The History of German Police Pistols ドイツ警察ピストル・ヒストリー Top page : Index

Capter 7 Unified Germany 統一ドイツ

page 7-1 ドイツ統一
page 7-2 新世代ピストルの採用 Heckler & Koch P8
page 7-3 P10, そして出遅れたワルサー  P10, P99 U.S. SOCOM MK23, Heckler & Koch P10, Walther P99
page 7-4 新世代第二期  SIG Pro 2009, Heckler & Koch P2000, Glock 9M

page 7-2:新世代ピストルの採用 

Heckler & Koch P8
 1980年代、ドイツ警察は、アメリカの警察を参考にして警察武装の近代化をおこなった。もともとアメリカ警察は、リボルバーを中心にした警察武装を伝統としていた。しかし、1980年代に凶悪犯罪が増加、犯罪者が武装を強化する傾向が強くなったため、一般的に弾丸が6発までしか装填できないリボルバーでは対応出来ない事態が増加した。
 それまで通常の事件では、アメリカの警察官は、事件解決までに平均で2発ないし3発の弾丸を発砲するだけだった。したがって,リボルバーに装填した6発の全弾薬を撃ちつくすことは殆どない。さらなる弾丸の発射が必要な場合には、スピード・ローダーを使用すれば、リボルバーであっても数秒で再度装填することも可能だ。
 だが、犯罪の凶悪化で、リボルバーに装填した全弾薬を発射した警察官が、再装填中に犯罪者に射殺される事件が起き始めた。その事例は、一般警察だけでなく、より高度な訓練を受けたFBI捜査官にも発生するようになった。アメリカ警察は、西部開拓時代から続くリボルバー装備の伝統とロマンに浸る余裕はなく、装填弾薬数の多いセミ・オートマチック・ピストル装備へ切り替え始めた。
 警察が装備したセミ・オートマチック・ピストルは、当初はS&Wモデル59シリーズ、ベレッタ・モデル92シリーズなどだった。そのような状況の1986年、オーストリアでグロック・モデル17ピストルが完成し、アメリカに紹介された。シンプルで飾り気のないデザインで、ポリマー・フレームを装備させた新しいピストルは、その軽量さもあいまってアメリカで大きな人気を獲得した。
 グロック・モデル17ピストルは、装填できる弾薬が17発+1発(マガジン内とバレルのチャンバ−内)とリボルバーの3倍だ。トリガー・システムは、従来のダブル・アクション(コンベンショナル・ダブル・アクション)に比べてはるかに短いトリガー・プルで発射できる。かつ、セフティをトリガーに組み込むという画期的なセーフ・アクション(Safe action)が組み込まれていた。軽量で、シンプルな構造をもつこのピストルは、外観の良し悪しより、性能と使いやすさを追求するアメリカ警察の要求に最適だった。
 グロック・モデル17ピストルの登場で、警察武装用としてのリボルバーは、急速にその地位を低下させていった。アメリカ警察の武装ピストルの大半を占めていたS&Wダブル・アクション・リボルバーは、警察における独占的な地位を失ってゆく。
 グロック・モデル17ピストルが、アメリカ警察で広く採用された大きな理由のひとつに、その“軽さ”がある。
 警察官が、公務中にピストルを発砲する場面は、現実にはめったにない。だが、警察官は、ピストルを常時携帯しなくてはならない。それなら軽量のほうが好ましいわけだ。
 それに加え、警官全員が無線機などの多くの追加警察機材を装備するようになり、重大事件にも対処できるよう、多くの予備弾倉を携帯するようになった。
 その結果、警察官が装備する各装備の重量を少しでも減少させる必要が出てきた。警察官の装備重量を減らすためにも、軽量なピストルは重要だった。
 アメリカ警察の装備するピストルの変化を見ていたドイツ警察は、同じ方向で警察装備の近代化を決定していった。
 1990年、東ドイツが崩壊し、ドイツが再統一した。
 旧東ドイツ地域の警察官は、マカロフ・ピストルで武装していた。弾薬・部品の補給面や、警察ピストルの統一性の面から見て、統合後、そのままマカロフ・ピストルをずっと継続使用するわけにいかない。
 しかもマカロフ・ピストルは、社会主義を象徴する官需ピストルでもあった。

 

 あらたにドイツ警察機構に組み込まれる旧東ドイツ地域の警察官の武装として、西ドイツと同じようにワルサー社のモデルP5ピストル、SIGザゥアー社のモデルP6ピストル、ヘッケラー&コッホ社のモデルP7ピストルなどを調達することも考えられたが、それらのピストルは開発からかなり時間が経過しており,新世代の官需ピストルを選択する時期でもあった。

 警察だけでなく、ドイツ軍も制式ピストルの世代交代を考える時期に来ていた。

 ワルサー社のモデルP1ピストルは,戦後に改良が加えられたものの、第二次世界戦前に設計されてドイツ軍の制式となった旧式の製品だった。モデルP1ピストルは、製造に手間がかかり、製造コストも高かった。
 生産性が悪く、製造コストが高いピストルは、現代の軍用ピストルとして失格だ。モデルP1ピストルを改良し、構造を単純にして、構成素材を含めて省力化したワルサー・モデルP4ピストルも設計・製作されたが、中途半端な改良に終わった。

 現代では軍の装備としてのピストルは、その重要性が低い。したがって新型ピストル開発の優先順位は高くなかった。
  軍用ピストルとして、旧西ドイツ軍が、古くなったとはいえワルサー・モデルP1ピストルを使い続けることは、あまり問題はない。しかし、旧東ドイツが崩壊し、旧東ドイツ軍もドイツ連邦軍に吸収されるため、あらたに大量の軍用ピストルを調達する必要が生じた。
 当時のドイツに存在するピストルで,官需ピストルに適したものは、SIGザゥアー・モデルP226ピストル、ワルサー・モデルP88ピストル、H&KモデルP7M13ピストルなどがあった。これらの多くは、アメリカ軍の新制式ピストル・トライアルに提出すべく1980年代に開発されたものだった。

 ワルサー・モデルP88ピストルは、従来のワルサー社の大型ピストルとまったく異なり、新しく設計されたものだった。H&K社モデルP7M13ピストルは、1970年代にドイツ警察ピストル・トライアルの際に完成されたモデルP7ピストルを、アメリカ軍の要求スペックに従いダブル・カアラム・マガジンに改良し、装填弾薬数を増加させたものだ。
 ドイツ軍は、ワルサー・モデルP1ピストルに変わる次世代の軍用ピストルとして、これら製品よりさらに進化した製品を探していた。
 しかし統一ドイツ軍はもっと急を要する緊急課題もかかえていた。
 旧西ドイツ軍は、他のNATO諸国が5.56mm×45(SS109)弾薬を使用する小口径アサルト・ライフルを制式ライフルを選定・採用する中で、H&K社と共同で、革命的なケースレス(無薬莢)弾薬を使用するG11の開発をすすめた。しかし、最終的には,G11ケースレス・ライフルは失敗に終わってしまった。
 モデルG11アサルト・ライフルが失敗に終わった理由はいくつかあるが、その一つに弾薬の製造コストの低減が難しかったことがあげられている。薬莢を無くしたケースレス弾薬が、かえって薬莢式の通常弾薬に比べてコストが高くなってしまうのでは意味がない。
 ほかにも、コック・オフ問題が、完全に解決されなかったなどの理由が重なり、結局モデルG11ケースレス・ライフル開発計画は、廃棄された。
 G11ケースレス・ライフルの失敗により、NATO各国が5.56mm×45弾薬を使用するアサルト・ライフルを採用した後も、ドイツ軍は、7.62mm×51弾薬を使用するG3アサルト・ライフルを使い続けることになった。
 1990年代に入るとヨーロッパの地域紛争に対応させる緊急対応軍(RDF:緊急展開統合機動軍 Rapid Deployment Joint Task Forces )が創設された。
 1994年、ドイツ連邦憲法裁判所は、連邦議会の過半数による承認と国連の枠内の活動を条件に, ドイツ連邦軍を、緊急対応軍に参加させNATO域外へ派遣することを合憲とした。この判決を受けて、ドイツ連邦軍は正式に緊急対応軍に参加した。
 緊急展開対応軍に参加する他の国々が、いずれも5.56mm×45弾薬を使用するアサルト・ライフルを装備している中で、ドイツ連邦軍だけが7.62mm×51口径のアサルト・ライフルを使用していることは、弾薬の補給面から見ても問題だった。
 そこで、緊急対応軍に参加するドイツ連邦軍は、フランスのFA-MASアサルト・ライフルを限定的に採用して装備した。兵士にとって象徴的な武装であるライフルが、自国で開発されたものでなく、急遽採用した外国製では兵士の士気はあがらない。
 しかし、FA-MASアサルト・ライフルが選択された裏には、NATO域外に派遣されるドイツ連邦軍が、かつてのドイツ国防軍(ベアマハト)の侵略を受けた各国に苦い経験を呼び覚まさないようにするための政治的判断があったと言われている。また、ドイツの侵略を受けたフランスに対する謝罪の意味も含まれた採用だった。
 緊急対応軍に参加することになったドイツ連邦軍にとって、5.56mm×45口径の新型アサルト・ライフルの開発は、緊急を要するプロジェクトとなった。これは1996年H&K モデル50アサルト・ライフルをG36として採用することで決着を見た。
 一方、新世代のドイツ連邦軍の兵器として、旧式化してしまったモデルP1ピストルに代わる新制式ピストル開発の動きは以前からあった。しかし、兵士の基本武装であるアサルト・ライフルに比べると、新制式ピストルの重要性は低く、ゆっくりとした選定スケジュールが考えられていた。
 ところが、社会主義諸国の突然の崩壊に続く国際社会の変化は、想像以上に早く、従来の兵器開発スケジュールを現実社会の変化スピードが追い越してしまった
 緊急対応軍が装備する新世代のピストルの制定は、アサルト・ライフルとともに緊急事項になってゆく。新制式ピストルもまた、アサルト・ライフル同様じゅうぶんな準備期間のないまま選定されることになった。
 H&K社が提唱した新世代のモデルUSP(Universal Self-loading Pistol)ピストルは、そのように急激に変化してゆく国際環境の中で、あっけないほど簡単にドイツ連邦軍の新世代の制式ピストルとして選定・採用された。H&KモデルUSPピストルには、モデルP8ピストルの軍制式名が与えられた。

 ほかの有力メーカーだったSIGザゥアー社などにも、ドイツ連邦軍の新制式ピストル・トライアルの通告があったものの、開発が間に合わず、結局、ドイツ連邦軍トライアル向けの新型ピストルを提出できなかった。ワルサー社も同様だった。
 ドイツ連邦軍がトライアルで要求した性能には、ポリマー製のグリップ・フレームを装備していることが求められていた。ポリマー・フレームは、オーストリアのグロック社がモデル17ピストルで使用し、すでにオーストリア軍の制式ピストルとして採用されていた。またアメリカの多くの警察によっても採用されているという実績が既にあった。
 ヨーロッパでは、民間に販売されているポリマー製グリップ・フレーム装備のピストルにアメリカほど人気がなかった。
 このヨーロッパ市場での不人気が、SIGザゥアー社やワルサー社などの大手メーカーにポリマー・グリップ・フレーム装備のピストル開発を遅らせてしまった大きな理由がある。そのため急にスケジュールが短縮されたドイツ連邦軍の新世代軍制式ピストル・トライアルに、テストモデルを提出できなかった。
 一方、アメリカ軍特殊部隊向けSOCOMピストル・トライアルに参加し、ポリマー・グリップ・フレームを装備させたSOCOMピストルを開発していたH&K社は、他社に比べてドイツ連邦軍の新世代軍制式ピストル・トライアルに有利な立場にあった。
 アメリカのSOCOMピストル・トライアルに際し、H&KはそれまでのモデルP9SピストルやモデルP7ピストルなどとはまったく異なるコンセプトで開発を進めた。

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Feb.23, 2003
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