The History of German Police Pistols ドイツ警察ピストル・ヒストリー Top page : Index

Capter 7 Unified Germany 統一ドイツ

page 7-1 ドイツ統一
page 7-2 新世代ピストルの採用 Heckler & Koch P8
page 7-3 P10, そして出遅れたワルサー  P10, P99 U.S. SOCOM MK23, Heckler & Koch P10, Walther P99
page 7-4 新世代第二期  SIG Pro 2009, Heckler & Koch P2000, Glock 9M

Page 7-3 : P10, そして出遅れたワルサー

SOCOMピストル, H&K P10
 1990年2月、アメリカ海軍に所属する特殊部隊シール(SEAL)の特殊武装ピストルとして、従来使用されていたU.S.NAVY MK22 MODOピストルに代わる、新世代のスペシャル・オペレーション・フォース・オフェンシブ・ピストル(Special Operation Force Offensive Pistol)の開発が始まった。
 開発計画当初に湾岸戦争が勃発し、開発計画に遅れが出たが,1991年8月、コルト社とH&K社が選定メーカーの指定を受けた。
 開発プロジェクトは、オフェンシブ・ハンドガン・ウェポン・システム(Offensive Handgun Weapon System)と名付けられた。
 SOCOMピストルは、.45ACP弾薬を使用し、.45ACP+P強装弾6,000発以上の耐久性を備えていること。サウンド・サプレッサー(消音・減音装置)とレーザー・エイミング・モジュールを装着可能なこと。コンベンショナル・ダブル・アクションのトリガー・システムを装備していること。アンビ・セフティ(左右どちらの手でも操作可能な手動セフティ)を装備していること。ハンマー・デコッキング・レバーを装備していることなどの性能として要求された。
 コルト社は、モデル・ダブル・イーグル・ピストルに良く似た外観を備え、ロータリー・バレル・ロッキングを装備させた試作ピストルを試作したが性能が整わず、H&K社の試作したピストルに敗れ、トライアルのphase1で姿を消した。

 アメリカのオフェンシブ・ハンドガン・ウェポン・システムにH&K社が提出した試作ピストルは、新開発の野心作モデルUSPピストルをベースに,発展させた製品だった。
 H&K社は、G3アサルト・ライフルやそれを発展させたウエポン・システムのMP5サブ・マシンガンで大きな成功を収めていた。しかし、ピストルの分野では、大きな成功作がない。
 H&K社が開発したモデルP9Sピストル、モデルVP70ピストル、モデルP7ピストルなどは、いずれも既存のピストルと大きく異なる斬新な設計がとられていた。だが、一般民間ピストル・ユーザーにとってユニークすぎて必ずしもビジネスとして成功したと言えなかった。
 一般的にアメリカ市場では、グロック・モデル17ピストルを除くと、比較的に伝統的で保守的なピストルが売り上げを伸ばしていた。
 H&K社は新型ピストルを開発するにあたり、市場調査をおこなって、アメリカ人が好む理想的なピストルを見つけ出した。
 アメリカ人の考える理想的なピストルとは、.45ACP弾薬を使用すること。手動セフティがフレーム側の操作しやすい位置にあり、押し上げてON、押し下げてOFFとなるコルト・ガヴァメント・モデルと同じ操作性をもつこと。撃発機構は、コンベンショナル・ダブル・アクション・のトリガーを備え、ハンマーを起こした状態でロックできるコック&ロックが可能なこと。グロック・モデル17ピストルと同様にポリマー・フレームを備えていることなどだった。
 コルト・ガバメント・モデル、CZモデル75ピストル、グロック・モデル17ピストルなどは、部分的には,それらの特徴を満たしていた。言い換えると、これらの特徴を掛け合わせて組み込めば、アメリカの民間市場で高い評価を得る理想的なピストルが出来る。
 アメリカをはじめとする一般のピストル・ユーザーは、構造や操作が複雑なローラー・ロッキング・システムも、スクィーズ・コッキングも、ロータリー・バレル・ロッキングも求めてはいなかった。単純かつじゅうぶんにタイムプルーフされたブラゥニング設計のショート・リコイル・バレル・アクション(ティルト・バレル・ロッキング)を装備すればよい。H&K社は大きな回り道をしていたのだ。
 リサーチの結果を反映させて、理想的なピストルとしてモデルUSPピストルの開発が進められた。モデルUSPピストルの開発中に、アメリカ軍がオフェンシブ・ハンドガン・ウェポン・システムのトライアルを開始することがH&K社に伝えられた。
 オフェンシブ・ハンドガン・ウェポン・システムの要求スペックは、レーザー・エイミング・モジュールの装着やサウンド・サプレッサーを装備させる部分を除けば、開発中のモデルUSPピストルの目標スペックにきわめて近いものだった。
 SOCOMピストルは、特殊部隊の武装用のため、最終調達数がわずか8,000挺にすぎなかった。単独のビジネスとしてみると、SOCOMピストルは要求数が少なすぎて,割にあうビジネスでなかった。
 1995年7月、最終的にアメリカ海軍に選定されたH&K試作ピストルは、アメリカ軍特殊部隊用制式ピストル・モデルMK23 MODO U.S. SOCOMピストルの制式名が与えられて製造契約が結ばれた。
 このアメリカ軍との契約は、ビジネスとしてこそ大きくなかったものの、ピストルの分野で必ずしも大きな成功を収めていなかったH&K社にとって、願ってもないことだった。とくにアメリカ軍特殊部隊が、H&K社製のピストルを採用したという肩書きは、ピストル・マーケットで大きなブランド・インパクトをもつ。
 モデルUSPピストル開発中におこなわれたSOCOMピストルへの改良作業は、最終的なモデルUSPピストルの設計デザインにも大きな影響を与えた。
 一般市販のH&KモデルUSPピストルは、SOCOMピストル選定・採用に先立って1994年に発売された。
 はじめ9mm×19(9mmパラベラム)弾薬を使用するモデルが発売されたが、翌年、.45ACP弾薬を使用するモデルが追加された。
 ドイツ連邦軍は、1995年に完成間もない9mm×19弾薬を使用するH&KモデルUSPピストルを新しい制式ピストルとして採用した。H&KモデルUSPピストルに与えられた制式名はP8(ピストル8型)だ。モデルP8ピストルは、一般市販されている標準的なモデルUSPピストルと手動セフティ・レバーのアレンジメントが異なる。
 一般市販型の標準的なモデルUSPピストルは、セフティ・レバーを押し上げるとON、押し下げて水平位置にするとOFFになり発射が可能となる。さらにセフティ・レバーを押し下げると、コックされていたハンマーが安全にデコッキングされる。手動セフティ・レバーから指を離すと、自動的に水平位置に戻り、ダブル・アクションで発射可能になる。
 これに対し、ドイツ連邦軍用のモデルP8ピストルは、セフティ・レバーを押し上げるとセフティがOFFとなり、セフティ・レバーを押し下げて水平にするとセフティがONになってロックされる。セフティ・レバーをさらに押し下げるとハンマーがデコッキングされる。これらの手動セフティの操作方向は、従来の軍制式だったワルサー・モデルP1ピストルに近い。
 モデルP1ピストルの手動セフティ・レバーは、スライドに装着されている。セフティ・レバー操作は、押し下さげるとセフティがONになり、ロックされ、同時にハンマーがデコッキングされる。手動セフティ・レバーは、押し下げられた位置で停止し、トリガーも後退したままで停止する。ピストルを発射するには、セフティ・レバーを指で押し上げ、セフティを解除する必要があった。
 ドイツ連邦軍は、新制式ピストルの採用にあたり、モデルP1ピストルの手動セフティ操作に慣れた兵士が、誤ったセフティ操作を行なって事故を起こすことを恐れた。手動セフティ・レバーの設置位置はスライド側面からフレーム側面に移動したものの、セフティ・レバー操作そのものに最大の類似性を持たせた。
 ドイツ連邦軍が、モデルP1ピストルの後継機としてH&KモデルUSPピストルを軍制式モデルP8ピストルに選定・採用したことが、ドイツ警察にも大きな影響を与えた。
 新たな警察官武装用標準ピストルを求めていたドイツ警察も、H&KモデルUSPコンパクト・ピストルをテストし選定・採用した。

 ドイツ警察が、標準ピストルとして選定・採用したモデルは、ドイツ連邦軍が選定・採用したモデルと異なり、バレルとスライドを短縮したコンパクト・モデルだった。ドイツ警察は、標準ピストルとして選定・採用したH&KモデルUSPコンパクト・ピストルにP10(ピストル10型)の制式名を与えた。
 Part 5で、ドイツの警察標準ピストルが、政治的に軍用ピストルより威力の低いモデルが選定されていることを説明した。
 1990年代になっておこなわれた新標準ピストルのトライアルでも、再び同じ政治判断が働いて標準ピストルが選定された。以前のトライアルでモデルP5ピストル、モデルP6ピストル、モデルP7ピストルがそうだったように、軍制式ピストルと同じ9mm×19(9mmパラベラム)弾薬を使用するものであっても、バレルを短くすることで、わずかだが軍用ピストルに比べて性能を低下させてある。
 H&KモデルUSPピストルを小型化した製品は、民間市場でモデルUSPコンパクト・ピストルとして販売された。モデルUSPコンパクト・ピストルには、ハンマー・スパー(指掛け部)を切り落とした製品とハンマー・スパー付きの製品の2種類がある。ドイツ警察が標準ピストルとして選定したモデルP10ピストルは、ハンマー・スパーがついた製品だ。手動セフティ・レバーは、ドイツ連邦軍が制式としたモデルP8ピストルと同じ操作方式のものが装備された。

ワルサー・モデルP99ピストル
 ワルサー社は、第二次大戦以前の1932年に、ダブル・アクション・トリガー・システムを装備させたモデルPPピストルを開発して大きく発展した会社だ。ワルサー社の開発したモデルPPピストルと、モデルPPKピストルは,ナチス・ドイツ警察に採用され、ナチ党の標準制式ピストルに採用された。
 モデルPPピストルやモデルPPKピストルに続いて、9mm×19(9mmパラベラム)弾薬を使用するモデルP38ピストルが、再軍備を始めたドイツ軍の制式ピストルに採用され,ワルサー社は、ピストル・メーカーとしての地位を不動のものとした。
 第二次世界大戦後、敗戦国となったドイツは、軍事工場が解体され、連合国によって銃砲の生産が禁止された。
 だが、連合国の中にも高性能のドイツ製ピストルを必要とする国があったため、いち早くフランスのマニューリン社によって、ワルサー・ピストルのライセンス生産がおこなわれた。
 占領が終わると、独立した西ドイツは、再生産が始められたワルサー・モデルPPピストルやモデルPPKピストルを、警察標準ピストルとして再び採用した。ドイツ連邦軍も、ワルサー・モデルP38ピストルの改良型モデルP1ピストルを選定・採用した。ワルサーの復活だ。
 戦前ナチス・ドイツと密接な関係で発展してきたワルサー社が、戦後の西ドイツでも、公用官需ピストル納入リーダーとしてかえり咲いた。だが、ワルサー社の官需ピストル・リーダーの座は、永遠ではなかった。
 1970年代、ドイツ警察ピストル・トライアルに、ワルサー社は、モデルP38ピストルを改良・発展させたモデルP5ピストルを提出して選定された。このトライアルの結果、SIGザゥアー社のモデルP6ピストルや、H&K社のモデルP7ピストルが、ワルサー・モデルP5ピストルと共に選定され、それらのピストルの中から各州警察組織が、独自に制式ピストルを選択採用するという方法がとられた。
 この警察新制式標準ピストル・トライアルは、従来のワルサー社による公用ピストル独占状態が崩れたことを示している。旧西ドイツ11州の15警察組織のなかで、ワルサー社のモデルP5ピストルを警察標準ピストルに採用したのは、わずかにラインランド・ファルツ州警察とバーデン・ブルッテンブルグ州警察の一部だけだった。
 旧西ドイツ警察ピストル市場の多くを失ったワルサー社は、1970年代中期から始まったアメリカ軍の新制式ピストル・トライアルに復活をかけた。アメリカ軍の制式ピストルに選定・採用されれば、市場に与えるインパクトは大きく、宣伝効果は計り知れない。
 ワルサー・モデルP5ピストルではアメリカ軍の新制式ピストルの要求スペックを満たすことができないところから、ワルサー社は、オットー・レパ氏が新たに開発・設計したモデルP88ピストルをトライアルに提出した。
 ワルサー・モデルP88ピストルは、それまでの回転式ロッキング・ラグ方式(プロップ・アップ・ロック)をやめ、単純なティルト・バレル・ロックを組み込んだ。マガジンは、装填弾薬数の多いダブル・カーラム・マガジンをワルサー社としては初めて採用した。
 だが、トライアルの厳しいテストに耐えられず、ワルサー・モデルP88ピストルは、トライアルの比較的初期の段階で敗退してしまった。
 アメリカ軍の新制式ピストル・トライアルは、10年の歳月をかけて各種ピストルを比較検討された。最終的に、1985年ベレッタ・モデルM92Fピストルが選定・採用されアメリカ軍新制式ピストルになった。トライアルの最後までベレッタ社と制式ピストルの座を争ったのは、ドイツとスイスの合弁企業 SIGザゥアー社だった。もはやワルサー社は、ドイツを代表するピストル・メーカーではなかった。
 アメリカで新制式ピストル・トライアルがおこなわれているさなかの1983年、第二次世界大戦後ワルサー社を再建したカール・ハインツ・ワルサー氏が他界した。彼が他界する以前にワルサー・モデルP88ピストルは、アメリカ軍ピストル・トライアルからすでに敗退していた。
 ワルサー・ファミリーの遺族が会社の経営権を引き継いだが、官需ピストルの受注減少で会社の業績は悪化、遺族は銃器ビジネスに対する興味を失ってしまった。
 ワルサーはその後、モデルP88ピストルをコンパクト化させ、またスライド上にセフティレバーを復活させたワルサーモデルP88コンパクトを生産した。この当時、セフティレバー付きモデルへの要求が市場にあったとは思えない。

 そして1994年、ワルサー社の経営権がドイツの空包ピストル・メーカーのウマレックス・グループ(UMAREX)に移った。
 直後に登場したものがワルサーモデルP88ポリスだ。モデルP88コンパクトをドイツ警察ピストルの要求スペックのひとつ、セフティ解除動作なしに射撃が出来ることを満たすべく、スライド上のセフティ・レバーをデコッキング機能のみとした。このモデルが警察の認可を受けたかどうか、いまひとつ明確ではない。警察もドイツ軍も新型ピストルへの切り替えようとしていた時期であり、トライアルに提出しようと試みたと思われる。しかしフレームはポリマーではなく、要求スペックを満たしてはいなかった。

 新たにワルサー社の経営権を獲得したウマレックス・グループは、すぐにワルサー・ブランドを復活させるために活動を開始し、1996年、新世代ピストルのモデルP99ピストルを開発した。
 ワルサー社は、オーストリアのステアー社のAUGアサルト・ライフル設計チームの一員だったホルスト・ウェスプ氏をヘッド・ハンティングし、設計部門に迎えてモデルP99ピストルの開発にあたらせた。
 ウェスプ氏は、モデルP99ピストルを開発するにあたり、市販されている各種のポリマー・フレームを装備させたピストルを比較検討した。
 それら製品の中で、とくに成功を収めていたオーストリアのグロック・ピストルと、ドイツのH&KモデルUSPピストルに注目した。ストライカーを組み込み、セイフ・アクションを装備したグロック・モデル17ピストルと、コンベンショナル・ダブル・アクションの撃発機構を組み込んだH&KモデルUSPピストルの利点と欠点を分析し、理想のピストルの開発を目指した。
 最終的にワルサー・モデルP99ピストルは,ストライカーによる撃発方式で設計された。ストライカー方式のほうが、バレルの軸線をグリップを近づけることが可能で、発射の際の銃の跳ね上がりを小さくできるからだ。ハンマー露出式のSIGザゥアー・モデルP220ピストル・シリーズやS&W社のダブル・アクション・セミ・オートマチック・ピストルは、バレルの軸線とグリップした手の間隔が大きい。
 発射の際、銃の跳ね上がりが小さければ、素早く次の照準と射撃が可能になる。接近戦で相手を確実に無力化する2発の弾丸を素早く撃ちこむダブル・タップ(タップ・タップ)射撃の際、反動の少なさはとくに有利に作用する。
 ストライカー撃発方式を組み込んだ現代ポリマー・グリップ・フレーム装備のピストルの大半は、毎回ダブル・アクションでトリガーを引くダブル・アクション・オンリーで射撃する。S&W社のモデル・シグマ・ピストル、CZモデル100ピストルなどがその好例だ。
 これらのピストルは、毎回ダブル・アクションで長い距離トリガーを引く必要があり、独立したセフティが装備されていなくても、不慣れな射手が比較的安全に射撃することが可能だ。反面、どうしても連射スピードが落ち、また、トリガー・プルが長い結果、正確な射撃に不向きと言われる。
 グロック・モデル17ピストルには、セイフ・アクションと呼ばれる変則的なダブル・アクションが組み込まれている。セイフ・アクションは、通常のダブル・アクションよりトリガー・プルが軽く、また引く距離も短い。さらに連射するときトリガーを完全に前進させず、少し戻しただけで再度引くシングル・アクションのようなトリガー・プルも可能になっている。
 一方、独立した手動セフティを備えていないから、慣れていない射手が、ホルスターへの出し入れの際に、誤ってトリガーを引き暴発させる危険が残る。
 ワルサー社が開発したモデルP99ピストルは、ストライカーが組み込まれているものの、コンベンショナル・ダブル・アクションだ。
 初弾は、ダブル・アクションでトリガーを引いて撃発する。2発目からは、ストライカーが後退して停止するため、シングル・アクションで射撃する。この構造によって、連射する場合、2発目から正確な射撃が素早く可能になった。最初の弾薬を射撃する場合、ストライカーをコックして、正確な射撃をシングル・アクションでおこなうこともできる。スライドを約15mm後退させると、初弾発射前にストライカーをコックすることが可能だ。コックされたストライカーは、スライド上方の左側面にあるデコッキング・ラッチを押せば、安全にデコッキングできる。
 ワルサー・モデルP99ピストルが目指したのは、ストライカー方式でありながら、ハンマー露出式と同じ操作が可能なピストルだった。

 ワルサー・モデルP99ピストルの特徴のひとつに、独特な形をしたグリップをあげられる。ポリマー・グリップ・フレームのピストルは、ほとんどがグリップ・フレームとグリップ・パネルが一体で、ピストル・ユーザーの手の大きさ違いに対する配慮がかけていた。 ワルサー・のモデルP99ピストルは、人間工学を取り入れた形状のグリップを設計する際に、グリップ・フレームのバック・ストラップ部分を交換式にした。この交換できるバック・ストラップには、大、中、小の大きさの異なる3種類が用意され、これを交換すると手の小さなユーザーも大きなユーザーも、ある程度まで握りやすいグリップに調整することが可能になった。
 ポリマー・グリップ・フレームの先端部分には、レーザー・エイミング・モジュールや、フラッシュ・ライトなどを装着できるアクセサリー・レールが装備された。最初にアクセサリー・レールを量産型に標準装備させたのは、ドイツのH&KモデルUSPピストルだったが、今では、アクセサリー・レールが多くの現代ポリマー・グリップ・フレームつきピストルの標準装備になりつつある。

 メカニズム面から見ると評価すべき点も多いワルサー・モデルP99ピストルだが、開発時期が遅すぎた。アメリカの警察は、すでに警察武装用ピストルとして、グロック社、ベレッタ社、S&W社、SIGザゥアー社、H&K社などの製品によって市場は満たされてしまっていた。
 地元の統一ドイツ連邦軍や統一ドイツ警察も新型標準ピストルを選定した直後だった。ワルサー社は、民間のユーザーに向けて発売したが、官需ピストルとして採用されたことがないことから、販売成績面で成功しているとは言えない。

   

 アメリカ市場向けにワルサー・モデルP99ピストルは、.40S&W弾薬を使用する製品を追加した。映画の世界で007ジェームズ・ボンドがワルサー・モデルPPKピストルからモデルP99ピストルに切り替えたが、かつての007ジェームス・ボンドがモデルPPKピストルを映画で使用した時のような大ブームを起こすまでにはならなかった(このときのPPKブームはヨーロッパが中心だった。アメリカでは、007のおかげでPPKが良く売れたという事実はない。)
 ワルサー社は、モデルP99ピストルの発売後、ダブル・アクション・オンリーの撃発機構を組み込んだモデルP990ピストルも発売した。モデルP990ピストルは、リボルバーになれた警察官向けに改良された製品だ。リボルバーからセミ・オートマチック・ピストルに変更する際、誤ったトリガー操作による事故を防止するうえで有効だ。
 反面、毎回ダブル・アクションでトリガーを引いて射撃するところから、命中精度が低下する恐れがある。同様のダブル・アクション・オンリーの機構が組み込まれたピストルは、ポリマー・グリップ・フレーム装備のストライカー形式ピストルに多く見られる。また、コンベンショナル・ダブル・アクション・セミ・オートマチック・ピストルの多くがそのバリエーションとして製品化している。
 モデルP990ピストルは、ダブル・アクション・オンリーなので、デコッキング・ラッチが装備されておらず、フラットなスライドに交換された。
 続いて開発された製品が、モデルP99QAピストルだ。コンベンショナル・ダブル・アクションでなく、グロック・モデル17ピストルのセイフ・アクションに似た変則ダブル・アクションが組み込まれている。ストライカーは、常に途中までコッキングされた状態でブリーチ内に停止しており、トリガーを引くと、通常のダブル・アクションより軽く、スムースに引いて発射することが可能だ。
 製品名のQAは、クイック・アクション(Quick Action)を意味する。クイック・アクションの欠点は、不発が出た際に通常のダブル・アクションのように再びトリガーを引いて再度の撃発をおこなえない点にある。再度撃発するには、スライドを15mmほど引いて、ストライカーをコックし直さなくてはいけない。グロック・モデル17ピストルと良く似た操作性だ。

 ブリーチ内のストライカーが、たえず中立に保たれるところから、デコッキング機能は通常必要ない。しかしモデルP99ピストル・シリーズは、分解やメンテナンスをおこなうときに、ストライカーを前進させる必要がある。そのため、クイック・アクション組み込みモデルにもデコッキング機能が必要だ。分解やメインテナンスの時だけに使用されるだけなので、クイック・アクション組み込みのモデルP99QAピストルのデコッキング・ラッチは小さなものに替えられた。
 ワルサー社は、ドイツ警察の標準ピストルとして指定を受けるため、モデルP99ピストル・シリーズをドイツ警察に提出し選定された。
 ワルサー・モデルP99ピストルは、ドイツ警察標準ピストルの指定を獲得したものの、ドイツの州警察やその他の警察機関で制式ピストルに選定したところはまだない。

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Feb.23, 2003
Copyright (C) 2003 by Satoshi Maoka, Masami Tokoi

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