Heckler & Koch HK417
                                       2008年1月1日掲載

 2004年末、Heckler & Koch(HK)Defense Inc.はAR-10をベースにした7.62mmライフルのプロトタイプを製作した。
 HKがM4A1のデザインをベースに、ショートストローク・ガスピストンを組み込んだ5.56mm×45ライフル、HK 416(当初はHK M4と呼ばれた)を市場に送り込んだのが2004年だ。早い段階でHK416の7.62mm化のプランが上がっていたことがわかる。
 既にアフガニスタンおよびイラクでは、ロングレンジでの5.56mm×45の威力不足が顕在化、6.5mm Grendel(グレンダル)や6.8mm Remington SPC(Special Purpose Cartridge)が注目を集め、アメリカ軍でテストが繰り返されていた。また古いM14がモスボールを解かれて、戦場に投入されていた時代だ。
 2005年9月、HK G3ライフルのマガジンを装着したHK417プロトタイプモデルを使用し、アリゾナ州プレスコットでデザート・トライアルが実施された。アメリカ陸海軍の特殊部隊が見守る中、このテストは成功し、HK417は製品化に向けて動き出した。

           2007年10月9日−12日に開催されたMilipol 2007に出展されたHK417

 この形状は、2008年1月1日現在、HKのWeb siteに掲載されているM417とは明らかに違い、マガジンハウジング部分が大きく異なる。おそらくこれが最終生産型ではないだろうか?
 既存に公開されていたHK417はトリガーガード下方、マガジン背面にマガジン・キャッチ・レバーと思われるものがあった。これはG3のマガジンでテストを繰り返した時の名残りだろうか。マガジンハウジングの部分は、HK416やM16, M4と比べて高いポジションでカットされ、G3を思わせるものだった。これはマガジン背面レバーを押し、前方に回転させてマガジンを着脱するデザインの特徴だ。Milipol 2007で公開されたこのモデルは、マガジンハウジングがHK416に近くなり、デザイン的にすっきりしている。

 HK416を7.62mm化したスケールアップモデルがHK417である。操作性や分解手順は従来のM16, M4と基本的に同じだ。もちろんHK416とも変わらない。
 これは重要なことで、M16を長期に亘って使い続けてきた兵士にとって、その操作感覚は身体が覚えている。それを手にするだけで、考えることなく的確な操作ができる。いわゆるmuscle memoryと言うヤツだ。緊急時にはこれが重要である。
 HK417はHK416、G36と同じオペレーティング・ロッド・ガスシステムを持つモデルであり、リュングマン(Ljungman)・システムではない。カーボンファウリングやボルトの加熱が抑えられ、その結果、クリーニング周期は大幅に改善された。
 HKはデザイン上、10,000-〜15,000発まで、パーツの破損や交換を必要とせず、また精度を保証しようとしている。このガスシステムは、弾薬の違いや、バレル長、サプレッサーの有無にも左右されない。
 近年、リュングマン・システムをガスオペレーション化したM16, M4クローンがいくつか登場している。リュングマン・システムが、あたかも欠陥メカニズムであるかのように感じられる場合もあるだろう。しかし、1960年代にアメリカ軍がM16を採用して以来、リュングマン・システムを改修することは一度も行なわれていない。これは実用上、リュングマンが戦場で立派に機能することを意味している。
 1960年代、アメリカ軍で初期のM16がトラブル多発だったのは、この銃はクリーニング不要と誤解した兵士がヴェトナムの戦場でノン・クリーニングのまま使用し続けたことと、採用した5.56mm×45(223 Remington)弾M193の使用火薬が、223 Remingtonの開発当初(その時点では222 Specialと呼ばれていた)に使用されていたIMR4475から、WC846へ変更してしまったことにある。さらにヴェトナムの高温多湿の気候が災いした。
 クリーニングの徹底、ボルトのクロームメッキ化、閉鎖不良の際、ボルトを強制閉鎖するボルト・フォワード・アシストの追加を行なったものがM16A1であり、M193の使用火薬も変更された。
 M16A1は500発以上、ノン・トラブル、フォワードアシストを使用することなく射撃ができる。これでリュングマン・システムを持つM16は信頼性の高い軍用銃となった。
 実際問題、M16の発展形、現代のM4A1はクリーニング無しで1000発以上、ジャムることなく射撃できる。ならば、今になって、わざわざガスピストン化を図る必然性はないだろう。しかし、HKはM4クローンを製造するにあたって、信頼性向上を目指した。あるいは、何の工夫もなくM4A1のコピーを作るのが、HKとしてはイヤだったのかもしれない。
 かつてHKはローラー・ロッキング・システムの優位性を強くアピールしてきた。ローラー・ロッキングを採用したG3ライフルは、ごく最近までドイツ軍の制式ライフルであった。
 現実にはG3は7.62mm×51を使用するライフルとして開発されたわけではない。もっと軽い弾を使用することを想定していた。しかし、アメリカ軍のゴリ押しで、NATO弾がフルサイズに近い7.62mm×51となってしまった為、それを使わざるを得なかった。その結果、プレス加工のレシーバーに耐久性の問題があり、長期間使用するには、レシーバーの矯正が必要な銃となった。
 その後、ベトナム戦争で5.56mm×45の優位性が高まり、M193を改良したSS109がNATO弾となった時、HKはG3をベースに5.56mm×45を使用するHK33を製作した。しかし、ローラー・ロックはSS109との相性は悪い。
 SS109は高速燃焼パウダーを使用、チャンバー内は高圧になる。ディレード・ブローバックであるローラー・ロッキングは高圧カートリッジに向かない。HK33はある意味で妥協の産物だった。
 G11でケースレス弾を採用しようとしたドイツ軍は、他のNATO諸国が5.56mm×45ライフルを次々採用する中、G3の使用を継続、ケースレス・ライフルの実用化を待っていたが、最終的にケースレスを断念、5.56mm×45ライフルの採用に動いた。この時、開発されたものが、ガス・オペレーションのG36だ。
 HKのローラー・ロッキング信仰はこの時、終わった。
 5.56mm×45のHK416はともかく、7.62mm×51のHK417では再びローラー・ロッキング・システムを採用したなら、HKの強烈な意地がそこに見えただろう。しかしHK Defenseは、意地を捨てて市場に受け入れられるmarket orientedな製品の供給を目指した。
 このHK417のバレルはポリゴナルではなく、コンベンショナルだ。ローラー・ロッキング・システムとポリゴナル・バレルは、HK設立当初の強烈なアイデンティティではなかっただろうか。
 ツイストは1/11”, 125grainから175grainまでの弾薬に適合する。すなわち、アメリカ軍が通常使用する7.62mm×51カートリッジであるM118(173gr.), M118LR(175gr.),M80 ball(146gr.)、M993 AP(126.6gr.)が問題なく使用できる。
 HK417のバレルは12,16,20インチが用意され、簡単なツールを使用し、約2分で交換ができる。ヘッドスペースの調整も必要としない。
 一番短い12インチバレルで、M118LRを使い、10倍のスコープを装着、100-500ydの3 shot groupsは1.3MOAを達成している。その射撃は、3発射撃後、じゅうぶんなインターバルを空けておこなわれたことはいうまでもないだろう。
 バレルの先端にはフラッシュハイダー付きだが、サウンド・サプレッサーの装着が可能だ。
 マルチポジションのリトラクタブル・ストックは、かつてのXM177E2のようなメタルむき出しではない快適な使用感のあるチークピースが装着されている。
 タクティカル・ヴェストの普及、各種ボディ・アーマーの装着が原則となった現代で、リトラクタブル・ストックの優位性は不動のものなった。側面へ折りたたむフォールディング・ストックの方が銃全体をコンパクトにまとめられるが、リトラクタブル・ストックは装着する装備に合わせて、適切なストック長に瞬時に変えられるメリットがある。
 バットプレートはラバーのリコイルパッド付きだ。このあたりは、HK417が7.62mm×51のバトルライフルであることを明確に物語っている。5.56mmに比べて、はるかに重いリコイルがある7.62mmだ。金属バットプレートだったら、肩にガツンと来るだろう。
 ハンドガードは4面にMIL STD M1913 Rail Systemを採用、各種装備をイヤというほど装着できる。
 セレクター・レバーはアンビデクストラウスだ。左右どちらの手で射撃しても操作感にあまり差はない。M16系のチャージング・ハンドルは操作しやすいものではないが、反面、左右どちらの手でも同様の操作感がある。
 マガジンキャッチは、M16と同様、右側面のプッシュボタンタイプだ。右手で銃を構えた場合、素早いマガジン交換には、この位置がもっとも早い。ボックスマガジン自体は、新規製作の20連トランスルーセント(translucent:半透明)ポリマー・マガジンが装着されている。マガジン内部が透けて、残弾が見える。

 かつて、7.62mm×51のアサルト・ライフルは時代遅れだと揶揄された。あれから40年以上が経過し、7.62mm×51アサルト・ライフルは限定的ながら、復権しつつある。
 どんなライフルも、あらゆる状況で万能ではない。ロングレンジ・バトルが予測される場合、7.62mm×51ライフルは、5.56mm×45と比べて、明らかに有利だ。7.62mm×51のM14ライフルは、当時、失敗作と位置づけられたが、当時のヴェトナム戦に不向きだったのであり、あの時代の戦場が中東だったら、もっと評価されていたかもしれない。
 HK417は、Heckler & Koch Defense Inc.の示した現代戦へのひとつのsolutionだ。

2008年1月1日

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