新時に必要な書類のひとつに医師の診断書がある。他の書類は自分で記入したり、射撃をおこなうことで、手に入れられるものばかり(顔写真は別)だが、医師の診断書だけは自分で書くことはできない。
医師の診断書が必要になったのは、40年前の1965年7月15日からだ。このとき、銃刀法が改正され、その結果として銃を購入しようとする場合、精神病でない事を証明する医師の診断書と、住民票を提出する事になった。
この規制強化がおこなわれた直接の原因は同年2月、名古屋で起きた猟銃乱射事件、通称“西村事件”にある。名古屋にあった映画館“志賀東映”に支配人代理として勤務していた西村貞助は、その映画館の裏にあった喫茶店“ゆり”にショットガンで銃弾を撃ち込んで逮捕された。
この時使用したショットガンは、この西村貞助が正規の所持許可を受け所持したばかりのものだった。逮捕後、この西村貞助は前年に精神分裂症(当時の呼称)で治療を受けており、感情的で暴力をふるい易い傾向にあったことが判明した。
精神分裂症であったにも関わらず銃器所持許可を申請し、銃を所持できたことが大きな問題となった。
西村は精神病の治療を受けた後、住所を変えた為、警察の担当者が調査した範囲では西村の病歴が確認できず、警察は所持許可を与えてしまった。
その結果、引越しの有無を確認する意味で住民票と、精神的な病気を持っていないことを証明する目的で医師の診断書が必要になった。
この1965年の銃刀法改正にあたり、モデルガンメーカーであった日本MGC協会は、モデルガンを購入するお客様から住民票を提出してもらうようにした。同年7月1日に発売になったブローニング380(ブラゥニングM1910)からだ。
住民票提出を求める理由としてMGCは、モデルガンを悪用せず、正しく扱うことをユーザーに求めるという意味で実施したと説明している。
若干前後するが、実銃の購入に住民票が必要になったのと、概ね同時だ。モデルガンは実銃ではない。模型だ。模型を買うのに住民票という公的機関の発行する証明書を提出せよ、というのはなんとも大げさな話と感じる。しかしMGCは本気だった。
当時、MGC製品を販売していた小売店からは不満が出たようだが、MGCは住民票提出を小売店にも求めた。同時に18歳未満には売らない、という方針も打ち出した。
それから1ヶ月後の8月1日、MGCは上野に直営店MGCボンドショップを開店、これには上野アメ横にあった他の小売店が一斉に反発した。それまでMGCは製造卸に特化し、中田商店や江原商店、マルホコルト商会(堀内商店)、ホビース商会といった店が小売りという形で棲み分けができていたが、これが崩れたことで両者の間で溝が深まった。
MGCは文句があるなら商品を卸さないと強気の姿勢を崩さず、小売店側はMGCとの関係を解消した。しかし、モデルガンは事実上MGC製がほとんどだったことから、小売店側は急遽、中田商店にいた六人部登に無稼動モデルを製造させ、急場をしのぐと共に、ワルサーPPK、ブローニング380等MGC製品をデッドコピーした商品をオリジナル・モデルガンとして製造販売した。1970年代半ばまで、他社製品をそのままコピーした商品が、大手を振って流通していたのは、こんな対立がキッカケだった。
また六人部登に、MGCのコピーではない本当のオリジナル・モデルガンの設計を依頼した。1965年9月,江原商店改め、東京CMCがコルト・ガバメントの製作を発表した。これが反MGC陣営の設計製造した最初の本格的オリジナル・モデルガンだ。
MGCは18歳未満にはモデルガンを販売しないという方針は引っ込めたものの、住民票の提出はそのまま継続した。
住民票 提出にどれだけの意味があったのかはよく判らない。これを持って身元調査するのであれば、住所を確認するという目的に使える。しかしMGCはそんな調査を行うわけではない。住民票の提出にどれほどの意味があったのか、かなり疑問が残る。しかしこの制度は1971年、金属製モデルガンが銃口を閉塞され、表面を白、または黄色に塗られることになる、いわゆる昭和46年規制がスタートするまで続いた。
|
それから40年、診断書の記載事項が変わったのであれば、正しい記載事項の診断書を貰わなくてはならない。もし旧記載事項のままの診断書を医師から貰って、所轄署に更新に行ったら、それを指摘されて再度診断書の取り直しになるかもしれない。それはとても面倒だ。
記載事項に関する新しい情報が一向に入ってこなかったので、所轄署の生活安全課に電話し、担当者に問い合わせてみた。
「私はもうすぐ更新なのですが、今年から医師の診断書の書式が変わったと言うウワサを聞ききました。どのように変わったのでしょうか?」
「あぁ、前にも同じ質問をしてきた人がいたので、調べてみたのですが、よくわからないですよね。聞いてみたら(たぶん本庁に聞いたのだろう)、医者の方に連絡してあるから、医者が出す診断書が最新だっていう話でした」
「はぁ…」
「いいですよ。医者から貰った診断書で。それが最新だそうですから」
けっこう大雑把な話だ。
現実問題として、医師の診断書にはいろいろな書式がある。
免許取得に際し、診断書が必要になるものは、スキューバ・ダイビングのインストラクター資格取得や、医師、薬剤師、歯科技工士などの厚生労働大臣免許、調理師、ふぐ処理師などいろいろある。
それぞれに対して、診断書の記載事項として何か必要なのか、医師は正確に把握しているのだろうか。メジャーな免許であれば時々需要があり、医師も把握できているだろうが、残念ながら銃所持許可はマイナーな分野だ(ふぐ処理師より多いかもしれないが)。
私が最初に銃所持許可申請の為に医師の診断書を貰ったのは、15年前のことだ。それから数年後よりほぼ毎年、診断書を必要とし、現在までに4人の医師に診断書を貰ってきたが、銃所持用の診断書の記載必要事項を予め認識していた医師は一人しかいなかった。
本庁?への所轄担当者がおこなった問い合わせに対する回答は、記載必要事項は医者に伝えてある、というのだ。従来はなかったが、最近になって警察から全国医師会等に案内が送られているのだろうか?でも、そんなことは考えにくい。
従来、銃所持および更新に必要な記載事項は、精神病者、精神薄弱症、アルコール、麻薬、大麻、あへん、覚せい剤の中毒者ではないということを証明するという事だった。診断書を貰うに当たって、この事を証明して欲しい、と医師に依頼する。これらを網羅してあれば診断書として有効だった。
記載事項変更が事実であれば、どこが変わったか確認し、それを医師に伝えて、それを含めて、問題がないことを証明して貰わなければならない。
警視庁のweb siteを確認してみた。親切なことに、詳しく所持許可申請手続きに関しての記述がある。しかし診断書の書式や記載事項についての記述はない。
しかし、欠格事項は載っている。人に関するものとしては、
1.一定の年齢に達していない者(猟銃は20歳、空気銃は18歳)。ただし日本体育協会等から推薦を受けた場合(猟銃は18歳、空気銃は14歳)。
2.精神病者、アルコール、麻薬、大麻、あへん若しくは覚せい剤の中毒者又は心神耗弱者。
3.住居の定まらない者。
4.公共の安全を害するおそれがあると認められる者等
とある。この第2項が診断書に必要な項目のように思える。この内容は従来とまったく変わらない。
また猟銃等講習会の日程として、初心者講習会、経験者講習会の日程がある。
各種の申請書がDown loadできるようになっているが、銃関係はない。
では警察庁はどうだろうか。警察庁のweb siteには銃所持手続き関係の記述は無いようだ。
神奈川県警のsiteにも、銃所持手続き関係の記述は無い。
埼玉県警のsiteでは銃所持の欠格事項として、次のように記載されている。
・精神障害又は発作による意識障害をもたらし、その他銃砲又は刀剣類の適正な取扱いに支障を及ぼす恐れがある病気として政令で定めるものにかかっている者
・政令で定める病気:精神分裂病、そううつ病、てんかん等又は認知症、アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
・いわゆる暴力団関係者
・他人の生命・財産又は公共の安全を害する恐れがあると認められる者
・その他法令で定める事項に該当する者
埼玉県警のsiteには、ダウンロード書類の中に銃関係のものが多数あるが、医師の診断書は含まれていない。
欠格事項についての記述は、警視庁と埼玉県警では微妙に違う。埼玉の方が詳しい。その差を見たとき、ふと思ったことは、この医師の診断書を必要とすることが、そもそも法的な規定なのか、という疑問だ。
銃所持を認められない欠格事項があり、それを第三者的に確認する手段として医師の診断書がある、こう考えれば、欠格事項に当てはまらないことを医師の立場で確認したことが書かれていれば、医師の診断書としての必要事項を網羅したことになるではないか?
暴力団関係者かどうかは医者では判らない。住所が定まらないかどうかも判らないだろう。公共の安全を害する恐れがあるかどうかも微妙だ。しかし、精神病や、そううつ病、痴呆、てんかん等の有無については医師の立場で判断できる項目だ。
そう考えれば、それらを証明する医師の診断書は医師の判断で作成するものであり、この書式でないといけないという明確な規定がないと解釈できる。
とにかくインターネットを検索して探し続けるうちに、警察関係のサイトではないが、平成14(2002)年11月14日付け法改正?で診断書の記載内容が変わったという記述を見つけた。
1,精神分裂症の有無
2,そううつ病(そう病及びうつ病を含む)の有無
3,痴呆の有無
4,てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害がもたらせないもの及び発作が睡眠中に限り再発するものを除く)の有無
5,その他の自己の行為の是非を判別し、若しくはその判別に従って行動する能力を失わせ、若しくは著しく低下させる症状を呈する病気の有無
6,アルコール中毒の有無
7,麻薬中毒の有無
8,大麻中毒の有無
9,あへん中毒の有無
10,覚せい剤中毒の有無
しかし、今回の情報は2005年の話だ。そこで銃刀法を調べてみた。
確かに“平成17年6月29日法律第77号 未実施内容は第五条第一項第二号中「第七条第十五項」を「第八条第十六項」に改める”とある。この改正は介護保険法に関する部分だ。
これが現時点における銃刀法最終改定事項である。
銃砲刀剣類所持等取締法の第5条は銃所持の欠格事項に関する内容だ。その部分を転記する。
第五条 都道府県公安委員会は、第四条の規定による許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合においては、許可をしてはならない。
一 十八歳に満たない者(空気銃の所持の許可を受けようとする者で、政令で定めるところにより、政令で定める者から推薦されたものにあつては、十四歳に満たない者)
二 精神障害若しくは発作による意識障害をもたらしその他銃砲若しくは刀剣類の適正な取扱いに支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものにかかつている者又は介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)第七条第十五項 に規定する認知症である者
三 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
四 自己の行為の是非を判別し、又はその判別に従つて行動する能力がなく、又は著しく低い者(前三号に該当する者を除く。)
五 住居の定まらない者
銃刀法には診断書という言葉は一切ない。医師の診断書の提出は銃刀法で定まっている事ではなく、銃刀法に規定された銃所持許可に関わる欠格事項に該当しないかを確認するための手段として、定められたものということになる。今回、記載事項が変わったという話が出たのは、この介護保険法の改正に伴う記述ということになる。
しかしこの介護保険法第八条は、現在削除されており、また第七条15項とは、「認知症」の定義を、脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態としている部分だ。第八条へ改める、ということは未だ実施されていない。第八条自体は今のところ存在しない。
このように考えれば、診断書の書式の変更がイマイチ明確でないことも筋が通ってくる。
医師が診断する範囲は明確に決められているのではなく、欠格事項に当てはまらないことを確認する為の具体的手段として診断書がある。認知症を欠格事項に加えたことで、それを含めて医師の確認を求めるならば、診断書に記載する事項にそれを載せないといけないだろう。しかし、その警察署の安全課担当者が、銃所持申請者および更新者は、どうみても該当しないと判断できるならば、あえて診断書に記載していなくても構わないのではないだろうか?
だから診断書については明確な書式がないのだ。これは私の推測だ。
新しい診断書は確かにネット上に存在する。しかしそれは公式書類ではない。
昨年から、行きつけの内科医院を変更した。近所に新しい医者が開業し、そこは快適なインテリアでまとめられ、気持ちの良いBGMが流され、窓の外にも緑が広がってとても気持ちが良い。都内とは思えないほどの環境がとても気に入った。そしてその病院の先生は、診断書が必要な理由を伝えると、瞬時に銃所持専用と思われる診断書用紙を取り出したことも、それまで行っていた3つの医院と違っていた。
記載事項を予め印刷した銃所持用の専用書類、そのようなものを見たのは初めてだ。その医院はいつも混んでいるのだが、遅い時間まで対応してくれることも有難い。若い先生だが、用紙を持っていたということは、幅広い分野の情報を集めて患者に対応しているという事でもある。
今年、診断書が欲しいといって訪問したら、先生のほうから「新しい書式になったという話があるのですよねぇ」、と話してきた。誰か別の患者(別に病気ではないので客というべきか)が、新しい書式の診断書が欲しい、といって来たらしい。
情報の出所は私が見たBBSと同じだったのかもしれない。警察から通達は無かったそうだ。
先生は新しい書式をネットで探して手に入れたようだ。警察関係で見当たらなかったようだが、とにかく最新版として pdf化して載っていたものを検索して見つけ、それをdown loadした。
先生によれば、これは最新という触れ込みだけど、使っている用語には古いものがあるという。
精神分裂症は現在では統合失調症というそうだ。精神分裂という、ネガティブな言葉は現在では使わない。そういう意味ではこの書類は完全ではないという。
この書式は誰かが、最新の銃刀法に対応する診断書として作ったものだろう。公式書類ではない。公のものであれば、様式等の番号があるはずだ。
本庁も警察庁も、正式な診断書を作っているわけではなく、法の規定上、必要と思われる内容が網羅されていれば、あとの部分の書式には、決まり事はないのだろう。
公式文書として、公的機関のサイトからdown loadできないのは、公式書類が存在しないからだろう。
現状正しいと思われる記述は以下の通り。
1. 精神分裂症であるかないか
2. そううつ病(そう病及びうつ病を含む。)であるかないか
3. てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害がもたらされないもの及び発作が睡眠中に限り再発するものを除く)であるかないか
4. 自己の行為の是非を判別し、若しくはその判断に従って行動する能力を失わせ、若しくは著しく低下させる症状を呈する病気(1,2及び3を除く。)でるかないか
5. 介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第15項に規定する認知症であるかないか
6. アルコール中毒であるかないか
7. 麻薬中毒者であるかないか
8. 大麻中毒者であるかないか
9. あへん中毒者であるかないか
10. 覚せい剤中毒者であるかないか
以上の各項目の横に、ある・ない と記載する。
これをワードプロセッサー等で作成し、それを持って医師に行き、これらの項目について、医者に診断してもらう。そして該当する側に丸を付け、該当しない側は取り消し線で消す。全て“ない”の側に丸が付けばOKだ。
ここで精神分裂症を統合失調症に修正しても良いかもしれないが、そのことを知らない警察担当者が、診断書に必要な要件を満たしていない、といってこの診断書を不完全なものだ、とするかもしれない。だから、とりあえずは精神分裂症と書いたほうが良いだろうと思う。
いずれにしても医師の診断書は新規申請及び更新時には必要だ。最新の項目に沿った内容のものを持っていくべきだろう。
Nov.26, 2005
Satoshi Maoka
△ up
|