The History of German police Pistols Chapter 5 -1
9mm×19ピストル・トライアル The Trial of 9mm Parabellum Pistols for West German Police

5-1 Page1: ドイツ警察新制式トライアル要求項目, ワルサーP38K
5-2 Page2 : SIGザウエル P220, ヘッケラー&コッホ P9S
5-3 Page3 : ワルサーP5, マゥザーHsP
5-4 Page4 : SIGザウエルP6(225), ヘッケラー&コッホP7, 第二回拡大西ドイツ警察制式ピストル・トライアル

ドイツ警察新制式トライアル要求項目

 西ドイツ警察は、以前から9mmパラべラム弾口径ピストルを装備していたブライシャフト・ポリッツアイ以外の一般警察官も、従来の7.65mm×17(.32ACP)口径から強化する決断を下した。最初9mm×17(.380ACP)を強化したような9mmマカロフ・ピストル弾薬に似た9mm×18ポリス弾薬(9mmウルトラ弾薬)がテストされ、、最終的に、軍隊で使用されているものと同じ9mmパラベラム弾(9mm×19)を採用することを政治的に決断した。
 この決定に従い、西ドイツ各州の警察によって、新警察制式ピストルを選定するためのトライアルが開始された。
 西ドイツ警察全体で決定された新制式9mmピストルの要求事項は、以下のようなものだった。

基本的弾薬性能

弾薬 9mm×19
初活力500ジュール
初速350m/sec.

基本的ピストル性能仕様

装填弾薬数  6発以上
重量   1,000g以下 (弾薬装填時)
全長 180mm以内
全高 130mm以内
全幅 34mm以内

基本的ピストル性能要求

A: 操作性とトリガー
1) 即応性があり、単純な構造で、使用に際してまごつくことのないこと。
2) 初弾はダブル・アクションで射撃でき、以降シングル・アクション射撃できること。
3) トリガー・プルは、ダブル・アクションで5.5kg以下、シングル・アクションで2kg以下であること。
4) トリガーの移動量は、ダブル・アクションで14mm以下、シングル・アクションで4mm以下であること。
5) トリガー幅が6mm以上あること。
6) スライド・ストップ、マガジン・キャッチなどは、右利き射手用を主にしてデザインされていても、左利き射手にも不自由なく使用可能なこと。スライド・ストップは、露出式が望ましいこと。
7) 初弾は、マニュアル・セフティを操作することなく射撃できること。トリガーを利用しないでハンマーを安全に前進できるハンマー・デコッキング・ディバイスを備えていること。
8) リボルバー形式の場合、ハンマーを起こし、コックした状態でシリンダーをスィング・アウトできないこと。
9) グリップ・アングルは110度であること。
10) リコイル・スプリングの圧力は10kg以下であること。
11) 射撃リコイルが低いこと、とくに発射時にマズルの跳ね上がり量が少ないこと。

B: セフティ
1) 弾薬をバレル内のチャンバ−に装填したままで安全に持ち運べるよう、オートマチック・セフティを備えていること。またピストルを誤って落下させても暴発しないこと。マガジン・セフティは装備していないこと。
2) 基本的に手動式のマニュアル・セフティを装備させていないこと。とくにピストル外部に露出したセフティ・レバーなどを装備していないこと。

C: 耐久性
1) バレル寿命は、10,000発以上あること。
2) ファィアリング・ピンとエキストラクターの寿命は5,000発以上あること。

D: 命中精度
1) 手で保持して射撃し、25mの距離での標的のグルーピングが、16cmを超えないこと。

E: サイト
1) フロント・サイトの幅は、最低3mmの厚さがあること。フロント・サイトまたはリア・サイトが交換可能で、ゼロ・イン調整もできること。

ワルサー モデルP38Kピストル
 西ドイツ警察は、新制式9mm警察用ピストルに最適な製品を、1974年当時に一般市場で販売されているピストルの中にないかと、比較点検調査した。しかし、一般に市販されているセミ・オートマチック・ピストルの中には、ドイツ警察が新制式警察ピストルとして期待される性能をもった製品を見つけることができなかった。
 そこで、西ドイツ警察は、西ドイツ軍が制式ピストルにしていたワルサー社製のモデルP1(ワルサー・モデルP-38II)ピストルの短縮型を、ワルサー社に命じて製作させてテストすることにした。
 西ドイツ軍が制式ピストルに制定し、使用していたモデルP-1ピストルは、全長が警察ピストルの要求していた180mmよりも大きく、西ドイツ警察の要求スペックを大きく越えていた。
 西ドイツ警察が基本的な性能仕様として決定した全長は、携帯性以外に別の意味があった。全長を短く制限すれば、装備されるバレルの長さも短くなる。短いバレルから発射される弾丸は、長いバレルを備えた軍用ピストルに比べ、初速が低下する。
 前章でも記述したが、ドイツはナチス政権下で、警察が国民を厳しい管理下においた過去をもつ。そのため、戦後の西ドイツ社会は、警察が武装強化することに対して強いアレルギーをもっていた。
 重大犯罪や社会騒乱に対処するブライシャフト・ポリッツアイ(日本の機動隊に相当する)やBGS(国境警備隊)などは、軍用ピストルに準じたピストルを装備することが認められていた。しかし、交通警察や犯罪捜査警察などのシュッツ・ポリッツアイ(市民警察)が武装に使うピストルは、原則的にドイツの国防軍(西ドイツ軍)のピストルより威力が低いことが暗黙の了解事項だった。
 ドイツの各州警察は、戦後長期にわたって、各州の交通警察(トラフィッシュ・ポリッツアイ)や犯罪捜査警察(クリミナル・ポリッツアイ)などの市民警察官の武装に、7.65mm×17(.32ACP)口径のピストルを使用した。
 ヨーロッパで最も一般的な軍用ピストル弾薬の9mm×19(9mmパラべラム弾)ではなく、9mmポリス弾(9mmウルトラ弾)が、警察官の武装ピストル用として、一時期に採用を検討されたのも、警察用ピストルの威力が軍用ピストルより低いことが望まれた結果だった。
 テロリズムの横行で、警察の武装強化が必要となり、9mmパラべラム弾を使用するピストルを採用することが、政治的に決断されたものの、新制式の警察ピストルが軍用ピストルと同じ威力をもってしまう可能性があった。
 これでは、警察用ピストルの性能が、軍用ピストルに比べて威力が低いという原則が破られてしまう。
“警察ピストルは、軍用ピストルよりも低威力でなければならない”。この原則を維持するために、ドイツ警察新制式ピストルは、全長を制限して、軍用ピストルより短いバレルを装備させることが必要となった。
 そこで採られた苦肉の策が、西ドイツ新制式ピストルに、西ドイツ軍が使用しているピストルよりも短いバレルを装備させて、わずかだが弾丸の初速を低くし、威力を低下させることだった。
 モデルP1(モデルP38II)ピストルを切つめて短くしたモデルは、ワルサー・モデルP38Kピストルと名付けられた。モデル名末尾の"K"は、ドイツ後で短いを表わすKruzの頭文字だ。

 ワルサー・モデルP38Kピストルのバレルは、きわめて短く、スライド前面までの長さしかない。西ドイツ軍用のモデルP1(モデルP38II)ピストルのバレルが127mmであるのに対し、モデルP38Kは72mmだ。言うまでもなくモデルP38Kピストルから発射される弾丸の初速も、モデルP1ピストルから発射された弾丸より遅くなる。
 バレルがスライド先端まで切つめられたため、モデルP1ピストルのバレル先端に装備されていたフロント・サイトは、スライド先端部に移動されている。いわばスナッブ・ノーズ・リボルバーのセミ・オートマチック・ピストル版だ。
 第二次大戦中、秘密警察のゲシュタポが特注したと伝えられるバレルを切り詰めた、モデルP38ピストル ゲシュタポ・モデルと一般に呼ばれる製品があり、モデルP38Kピストルは、これとよく似た外見をもつ。
 第二次大戦中のショート・バレル付きのP38ピストルは、小数の現物が現存する。しかし、これらの小型化されたモデルP38ピストルが、実際に国家秘密警察(Gestapo)によって発注され、使用されたものかどうかは、明らかでない。
 警察によってテストされたワルサー・モデルP38Kピストルは、10,000発の耐久発射テストをクリアーできず、スライドにクラック(ひび割れ)が発生してしまった。
 ワルサー・モデルP38Kピストルは、耐久性が指摘された他、警察ピストルの要求事項で不可とされた露出式のマニュアル・セフティを装備しており、警察新制式ピストルに要求されるスペックに完全に合致した製品といえなかった。
 ワルサー・モデルP38Kピストルは、西ドイツ警察が、基本的な評価のスタンダードを探るために発注した、たたき台的な試作製品だったといえよう。
 1975年6月になると、ドイツ警察新標準ピストル選定委員会は、バーデン・ブルッテンベルグ州ウルムにあるカール・ワルサー社、シュレースビッヒ・ホルシュタイン州エッケンホルデにあるザゥアー&ゾーン社、バーデン・ブルッテンベルグ州オーベルンドルフ・アム・ネッカーにあるマゥザー社と同じ町にあるヘッケラー&コッホ社などの4社に要求性能などを伝え、各社による警察用ピストルの開発が始まった。
 カール・ワルサー社は、新開発のワルサー・モデルP4ピストルをベースにして切つめたワルサー・モデルP38K(新型)ピストルを1976年に完成させた。

 ベースとなったワルサー・モデルP4ピストルは、ワルサー・モデルP38ピストルのスライド部分に大きな改良を加えたピストルだ。スライド後方ブリーチ部分のセフティ機能を改良し、モデルP38ピストルでマニュアル・セフティだった部品を、デコッキング・オンリーのレバーに変更させた。
 ワルサー・モデルP4ピストルのスライド左側面に装備されたデコッキング・レバーは、下方に押すとハンマーがデコッキングされ、指を離すとデコッキング・レバーがもとの射撃可能な位置にもどる。この構造を組み込んだことによって、射撃する際、安全のためにロックされたセフティ・レバーを解除する必要がなくなり、即応性が向上した。
 ファイアリング・ピン自体を自動的にロックするオートマティック・ファイアリング・ピン・ブロック・セフティは、オリジナルのワルサー・モデルP38ピストルが設計当初から備えていた機能だった。
 ワルサー・モデルP4ピストルは、さらにこのメカニズムを発展させ、トリガーが引き切られたとき以外、ファイアリング・ピンの後端が常に下に押し下げられるような構造になった。ファィアリング・ピン後端が降下すると、ハンマー前面にあけられた穴に入り込み、ファィアリング・ピンとハンマーの接触が完全にカットされ、撃発インパクトが加わることのない構造だ。
 トリガーを引き切ると、初めてファィアリング・ピンの後端が押し上げられ、ハンマー前面の平面に当たる位置にセットされる。
 オートマティック・ファイアリング・ピン・ブロック・セフティは、さまざまな形式のものが考案されて製品化された。しかし、ここまで安全性にこだわっているメカニズムを組み込んだ製品は少ない。
 ワルサー・モデルP4ピストルは、オリジナルのワルサー・モデルP38ピストルの危弱点とされたスライド部分を大幅に改良してある。スライド後端を一体化し、スライドのデッキ・カバーをなくした。
 戦時中に生産されたモデルP38ピストルは、射撃中に、プレス加工で製造されたデッキ・カバーが外れ、リア・サイトと共に紛失するという欠点が指摘されていた。
 新型のワルサー・モデルP38Kピストルは、新開発のモデルP4ピストルをベースに、切つめて小型化されたピストルだ。ワルサー・モデルP4ピストルをベースにしているものの、モデルP4Kピストルとは呼ばれず、前作同様にモデルP38Kピストル、あるいは、人によってモデルP38KIIピストルと呼ぶ。
 しかし、ワルサー・モデルP38Kピストルの2製品とワルサー・モデルP4ピストルは、ごく限られた期間製造されただけで生産打ち切りとなり、その後カール・ワルサー社は、新世代のピストルに生産主力を移行させた。

                      

The History of German police Pistols Chapter 5
9mm×19ピストル・トライアル The Trial of 9mm Parabellum Pistols for West German Police

5-1 Page1: ドイツ警察新制式トライアル要求項目, ワルサーP38K
5-2 Page2 : SIGザウエル P220, ヘッケラー&コッホ P9S
5-3 Page3 : ワルサーP5, マゥザーHsP
5-4 Page4 : SIGザウエルP6(225), ヘッケラー&コッホP7, 第二回拡大西ドイツ警察制式ピストル・トライアル

△ up