Oerlikon Contraves LLM01 エリコン・コントラヴェス LLM01 レーザーライト・モジュール
エリコン・コントラヴェス(Oerlikon Contraves)の歴史は20世紀初頭に始まる。1906年、スイス、チューリッヒの市街地から車で5分ほどのエリコン工業地帯にSwiss Machine Tool Factory Oerlikonが設立された。
1923年、Magdeburger Machine Tool Factoryに組み込まれ、社名はMachine tool Factory Oerlikonとなった。
第一次大戦では、開発間もない航空機が戦場に登場し、その圧倒的な機動力は、近い将来、地上戦闘部隊にとって重大な脅威となることは確実だった。対空火器は、航空機と戦うために必要な武装として重要なものとなる。第一次大戦中、航空機に対して有効な対空火器は存在しなかった。

Heckler & Koch G36K下部に取り付けられたLLM01。側面後方にロータリー・スイッチがあり、これでレーザー、IRレーザー、ハロゲンランプ等の切り替えを行う。Picatinny rail padにベルクロテープで巻きつけられたリモート・トリガー・スイッチがあり、これでON/OFF制御ができる。
1924年、対空火器や車載用の火器の開発がMachine tool Factory Oerlikonではじまった。親会社であるMagdeburger Machine Tool Factoryはドイツ企業だ。第一次大戦の敗戦国、ドイツは武器の開発について大幅な制限を加えられた為、スイス企業を隠れ蓑に兵器開発を続けたのだ。
しかしその後、Machine tool Factory Oerlikon はEmil Georg B?hrlegにより買収され、1936年には対空火器開発のための会社、Contraves AGがチューリッヒに設立された。社名のContravesとはラテン語でagainst birds(鳥に備える、対抗する)を意味する contra avesから取られた。
1970年代にB?hrle group は、Oerlikon B?hrle Defenceと Oerlikon B?hrle Contravesに統合され、1990年代にはOerlikon B?hrle AGと Contraves AG が合併し Oerlikon Contraves AG (OCAG).となった。
東西冷戦の終結は、永世中立国スイスの防衛体制に大きな変化をもたらした。スイスはヨーロッパの国々から自国を防衛するためにおこなってきた国民皆兵政策を放棄し、軍事費を大幅に削減した。これがOerlikon Contraves の業績を直撃した。
1999年9月、Oerlikon B?hrle Holding (OBH) はOerlikon Contraves AG (OCAG).をラインメタル(Rheinmetall DeTec AG)に売却した。エリコン・コントラヴェスは引き続き、チューリッヒに本拠を置いている。しかし、現在はドイツ資本企業だ。
対空火器、レーダー、弾薬、ファイア・コントロール・システムなど、軍事防衛産業としてのエリコン・コントラヴェスの製品は多岐にわたる。その主たる製品は35mm機関砲やガイデッド・ミサイル(guided missile)などの対空火器であり、個人が使用するショルダー・ウェポンはその対象プロダクツでは無かった。
この状態はラインメタル傘下となった現在も変わらない。しかし、エリコン・コントラヴェスはピストルやサブマシンガンに組み込むレーザー・ライト・モジュールを新たに開発した。それが、Oerlikon Contraves LLM01だ。
LLM01がエリコンで開発の背景は、ガイデッドミサイルのレーザー・デザィネーター(Laser designator)技術が応用出来たことにある。
ピストルやサブマシンガン、アサルトライフル等にフラッシュライトを照準装置として組み込むトレンドは1960年代後半より始まった。一番最初にフラッシュライトを組み込んだ量産モデルは、ハイスタンダード(Hi-Standard) Model 10Aと思われる。
革新的なブルパップ・セミオート・ショットガンとして登場したハイスタンダードModel 10Aは、警察官が使用するショットガンとして、狭い警察車両の中からも容易に使用できるよう全長を短くすることに主眼を置いて開発された。
同時にキャリング・ハンドル部にフラッシュ・ライトを内蔵した。ハイスタンダードがフラッシュ・ライトを銃に組み込んだ目的は、ターゲットをエイミングするスピードを向上させることにある。夜間に限定されるが、ライトが照射された場所が、イコール射撃方向となる。これならヒップポジションでもショットガンに求められるレベルであるなら、ある程度正確にターゲットに狙いをつけることが出来る。
また犯罪は夜間に発生する確率が高い。このことからもフラッシュライト組み込みは有効だ。反面、ライトをつけることは、相手にこちらの位置を教えることにもなる。このあたりはトレードオフとして止むを得ない。ハイスタンダードは、その後、改良型モデル12Bを登場させた。こちらはフラッシュライトが着脱式となった。
最初にレーザーエイミング・モジュールを搭載したものは1974年の、オーストリア製アメリカン180サブマシンガンだ。177発もの22LRをディスク状のドラムマガジンに装填し、アッパーレシーバー上に装着する。デザイン的にはかつてのLewisライトマシンガンとThompson SMGを組み合わせたような古臭いものだが、22LRをフルオートマチックで発射することは他にあまり例はない。発射速度は2,400RPM(2,400発/分)程度と、猛烈に速い。

American 180 Sub Machine Gun 22LR with Laser-Lok Sight System
バレルの下部に付けられた巨大な箱がLaser-Lok Sight Systemいわゆるレーザーエイミング・モジュールだ。当時このユニットだけで1,000ドル前後という価格だった。初期の製品はこのような巨大なユニットだった。
その後、レーザーエイミング・モジュールは新しい照準装置として、開発が進められ、1980年代に入ると小型化が進んだ。それまではスコープサイトのような形で取り付けられていたものが、ピストルのフレーム下部、トリガーガード前部に装着されるようになった。それが1990年代にはグリップ部や銃本体内部に組み込んで使用するものも登場した。
レーザーを使ったサイトシステムはフラッシュライトと同じ使い方で、レーザー光を対象物に照射し、対象物で反射して見える小さな赤いドットが照準点ということになる。フラッシュライトは、面的な広がりを持つが、レーザーは収束され極めて細く、対象物の一点を照射する。
レーザーエイミング・モジュールの登場は、射撃のスタイルを大きく変化させた。赤いドットをターゲットに合わせるだけで、ある程度、正確にターゲットを射撃することになる。
暗闇でなくとも、室内ならばある程度の距離から、日中でも赤いドットを視認出来る。銃を目線まで上げる必要はない。ただレーザーのドットを対象に照射し、トリガーを引く。レーザー・サイトシステムは一般射手の射撃技能を大幅に向上させることが出来た。
もちろん銃の弾道が弧を描くのに対し、レーザー光は直進する。銃身の延長直線であるライン・オブ・デパーチャー(line of departure)とレーザー・エイミングモジュールのレーザー光ラインを概ね一致するように調整する必要がある。ポイント・ブランク(point blank)というべき比較的近距離で使うことが前提だ。長距離で使用する場合は、バリスティック(弾道:ballistic)とレーザー光ラインとの誤差を把握しておかなければならない。
一方、フラッシュライトは小型でも光量の大きなハロゲンランプを組み込んだ強烈に明るいものが出てきた。強力な光を相手に浴びせ、それにより一種のスタン効果を狙っている。
レーザーおよびフラッシュライトを組み込むことは、それまで実戦ではあまり役に立たないと言われていたピストルの、戦闘能力を大きく向上させることになった。
ここに着目したのが、アメリカ軍特殊部隊を統括するUS. Special Operation Commando (US.SOCOM)だ。
1995年完成したOffensive Handgun Weapon System(OHWS), US. SOCOM ピストルには、レーザーとハロゲンライトを一体化させたLaser Aiming Module(LAM)が用意された。LAMはアメリカのInsight Technology社が開発したもので、大きなユニットとしてUS. SOCOM ピストル HK Mark 23のトリガーガード前部とフレーム・ダストカバー部に取り付けられる。
ハロゲン・フラッシュライトと、可視レーザーポインターと不可視レーザーポインターが共に組み込まれている。
しかしレーザー・エイミング・モジュールはまだ発展段階であり、製品開発はその後も継続している。
SOCOMピストル用としてその後、Wilcox Industries Corp.がInsight Technologyの協力で製品化したものの存在が伝えられた。これはレーザーモジュールとフラッシュライトが分離するものだが、オリジナルのLAMよりさらに大きい。あたかもアメリカ軍ネィビー・シールズが制式採用したかのように伝えられたが、そのような事実はない。
US. SOCOM ピストルが採用しているLAMを製造したInsight Technologyからは、その後、小型化した市販型が登場している。
しかし最近、ヘッケラー&コッホはMark 23に、Oerlikon Contraves LLM01を装着したものを紹介している。

上左:ベルクロテープに付いたリモート・トリガー・スイッチで操作性が向上している。上右:クイック・クランプリング・デバイスで素早い取り付け、取り外しが可能。レバーを倒すだけだ。Picatinny railだけでなく、その他各種のアタッチメントレールにも対応が可能
下:各レーザーは個別にアジャストが可能。一旦調整したなら、ユニットの着脱で狂う事は無い。正面向って左から赤外線ターゲットマーカー、赤外線レーザー不可視照射ランプ、赤色レーザー・ターゲットマーカー、
エリコン・コントラヴェスLLM01とインサイト・テクノロジーの従来型LAMとの最も大きな違いは、面的な不可視光線IR near field illuminator照射機能の部分だろう。Insight TechnologyのLAMもハロゲンランプ前面に赤外線フィルターを組み込んで、暗視ゴーグルと組み合わせて使う場合、敵に気付かれること無くサーチが可能だった。だが、LLM01はフィルター取り付けといった作業なしに常にこの機能を選択出来る。そしてこれはランプではなく、レーザーを拡散して広い範囲を照射したものだ。
その他の機能として、通常のハロゲンライトでのスタン効果およびサーチ、可視レーザー照射による照準機能、および暗視ゴーグルを使用した場合、IR-Target Markerにより夜間に敵に気付かれることなく、緑色のドットを照射することが出来る。

左から順に、レッドライト・ターゲット・マーカー、ハロゲンランプ、赤外線ターゲットマーカー、赤外線レーザー不可視照射ランプの使用例。但し、いずれイメージ画像であり、実際に照射したものではない。
これだけの機能がコンパクトなユニットにまとめられた。ハロゲンライトさえなければ、もっとコンパクトに出来るだろうが、強力な可視光線によるスタン効果は、この手のタクティカル・エイミング・モジュールにはもはや欠くことが出来ない機能となった。
ドイツ軍は、特殊部隊用として、4.6mm×30を使用するヘッケラ−&コッホMP7A1サブマシンガン、および5.56mmのG36Kアサルト・ライフルに、早速このLLM01を採用した。

Heckler & Koch G36K Assault Carbine, AG36 Add on Grenade Launcher and Oerikon Contraves LLM01
ミリタリー用のレーザー・ライト・モジュールは、このエリコン・コントラヴェスLLM01がゴールではない。今後も改良が加えられていくことは間違いない。おそらく将来、ガイデッドミサイルのレーザー・デザィネーター(Laser designator)としての機能をこのようなコンパクトなボディに組み込むことが考えられていると思われる。
兵士はライフルを持って敵地にひそかに潜入、軍事用の重要拠点に強力な不可視レーザーを照射する。シーカーヘッド(seeker head:目標検知追尾装置)を搭載したガイデッド・ミサイルはステルス爆撃機などから発射され、そのレーザー照射を捕捉して飛び、対象物のみを正確に破壊するのだ。
このような機能を持つライフルを兵士が持つ日は、それほど遠いことではないだろう。しかし、それを実戦で使うような戦争が、世界中のいかなる地域でも起きないことを切に願って止まない。

|
IR Target maker |
IR near field illumination |
red light target maker |
Lamp |
| Wave Length |
850nm |
880nm |
650nm |
Incandescent light |
| Power/light |
0.44mW |
Appox. 25mW |
5mW |
8W>125lm(L umen) |
| Laser Class DIN EN60825-93 |
1 |
3A |
3B |
− |
| Laser class ANSI Z 136-1-2000 |
1 |
3A |
3A |
− |
| Range at night |
>200m |
<10m |
>200m |
>100m |
| Range at day |
− |
− |
20m |
− |
| Size of light spot |
15×30mm |
2×2m |
15×30mm |
2×2m |
| Distance in m |
25m |
3m |
25m |
10m |
| Service Period from ?10℃ to +20℃ |
>28h |
>13h |
>15h |
>1h |
ハロゲンランプが強烈な光で相手の目を眩ませることが出来るのは、真っ暗な状態で10mまで
IR系はナイトヴィジョン・ゴーグルを装着した場合のみ見える
本体サイズ: 86×46×58mm(LWH)
重量: <300g including batteries
バッテリー:6V, 2×DL 123A lithium Batteries
作動環境温度: -20℃から+55℃
防水性能: waterproof to 10m(1気圧防水)
Satoshi Maoka Mar.11, 2004
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