The History of German police Pistols Chapter 5-3
9mm×19ピストル・トライアル The Trial of 9mm Parabellum Pistols for West German Police

5-1 Page1: ドイツ警察新制式トライアル要求項目, ワルサーP38K
5-2 Page2 : SIGザウエル P220, ヘッケラー&コッホ P9S
5-3 Page3 : ワルサーP5, マゥザーHsP
5-4 Page4 : SIGザウエルP6(225), ヘッケラー&コッホP7, 第二回拡大西ドイツ警察制式ピストル・トライアル

ワルサーモデルP5ピストル
 カール・ワルサー社は、モデルP38Kピストルを発展させたワルサー・モデルP5ピストルを、警察新制式ピストル・トライアル向けに完成させた。
 ワルサー・モデルP38Kピストルは、警察新制式ピストル・トライアルの要求スペックに納まるように、モデルP38ピストルを切り詰めただけの短縮モデルだった。一方、モデルP5ピストルは、開発当初から全長が180mm以下になるように設計されたピストルだった。
 モデルP38Kピストルが、全体的なバランスを無視して小型化され、実際に射撃してみてもバランスが悪いのに比べ、モデルP5ピストルは、全体的なバランスも向上している。

 モデルP5ピストルのハンマー・デコッキング・レバーは、グリップ・フレームの左側面に装備されている。ハンマー・デコッキング・レバーは、スライド・ストップ・リリース役割ももつ。ハンマー・デコッキング・レバーは、マニュアル・セフティの機能をもっていない。レバーは、押し下げるとハンマーをデコッキングし、指を離すと自動的に元の位置に戻る。操作性を考えると、ハンマー・デコッキング・レバーは、スライド側面に装備されるより、フレーム側面に装備されているほうが望ましい。
 モデルP38ピストルから始まり、モデルP1ピストル、モデルP4ピストル、モデルP38Kピストルと、カール・ワルサー社が設計した9mmパラベラム弾口径のピストルは、スライドに大きなエジェクション・ポート(排莢孔)を備え、バレル上面がスライドからおおきく露出したデザインだった。
 モデルP5ピストルは、バレル全体をスライドがカバーし、小さなエジェクション・ポートを備えた一般的なスタイルになった。このスライド形状の改良は、ワルサー社が製造したワルサー・モデルP38Kが、トライアル中にスライドの破損を起こし、その耐久性に疑問が出されたことに対する答えでもあった。

 トリガー・メカニズムも改良され、即応性に優れたダブル・アクション・トリガーが重視され、前作のモデルP38ピストルの重かったダブル・アクション・トリガーが、スムーズに引きやすくなっている。
 フレームは、アルミニウム・アロイ, スライドは、耐久性のあるスチールの削り出し加工で製造された。生産性の向上のため、バーツの多くは、シート・メタルをプレス加工することで製造した。
 モデルP5ピストルは、従来のモデルP38ピストル・シリーズに比べ、全体的な外見デザインが大幅に変わった。しかし、内部の基本的な構造は、あまり従来の設計と変わっていない。ロッキング・システムは、ショート・リコイル・バレルとプロップ・アップ・ロッキング・ラグ・ロックだ。また、スライド内部の左右に2本のリコイル・スプリングと装備させた構成も、以前のモデルP38ピストルの設計をそのまま継承している。モデルP5ピストルは、全く新しい設計によるものではなく、モデルP38ピストル、モデルP4ピストルを発展させたアップ・デート・モデルと考えることもできる。
 カール・ワルサー社は、ドイツ警察新制式ピストル・トライアルに、モデルP5ピストルを、本命として送り込んだ。
 初期に製造されたモデルP5ピストルのバレルは、モデルP38ピストルのバレル基部のデザインに似た、複雑な形をしており、製造に手間がかかった。後にこのバレルのデザインは、生産性を高めてコストを軽減させるため、製造しやすいように、より円筒型に近い形に改良された。
 加えて、服の下に密かにピストルを忍ばせる必要のある私服警官や、手の小さな女性警官からの要請を入れて、モデルP5ピストルをさらに小型化したモデルP5コンパクト・ピストルも開発され製品化された。

マゥザー モデルHsP ピストル
 マゥザー社は、西ドイツ警察新制式ピストル・トライアルに対し、モデルHsPピストルと名付けた新設計の試作ピストルを提出した。
 マゥザー・モデルHsPピストルは、戦後初めてマゥザー社が手がけた大口径ピストルだった。
 マゥザー社は、第二次世界大戦後、アメリカのインターアームズ社の仲介によって、大口径のパラべラム・ピストル(ルガー・ピストル)を生産した。しかし、この時の生産は、マゥザー社が一から設計して製造したものではなかった。スイスが過去に軍用ピストルとしてパラべラム・ピストルを生産していたときの工具や刃物、治具類が、スイスのベルン造兵廠に残されていたところから、これらをそっくりマゥザー社に移し、利用して生産したものだった。
 西ドイツ警察新制式ピストル・トライアルに際し、伝統をもつマゥザー社は、再び小火器の分野への進出をかけてマゥザー・モデルHsPピストルを設計したと伝えられている。
 しかし、戦後すぐにピストル生産を再開させたカール・ワルサー社や、ヘッケラー&コッホ社、さらに、戦争による断絶なくピストルの開発を手がけていたスイス・ジグ社に比べ、マゥザー社のピストル設計陣は弱体で経験も乏しかった。
 第二次世界大戦後、フランス軍のための兵器を製造した後、マゥザー社が爆破解体されると、多くの有能な技術者は、マゥザー社を去って他社に仕事を求めたり、新たに自分たちの会社を創設した。ヘッケラー&コッホ社も、そうした元マゥザー社員の創設した会社だった。
 マゥザー・モデルHsPは、ダブル・アクション・トリガーを組み込んだハンマー露出式の大口径ピストルだ。ロッキングシステムは、バレル下面に降下するブロックを備えた、リーフ・ロック・システムが組み込まれた。

 降下したリーフ・ロックでロッキングされたバレルとスライドは、ショート・リコイルするバレルによって、開放される構造になっていた。
 グリップ左側面上部には、ワルサー・モデルP5に似たハンマー・デコッキング・レバーを装備しており、必要に応じてハンマーをデコッキングすることができる。
 全体的なデザインは、コンピューター制御のマシーニング・センター(NCマシン)で連続加工が容易にできるように、直線を組み合わせたやや角張った形をしている。
 マゥザー・モデルHsPピストルは、結局西ドイツ警察の求める性能を満足させることができず、トライアル初期の段階で退場してしまった。評価は公表されていないが、全体的に耐久性が欠けていたため、発展改良をあきらめたと伝えられる。
 マゥザー・モデルHsPピストルは、試作ピストルしか製造されず、その生産総数が20丁程度だったと伝えられている。その少ない試作モデルHsPピストルには、2機種のバリエーションが製作された。
 一つは、いわゆるスタンダード・モデルと名付けられた標準型で、もう一つは、スタンダード・モデルよりも短いスライドとバレル、そしてグリップ・フレームを備えたショート・バージョンのモデルHsPコンパクト・ピストルだ。
 2機種のモデルが製作されたのは、ちょうどカール・ワルサー社が、スタンダードのモデルP5ピストルと、それをやや小振りにしたモデルP5コンパクトを設計したのと同じ理由からだ。大きなスタンダード・モデルHsPピストルを制服警察官用に想定し、小型のモデルHsPコンパクトを私服警察官や女性警察官向けに想定して設計された。
 しかし、いずれのモデルも、警察トライアル・ピストル名が与えられる前に継続テストを断念し、当然Pナンバーの西ドイツ警察制式ピストル名は与えられなかった。
 当時のマゥザー社は、西ドイツ軍などのNATO各国の戦闘機に搭載する大口径機関砲の生産でじゅうぶんな収入を得ており、手間がかかる割に儲けの小さな警察ピストルなどの小火器分野に、経営的にそれほど興味を持っていなかったらしい。
 そのため、経費のかかる西ドイツ警察新制式ピストルの発展改良と継続テストを打ち切ったともいわれている。また同じ州の同じ町に小火器の専門メーカーのヘッケラー&コッホ社があり、将来、州警察からの発注に対してもあまり期待できず、このことも継続改良の打ち切り理由の一つになったとささやかれている。
 マゥザー社は、モデルHsPピストルが西ドイツ警察の制式ピストルに選択されることを断念したものの、アメリカ・バージニア州に本拠をおくインターアームズ社を通じ、このピストルの製品化と一般市場への販売を計画した。この計画では、マゥザー・モデルHsPピストルをステンレスで製造することが検討されたものの、当時は次々と新型ピストルが開発されている時期にあたり、西ドイツ警察制式ピストルのトライアルに破れたことが伝ってしまったため、結局、製品化されることなく消え去ってしまった。

                        

The History of German police Pistols Chapter 5
9mm×19ピストル・トライアル The Trial of 9mm Parabellum Pistols for West German Police

5-1 Page1: ドイツ警察新制式トライアル要求項目, ワルサーP38K
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