合法的拳銃所持に関する意識調査 Investigation concerning lawful handgun possession
日本は一般市民が銃を所持する事を厳しく規制している。しかしライフルとショットガンについては、様々な制限があるものの、必要な要件を満たしているなら、合法的に所持し射撃を楽しむことが可能だ。
だがハンドガンに関しては徹底的に規制されて、事実上、合法的に所持することは不可能に近い。
警察官や自衛官はハンドガンを勤務中に持ち、使用することができるが、それらはいずれも貸与である。あくまでも勤務中のみ自己の管理下に置かれているのであって、個人で所有しているわけではない。
手元の辞書で「所持」という言葉を調べてみると、「持っていること。携帯すること。」とある。しかし私は「所持」とは、そのモノを自分自身の完全な支配下に置いて持っている状態だと定義している。この考え方に従えば、貸与品は所持品ではないということになる。
ピストル射撃競技選手に対しては、一般市民も含めて50名という制限の中でハンドガンの所持が認められている。
ところが、これも競技および練習の前日から当日にのみ自己の管理下に置くことができるというわけで、厳密に言えば所持とは言いがたい。
すなわち我が国では、合法的にハンドガンを所持できる人はいないというわけだ(エアピストルは別だ)。
そんな日本に住んでいる銃器愛好家は、ハンドガンの所持に関して、どのような意識を持っているのだろうか。
言うまでも無いことだが、ここでいう“愛好家”とは、善良な市民である銃器愛好家を指している。違法に銃を隠し持っているような輩は“愛好家”ではない。
そんな順法精神を持つ銃器愛好家は、もし合法的にハンドガンを所持できるならば、ぜひ所持したいという気持ちを持っているのだろうか。
これは、きわめて基本的なテーマだと思う。しかし今までこのような調査がおこなわれたという話は聞いたことがない。
「銃器愛好家なら、ハンドガンを所持したいと思うのは当たり前だ」と思われるかもしれない。しかし、人の心理というのは、それほど単純ではないだろう。
2004年7月、床井雅美講習会で私はアンケート調査を実施した。ここに参加された方々は、ほぼ全員が銃器愛好家だろう。ここで調査すれば、銃器愛好家の意識の一片を知ることができるはずだ。
2003年も調査をおこなったが、その時は主に銃器に対する意識調査と銃器雑誌に求めるものは何か、というテーマだった。
今年は「合法的にハンドガンを所持したいか」という部分に焦点をあててアンケートを試みた。果たして、どんな結果となるのだろうか。
今回の講習会に御参加頂いた方は53名(床井雅美と主催者である私は除く)で、アンケートに対して49名の方からお返事を頂いた。回答率92.5% かなりの高率だ。
Q1. 銃の所持状況(日本国内)についてお伺いします。
A. 現在、合法的に銃を所持している (お差つかえなければ、該当する銃種に○をつけてください)
・センターファイアボルトアクションライフル ・大口径セミオートマチック・ライフル ・その他の形式のセンターファイアライフル・22LRライフル ・エアライフル ・エアピストル 装薬式ピストル・上下二連ショットガン ・セミオートマチックショットガン ・ポンプアクション式ショットガン ・その他の形式のショットガン
B 過去には所持していたが、現在は所持していない
C 現在は所持していないが、いずれ所持したいと思う
D 所持するつもりはない
このQ1は、御回答者が合法的に銃を所持されているのか、国内で射撃を楽しんでおられるのかどうかを確認するものだ。“ハンドガンを持ちたい”、という意識と直接リンクしないかもしれないが、どのような方々が御参加されたかを知る手掛かりとなる。また銃の所持について具体的な行動をとっておられるかを知ることができる。
もちろん銃を所持されている方が、より熱心な銃器愛好家であると決め付けるつもりはない。銃の所持許可を持っていないが熱心な銃器愛好家であるという方がたくさんいらっしゃるという事を私は知っている。銃器を愛好するという事の多彩さがそこにある。
そもそもこの講習会に御参加されたという事は、それだけで熱心な銃器愛好家であることを意味するだろう。
結果は
A 現在、合法的に銃を所持している 16
B 過去には所持していたが、現在は所持していない 3
C 現在は所持していないが、いずれ所持したいと思う 18
D 所持するつもりはない 12

銃を所持している方 16名、所持していない方 33名 所持率33%だ。概ね3名に1名は銃を所持されている。ちなみに昨年の同じ調査では38%の方が銃を所持されていた。
銃を所持されている方、およびその予備軍となる方(所持したいという意識あり) 34名(69%)、所持する意志はない方、および銃所持を放棄された方 15名 (31%)
所持されている銃の種類は以下の通りだ。
| 所持されている銃の種類 |
16名中 |
| センターファイア・ボルトアクションライフル |
8名 |
| センターファイア・セミオートマチックライフル |
9名 |
| その他のセンターファイアライフル(レバーアクション、スライドアクション、その他) |
3名 |
| 22LRライフル(SB) |
1名 |
| エアライフル |
5名 |
| エアピストル |
0名 |
| 装薬ピストル |
0名 |
| オーバーアンダーショットガン(上下二連銃) |
7名 |
| セミオート・ショットガン |
7名 |
| スライドアクション・ショットガン(ポンプアクション) |
6名 |
| その他の形式のショットガン(水平ニ連, ボルトアクション,その他) |
5名 |
所持されている銃の種類が1種類という方は少なく、ほとんどの方が3種類以上に○を付けられた。16名中、9名の方がセミオートマチック・ライフルをお持ちだし、6名の方がスライドアクションショットガンをお持ちだ。今回、銃を所持されている16名の方々は、やはりかなり銃がお好きという事がいえる。
Q2. 海外に御自身専用の銃を保管していますか?
A はい
B 今は無いが、事情が許せばいつかは海外に持ちたい
C 持っていないし、持ちたくない
これは国内法に触れることなく、海外で銃を所持しようという方がどの程度、いらっしゃるかを知るためのものだ。昨年のアンケートでは、海外で射撃経験のある方が非常に多かった。であるなら、一歩進んで、ご自分の銃を海外に保管している方もいらっしゃるはずだ。
厳密には自分自身の銃ではなく、委託と言う形であるので、銃を所有しているとは言いがたいが、これも銃所持のひとつの方法だろう。
結果は
A 持っている 2
B 持っていないが、事情が許せば持ちたい 23
C 持っていないし、持ちたくない 16

無回答は8件ほどあった。持ちたくない、という意見に加えて、「手元に置けないなら持ちたくない」というコメントを付けられた方が2名ほどいらっしゃった。
「持ちたくない」、と答えられた方多くは、Q1でも「国内で持つつもりはない」、とお答えになっている場合が多かった。
この質問はまだ続いている。
A または B を選ばれた方にのみ伺います。それはピストルですか?
A. はい
B. いいえ
ここで初めてハンドガンに関する質問になった。海外で銃を持っている、あるいは事情が許せば持ちたい、というお答えをされた方に対し、その所持している、あるいは所持したい銃はハンドガンなのかを質問した。
A はい 14 (58%)
B いいえ 10 (42%)
日本の銃器雑誌読者の大半はハンドガン嗜好が強いと言われている。愛好家の大半はハンドガンが好き、というわけだ。だから日本の銃器雑誌は、盛んにハンドガンを記事に取り上げている。しかし今回、この講習会にご参加された方々は、違った嗜好をお持ちのようだ。講習会のテーマがアサルトライフルであることも影響していると思われるが、海外で銃を所有しようと言う場合、それはハンドガンではない、というご意見が42%もあった。
では、海外で所持したい銃はアサルトライフルなのだろうか。アサルトライフルの個人所有はほとんどの国で認められていない。サブマシンガンはもっと難しい。Aと回答された上で、ライフルもClass IIIも欲しいという御意見もあった。またBと回答された上で、具体的にアサルトライフルの名前を挙げた方もいらっしゃった。
海外の射撃場でクレー射撃をやりたいのでショットガンを現地に置いておきたい、という意見も含まれていたかもしれないし、ビッグゲームハンティングをやりたい、としてハイパワー・ボルトアクションライフルや、ダブルライフルを持ちたいというご意見もあったかもしれない。
実際に海外に銃を保管されているという2名のご回答はいずれもハンドガンだった。但し、1名の方はハンドガンに加えてライフルも保管されているとの事だった。
Q3. あり得ない話ですが、もし銃刀法が改正され、日本でピストル所持保管がひとり1挺に限り、合法的に可能になったと仮定します。そのような場合、あなたはピストルを合法的に所持しますか?
A. 所持する
B. 所持しない
C. わからない
実際にあり得ない話は好きではない、という方もいらっしゃるだろう。あり得ない非現実的な話など、時間の無駄だという考えはある。現実重視というわけだ。確かにこの質問は非現実的かもしれない。
しかし、だとすると私の今回の調査は無意味になってしまう。ここは仮定の話としてお付き合いをお願いしている。
A 所持する 39
B 所持しない 2
C わからない 8

今まで考えたことの無かった問いに戸惑われたかもしれない。「わからない」という答えの8件はその表れだろう。しかし80%の方が、「所持する」と答えて頂いた。
国内でも所持するつもりはなく、海外でも保管しておきたくないと答えられた方も、合法的に国内でピストルを持てるなら持ちたいと答えられた場合も多かった。ハンドガンというものの魅力なのだろうか。日本で合法的に所持できるライフルやショットガンには興味はないが、ハンドガンなら、それも手元に置けるなら話は別だ、という事だ。
所持しない、と明確に答えられた2名のうち1名の方は、国内外でも銃を所持するつもりの無いという方だった。また、もう1名の方は、国内では銃を所持されておられる。この方はエアピストルなら良いが、装薬ピストルが民間に出回る事は危険だ、という主旨のコメントを書いて頂いた。これもひとつの立派なご意見だと思う。
いずれにしても、わからない、という8名のご意見は、「所持する可能性もある」ということと解釈できる。となれば約9割程度の方が、合法的にハンドガンを所持できるならば、持ちたい、あるいは持つ可能性がある、というご意見をお持ちだ。
この質問はまだ続いている。
Aを選択された方に伺います。許可されるのは1挺だけです。お差しつかえなければその銃種に○を付けてください。
・セミオートマチック・ピストル ・リボルバー ・シングルショットピストル
結果は
セミオートマチック・ピストル 33
リボルバー 4
シングルショットピストル 1
無回答 1

圧倒的にセミオートマチックの勝利だ。85%がセミオートマチックを選択した。オートかリボルバーか、これはハンドガンが好きな銃器愛好家にとって、長い間議論が重ねられてきたテーマだ。しかし、近年、リボルバーよりセミオートマチックの方が、一般的には優れている場合が多いという結論に達している。
この結果は、それをそのまま反映しているといって良いだろう。
質問は続く
具体的にこれが欲しい、というモデルがあれば、名称をご記入ください
22名の方が、この問いにお答え頂き、それぞれ欲しい銃の名前を挙げて頂いた。
このあり得ない質問は、“日本でピストル所持保管がひとり1挺に限り、合法的に可能になったと仮定します。” こういう前提だ。だから、ここに書き込んで頂くのは、本来お一人様“1挺だけ”なのだが、複数の銃名を書かれた方も多かった。無理もないことではあると思う。1挺だけに絞るのは難しいはずだ。
書いて頂いた解答をここに転記する。( )内は私の補足コメント
Colt M1911A1
Glock 22
CZ85D (“D”と書かれていたが、Bの事だと思う。CZの“D”はdecocking lever仕様を意味するが、85にはD versionは無い。CZ85は, AFPBが組み込まれたCZ85BとCZ85 Combatの2種類がある。もっとも私が知らないだけで、Dがあったのかもしれないが)
SOCOM Pistol MK.23
パラベラム
ルガー“パラベラム”
P640(b)、又はP38,又はP1 (P640(b)といって、それが何か判る人は少ないだろう。私も同様だ。P640(b)はブラゥニングハイパワーがドイツ占領下で使用された時の鹵獲兵器管理ナンバーだ。)
コルトガバメント
Glock17
45Auto or SIG
SIG Sauer P226
P38ac41 (P38 1941年製ワルサー製造モデル)
SIG P228
Walther GSP
SIG Sauer P226 9mm×19 , SIG Sauer P220 45ACP, Glock 17 9mm×19, Glock 22 40S&W
S&W M5906 Adj. Sight Square Trigger Guard付き
AUTOMAG AMP180
SIGP226, SIG Pro
ガバメント
Glock
Walther P5
Thompson Contender
リボルバーの名前を書かれた方はいらっしゃらなかった。
この質問は,「もしも…」という仮定(想像)の中で遊んで頂ければ、というレベルのものだ。
実戦向けのモデルを選択された方、射撃スポーツ向けのモデルを選択された方、所有することが最大の喜びとなる往年の名品を選択された方…と様々だ。それぞれの方のお考えが反映されていて面白い。
Q4. 日本の銃刀法についてお伺いします。銃刀法についてどのように考えておられますか?(一番近いと思われる感覚を1つお選びください)
A. 概ね現在の状況に満足しているので、このままで良い
B. 治安維持の観点で規制されるのは仕方がないが、もう少し緩めても良いのではないか
C. 日本の銃刀法は厳しすぎる。もっと大幅に緩めて欲しい

ここで日本の銃刀法について、どう考えているかを確認した。一般の日本人に聞けば、おそらく殆どがAを選択するだろう。あるいは、この三択から外れて、もっと厳しくするべきだという回答も多いかもしれない。
結果は
概ね満足 14
もう少し緩和 26
大幅に緩和 9
“もう少し”、“大幅に”という表現は曖昧だが、いずれにしても、現状に満足は29%、緩和希望71%だ。
しかし、大幅に緩和して欲しいという意見は、緩和希望される方の中では1/4に留まった。
現状に概ね満足されている方の半分は、Q1で銃を所持するつもりは無い、とお答え頂いた方だ。もっとも、その殆どの方は、Q3で、合法的にピストルが所持できるようになったら、所持するとお答え頂いている。
大幅に緩和して欲しい、とお答え頂いた方9名のうち7名の方は、現在銃を所持していらっしゃらない方だ。
Wrap up
以上の結果で何が見えてきただろうか。解釈は難しい。
これは日本の銃器愛好家の一般的な考え方と行動を表しているかどうか、これもよく判らない。しかし、ひとつの参考にはなるだろう。
銃の所持をしたいと思っている方は多い。実際にすでに銃を持っていらっしゃる方より、持ちたいけどまだ持っていないという方が多い。潜在的銃砲所持希望者はまだまだいらっしゃる。しかし、少なくない方が銃の所持を考えていない。銃器愛好家だからといって、全員が実際に銃を所持したいと思っているわけではない。
しかし、もし合法的にハンドガンを所持できるとなると状況は違ってくる。より多くの方が所持すると答えられた。すなわちライフルやショットガンなら所持しなくても良いが、ハンドガンであれば事情は違うというわけだ。明確に所持しないとお答えになられた方は僅かで、ほとんどの方が所持するか、あるいはどうするか判らないとお答えになられている。「ハンドガンの魅力、恐るべし」だ。
それでも、「所持しない」と答えられた方も少数ながらいらっしゃるということは、忘れるべきではないだろう。
海外に保管していらっしゃる方はごく少数だった。事情が許せば持ちたい、という方は多かったが、現実問題として、時間的余裕と、一回の渡航にある程度の費用が掛かることから、海外に銃を保管するすることはなかなかできない。その一方で、少なくない方が、「海外に銃を保管したいとは思わない」とおっしゃっている。
国内で合法的にハンドガンが所持できるなら、所持したいと答えられた方でも、海外に保管することには興味はないと答えられている。この違いは、手元においておくことが出来るかどうかどうかの違いなのだろう。あるいは年に1回程度、撃ちに行くだけならいらない、という事なのかもしれない。
セミオートマチックかリボルバーか、100年にも及ぶこのテーマは、現状ではセミオートがかなり優勢だ。これはもう変わることはないだろう。
そして銃刀法を大幅に緩和希望という方は意外と少なかった。すでに書いた通り、“大幅”と“もう少し”の定義は曖昧だ。何が大幅で、何がもう少しなのか、質問に具体性が無かったので、その度合いを測ることができない。いずれにしても、現在の銃刀法に概ね満足されている方は29%で、71%の方はなんらかの改善を求めている。
こんなアンケートで、銃器愛好家の方々のお考えを計ることができたとはもちろん思っていない。それでもちょっとした傾向だけは見えたかと思う。
Aug.31, 2004
△ up
|