Leupold Tactical Scope & Mil dot reticle Leupold タクティカル・スコープ&ミル・ドット・レティクル by Satoshi Maoka

タクティカル・スコープ
 タクティカル・スコープとは何か?この言葉には明確な定義があるわけではない。
“軍や警察など公的機関の特殊部隊が使用するスコープ”を総称してタクティカル・スコープだと言ってしまうのはあいまいだし、正確ではない。特殊部隊のスコープは、確かにタクティカル・スコープと呼ばれるものである場合が多い。しかしそれは、一般のシューターも活用しているレベルのものだ。

 また近年、公的機関の特殊部隊は、夜間戦闘でも正確な照準が要求される場合が多い。そのため、スコープと暗視装置をタンデムに組み合わせて使用出来るものが求められるようになってきた。さらに各隊員がスコープを通して見ている映像が、リアルタイムに指揮官の元に送られるといったものが存在する。それにより全体が統制のとれた作戦行動を行いうるし、またそれは、各隊員の行動が的確であったかどうかを分析する証拠にもなる。
 一般市場で売られているタクティカル・スコープには、もちろんこのような機能はない。
 一般シューターが、スコープに求める性能は、1.像がクリアで明るく見やすいこと、2.強度が高く、レティクルがズレるような事がない事、3.操作性が高いこと。結局のところ、この3点に絞られるのではないだろうか。
 それらの項目の内、特に2と3を突き詰めると、スコープはタクティカル・スコープと称される製品の形に行きつく。だから、各スコープメーカーはタクティカル・スコープを市販している。
 すなわちタクティカル・スコープとは、その名を冠していない一般的なスコープと比べて強度が高くて壊れにくく、フォーカスや、エレベーション、ウィンデージの調整がし易いかたちに工夫され、光学系も明るくクリアで、収差も少ないもので構成されている、といった諸条件を満たすものだと言って良いだろう。
 さらに、レティクルが工夫され、なんらかの距離測定機能、着弾点修正機能がある場合も多い。
 ベンチレスト競技のように重量制限がある場合は余計な機能を省いて重量軽減した専用の高倍率スコープを使用するべきだが、通常のライフルにスコープを載せるのであれば、タクティカル・スコープを選ぶことをお勧めする。 
 しかし、市販のタクティカル・スコープの中には、形だけミリタリー・スコープらしさを強調し、実際には強度も何も改善されていないといった偽物も少なくない。タクティカルという名前を付ければ、価格アップが出来るし、よく売れるからだ。実際のタクティカル・スコープは機能強化の結果、どうしても高価になる。それを形だけ真似して比較的安価で供給すれば、飛びつく消費者がいるのはムリもない。
 Leupoldはアメリカ陸軍にタクティカル・スコープを供給している。またアメリカ警察の特殊部隊では、Leupoldの製品を使用している場合が多い。いうなれば、本物のタクティカル・スコープだ(最先端装備はまた別の次元の話であるが)。民間市場にも、比較的安価で市販している。もっとも軍に納入する製品と市販品とでは、若干の違いはあるようだ。
 Leupoldのタクティカル・スコープはVari-X II仕様とVari-X III仕様、そしてMark 4仕様とに大別出来る。

 Leupoldをカタカナで表記する場合、Gun誌ではレオポルドとしている。これは実際の発音とは少し違うが、以前からこの表記を使い、定着しているからそのままの表記としている。一方、リューポルドという表記をするところもある。こちらは実際の発音に近づけたものだ。しかし実際には、ちょっと違って“Loopold”と発音するのが正しいようだ。これをカタカナで正確に表記することは出来ない。McDonald’sと一緒だ。日本法人を作る上で、むりやりマクドナルドとしたが実際の発音は全く違う。Leupoldをムリにカタカナにする必要は無い。だからここではLeupoldと書くことにする。

               Nightforce NXS 3.5-15×50とLeupold Vari-XIII Long Range Tactical M1

Vari-X II & Vari-X III
 Vari-X IIとVari-X IIIはLeupoldの通常型スコープだが、これをベースにしたタクティカルモデルがある。Vari-X IIとVari-X IIIの違いは少なくない。
 Vari-XIIは1964年に、それまでのズーム機能付きスコープVari-Xの改良型として登場した。設計から既に40年が経過しているが、実用上特に問題はない。しかし、Vari-X IIIは新規設計によるもので、Vari-X IIとの共通点はほとんど無く、全くの別物だ。
 Vari-XIIIはすべてのレンズにマルチコーティングを施してある。フッ化マグネシウムのアンチレフリクティブ・コーティングで光透過率は93%だ。
 メインチューブはアルミニューム6061-T6のブロックから削り出した一体物だ。Vari-X IIは一体ではない。これによりVari-X IIIは耐久性が大幅に向上している。
 最大の違いはエレクター(erector)にある。エレクターとは、像を正立させるためのものだ。Vari-X IIIはTriplet Erector lensを使い、これによりシャープで高い解像度を得られている。Vari-X IIIのレティクルはエレクターチューブの中にある。

Vari-XIIIのゴールドリングとLong Range Tacticalのブラック・リング   Vari-XIIIロングレンジ・モデルのフォーカス・リングは対物レンズ側にある。しかしこの形式は操作性が悪い。Vari-XIIIもタクティカル・モデルになると、ボディ左側面にフォーカス・ダイアルが設けられている。フォ−カス・ダイアルをボディ側に持ってくることは、タクティカル・スコープの絶対条件だといっても良いだろう。

 外見上すぐに見分ける手段として、対物レンズ外周にあるゴールドリングの太さの違いがある。Vari-X IIIは誇らしげに太いゴールドリングで飾っている。Vari-X IIのゴールドリングは細い。
 そしてサイト合わせをしてみると、その違いを明確に知ることが出来る。Vari-X IIIは1/4MOAクリック・アジャスタブルであるのに対し、Vari-X IIの標準型は1/2MOA毎にマークされたコンティニアステンション・ダイアルで、中間ストップが可能となっている。1クリックごとの明確なクリック感がないことは、実用上問題はないかもしれないが、精神衛生上あまり気分が良いものではない。
 Vari-X IIベースのタクティカル・スコープは3-9×40mmという、もっとも標準的なスペックのものがあるだけだ。
 その他のズーム仕様のタクティカル・スコープは、ほとんどがVari-X IIIタイプだ。Tacticalと名が付くものはすべて、対物レンズ外周のゴールドリングなどは無く、実戦仕様のつや消しブラック仕上げとなっている。
 Vari-X II 3-9×40mm Tactical、Vari-XIII 3.5-10×40mm Tactical、4.5-14×40mm Tactical Adj. Objective の3種類はTacticalモデルといっても、通常のVari-X II, IIIとあまり差は感じられない。1インチチューブに、背の高いターゲットタイプのアジャスタブル・ノブが組み合わされ、レティクルの選択肢としてDuplexに加えて、Mil dotがあるといった程度だ。
 しかしロングレンジ・シリーズとなるとTactical Modelとしての特徴があらわれて来る。チューブ径は30mmだ。エレベーションとウィンデージの調整用ノブはM1タイプとM3タイプが用意された。これについてはMark 4の項目で解説する。M1タイプの調整用ノブはoversized knurled knobsと呼ばれるものだ。ダイアルが不用意に回ってしまうことをないようにするノブのキャップ・カバーは無い。フォーカス・ダイアルはすべて本体ボディ側に付いていて操作が容易だ。
 Vari-X III 3.5-10×40mm Long Range M1, および3.5-10×40mm Long Range M3, そして両モデルのilluminated reticle仕様, 4.5-15×50mm Long Range M1, 6.5-20×50mm Long Range M1, 8.5-25×50mm Long Range M1以上が現在(2004年1月まで)のタクティカル・ロングレンジ・シリーズのラインナップだ。

左:1999年に購入したパッケージと2003年のパッケージ アメリカ製を強調する星条旗が追加された。おそらく、Buy American Act “BAA:アメリカ製品購入奨励法”に絡んでの処置と思われる。
右:Long Range Tacticalのパッケージに含まれるもの。レンズキャップはButler Creek製だがLEUPOLDのマークが入ったOEMもの。レンズフードは含まれていない。

左は2003年のLong Range Tactical、右は1999年のVari-X IIIの下部。製造国表示が“MADE IN THE USA”, “MADE IN USA”と異なっている。銃とは直接関係ないことだが、製造国表示については、“MADE IN THE USA”が正解だと思う。国名や都市名には定冠詞“THE”は付かない。英語は原則として固有名詞に定冠詞を付けないからだ。しかしそこに普通名詞が含まれると定冠詞が付く。
ドイツというときは Germanyだが、ドイツ連邦共和国という場合は、The Federal Republic of Germanyとなるし、フランスの場合はFranceで フランス共和国というときはThe French Republicとなる。余談だが、オランダは例外的にThe Netherlandsとなり、その都市ハーグはThe Hagueだ。
 したがってアメリカ合衆国はThe United States of Americaが正しい表記となり、The U.S.A.となる。しかし現実的にはMade in USAという表記をしている場合も多い。
 Leupoldはアメリカのスコープメーカーである。アメリカン・ブランドの製品も、外国で製造されたものである場合が多いが、Leupoldはアメリカ製だというわけだ。しかし、全ての部品がアメリカで製造されているというわけではない。
 製品に本質的な性質を与えるために充分であると認められる実質的な製造又は加工を最後に行った国が製造国となる。Leupoldのレンズはアメリカ製ではなく、海外から調達したものだ。それを組み込み、最終的に製造、検査を行った国がアメリカであるからMade in the USAというわけだ。

Mark 4
 Mark 4はミリタリーとロー・エンフォースメント(Low Enforcement)のマーケットに対して1980年代中期に開発された。そのスタートはアメリカ陸軍のM24スナイパー.・システム用スコープの開発だ。以前は固定倍率のみであったが、最近ズーム・ドットサイトのMark 4 CQ/Tが出た為、固定倍率であることがMark 4を名乗るための条件では無くなった。
 Mark4シリーズには、当初M1,M2,M3の3タイプがあった。M2はロングレンジの特殊用途で101空挺師団のリクエストで作られた。しかしM2はその後、開発中止になった。
 Mark 4はミリタリー用としてふさわしい耐久性と信頼性がある。エレクター・チューブを保持するスプリングはVari-X II、IIIでは1つだった。しかしMark 4スコープは、このスプリングを2本にしている。
 M1とM3を比較した場合、もっとも大きな違いはBDCの有無だろう。M3はエレベーションノブにBDC(Bullet Drop Compensator)を組み込んだ。このダイヤルは100yardsから1000yardsまでの弾道のドロップ量を調整出来る。1つの特定の距離でサイト合わせを行えば、あとは距離に応じてダイアルの数値を合わせれば良い。

上左 Mark 4 M3 BDC 308用リングを“3”(300yd)にセットしている。 上右 エレベーション、ウィンデージ、フォーカスの各リングをカバーで覆っている状態
下左右、Mark 4 M1


 当然、弾道はアモが異なれば違ってくる。また弾頭重量とパウダーの選択、量によって違う。だから、たとえば308に対応するバリスティックは一つではない。しかしそれでは、BDCは機能しないので、Leupoldは軍が標準的に使用しているアモのデータに合わせて、BDCを設定した。
 選択出来るアモは30−06、300WinMag, 308、223の4種類で、それぞれに合ったダイアルを組み込んで使用する。
 308の場合、168gr. 2600fpsに適応する。これとは異なる弾頭重量、弾速のアモを使用すると当然、バリスティックが違い、BDCでは正確な調整出来なくなる。
 M3のウインデージは1/2MOAだが、エレベーションは1クリック1MOAになっている。これは100ydから1000ydまでのブレット・ドロップ調整が、ダイヤル1回転(1周)でカバー出来るようにするためだ。出来るだけシンプルな操作性を維持しなければBDCの意味はない。調整可能範囲は65MOAまでだ。55MOAまでがダイアルに記されていて、さらに10MOA動かせる。
 エレベーションダイアルには100yd毎に数字が打たれ、この表示はシューターが構えている状態から簡単に見える。
 Mark4 M3は6倍と10倍のモデルが開発された(6倍は既に製造中止)。M3は軍の要求に基づいて作られたM1の強化版だ。
 一方のM1にはBDCの設定は無い。M1の1クリックは1/4MOAでM1より正確なサイト調整が可能だ。エレベーション、ウィンデージの調整用ダイアルは非常に背が高く、回しやすい。ダイアルにキャップやカバーはない。これは調整が必要な時、キャップをクルクル回して外している時間的余裕があるとは限らないからだ。しかし、これはうっかりダイアルを回してしまう可能性があるともいえる。これはトレード・オフだ。一方、M3 Mark 4 BDCにはキャップがある。
 Mark 4 M1は10倍と16倍のモデルがある。20倍もあったが、これは開発途中で中止となった。

1MOAとは角度1°の1/60だ。半径100ヤードの円を描いたと過程する。1MOAの描く円弧は殆ど直線と変わらないと判断する。するとその長さは1.0472インチとなる。小数点以下2ケタを切り捨て、100ヤードの1MOAは1インチと称する。距離が伸びれば誤差が大きくなるが、便宜上300ヤードでは3インチを1MOAとする。メートル法では100mの1MOAは29mmだ。

MILはmilliradianの略  1milは0.0573°, 1MOAは0.291milとなる。1milは3.438MOAだ。アメリカでは便宜上、1milは3.6MOAとしている場合が多いが1mil=3.4MOAとする人もいる。私は間をとって1milは3.5MOAとした。

Mil dot
 タクティカル・スコープに採用されているレティクルは、シンプルなクロスヘア(Duplex)である場合もあるが、通常は、距離測定や着弾点を補正する機能を持っている場合が多い。
 Schmidt & Bender Police Marksman P1や、Horus Vision, そして以前紹介したNight Force NXS MP1-DDなどのように、独自の目盛りとデザインで構成されたレティクルを持つ物と、Mil dotと呼ばれる汎用的なレティクルを持つものとに大別される。独自デザインのレティクルは、個々のマニュアルを読まないと、各目盛りの持つ意味とサイズが判らない。それに比べて、Mil dotはシンプルだ。
 このレティクルが示す情報は、基本的に各メーカーのモデルに共通したもので、使い方を覚えてしまえば、なかなか役にたつ。
 通常、Mil dotは2種類あり、USMC(アメリカ海兵隊)仕様のオーバル・ドット(Oval dot:楕円型ドット)と、一般的なラウンド・ドット(Round dot:円形ドット)とがある。オーバル・ドットの長手方向の長さは0.25milsで、ドット中心間隔は1milとなっている。通常の円形ドットの直径は、0.2mil、ドット、ドット中心間の距離は1milだ。詳細は図を見て頂こう。


The Mil relation formula ミル関連方程式

 この公式がもっとも基本的なものだろう。
 これは対象物の大きさがわかっている場合に有効だ。但し対象物が小さい場合は精度が悪い。ある程度の大きさのものを距離換算対象とした方が良い。
 例えば、55cm(21.6インチ)巾の標的があったとする。これをMil dot レティクルで見たとき、ちょうどドット3つ分の巾に収まっていたとしよう。すると
0.55m×1000÷3mil=183.3m
 その標的までの距離は183.3mだということになる。
 また

この式に当てはめると、21.6inch×25.4÷3mil=182.88m  ほぼ同じ値になる。
 また、この方程式を使えば、距離が判っている場合、標的の大きさが概ね判る。
距離100mで、ドット4個分に標的が収まった場合、
100m×4÷1000=0.4m  標的の大きさは40cmということになる。
 まあ、標的の大きさをMil-dotで図ろうというケースはあまり無いかもしれない。
 とにかく、スコープに飛び込んでくるであろう様々な物の大きさ(高さ、横幅)をあらかじめ知っていると、そこまでの距離を測定出来て便利だ。いうまでもなく、正確な距離を知ることは、正確な射撃を行う上で重要だ。
 もちろん、正確に3ドット分に収まるとか、4ドット分に収まるという可能性は低いので、その時の値が、3.4milなのか3.3milなのかといったことを、ある程度、正確に読み取れる訓練は必要だ。
 たとえば高さ1.5mの物体が標的だとする。レティクル上で、その対象物の一方の端をクロスヘアの中心に合わせたら、対象物のもう一方の端は1つの目のdotを越え、2つ目のdotに近い位置にあった。これを1.7milと読むか、1.8milと読むかでその測定距離は882mと833mと49mの誤差となって現れる。ドット間には目盛りはない。それをどれだけ正しく読めるかで、正確な第一弾を標的に送り込むことが出来るかが決まってくる。
 この距離測定計算を、瞬時に頭の中で出来ればよいが、それがダメなら、ノートPCやPDAの表計算ソフトに予め公式を入力しておき、必要な数値だけを入力すれば、計算してくれるようにしておくと便利だ。あるいはMIL DOT MASTERという一種の計算尺がある。これがあれば簡単に算出が可能だ。
 但し、とっさの時に、それらのものを取り出して計算する余裕があるかとは限らない。目に飛び込んでくる対象物の大きさとmil値を見て、直感的におおよその距離を把握出来るようにすることが理想的だろう。
 アメリカ製のズームスコープの大半は、倍率を変えてもレティクルの大きさがそれに合わせて変わるということは無い。だからMil dotによる距離測定はあらかじめ決まった倍率で使用しないといけない。すなわち、違う倍率に設定しているときに間違ってMil dotで距離を測定し、大幅に距離を読み違えてしまうというミスを犯す可能性がある。これは明らかに欠点であるといえる。机上で理解していることが、実際のフィールドで100%実践出来るはずはない。
 ほとんどのズームスコープは、Mil dotを適合させる倍率として、そのスコープの最大パワー時と設定としている。
 別の使い方として、移動している(等速度で動いている)標的を狙う事にも使える。但し、この使い方はあまり現実的ではない。
 基本的には、トリガーを引いた後、飛翔する弾が対象に当たるまで、対象物はどの程度移動するかを算出し、それをリード量として、その分を見越してaiming pointをずらせばよい。

 たとえば100ヤード先を時速10kmで横方向に移動する標的を撃つとしよう。狩猟の世界やムービングターゲット射撃では、このようなことは十分ありうる。
1秒の移動速度は2.7m(mps)=8.85fps
2600fps(780mps)のアモを使用した場合、100yd(300ft:91.44m)の距離を飛ぶ時間は0.117秒だ。
 するとリード量は0.117×8.85fps =1.04ft となる。 これは12.48inchだ。
(1. 04ft×12)/(100×0.01×3.5)=3.57mil
 一見すると複雑な計算だが、結局のところ、リード量をインチに換算し、その値を100ヤードを1とした距離×3.5で計算したに過ぎない。
 但し、とっさにこんな計算をすることは難しいだろう。そのときは経験と勘で、リード量を何milとするか判断することになる。

ElevationとWindageのhold offs
 シューターは予期せぬことで頻繁にdialを回す必要がある。風が吹けば着弾はずれるし、気温の差でも変わってくる。通常の射撃競技は、予め距離がわかっているが、狩猟の世界ではその距離は一定ではない。また一部には連続して異なる距離の標的を撃つ必要のある射撃競技もある。

 そんな時、いちいちdialを回している余裕がない。Mil dotなら、自らの銃と今使っているアモのバリステックに合わせ、どの距離で何mil着弾を修正する必要があるかを判断し、Mil dotを使って修正することが出来る。
 たとえば、M118LR弾薬は175gr. Sierra HPBT 2600fps.だ。200ヤードでサイトをゼロとした場合、100ヤードは2.21インチ高くに着弾する。Mil-dotレティクルのセンターを射つべき対象から2.21インチ低い場所に合わせれば良い。Mil dot間は1milであり、それは3.5MOAだ。100ヤードなので、インチでも3.5インチになる。となれば、3/5milだけ低い場所にレティクルのセンターを持ってくれば良い。
 300ヤードでは9.06インチ低い場所に着弾する。300ヤード先の3.5MOAは10.5インチだ。すなわち、概ね9/10mil高い場所にセンターを合わせるわけだ。ラウンドドットであれば、ドット自体の半径が0.1milなので、ターゲットをセンターからひとつ下のドットの上端に合わせれば、ほぼ完璧なアイミングだ。
 500ヤードは52.33インチ低い位置に着弾する。3ドット(mil)分が10.5MOAで、500ヤードでは52.5インチだ。だから3つ下のドットのセンターを標的に合わせれば、308 175grが500ヤード先のターゲットに飛んでいくはずだ。
 これはあくまでもバリスティックを元にした理論値であり、実際に何インチずれるかは、必ずしもこの値と一致しない。真っ直ぐなバレルなど存在しない。ごくわずかだがバレルは曲がっているものだ。たとえ穴あけが真っ直ぐであったとしても、ストレス・リリースなどの熱処理、ブランクバレルからの削り落としなどの過程で曲がってしまう。ひとつとして同じものはない。だから実際に各距離で撃ってみて、その結果、どれだけの誤差が出るか、確認する必要がある。


 レティクルに等間隔にドットを付けた照準システム Mil dot、シンプルな構成ながら想像以上の機能がある。この機能を使いこなすには、自分の使うアモについて正確な知識と、Mil dotの読み方を知っている必要がある。そして実際のフィールドでの経験、そしてその積み重ねが重要だ。
 それを身に付けたとき、Mil dotは本当の力を発揮する。

 Leupoldは2003年末、新しいVari-X IIIシリーズを発表した。そして2004年2月、Shot showで新型のTactical Scopeを登場させた。いずれもMark 4の名が冠されている。PR(Precision Rifle)と呼ばれる比較的安価な製品と、MR/T (Mid Range Tactical), LR/T(Long Range Tactical)だ。LeupoldのTactical Scopeは、Vari-X II, Vari-X IIIがなくなり、すべてMark 4シリーズとなったわけだ。
 新型となったからといって、依然として誰でも簡単に最高の機能を引き出すことが出来るものではない。

 銃、そしてスコープは経験を積んだシューターの手に中にあってこそ、その力を正しく発揮することが出来るものだ。

Feb.15, 2004
by Satoshi Maoka

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