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The History of German Police Pistols ドイツ警察ピストル・ヒストリー Top page : Index

Chapter 8 Conclusion 終章
page 8-1 軍事連絡部、市民警察の武装と国境警備隊の武装
page 8-2 ニーダーザクセン州警察戦後の武装
page 8-3 ニーダーザクセン州警察のライフルとマシンガン
page 8-4 ケルン警察の使用弾数、チャンバーへの装填

page 8-4 ケルン警察の使用弾数、チャンバーへの装填
ケルン警察の使用弾数(ケース・スタディ)
ドイツ警察は、年間どの程度の量の弾薬を使用するのだろうか。
少々古いデータだが、ノードライン・ウェストファーレン州ケルン市警察の消費弾薬量に関する資料が入手できたので、年間の使用弾薬量を記述する。
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1979年 |
1978年 |
1977年 |
1976年 |
| 7.65mm×17 |
23,040 |
253,506 |
242,955 |
242,200 |
| 9mm×19 |
536,090 |
375,796 |
218,424 |
194,200 |
| 7.62mm×51 |
51,606 |
42,851 |
25,820 |
60,400 |
1979年になって9mmパラベラムの使用が激増している。この年、ケルン市警察がSIGザゥアー・モデルP6ピストルを採用したからだ。
当時、ケルン市警察には、ピストルを装備する約4,300名の警察官がいた。それに対して、1979年に納入されたSIGザゥアー・モデルP6ピストルは2,739挺だった。同じ年にケルン市警察はワルサー・モデルPPKピストルを2,739挺保有していた。そのほかに、ヘッケラー&コッホ・モデルP9Sピストルを282挺保有し、訓練用のSIGザゥアー・モデルP6ピストルを102挺保有していた。

1978年以前に使用された9mm×19(9mmパラベラム)弾薬は、主にサブ・マシンガンで射撃されたものと、モデルP9Sピストルで射撃されたものだった。
サブ・マシンガンと7.62mm弾薬を使用するライフルやアサルト・ライフル、マシンガンの機種や保有台数に関するデータは入手できなかった。
H&KモデルP9Sピストルは、ケルン警察所属のシュッツ・ポリッツアイとそこに所属するSEKの装備だったと推測される。
SIGザゥアー・モデルP6ピストルが納入されると、順次、旧世代となったワルサー・モデルPPKピストルは、払い下げられた。
このデータからだけでは、ドイツ警察の警察官各人が、どの程度の弾薬量の射撃をしているのか、読み取ることが難しい。特にサブ・マシンガンでも射撃される9mm×19(9mmパラベラム)弾薬の消費量から、ピストルの射撃数を推測するのは困難だ。
しかし、SIGザゥアー・モデルP6ピストル採用以前の7.65mm×17弾薬の消費量を見ると、その消費量は決して多くない。警察官を約4,000名として、その時点で既に9mm×19口径ピストルを使用していた警察官の数を推定して引けば、7.65mm口径のピストルを装備する警察官の数が推測できる。その結果、警察官一人当たりの消費弾薬量が、想像以上に少ないことが判る。その大半は訓練に使用したものだが、この程度の射撃では技術向上は困難だったろう。
現在はもっと数多くの弾薬を射撃訓練に使っていると考えられるものの、ドイツ赤軍によるテロが盛んだった1970年代でさえこの程度の消費量だったことから見ると、あまり差はないのかもしれない。
チャンバーへの装填
現在、ドイツの警察官は、ピストルのチャンバーに弾薬を装填した状態で、ホルスターに入れて携帯している。
1960年代以前、西ドイツ警察が装備していたセミ・オートマチック・ピストルの多くは、シングル・アクションだった。
これらシングル・アクションセミ・オートマチック・ピストルは、安全を確保するために弾薬をチャンバーに装填せず、空のまま携帯した。
セミ・オートマチック・ピストルでシングル・アクションの撃発機構が組み込まれている場合、チャンバーの弾薬を装填せず、空のまま携帯することが一番確実に安全を確保する方法だ。
射撃をする直前にスライドを引いて第1弾をチャンバーに送り込む。犯罪に対処するため、瞬時に発砲しなければならないような事件は発生しない平和な時代はこれで十分だった。西ドイツの警察官もその例外ではなかった。
1960年代にピストルの国内生産が再開され、ダブル・アクション機構が組み込まれたワルサー・モデルPPピストルやモデルPPKピストルが、西ドイツ警察の武装の大半を占めても、西ドイツ警察のピストル操作法は変わらなかった。
だが、70年代になって、ドイツ赤軍によるテロが激化すると、発砲の一瞬の遅れが重大な結果を招くことになりかねなくなった。そこで、それまでチャンバ−を空にしたままピストルを携帯していたドイツの警察官も、チャンバーに弾薬を装填して携帯するようになった。

ワルサー社のモデルPPピストルやモデルPPKピストルなどのダブル・アクション・セミ・オートマチック・ピストルは、開発当初から、チャンバーに弾薬を装填したままで安全に携帯できる信頼性の高い安全システムを完備していた。弾薬をチャンバ−に装填したモデルPPピストルやモデルPPKピストルは、ホルスターから抜きだし、親指で手動セフティを解除すれば、ダブル・アクションでトリガーを引きただちに発射可能だった。
1970年代、西ドイツ警察の新制式ピストル・トライアルでは、当然チャンバ−に弾薬を装填したまま安全に携帯できる性能が求められ、同時にセフティを自動的に解除できることが含まれていた。
指でセフティを解除することなく、単にダブル・アクションでトリガーを引くだけで射撃できる。つまり、セミ・オートマチック・ピストルで、ダブル・アクションのリボルバーと同等の即応性で射撃できることも求められた。
ワルサー・モデルP-38ピストル(モデルP-1ピストル)は、手動セフティを解除したまま携帯しても安全に携帯できる、モデルPPピストルやモデルPPK]ピストルより1歩進んだ安全装置が組み込まれている。
ワルサー・モデルP-38ピストルのファイアリング・ピンは、手動セフティを解除しても、オートマチック・セフティによってロックされたまま安全が保たれる。しかし、手動セフティがonでもoffでも携帯できることから生じる危険がある。
手動セフティをoffにしているつもりでも、セフティがonとなっている可能性があるからだ。緊急事態が起こったとき、予想外に手動セフティがonになっていたら、ピストルをホルスターから抜き出し、混乱せずに手動セフティを解除してから、トリガーを引いても発射しなくてはならない。ピストルの射撃は、1操作分遅れる結果となる。
そのため、西ドイツ警察の新制式ピストル・トライアルでは、要求事項として、手動セフティを排除し、チャンバ−に弾薬を装填しても、安全性がじゅうぶん保たれるメカニズムが組み込まれていることが求められた。
ワルサー・モデルPPスーパー・ピストルやSIGザゥアー・モデルP230ピストルは、この要求に基づいて設計された。
さらに9mm×19(9mmパラベラム)弾薬が警察の制式弾薬に選定されてから設計されたワルサー・モデルP5ピストルやSIGザゥアー・モデルP6(P225)ピストルも、同様のコンセプトで設計された。
9mm×19弾薬を使用するピストルの中でとくに変わっていたのは、ヘッケラー&コッホ・モデルPSPピストル(P7)だ。グリップを握るとスクイーズ・コッカーが、ストライカーを後退させ、グリップを緩めるとストライカーが前進位置に戻るメカニズムが組み込まれており、手動セフティなしでも安全性が保てるようにした。
連邦国境警備隊の対テロ特殊部隊のGSG9は、即応性の高いS&Wのダブルアクション・リボルバーを使用していたが、それにかわってこのヘッケラー&コッホ・モデルP7ピストルを採用した。
即応性を最優先する対テロ特殊部隊が、ダブル・アクション・リボルバーを使用していたのは、トリガーを引くだけでシリンダー内の弾薬を確実に発射できるからだった。
1970年代に西ドイツ警察が新制式ピストル・トライアルを開始したとき、市販のセミ・オートマチック・ピストルのなかに、安全性が高く、即応性の高いという単純な要求を満たす製品がほとんどなかった。とくに、対テロ部隊のGSG9が要求する高い信頼を満たす製品はなかった。
ドイツは、20世紀に入って新型リボルバーをほとんど開発していない。ドイツは、セミ・オートマチック・ピストルの開発により大きな努力を傾けた。ドイツは、リボルバーよりセミ・オートマチックのほうが、総合的に優れていると考えていた。
しかし、即応性を最優先したGSG9は、ダブル・アクション・リボルバーを選択した。GSG9が武装ピストルを選考した時、ダブル・アクション・リボルバーのほうが、当時入手できたセミ・オートマチック・ピストルより、即応性で優れていた。
多くのリボルバーは、シリンダーに6発程度の弾薬しか装填できない。シリンダー内の弾薬を発射しつくすと、再装填するのに時間がかかる。それに対して、セミ・オートマチック・ピストルは、弾薬装填ずみの予備マガジンを使って再装填を素早くおこなえる。これがリボルバーの欠点だ
即応性を重視するGSG9は、リボルバーのこの欠点を問題にしなかった。多くの制圧作戦の結果から、制圧には、6発の弾薬でじゅうぶんと判断したからだ。6発の弾薬を発射するまでに制圧できないような場合、その制圧作戦は失敗だと考えた。より重要視されたのは、装填弾薬量ではなく、いかに素早く正確にターゲットを射撃できるかだった。
対テロ部隊のGSG9は、近距離戦闘用武装として、ピストル以外にサブ・マシンガンをはじめとするさまざまな銃器を装備している。多くの隊員がサブ・マシンガンで武装しているため、ピストルのプライオリティが低かった。そのため迷うことなく即応性を優先させてリボルバーを採用したのだ。
ヘッケラー&コッホ社のモデルP7ピストルは、スクイズ・コッカーを握り、素早くストライカーをコックして射撃できる。しかも、シングル・アクションのトリガーを備えているため、ダブル・アクションのリボルバーやセミ・オートマチック・ピストルより初弾を正確に射撃できる。反面、ヘッケラー&コッホ・モデルP7ピストルを安全に使いこなすには、多くの訓練が必要だ。
ヘッケラー&コッホ社は、モデルP7ピストル開発後、アメリカ軍新制式ピストル・トライアルに提出した試作ピストルをベースに発展させたモデルP7M13ピストルを発売した。
しかし、対テロ特殊部隊GSG9は、13発もの大きな装填弾薬量を必要と考えていなかった。GSG9は、モデルP7ピストルの改良型のモデルP7M8ピストルも採用したが、結局モデルP7M13ピストルの採用は見送られた。
その後、対テロ部隊GSG9は、より操作が単純で、軽量なグロック・モデル17ピストルを採用した。グロック・モデル17ピストルの採用後も、モデルP7ピストルは、廃止されることなく、現在も併用されている。
1970年代、テロの激化して一般警察官も、即応性を重視するようになった。西ドイツ警察の新制式ピストル・トライアルの結果、セフティ・レバーを廃止したワルサー・モデルP5ピストル、SIGザゥアー・モデルP6ピストル、ヘッケラー&コッホ・モデルP7ピストルが選定された。
新制式ピストルトライアルと前後して、西ドイツの警察官は、ピストルのチャンバーに弾薬を装填して、勤務するようになった。
勤務開始の点呼の際、警察官は、スライドを引いてマガジンから弾薬をチャンバーに送り込んで装填し、手動セフティを操作してロックする。勤務が終わると、砂が入った箱が片隅に置いてある部屋で、マガジンを抜き取り、スライドを後退させてチャンバー内の弾薬を取り出す。チャンバーが空になったことを確認したあと、デコッキング・レバーを使用せず、箱に銃口を向けてトリガーを引いて空撃ちをし、ハンマーを前進位置に戻す。
もし操作を誤ったり、不注意によってチャンバ−内に弾薬が残っていても、弾丸は砂に向かって発射され重大事故を防止できる。ハンマー・デコッキングを操作してハンマーを落とすと、仮に弾薬がチャンバーに残っていても発射されないのでその事に気付かれず、後になって暴発事故になる可能性がある。事故防止のため、砂箱に向かって空撃ちをして確認するのだ。
西ドイツの警察官は、通常1個の予備マガジンが支給される。予備マガジンのポケットがついたホルスターが支給される場合と、皮製のケースにマガジンを納めてポケットに入れて持ち運ぶ方法がとられた。
西ドイツの警察官が発砲するケースは少なくないが、市民を対象としたシビル・ポリッツアイがピストルを使用することはまれだ。射撃するケースは、人質をとった武装強盗など凶悪犯罪者に射殺命令が下った場合だ。人質事件などには、シュッツ・ポリッツアイが出動して、射撃する場合が多い。
8回にわたって、1930年代から今日までのドイツ警察ピストルの推移を解説してきた。
良く知られているワルサーモデルPPKピストル、モデルPPピストル、ワルサー・モデルP5ピストル、SIGザゥアー・モデルP6ピストル、H&KモデルP7ピストル以外にも、多種多用なピストルが、ドイツ警察によって使われてきたことがお判り頂けたことと思う。
もちろん、このリポートでドイツ警察が使用した全てのピストルをカバーできたとは考えていない。シューレビィッヒ・ホルシュタイン州警察やハンブルグ港湾警察が1960年代に使ったコルト(コルス:Korth)リボルバーのように限られた地域で、少量使用された製品までは紹介しきれなかった。
また、ババリア州警察の特別潜入捜査官のように、私物ピストルの使用を認められていた特殊な部署もあった。
さまざまなピストルが選択され、ドイツ警察によって使用された。現在のドイツ警察では、ヘッケラー&コッホ製のピストルが、警察の新世代制式ピストルとして、他を一歩リードしている。
新世代のポリマー・フレーム・ピストルが次世代ピストルとして注目され、SIGザゥアーProモデルP2009ピストル、ワルサー・モデルP99ピストルなどが、警察標準ピストルとして選定された。しかし、一足先に警察標準ピストルとして選定されたヘッケラー&コッホ・モデルP10ピストル(モデルUSPコンパクト)とその改良型のモデルP2000ピストルが明らかにリードしている。
ドイツ軍も新世代のヘッケラー&コッホ・モデルP8ピストル(モデルUSPピストル)を採用した。ドイツの官需ピストルは、ヘッケラー&コッホの時代お迎えつつあるのかも知れない。
終わりにあたって
History of German Police Pistols は2002年2月、Shooting Tips.comのスタートと同時に、6回の連載企画の予定で始まった。1ヶ月に1回掲載で夏には完結の予定であったが、結局、合計8回、数ヶ月に1回という変則的な掲載ペースとなり、約1年遅れでゴールにたどり着くことになった。
当初の企画内容はもっと短い文章で、ドイツの警察ピストルの推移を紹介するというものだった。ドイツは優秀なセミオートマチック・ピストルの生産拠点であり、ドイツ警察のピストルの推移を見ることで、公用セミ・オートマチック・ピストルに対する時代の要求の流れを映し出すことが出来ると思ったからだ。
しかし連載を進めるに従い、文章量は大幅に増え、当初の予定の3倍程度に膨れ上がってしまった。
歴史についての記述に多くの部分を割いたのは、銃の発展はそれぞれの時代背景を無視しては語れないからだ。
企画の進行する中、床井雅美はドイツBKA(ブンデス・クリミナル・アムト)に出向き、より詳しい情報を入手している。語るべき事は、まだまだ沢山ある。いつかこの企画を大幅加筆し、完全版としてまとめたいと思うが、それが実現するかどうかは判らない。
次の企画の準備は、床井雅美と共にすでに開始している。今度の企画も長期にわたるものとなるだろう。2003年秋までには、Shooting Tipsで連載を開始するつもりだ。

Chapter 1: 第二次世界大戦前,1930年代
1-1 Page 1 : Mauser M1914, Sauer & Sohn M1914, M1934
1-2 Page 2 : Sauer & Sohn M38(H), DREYSE
1-3 Page 3 : Walther PP, PPK, M1880 Revolver
Chapter 2 占領時代,1945-1949
2-1 Page1 : 占領,そして分裂, P08, Walther P-38
2-2 Page2 : S&W Military & Police, Unique M17/M17R, Enfield No.2 MKI
2-3 Page3 : スペイン内戦,Astra Model 300
Chapter 3 : ワルサー復活 1950-1969
3-1 Page1: 東西分裂、Manurhin Walther PP, PPK、FN M1910, M1922
3-2 Page2: MAB Model D, Walther PP, PPK、BKA, BGS
3-3 Page3: SIG P210-4
3-4 Page4: Walther P-1, Heckler & Koch 4
Chapter 4: テロの嵐 1970年代
4-1 Page1 : ミュンヘン・オリンピック・テロ事件、ドイツにおける反政府活動
4-2 Page2 : ドイツ警察武装強化
4-3 Page3 : Walther PP Super, SIG Sauer P230
Chapter 5: 9mm×19ピストル・トライアル
5-1 Page1: ドイツ警察新制式トライアル要求項目, ワルサーP38K
5-2 Page2 : SIGザウエル P220, ヘッケラー&コッホ P9S
5-3 Page3 : ワルサーP5, マゥザーHsP
5-4 Page4 : SIGザウエルP6(225), ヘッケラー&コッホP7, 第二回拡大西ドイツ警察制式ピストル・トライアル
Chapter 6: 東ドイツ “ドイツ民主共和国”
6-1 Page1: 東ドイツの興亡
6-2 Page2: 1950年代 CZ38, CZ27, P1001-0, P-08
6-3 Page3: 1960年代−1980年代、マカロフ, CZ45, Z, スチェッキン, PSM
Chapter 7: 統一ドイツ
page 7-1 ドイツ統一
page 7-2 新世代ピストルの採用 Heckler & Koch P8
page 7-3 P10, そして出遅れたワルサー P10, P99 U.S. SOCOM MK23, Heckler & Koch P10, Walther P99
page 7-4 新世代第二期 SIG Pro 2009, Heckler & Koch P2000, Glock 9M
Chapter 8 Conclusion 終章
page 8-1 軍事連絡部、市民警察の武装と国境警備隊の武装
page 8-2 ニーダーザクセン州警察戦後の武装
page 8-3 ニーダーザクセン州警察のライフルとマシンガン
page 8-4 ケルン警察の使用弾数、チャンバーへの装填
Appendix 1 : 追加資料1 ドイツ官需ピストルナンバー
Appendix 2 : 追加資料2 西ドイツ警察機構&採用ピストル 1979
Satoshi Maoka
June 25, 2003
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