| グループ
銃の集弾性能を表現するものとして,グループ(あるいはグルーピング)の値を使う場合が多い。内外の銃器雑誌でもミリ,インチ,センチ,MOAなどの単位を使いこれを表記している。
一見すると客観的にその銃の精度を表現しているように思われるかもしれないが,どういう条件で撃った結果かが不明であれば,それがその銃の精度のすべてであると思い込むのは早計だ。
一番,大きな変動要素はシューターの技量だと思うが,銃(あるいは銃身)を万力のようなもので固定したりすれば,今度は別の問題が生ずる。銃そのものの固有振動が変ってしまい,実際に構えて撃つときと異なる特性が出てしまうからだ。
ライフルレストに銃を置いて撃ったとしても,数発撃つ間,常に正確なaimingが出来ているかどうかは本人の技量によって変ってくる。スコープならある程度まで正確になるが,オープンサイトで行なうのはかなり難しいだろう。屋外の射撃場でのテストなら風の影響は無視出来ないし,厳密に言えば,気温や湿度,ミラージュの有無も効いてくる。射撃を続けることによるバレルの温度変化も重要だ。装弾の側にも不確定要素は多々あるのも言うまでもない。
そういう問題があるとしても,ある程度まではその銃の精度を表してはいるだろう。では,その値はどうやって測定したものだろうか。グループは数発(通常5発)撃った結果の一番離れた弾痕の中心間の直線距離であることはどなたでもご存知のはずだ。従って一番離れた弾痕の最外周部間の直線距離を測り,そこから弾頭径の値を引けばその数値が出てくる。 ところがである。弾痕の最外周部分とはどこか。紙の標的を撃ったことがあれば,その弾痕はきれいな穴でないことはご存知だろう(ワッドカッター弾であればある程度はきれいな円であるが)。これのどこまでを測定すれば良いのだろうか。これはかなり難しい。標的の紙質で弾頭が通過した後,穴が縮むものもあれば,裂けるように穴が広がるものもある。
  
左から .308win, 22LR,45ACPのブレット・ホールいずれも5発 。22LRでは1発外してあるが(本当は外してしまった),これを見ればブレット・ホールというものがきれいな円でないのが判るだろう。黒点の部分と白い部分とでブレット・ホールの見た目が違うし,いずれもエッジ部分がギザギザである。45ACPはハンドガンKimber Stainless Master 5inch barrelからのもの
まあ,概ねこのあたりだろう,という憶測で測ることは可能だ。銃の実射レポートであれば,1mm2mmの違いはどうでも良いだろうが,グループの小ささを競うベンチレスト射撃の場合はいい加減な計測をするわけにはいかない。
グループの正確な計測方法について,私の知る限り日本の銃雑誌(2002年1月現在)で紹介されたことは無い。もちろんすべてを見ているわけではないので言い切れることではないが…。
どういう道具で測るかについては,ノギスの一種みたいなものであることは概ね知っていた。しかしどこからどこまでを測るかについては,またその正確な位置を決める方法について,私は何も知らなかった。日本のライフルシューターのほとんどは同じようなものではないだろうか。もちろんベンチレスト・シューターは別だろうが日ラ系のシューターはポジション・シューティングを基本としている為,正確なグループ計測など興味の対象ではないと思う。グループ・メジャリング・デバイスは銀座銃砲店でもエニスにも置いていない。
Hart Group Measuring Device
知らないけど,買ってみればどんなものか判るはず。いい加減な話だが,そんな状態で現物を発注した。
 
で,届いたものがこれである。アルミにアルマイト加工したブロックが2つ,1つはスプリングが付いて先がちょっと尖ったノブがついたアーム・アッセンブリー,,もう1つはネジ(8-32set screw)が2つ付いたアダプタープレート。アクリルの板(サイト・グラス)が3枚,レンチが2本,これだけである。お値段は$59.95。この価格ではノギス(Caliper)は付いていないのは当然だ。とにかく実にシンプルな代物である。
早速,適当なノギスを購入することにした。手持ちのものがあったが,最小読取値が0.1mmというものだったり,インチ計測用のものだったりであまり適当なものではない。グループ計測用であれば0.01mmまで表示する機能が欲しい。私は良く知らないがノギスはミツトヨが一番らしい。というわけで迷わずミツトヨを購入した。
Mitsutoyo Digimatic Caliper
最小表示量:0.01mm, 器差:±0.02mm,繰り返し精度0.01mmだ。お値段\13,000-。

取り付け
グループ・メジャリング・デバイスを取り付けようとしてちょっとマズイことに気がついた。アダプター・プレートを写真の黄色の矢印のようの取り付けるのだが,調子に乗ってデジタル・ノギスを買ったせいで内側用測定フィンガーとクランプねじとの間が狭くてアダプター・プレートが取り付けられない。手持ちのインチ用アナログノギスに合わせてみたところ問題なく収まる。測定値の読取が楽になると思ってデジタルにしたことが裏目に出た。まあ良い。当たってしまう部分をヤスリでちょっと削ればよいだけだ。
 
左上:ノギスの表示部分にアダプター・プレートを黄色の矢印のように貼り付ける。
上:赤い矢印の部分を削らないと付けることが出来ない。
左:削った結果。アルミにアルマイト加工したものであるので簡単に加工が可能だ。
おそらくアナログ・ノギスなら大抵のものに取り付けられると思うが,特殊なものだと加工してもダメな場合があるので注意が必要だ
そしてミツトヨの計測表示部の裏面に接着剤貼り付けた。このアダプター・プレートがサイト・グラス(口径別確認プレート)の固定を行なうものだ。アーム・アッセンブリーは写真の位置に取り付け,スクリューを締めて取り付ける。出来るだけアーム・アッセンブリーのプランジャー・ポイントの位置とサイト・グラスに印されているキャリバー・リングとホリゾンタル・ラインが平行の位置にあるほうが良い。これだけで完成である。

測定方法
使い方を解説しよう。
標的の中で最も離れている弾痕2点を選ぶ。この2つの標的の中心を結ぶライン平行な線をエンピツで引く。これはやらなくても良いがより正確に測定を行なう為にはこの線は書いた方が良いだろう。どこに線を書くかはこのあとの作業から判断出来るだろう。ノギスをその線に平行になるようにして,まず片側の弾痕をサイトグラスのキャリバー・リングに合わせる。弾痕のほうがキャリバー・リングより大きいはずだ。とにかく中心にとおぼしき部分に合わせたら,アーム・アッセンブリーのノブを押す。

ブレット・ホールの中心にキャリバー・リングを合わせて,銀色のノブを押す。プランジャー・ポイントが標的に小さな穴を空ける。一番離れた2つのブレット・ホールでこれを行なうのだが,その際,このツールの角度が変らないようにしないと意味がなくなる。
プランジャー・ポイントが標的に小さな窪みをつける。これは針の穴のようなものだ。今度はノギスを平行に動かし,もうひとつの弾痕の中心を探す。その時,サイト・グラス上のホリゾンタル・リファレンス・ライン(水平基準線)を見て最初の 弾痕と平行に動かしていることを確認することが大切だ。2つ目の弾痕の中心に合わせたら,またプランジャーポイントで小さな窪みを付ける。これで標的に小さな2つの窪み(穴)が出来た。この窪みの間隔は,弾痕の中心点間の距離と同じである。この長さをノギスで測ることで,この標的のグループが判るのだ。
実に単純である。しかし疑問も残る。キャリバー・リングで弾痕の中心を探す際に,ここが中心と判断する必要があるが,そこにわずかな主観が介在する。見出される中心点は絶対のものとは言い切れない。またプランジャーで空けられた穴の距離を測る際もノギスを当てるだけであるから,0.01mm程度の誤差は生じるだろう。技量の問題に加えてここにも主観が入る。単に自分の標的を私的に測定するのであれば大した問題ではない。しかしベンチレスト競技,それも大きな大会であったならどうだろう。0.01mmは0.0004MOAでしかないが,気にはなる。1位と2位の差は0.01"以内ということもあった。ベンチレストの場合,大きな大会では最初に比較的ラフな計測をして,その後,精密な測定をするという2段階測定を行なっている。しかし人間が測定する以上,絶対的な精度は無理であろう。
点数で競う一般的な競技でも境界線ギリギリの弾痕をどう判断するかは,いくら採点ゲージを入れたところで完璧な判定は難しいであろう。
いずれにしてもスコアラーにはその判断をする権限が与えられ,公正な測定,採点をするべく最大限の努力をしているはずだ。
サイト・グラス
3種類が用意されている。
270,17,6.5mmのセット
270は0.277"で270Winchester, 270Weatherby Magnum等に使われる。あまり一般的ではない。
17はRemington(0.172")を想定していると思われるが,これはむしろ4.5mm(0.177")のエアライフル用と考えるべきだろう。
6.5mmは0.264"でこの径のbulletを使うammo.は多い。
日本の6.5mmArisaka, 6.5mm Mannlicher Carcano, 6.5×57 Mauser, 6.5×58R Krag-Jorgensen等である。
しかし近年1000yard射撃用に6.5mm×284が注目されている。
22,6mm,.30のセットは最もポピュラーなものだろう。
22は言うまでもなく22口径rimfire用でもあるし,Center fireとしては0.224"で有名な 223Rem.のほかにも222Rem., 22PPCなどがある。
6mmといえば0.243"で高精度な6mmPPCの口径というべきだろう。その他243Win. 6mmBR等がある。
30は0.308"でおそらくライフル用ammoでは最も種類が多いと思われる。308Win., 30-06が圧倒的でその他は300Win.Mag., 300Weatherby Magnum, 300H&H Mag., 30-30Win., 30Carbine, 300Savage,その他がある。
25, .338, 7mmのセット
25は0.257"であるがこれといって代表的なammo.はない。
338は0.338"でロングレンジ・スナイパー・カートリッジ338Lapua用であると考えても差し支えないだろう。
7mmは0.284”,この口径も多い。7mm Remington Magnum, 7mm Win. 7mmBRなどがある。
Hart製のこのツール,さすがにアメリカ製だけあって,アメリカ国内で一般的なライフル用の口径をほとんど網羅している。
若干違う口径でも近いものを適用すれば概ね正確な数値が読み取れるはずだ。
Jan.20, 2002 by Satoshi Maoka
Revise: Feb.10, 2002
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