The History of German Police Pistols ドイツ警察ピストル・ヒストリー Top page : Index
Chapter 7 Unified Germany
page 7-1 ドイツ統一
page 7-2 新世代ピストルの採用 Heckler & Koch P8
page 7-3 P10, そして出遅れたワルサー P10, P99 U.S. SOCOM MK23, Heckler & Koch P10, Walther P99
page 7-4 新世代第二期 SIG Pro 2009, Heckler & Koch P2000, Glock 9M

Pgage 7-4 : 新世代第二期
SIGザゥアー・モデルSIGプロP2009ピストル
ドイツ警察の要求する新世代の軽量化ポリマー・グリップ・フレーム装備のピストルを、SIGザゥアー社が発表したのは、ワルサー社よりさらに遅れ、1998年なってからだった。
SIGザゥアー社は、1994年に従来のモデルP220シリーズとまったく異なる新しい設計理念で、ポリマー・グリップ・フレーム付きのピストルの開発に着手した。
SIGザゥアー社が、ポリマー・グリップ・フレーム装備の新世代ピストルの開発に着手した時点で、すでに統一ドイツ軍の新世代ピストル・トライアルは開始されていた。
SIGザゥアー社は、開発をスタートさせた時点で、先行メーカーに水をあけれていたことになる。そこで、SIGザゥアー社は、統一ドイツ軍制式ピストルに選定されることにこだわらず、むしろ新世代のピストルを求める民間の一般ピストル・ユーザーにも注目して開発を進行させた。

そのため、SIGザゥアー社が、1998年に開発を終えて最初に発売したモデルは、ヨーロッパでもっとも一般的な弾薬の9mm×19(9mmパラベラム)を使用するものではなく、アメリカでポピュラーな.40S&W口径弾薬を使用するモデルだった。
アメリカのピストル・ユーザーは、9mm×19弾薬の威力に懐疑的だ。9mm×19弾薬は、1発で相手を確実に倒すのに不充分と考えられ、思わぬ反撃を受ける危険が残るという意見だ。とくに、麻薬常習者の場合、9mm×19弾薬の弾丸を撃ちこまれても、痛みを感じることなく反撃するケースがある。
麻薬取り締まりなどに従事するアメリカの警察関係者は、物理的に相手に対して大きなダメージが与えられる弾薬を選択することが多い。より威力が高い弾薬の選択には、大口径でストッピング・パワーの大きな.45ACPや10mm口径の弾薬がある。だがこれらの弾薬を使用するピストルは必然的に大きくなり、かさばって携帯に不便だ。
それに対し、.40S&W弾薬は、9mm×19弾薬を使用するピストルとほとんど変わらない大きさで設計でき、ピストルの小型化が可能だ。
そこで携帯性にすぐれ、しかも、ストッピング・パワーの大きな.40S&W弾薬を使用するピストルを選択するアメリカの警察関係者が多い。警察用として選定されると、一般ピストル・ユーザーにも、信頼性のあるピストルとして認知されやすく、セールスを有利に展開できる。.40S&W弾薬は、アメリカで最も人気の高い弾薬になっている。
SIGザゥアー社は、アメリカで.40S&W弾薬が発売された際、もともと9mm×19弾薬を使用すべく設計されたモデルP226ピストルを、.40S&W弾薬を使用するものに改造するため、大きな困難を経験した。
9mm×19弾薬より圧力の高い.40S&W弾薬に対して、スライドのロッキング部分の強度が不十分だった。そのため特殊な焼入れ加工で、スライドの一部を強化して耐久性を高める必要があった。
ピストルを設計の際、はじめから.40SWSa.40S&W弾薬用に設計されたピストルを、より威力の低い9mm×19弾薬用に改造することは簡単で無理がない。SIGザゥアー社がアメリカの一般ピストル・ユーザーを意識して、新世代のポリマー・グリップ・フレーム装備のピストルを、最初から.40S&W口径で設計・発売した大きな理由の一つだった。
その後、SIGザゥアー社は、独自の.357SIG弾薬を開発して発売した。.357SIG弾薬は、.40S&W弾薬のケース(薬莢)をネック・ダウンし、9mm(.357)口径の弾丸を装備させたものだ。発射薬の量が増大した分、弾丸の初速が高速化し、同じ9mm口径でも9mm×19に比べて高威力となった。
SIGザゥアー社は、ポリマー・グリップ・フレーム装備で、.40S&W弾薬や.357SIG弾薬を使用する新しいセミ・オートマチック・ピストルにモデルSP2340ピストルの名前を与えた。新しい4桁ナンバーの2000シリーズだ。
モデルSP2340ピストルの名称は、SP(ゼルブストラーデ・ピストレ/セルフローディング・ピストル)セミ・オートマチック・ピストル2000シリーズで、.357SIG弾薬を使用できることを表わした"3"と,.40S&W弾薬を使用できることを表わした"4"を組み合わせた命名だ。
先行して.40S&W弾薬を使用するモデルを発売したSIGザゥアー社は、翌年、9mm×19弾薬を使用するモデルSP2009ピストルを発売した。モデル2009ピストルは、モデルSP2000ピストル・シリーズ中で、9mm×19弾薬を使用することを表わした命名だ。
SIGザゥアー・モデルSP2000ピストル・シリーズは、一般にSIGプロ(SIG pro)と呼ばれる。それに対し、従来のP220ピストル・シリーズは、一般にクラシック・モデルと呼ばれるようになった。
.357SIG弾薬と.40S&W弾薬を使用するモデルSP2340ピストルは、バレルを除くと全く同一で、バレルを交換すれば、両方の弾薬を使用することが可能だ。
SIGプロ・シリーズ・ピストルの基本的なメカニズムは、従来生産してきたモデルP220ピストル・シリーズと変わらない。
多くのメーカーが、ポリマー・フレーム・ピストルを設計する際、新しい素材でグリップ・フレームを製作するだけでなく、撃発メカニズムなどもまったく新しい形式で設計するケースが多い。
ポリマー・グリップ・フレーム装備のピストルの先駆者だったグロック・モデル17ピストルを意識しすぎるあまり、スタンダードなハンマー露出式で、オーソドックスなコンベンショナル・ダブル・アクションを組み込むことをきらう傾向にある。
グロック・モデル17ピストルは、セミ・ダブル・アクションとでもいうべき、変則ダブル・アクション・ストライカー方式(セイフ・アクション)を組み込み、手動セフティを取り除いた。
グロック社が提唱したこの撃発機構は、チェコのCZモデル100ピストル・シリーズ、S&Wモデル・シグマ・ピストル・シリーズ、ワルサー・モデルP99ピストル・シリーズ、FNモデル・ファイブ・セブン・ピストルなど多くのピストルの設計に多大な影響を与えた。
これに対してドイツで設計されたH&K社のモデルUSPピストルやSIGザゥアー社のモデル2000ピストル・シリーズは、平凡だが、従来から信頼性が高く定評のあったコンベンショナル・ダブル・アクションのハンマー露出式に回帰した。それまで独創性と革新性を追及してきたH&Kが、逆に伝統的で平凡なコンベンショナル・ハンマー・メカニズムに回帰したことは興味深い。
SIGザゥアー社も、ポリマー・グリップ・フレーム・ピストルを開発するにあたり、冒険をせず、評価の高い従来のハンマー露出式で、コンベンショナル・ダブル・アクションを組み込み、従来モデルの延長線上で全体デザインを決定した。
強いて特徴をあげと、交換可能なグリップを採用したことだ。多くのポリマー・グリップ・フレーム・ピストルは、グリップ・パネルもフレームと一体で成型する。一体成型なので、グリップ部分は、みな同じ大きさとなる。ピストル・ユーザーの手が大きければ、フレームに巻くラバー製のオプション・アダプターが入手できる。しかし、反対にグリップが大きすぎる場合、有効な対策はない。
ワルサー社のモデルP99ピストル・シリーズは、グリップのバック・ストラップを交換ができ、グリップ部分の大きさを変換できる。
SIGザゥアー社は、従来の金属製ピストルのグリップ部分と同じく、グリップ・パネル部分を別部品とし、交換できるようにした。グリップ・フレームの強度の問題を別にすれば、ポリマー製でも、グリップ・パネルをフレームと一体化させる必要はない。
SIGザゥアー社は、大きさの違うグリップ・フレームの後方を包み込むように装着するラップ・アラウンド・グリップ・パネルを2種類供給している。グリップ・パネルを着脱式にした結果、ハンマーやトリガー・メカニズムを組み込む作業も、かえって容易となった。
従来のモデルP220ピストル・シリーズに組み込まれていたダブル・アクションのトリガー・システムは、トリガー・プルが重いと不評だった。
新たに設計されたモデルSP2000シリーズ・ピストルは、ダブル・アクションのトリガー・プルが、かなり軽く動くように改良された。
フレームの前端部には、アクセサリー・レールが設けられた。H&K社のモデルUSPピストル以来、多くの製品にアクセサリー・レールが標準装備になっている。アクサリー・レールには、オプションのレーザー・エイミング・モジュールやフラッシュ・ライトなどを装着可能だ。SIGモデルSP2000ピストルに装備されているアクセサリー・レールは、独特な形状をしており、汎用のアクセサリーを装着することができず、SIGザゥアー社の提供する専用アクセサリーしか装着できない。
モデルSP2000ピストル・シリーズの基本的な操作は、従来のモデルP220ピストル・シリーズと 変らない。ハンマー露出式で、コンベンショナル・ダブル・アクションの撃発機構が組み込まれ、ハンマー・デコッキング・レバーがフレーム左側面に装備されている。また、ハンマー・アッシーを外し、代わりにDAOユニットを組み込んでダブル・アクション・オンリーに変換することも可能だ。
トライアルに遅れて発表されたモデルSP2000ピストル・シリーズも、ドイツ警察の標準ピストルに選定された。だが、現時点までに、SIGモデルSP2000ピストル・シリーズの採用を決定したドイツの州警察や組織はない。ワルサー社のモデルP99ピストル・シリーズ同様、その完成時期が遅すぎた。
H&KモデルP2000ピストル
H&K社は、2001年にモデルUSPピストルに似た、新型のポリマー・グリップ・フレームを装備させたセミ・オートマチック・ピストルを発表した。この新型ピストルは、モデルP2000ピストルと名付けられた。
H&KモデルP10ピストルがドイツ警察の標準ピストルとして選定されると、警察官の中からグリップの大きさに関する不満の声が出た。

弾薬装填数を大きくしたダブル・カアラム・マガジンを組み込むと、セミ・オートマチック・ピストルのグリップ部分が、どうしても太くなってしまう。従来のシングル・カアラム・マガジンを組み込んだモデルP5ピストル、モデルP6ピストル、モデルP7ピストルなどを使用してきた警察官にとって、モデルP8, P10ピストルのグリップは、やや太く感じられた。
手が小さい警察官にとって、グリップの大きさは、射撃精度を上げるうえで大きな問題となる。とくに近年、ドイツで女性警察官の数が増えていることも、一種類しかないグリップの大きさが問題になった。
事件の被疑者や被害者が女性の場合、男性警察官によるボディ・チェックをおこなうと、あとでセクシャル・ハラスメントで訴えられてしまう可能性もある。女性が関係した犯罪も増加している現代社会では、女性警察官の存在は不可欠となった。そのような社会状況を反映して、近年ドイツでは、女性警察官が大幅に増員された。現在ドイツ都市部でのパトロール巡回には、男女警察官がペアで警乗するのが普通になっている。
一般的に女性警察官の手は、男性警察官に比べて小さい。だが、基本的な武装は、男女で区別するわけにゆかず、男性警察官と同じものが支給される。基本武装のピストルも、男女共に同一のものが支給される。
後発のワルサー・モデルP99ピストルやSIGザゥアー・モデルSP2009ピストルは、ポリマー・グリップ・フレームながら、グリップの太さを調節することが可能で、手の小さな女性警察官に対して、グリップを細くすることができ好都合だ。
ドイツ警察が標準ピストルに選定したモデルP10ピストルは、先行モデルだったこともあり、グリップ・パネルやグリップ・バック・ストラップなどを交換できる機能が込み込んでいなかった。
H&K社は、グリップの大きさを変更できる機能を盛り込んで、モデルP2000ピストルを設計した。モデルP2000ピストルは、ポリマー・グリップ・フレームの後部が、ワルサー社のモデルP99ピストルと同様に交換可能になり、グリップの大きさを変更することができるようになった。
モデルP2000ピストルは、トリガー・メカニズムにいくつかのバリエーションがある。なかでも特徴的トリガー・メカニズムが、ダブル・アクション・オンリーで、LEM(Low Enforcement Modification)と名付けられた撃発メカニズムだ。
LEMは、単なるダブル・アクション・オンリーの撃発メカニズムではない。ハンマーが半分コックされたような状態で、前進して停止する。グロック・モデル17ピストルと同じ発想で設計された変則ダブル・アクションだ。だが、モデルP2000ピストルの撃発アクションはグロック・モデル17ピストルと異なり、不発が出た場合そのままトリガーを再び引くと撃発することが可能性だ。LEMアクションは、先行するH&K社のモデルUSPピストルにも組み込まれた。
グロック・モデル17ピストルは、以降のセミ・オートマチック・ピストル設計を大きく変えた。ポリマーでグリップ・フレームを成型することもさることながら、組み込まれた変則ダブル・アクション機構も以後のピストルの設計に大きな影響をあたえた。
オートマチック・ファイアリング・ピン・ロックを唯一の安全機能とし、手動セフティを排除して即応性を重視し、一発目をダブル・アクションで、続く2発目以降をシングル・アクションで射撃する。
この形式は、即応性において優れているものの、初弾と2発目以降のトリガー・プルに差が出る欠点があった。極限状態の銃撃戦で、このトリガー・プルの違いは、あまり好ましいことではない。常に安定した射撃を望むなら、トリガー・プルが常に同一であることが好ましい。トリガー・プルが同一であっても、毎回通常のダブル・アクションでトリガーを引く必要があるのでは、安定した正確な射撃が期待できない。
そこで注目されたのが、変則ダブル・アクションだ。機能上から、シングル・アクションほどトリガー・プルが軽くないが、通常のダブル・アクションと比べると、はるかに軽いトリガー・プルで撃発できる。
変則ダブル・アクション撃発機構は、毎回同じ比較的軽いトリガー・プルで撃発可能な利点がある。ワルサー社のモデルP99QAピストルや,H&K社のモデルP2000ピストルは、先行してこのアイディアを取り入れたグロック・モデル17ピストルに近づいた設計がとられている。
グロック・モデル9Mピストル
第二次世界大戦後戦後、ドイツ警察は、外国製セミ・オートマチック・ピストルを多数使用した。ドイツでピストルの再 優秀なグロック・ピストルも、ドイツの警察機構の一部で採用された。
生産が可能になると、1960年代以降、警察官の標準武装ピストルとして国産セミ・オートマチック・ピストルの占める割合が大きくなった。優れたピストルを数多く生産してきた国のプライドもあったことだろう。
SIGザゥアー社は、隣国スイスとの合弁会社だが、モデルP6ピストルへの改良は、ドイツ側のザゥアー社が改良・改造を全面的に担当して完成された製品だった。
ドイツ国境警備隊(ブンデス・グレンツ・シュッツ:BGS)の中に組織された、有名な対テロ部隊のGSG9(グレンツ・シュッツ・グルッペ・ノイン)は、その創設当時から国産の武装にこだわらず、優れた武器なら外国製でもすすんで採用し使用してきた。例えば、GSG9は、S&Wダブル・アクション・リボルバーを多数使用していた時期もある。
S&W コンバット・マスターピースや、ミリタリー&ポリスの357Magnum仕様だ。護衛任務時にS&Wチーフス・スペシャルを使用することもある。
GSG9のピストルとして知られているものはヘッケラー&コッホP7だ。スクイズ・コッカーにより、素早く1発目からシングル・アクションの軽いトリガー・プルで射撃の出来るP7はGSG9の標準武装ピストルとして、長く使用されている。
1990年代になるとGSG9は、オーストリア製グロック(Glock) モデル17ピストルを採用し、9Mピストルの正式名称を与えた。

対テロ制圧戦闘を任務の大きな柱とする特殊部隊のGSG9は、シンプルなグロック・モデル17ピストルの操作性と、機能に高い評価を下し、政府警察機構のなかで単独の採用を決定した。
グロック モデル17ピストルは1982年、オーストリア軍にモデルP80として採用され、25,000挺が納入された。その後、アメリカ市場に上陸、ジョージア州警察に採用されたことを最初に、全米に広がっていった。ポリマーフレームは空港のX線チェックに引っかからないというウワサから、ハイジャッカー・スペシャルという不名誉な呼ばれ方もした。またリビア軍にも納入していたことからもテロリストのピストルである、という認識も一部にはあった。
しかし、その速射性と、戸惑うことのない優れた操作性、シンプルな構造と安全性、そして劣悪な環境にあっても機能する強靭性からグロックピストルの評価は圧倒的に高い。1999年までに200万挺以上が世界中で販売された。そのうち65%にあたる160万挺はアメリカ市場で販売されたものだ。
ドイツの新世代ポリマー・グリップ・フレーム装備のピストルは、最終的に、ワルサー社のP99QAピストルもH&K社のモデルP2000ピストルも、グロック社が提唱した変則ダブル・アクションに近いものを組み込まれるようになった。それだけ、グロック・モデル17ピストルの設計は、次世代ピストルに対する先見性をもっていたことを良く示している。
次回はThe History of German Police Pistols 最終章をお送りする。

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Feb.23, 2003
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