Page 6-3 1960年代−1980年代
ピストーレM(マカロフ・ピストル)
1960年代初頭になると、ソビエト製トカレフ・モデルTT33ピストルと、戦後ソビエトの制式ピストルとなったマカロフ(Makarov)ピストルが、Pistole-Mの名前で東ドイツ警察に供給された。
一般的にマカロフと呼ばれる9mmピストレット・マカロバは、トライアルの末1951年にソビエト軍に選定されて採用された。ピストレット・マカロバは、トカレフ・ピストルで使用していた7.62mm×25弾薬を使用することをやめ、新にこのピストルに開発された9mmX18マカロフを使用する。
1954年から大量生産が始まり、ソビエト軍やソビエトの警察にも採用された。旧ソビエトが制式ピストルに制定した後、多くの社会主義国で、軍用や警察用のピストルとして採用された。中国やブルガリア、東ドイツでは、国産化された。
マカロフ・ピストルは、ドイツのワルサー モデルPP/PPKピストルを原形として研究開発されて設計されたと言われる。
確かに基本的なコンセプトであるその全体的な大きさや形、部品のレイアウト、ダブル・アクション・トリガー、デコッキング・セフティなどは、ワルサー・モデルPPピストルの影響を大きく受けている。
しかし、ワルサー・モデルPPピストルとマカロフ・ピストルのダブル・アクション・トリガーのメカニズムは、大きく異なっている。
ハンマー・スプリングも、近代セミ・オートマチック・ピストルでは珍しいリーフ・スプリング(板バネ)が利用されている。リーフ・スプリングを利用したハンマー・スプリングは、トリガー・スプリングやマガジン・キャッチ・スプリングとしても機能し、スペースも最小限に押さえられている。
マカロフ・ピストルのマニュアル・セフティは、ワルサー・モデルPP/PPKピストルと同じスライド左側面後方に装備されているが、ワルサー・モデルPP/PPKピストルと操作がまったく逆で、手動レバーを押し上げて水平にすると、デコッキングとセフティがオンとなりロックされる構造になっている。
分解方法もワルサー・モデルPP/PPKの影響が強く、トリガー・ガード後端を軸に、前端を押し下げて回転させ、スライドを、後方にいっぱいまで引き上方に持ち上げて取りはずず。
マカロフはワルサー・ピストルの影響を受けたのは間違いないが、けっしてストレート・コピー製品ではない。

 
射撃感覚は、人によって異なることと思うが、グリップが丸く太いため手によくフィットして、むしろワルサーより撃ちやすい。ダブル・アクション・トリガー・プルも決して重くない。
CZ モデル45ピストル、モデルZピストル
1960年代中期になると50年代から私服業務用として使用されていた小型の6.35mm(.25ACP)口径ののマゥザー(Mauser)モデルWTP-1ピストルやマゥザー・モデルWTP-2ピストルなどが老朽化した。
老朽化したこれらの小型ピストルに代わって、チェコスロバキア製のCZモデル45ピストル、モデルZピストルが東ドイツ警察によって使用されるようになった。
モデル45ピストルは、戦前に設計された先行のモデル36ピストルを改良した小型ピストルでダブル・アクション・オンリーのトリガー・メカニズムが組み込まれている。
先行のモデル36ピストル同じダブル・アクション・オンリーだったが、トリガー上部にマニュアル・セフティが装備されていた。 しかし、モデル45ピストルでは、マニュアル・セフティが不要とされて取り除かれた。
モデル Z ピストルは、シングル・アクション・ストライカー形式の6.35mm×16SR(.25ACP)弾薬を使用する小型ピストルで、DUOの製品名でも知られている。



1970年代になると、東ドイツ警察に供給されるマカロフ・ピストルは、東ドイツで国産された製品が供給されるようになった。
また、フル・オートマチック連射もおこなえる旧ソビエト製のスチェッキン・ピストルが、ホルスターを兼用したショルダー・ストックを付属させて大量に東ドイツ警察に配備された。
東ドイツ製のマカロフ・ピストルは、東ドイツでピストーレM(PiM: Pistole M)と名付けられた。基本的なメカニズムは、ソビエト製のマカロフ・ピストルとまったく同じだ。ソビエト製マカロフ・ピストルと比較すると、東ドイツ製のほうが仕上げが良好である。
スチェッキン・ピストル
スチェッキン(Stechkin)ピストルは、第二次世界大戦後の第一世代フル・オートマチック・ピストルだ。旧ソビエトでは、アブトマティチェスキー・ピストレート・スチェッキナ(APS)と名付けられて軍制式ピストルに選定された。
旧ソビエトが崩壊するまで、西側では、一般的にスチェッキン・オートマチック・ピストルがソビエト軍のみに供給されていたと信じられていた。だが、その威力が軍用ピストルとして低かったこともあり、多くが旧ソビエト軍から早い時期に引き上げられて、東ドイツのシュタージや、ルーマニアのチャウシェスク親衛隊セキュリタスなどに相当数が供給されていた。

ワルサー・モデルPPピストルを大型化したような形と構造をもつスチェッキン・オートマチック・ピストルは、ダブル・アクション・トリガーを装備し、マガジンに20発の9mm×18(9mmマカロフ弾)を装填できる。最大の特徴は、セレクターを操作してフル・オートマチック射撃ができることだ。
射撃モードを変更するセレクターは、スライド左側面後端にあるマニュアル・セフティレバーが兼用している。レバーを前方に回転させて水平にするとセフティがロックされ、レバーを下方に向けるとセミ・オートマチックとなる。このレバーを後方に回転させるとフル・オートマチック連射が可能になる。
フル・オートマチック連射を安定しておこなえるように、着脱式のショルダー・ストックが用意されている。ショルダー・ストックは、ホルスターを兼用しており、スチェッキン・オートマチック・ピストル本体を収納できる。
一般に西側では、スチェッキン・オートマチック・ピストルをフル・オートマチックで連射すると、銃の跳ね上がりが大きく、相当な訓練をしないと使いこなせないと信じられていた。
しかし、東ヨーロッパからスチェッキン・オートマチック・ピストルが流出して、実射テストが可能になると、スチェッキン・オートマチック・ピストルは、フル・オートマチックで連射しても、発射リコイルが少なく、安定した射撃が可能なことが判明した。ショルダー・ストックを取り外して、ピストル本体だけで射撃しても、コントロール可能だ。
9mm×18(9mmマカロフ弾)は、西側の9mm×19(9mmパラベラム弾)よりパワーが低く、銃のリコイルが少ないことに加え、大きな質量を持ったスライドが、前後に長い距離を動くよう設計されているために跳ね上がりが少なくなっている。
スチェッキン・オートマチック・ピストルは、小型のサブ・マシンガンの中でも、コントロールが容易なモデルのひとつに数えることができる。
東ドイツは、スチェッキン・オートマチック・ピストルを、多数シュタージに装備させていた。
1980年代には、ルーマニアで製造されたモデル74ピストルが、東ドイツ警察の一部で使用されるようになった。

ルーマニア製モデル74ピストルは、ワルサー モデルPPピストルを原形として、改良を加え、ルーマニアのクギール造兵廠で製作された7.65mm×17弾薬を使用する中型ピストルだ。
しかし、東ドイツ警察の武装の主流は、東ドイツ製のマカロフ・ピストルだった。
モデルPSMピストル
新たに、主にシュタージの私服業務向けの隠しやすい中型ピストルとして、5.45mm口径のモデルPSMピストルが登場した。
東ヨーロッパの崩壊以前の1980年代、西側に数丁のソビエト製モデルPSMピストルが存在していた。この時点で、西側アナリストは、モデルPSMピストルの開発目的に関して明確な答えをもっていなかった。
軍用ピストルとしてみると、マカロフ・ピストルよりさらに小さな口径のピストルをソビエトが新たに開発する理由が見つからなかった。将校の自衛用として考えても、マカロフ自体が、すでに西側の軍用ピストルと比べて十分小さく軽いため、新に開発する必要性はあまり感じられない。
このモデルPSMピストルに使用する新しい5.45mm×18弾薬も謎を呼んだ。ストッピング・パワーから見ると、あまりにも低威力だからだ。センター・ファイアーでボトル・ネックだが、性能面から見ると.22LRと大差はない。
モデルPSMピストルの厚さが,最大でたった17.5mmしかないことから、KGBの特殊任務用であるとの憶測が流れた。その裏には、西側に流出したものが極めて少なかったことも、この銃が一般に支給されるものではなく、KGBなどによって限定的に使われていることを示しているとされた。
ソビエトが崩壊し、東欧諸国が自由化すると、モデルPSMピストルは,相当数が西側に流出してきた。加えて、一般向けとして新生ロシアから輸出も始められ、やっとこの銃の全貌が見えるようになった。
その結果、やはりこの銃は、一般軍用ではなく、特殊任務用だったことが判明した。モデルPSMピストルは、旧ソビエトのKGBだけでなく、東ドイツのシュタージにも供給されていたことも判った。
東ドイツ警察では、それまで使用されていた25口径の小型ピストルのマゥザー(Mauser)モデルWTP-1ピストル、マゥザー・モデルWTP-2ピストル、チェコスロバキアのモデル45ピストル、モデルZピストルなどをモデルPSMピストルに交換した。
5.45mm×18弾薬は、スペック的に低威力だが、実射してみると驚くほどの貫通性能を示した。ケプラー材を使用したボディ・アーマー(防弾チョッキ)を、簡単に撃ち抜くのだ。
357Magnum弾丸を停止させるII-Aの防弾性能をもつボディー・アーマーさえ撃ち抜く性能をもつ。
弾丸の弾頭部分にソフト・スチールを用い、その後方に鉛合金のコアが装填されたアーマー・ピアシング構造で、高初速で発射されるところから、この貫通能力は得られる。
モデルPSMピストルは、その使用目的にあわせてたいへん薄く設計されている。最大幅17.5mmに収められたのは、徹底的に薄く作ろうと努力した結果によるものだ。手動セフティレバーは、スライド左側面にあり、スライド内部に埋め込むように設計されている。セフティ・レバーを操作するための突起は、スライド後方に小さく突き出ている。
薄く設計するために、グリップもアルミ合金を使ったワンピースで、非常に薄い。グリップが薄過ぎて握りにくいが、握りやすさよりも薄く作ることが優先されたためだろう。グリッピングは悪いものの5.45mm×17弾薬のリコイルが小さいため、射撃は十分可能だ。
ソビエト崩壊後、自由化された新生ロシアから、輸出された民間向けのモデルPSMピストルは、バイカル モデルIJ-75ピストルと名付けられ、多少厚みのあるプラスチック製のグリップ・パネルが装着されて握り易さが向上した。
モデルPSMピストルの構造は、ワルサー・モデルTPHピストルをベースにして開発されたと思われる。分解手順や、ダブル・アクション・トリガー・メカニズムなどにその影響が大きく見られる。
軽量化のために西側諸国は、アルミニウム合金などの軽量マテリアルを利用してフレームなどを生産した。これに対し、モデルPSMピストルは、強度を重視してスチールの削り出しで製造した。スチール・フレームながら、軽量(460g)なのは、フレームをはじめとする構成部品の徹底的な肉抜きをおこなったからだ。人件費の高い西側では、コスト面から、量産品にここまで手をかけることが難しい。
次回は、東西ドイツ統一後におこなわれた新世代ピストル・トライアルについて、話を展開する予定だ。

The History of German Police Pistols Chapter 6
東ドイツ ドイツ民主共和国 DDR
6-1 page1 : 東ドイツの興亡
6-2 page2 : 1950年代、CZ38, CZ27, P1001-0, P-08
6-3 page3 : 1960年代-1980年代 マカロフ, CZ45, Z, スチェッキン, PSM
Dec.30, 2002
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