The History of German police Pistols Chapter 5-2
9mm×19ピストル・トライアル The Trial of 9mm Parabellum Pistols for West German Police

5-1 Page1: ドイツ警察新制式トライアル要求項目, ワルサーP38K
5-2 Page2 : SIGザウエル P220, ヘッケラー&コッホ P9S
5-3 Page3 : ワルサーP5, マゥザーHsP
5-4 Page4 : SIGザウエルP6(225), ヘッケラー&コッホP7, 第二回拡大西ドイツ警察制式ピストル・トライアル

SIG Sauer モデルP220 ピストル
 ジグ・ザゥアー社(SIG/SAUER)は、ドイツ警察のトライアルに、スイス軍用ピストルとして開発されたモデルP220ピストルを提出した。当時、ドイツ警察の要求スペックに合致する短縮型の9mmパラべラム口径ピストルを、生産していなかったジグ・ザゥアー社は、まず、すでに生産しているモデルP220ピストルを、ドイツ警察トライアルに提出したのだった。
 ジグ・ザゥアー社の提出したモデルP220ピストルは、従来のモデルP210ピストルに代えて、スイス軍が新世代の軍制式ピストルに選定した製品だった。
 それまでスイス軍が軍制式としていたSIGモデルP210ピストルは、スチール・ブロックからの複雑な削り出し加工によって製造されていた。この手間のかかる工程で生産されたモデルP210ピストルは、高い精度と品質をもっているものの、製造コストが高く、軍用ピストルとしてはぜいたくな製品だった。
 スイス軍は、軍事費圧縮のため、モデルP210ピストルに代わる単価の安いピストルを求め、これに応えてスイス・ジグ(SIG)社がモデルP220ピストルを開発した。
 最初ジグ社は、モデルP210ピストルのスライド部分を、プレス加工により生産できるようにした試作などをおこなった。しかし、これらの部分改良された試作ピストルでは、コスト軽減に限界があり、射撃精度上からも問題が出た。そこで、ジグ社は、まったく新しいピストルを設計することになった。
 ジグ社が目指したのは、製造のロー・コスト化だ。フレームは、アルミニウム・アロイ(アルミ合金)を用い、コンピューターで制御されたマシーニング・センター(NCマシン)で自動的に切削加工を連続しておこなう。スライドは、ヘビー・ゲージ・シート・メタルをプレス加工し、溶接で結合させて製作した。
 工作がめんどうなスライド後端のブリーチ・ブロックは、スライドと独立させて別に製作し、スライドに組み込む方式がとられた。
 初期のものは、ブリーチ・ブロックを1本のスプリング・ロール・ピンでスライドと結合していたが、ブリーチとスライド間にゆるみが出たところから、後の製品は、2重にしたダブル・スプリング・ロール・ピンに変更された。
 プレス加工で成型されたスライドは、当時の感覚で、安物ピストルと見られがちだった。しかし、モデルP220ピストルは、高精度で作られており、プレス成型のスライドにありがちなガタつきもなく、高い集弾性能を発揮した。
 モデルP220ピストルのもう一つの大きな特徴は、マニュアル・セフティがないことだった。
 軍隊におけるピストルは、通常の戦闘よりも緊急時にその威力を発揮する。そのためには、即応性に優れていなくてはならない。
 マニュアル・セフティを操作することなしに、トリガーを引くだけで発射が可能、しかも安全に携帯できること。これは、リボルバーでは当たり前のことであるが、当時のセミ・オートマチック・ピストルでは、リボルバーに相当する即応性を持つ製品は少なかった。
 過去にカール・ワルサー社は、セミ・オートマチック・ピストルに、ダブル・アクション・トリガーを組み込んで成功した。
 しかし、カール・ワルサーの開発したモデルPP/PPKピストル、後にモデルP38ピストルになったモデルHPピストルなどは、いずれも弾薬をバレルに装填した後、安全を確保するためにマニュアル・セフティ(手動セフティ)をロックしておくことを前提にしていた。
 構造上、マニュアル・セフティを解除しておいても、ハンマー・ブロックや、オートマチック・ファイアリング・ピン・ブロックが機能するため安全性は確保されている。
 しかし、マニュアル・セフティが装備されていると、セフティをロックするか解除しておくかの選択肢がうまれる。
 セフティを解除して携帯するように訓練された警察官が、セフティをロックされたピストルを知らずに携行した場合、まごついて即応性に大きな問題が起こる。
 緊急事態にピストルを取り出し、トリガーを引いても弾薬は撃発しない。警察活動において、射撃すべき時に撃てなければ、重大な事態に発展する可能性がある。
 しかし、マニュアル・セフティがなければ、セフティをロックしてあるか解除されているかいちいち確認せず、ただちに緊急事態に対処できる。ダブル・アクション・トリガーと、オートマチック・ファイアリング・ピン・セフティのみによって、安全性を確保するモデルP220ピストルは、まさにそのような緊急事態に対する即応性において優れたピストルだった。
 操作性を考慮すれば、スライドに装備されたデコッキング・レバーよりも、グリップした手で操作しやすいフレーム側のデコッキング・レバーが有利だ。
 モデルP220ピストルは、前制式のモデルP210ピストルのマニュアル・セフティ設置位置にデコッキング・レバーを装備させた。
 ちょうどスイスのジグ社で新制式ピストルの開発が進められていた頃、ジグ社は、ドイツのザゥアー・ウント・ゾーン社を買収して傘下におさめた。そのため、新型ピストルには、ジグ・ザゥアーがモデル名として用いられるようになった。
 ジグ・ザゥアー・モデルP220ピストルは、ダブル・アクション・トリガーとハンマー・デコッキング・レバー、そして、スライド・ブリーチ内にオートマチック・ファイアリング・ピン・セフティを装備させることにより、マニュアル・セフティを無くし、即応性の高いセミ・オートマチック・ピストルとして完成された。
 ジグ・ザゥアー・モデルP220ピストルは、以前のモデルP210ピストルが備えていた優美さとは縁遠い、実用本位の生産性が高いピストルだった。しかし、このピストルでとられた設計コンセプトは、この後、多くのメーカーによってコピーされることになった。
 ドイツ警察ピストルのトライアルに提出されたモデルP220ピストルは、要求スペックに対して大型だった。
 ジグ・ザゥアー・モデルP220ピストルは、ワルサー・モデルP38ピストルのようにバレルが露出型でなく、単純にバレルを切り詰めて短くすることができなかった。トライアルまでの時間的な余裕がなく、わずかながら要求スペックを超えた189mmの全長のままで提出された。
 しかし、ジグ社に買収され傘下に入ったドイツのザゥアー・ウント・ゾーン社では、ドイツ警察の新制式ピストルを目指したモデルP220ピストルの切つめ型の開発と試作が、急ピッチでおこなわれていった。

ヘッケラー&コッホ・モデルP9Sピストル
 ドイツのヘッケラー&コッホ(Heckler & Koch)社は、ローラー・ロックが組み込まれたモデルP9Sピストルを、ドイツ警察トライアルに提出した。

 H&KモデルP9Sピストルもまた、警察の要求スペックを超える192mmの全長をもったピストルだった。
 ヘッケラー&コッホ社が最初に開発したセミ・オートマチック・ピストルは、中口径弾薬を使用するモデルHK4ピストルで、マウザー・モデルHScピストルを近代化したものだったが、これといった新鮮味は無かった。。
 第2機種目にあたるモデルP9Sピストルは、1970年に開発された。前作のモデルHK4ピストルに比べ、おおくの特徴をもっている。
 最大の特徴は、バレルとスライドのロッキング・システムとして、ローラー・ロッキングを採用した点にある。ピストルにローラー・ロッキング・システムを組み込んだ例は多くない。
 近代に設計されたほとんどの大口径セミ・オートマチック・ピストルは、ブラゥニング系のショート・リコイル・バレル式のロッキング・システムを組み込んでいる。しかし、ヘッケラー&コッホ社の技術者たちは、構造上複雑になるものの、バレル固定式にできるローラー・ロッキング・システムを選択した。
 開発当時、ヘッケラー&コッホ社は、ローラー・ロッキング・システムを組み込んだG3アサルト・ライフルをベースにしたウェポン・システムを展開していた。サブ・マシンガンのMP5、マシンガンのHK21などをはじめとする多くの兵器が、ローラー・ロッキングを組み込んで設計されていた。H&KモデルP9Sピストルも、そのローラー・ロック・ウェポン・システムの一環として設計が進められた。
 バレル固定式となった結果、命中精度は向上した。モデルP9Sピストルは、ボアとライフリング・グルーブがスムーズに連結されたポリゴナル・ライフリングのバレルを装備している。ポリゴナル・ライフリングは、初速が向上し、クリーニングが容易で、バレルの寿命も長いと宣伝されたものの、その後、それらポリゴナル・バレルの特徴は、実効上効果がないとして否定されることになった。だが、開発当初、ポリゴナル・ライフリング・バレルには、多くの人が興味を示し、期待をよせた。

 モデルP9Sピストルのダブル・アクション・トリガーは、スムーズで優れた操作性をもっていた。当時、多くのセミ・オートマチック・ピストルに組み込まれたダブル・アクション・トリガーは、緊急時にトリガーを引くことだけで射撃できることだけを前提に、重く大きな力を必要とするものであり、正確な射撃は期待できなかった。
 ダブル・アクション・トリガーを備えたピストルでも、初弾から正確な射撃を期待するなら、ハンマーを指でコックし、シングル・アクションで射撃することが一般的だった。しかし、モデルP9Sピストルのダブル・アクション・トリガーは、優れた設計により、ほかの多くの製品よりはるかにスムーズにダブルアクションでトリガーを引くことが可能だった。
 モデルP9Sピストルは、ハンマーがスライド内部に収納されたハンマー内蔵型だ。シングル・アクションで、より正確な射撃をおこないたい場合、直接に指でハンマーをコックすることができない。ハンマーをコックし、シングル・アクションで射撃するために、モデルP9Sピストルは、フレーム左側面にハンマー・コッキング・レバーを装備している。このレバーを親指で押し下げると、レスト・ポジションにあったスライド内部のハンマーがコックされる。
 フレームのトリガー・ガードとグリップのフロント・ストラップは、破損に対して耐久性のあるプラスチックのポリマーによって製造された。ポリマーは、今でこそ珍しくないが、モデルP9Sピストル発表当時、画期的な素材だった。
モデルP9Sピストルは、シート・メタルをプレス加工して成型した多くの部品が組み込まれている。プレス加工によって製造されたレシーバーは、溶接によって構成されている。全体的に見て複雑な構造だが、材質と製造精度が良いため故障や破損は少ない。
 このピストルの問題は、ローラー・ロッキング・システムにこだわった結果、製造コストが高くなりすぎたことにある。また、構造面から見ると、セフティの安全性に精神的な心配が残る。
 スライド左側面に装備されたセフティ・レバーは、押し下げるとファイアリング・ピンをロックする構造になっている。セフティ・レバーをロックした状態でもトリガーはロックされない。トリガーを引くと、ハンマーを前進させることができ、ハンマーはファィアリング・ピン後端に当たる。単にファイアリング・ピンがロックされているので、撃発が起こらないだけだ。
 モデルP9S ピストルは、ハンマー・コッキング・レバーを装備する一方、ハンマー・デコッキング・レバーを装備していない。セフティでファィアリング・ピンをロックし、トリガーを引いてハンマーをレリースするのが、唯一のハンマー・デコッキング方法だ。
  ハンマー露出型の場合、指でハンマーをおさえながらトリガーを引き、ハンマーをゆっくり前進させることもできる。だが、ハンマー内蔵式のモデルP9Sピストルは、ハンマーを指で押さてゆっくりと前進させることができない。ファィアリング・ピンがロックされているものの、トリガーを引いて、ハンマーを勢いよく落とすのは、精神衛生上良くない。
 操作上は同じことだが、セフティ・レバーにデコッキング機能をもたせてあれば、そのほうが心理的な安心感が増すことになっただろう。
 セフティ・レバーによってファイアリング・ピンがロックされるから、ハンマーをコックした状態で、安全に携帯が可能になる。言い換えるとコック&ロックの一種、コンディション1だ。しかし、スライド側面に装備されたセフティ・レバーは、緊急時の操作性に優れているとは言いがたい。
 スムーズなダブル・アクション・トリガーとハンマー・コッキング・レバーを装備させているのだから、フレーム側に装備されたセフティ・レバーにハンマー・デコッキング機能を追加させたほうが、より使い易い製品になっていただろう。
 全体的に見て、モデルP9Sピストルは、オーバー・エンジニアリングの産物と言えるかも知れない。
 ヘッケラー&コッホ社は、西ドイツ警察が新制式ピストルのトライアルを開始した時点で、モデルP9Sピストル以外の9mmパラベラム口径のピストルを保有していなかった。
 トライアルに急いで提出されたモデルP9Sピストルは、警察の要求するスペックに対して、全長が大きすぎ、必要とされたハンマー・デコッキング機構も備えていなかった。加えて、装備不可とされたマニュアル・セフティも装備していた。
 ドイツ警察新制式ピストル・トライアル用として、ヘッケラー&コッホ社は、モデルP9Sピストルのバレルとスライドを短くした試作ピストル・モデルP9Kを製作したものの、期待される性能が出せなかった。
そこで、ヘッケラー&コッホ社は、警察新制式ピストルとして、従来のモデルP9Sピストルの改良ではないまったく新しい設計のピストルの、開発を開始した。
 新開発のピストルは、モデルPSPピストルで、革命的なスクイーズ・コッキング機能を組み込んだ。しかし、これは、第一回のドイツ警察ピストル・トライアルまでに完成されなかった。

                        

The History of German police Pistols Chapter 5
9mm×19ピストル・トライアル The Trial of 9mm Parabellum Pistols for West German Police

5-1 Page1: ドイツ警察新制式トライアル要求項目, ワルサーP38K
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