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Chapter 4: テロの嵐
4-1 Page1 : ミュンヘン・オリンピック・テロ事件、ドイツにおける反政府活動
4-2 Page2 : ドイツ警察武装強化
4-3 Page3 : Walther PPSuper, SIG Sauer P230
ドイツ警察武装強化
強力な武器を装備しテロ事件を起こす過激派に対し、西ドイツの一般警察官の主な武装は、 7.65mm×17(.32ACP)口径のセミ・オートマチック・ピストルだった。
帝政ドイツの時代以来、一般人と接触する一般警察(シュッツ・ポリツァイ)は、伝統的に軍用ピストルより威力の低い7.65mm口径のセミ・オートマチック・ピストルを装備していた。一般警察とは別に、動乱や反乱に対する組織的に活動する治安警察(べライトシャフツ・ポリツァイ)だけが、軍隊並の大口径のピストルを装備した。
ナチス支配下のドイツでは、警察の武装が強化され国民を厳しく管理した。そのため戦後に西ドイツ国民は、警察が武装強化することに対して、強いアレルギーを持っていた。 一般警察官(シュッツ・ポリツァイ)の武装用ピストルは、犯人の抵抗を奪うためのものであり、必要以上の殺傷力をもつべきでないという世論が一般的だった。一般警察官のピストルは、原則的に西ドイツ軍のピストルより低威力でなければならないと一般的に考えられていた。
西ドイツの一般警察は、一部の例外を除くと、この社会通念を背景として7.65mm×17口径のピストルを制式にしていた。
西ドイツに限らず、1970年代にテロリズムが荒れ狂うまで、ほかの多くのヨーロッパ諸国の警察でも、同様な判断から7.65mm口径のピストルが採用されていた。
対照的にアメリカでは、7.65mm×17口径のピストルは威力が低すぎ、容疑者から反撃される可能性が高いと考えられ、警察でほとんど利用されていない。
1970年代、過激派の活動が激化したドイツでは、警察官の武装強化が必要と考えられるようになった。
じゅうぶんな阻止力をもつピストル弾薬として一般的なものに、9mm×19(9mmルガー弾)がある。だが、この弾薬は、NATO軍制式弾薬であり、純然たる軍用ピストル弾薬だった。そのため、市民感情を考えると9mm×19弾薬は、一般警察用弾薬として容易に採用することが出来なかった。
そこで、9mm×19弾薬より威力が1段階低い弾薬が検討された。
ごく一般的に入手できる威力が一段階低い弾薬は、9mm×17(.380ACP)弾薬だ。しかし、 9mm×17弾薬は、7.65mm×17弾薬と比べて、それほどの威力の向上が望めない。
次に注目されたのは、戦前にドイツ・カールスルーエのグスタフ・ゲンシャウ(Gustav Genschow)社で研究・試作されていた9mmウルトラ(9mm Ultra:9mm×18)弾薬だった。再軍備宣言をおこなったドイツは、1936年から新しい軍用弾薬の研究を広範におこなった。グスタフ・ゲンシャウ社では、この9mmウルトラのほか、8mmウルトラ弾薬も研究した。
当時ドイツ軍は、将校用に7.65mm×17口径のピストルを標準型ピストルとし、一般兵士、下士官、前線将校用の武装に9mm×19口径のピストルを制式としていた。そのため、複数の異なる形式の軍用ピストルを生産する必要があった。
戦争になると大量の軍用ピストルが必要になることが予想され、軍のさまざまな要求に応えられる統一ピストルが、生産や供給の簡素化に役立つと考えられて研究された。統一ピストルで使用するため開発されたのが、9mmウルトラ(9mm×18)弾薬だった。
9mmウルトラ(9mm×18)弾は、構造的に単純で製造が容易な、ブローバック方式で作動するセミ・オートマチック・ピストルで、最大威力をひきだす目的をもって開発された。9mmウルトラ弾は薬莢の長さが18mmあり、9mm×17弾薬よりも1mm長く、軍制式弾の9mm×19弾薬より1mm短かった。
カール・ワルサー社で、9mmウルトラ(9mm×18)弾を使用するピストルが開発された。試作ピストルは、ワルサー・モデル・ウルトラ・ピストル(Walther Ultra)と名付けられ、ワルサー・モデルPPピストルのバレルを長くして強化したものだった
だが、制式の9mm×19弾薬よりも威力が低下することを嫌った軍部の反対に合い、ワルサー・モデル・ウルトラ・ピストルや9mmウルトラ弾薬は、ドイツ軍に採用されず、量産されることなく廃案になった。
ドイツ軍に採用されなかった9mmウルトラ弾薬だったが、戦後のピストル開発に与えた影響は少なくなかった。
戦争末期にドイツに侵攻したソビエト軍は、9mmウルトラ弾の資料を捕獲し、9mmマカロフ弾(9mm Makarov: 9mm×18)の開発に役立てた。9mmウルトラ弾(9mm×18)とほとんど変わらない外見をもつ9mmマカロフ弾(9mm×18)は、中型ブロー・バック・ピストルで使用できるもっとも高い威力の弾薬だった。
テロ攻撃に対処するため、装備ピストルの威力増大を検討していたドイツ警察が、この古い弾薬に着目した。
リバイバルされた9mmウルトラ弾は、ディナミット・ノベル(Dynamit Nobel : ダイナマイト・ノーベル)社の傘下に入ったグスタフ・ゲンシャウ社(ゲコ:Geco)とオーストリアのヒンテンベルガー(Hintenberger)社、スウェーデンのノーマ(Norma)社などにによって生産されることになった。
ディナミット・ノベル社は、カール・ワルサー社と共同で新9mmウルトラ弾の開発をおこなった。一方、オーストリアのヒンテンべルガー社は、スイスのSIG社と共同で9mm×18(9mmポリス弾)を開発した。
スウェーデンのノーマ社は、9mm×18弾薬を開発・研究する段階で、9mm×17(.380ACP)の外見をそのままに、装薬を強化した9mmスーパーを開発した。しかし、この9mm×17(9mm Super: 9mmスーパー)を通常の弾薬と誤って混用すると危険なため、結局、量産に移されなかった。

9mmウルトラ弾の名称は、グスタフ・ゲンシャウ社(ゲコ:Geco)が商標登録していたため、ヒンテンべルガー社とノーマ社は、9mm×18弾薬に9mmポリスの名前をつけて製造した。この弾薬をテストした西ドイツ警察も、9mm×18弾薬に9mmポリスの名称を与えてテストした。
最終的に西ドイツのグスタフ・ゲンシャウ社がゲコ(Geco)の商標で生産した弾丸94グレイン(grain)、初速1054フィート/秒(fps)の9mmウルトラと、ヒンテンべルガー社の製造した弾丸100グレイン、初速1060フィート/秒の9mmポリス弾が共に9mmポリス弾の名称で西ドイツ警察に採用された。2つの弾薬は、いずれも弾頭部が平らになったフラットノーズ(Truncated cone shape)の弾丸を装備している。

西ドイツ警察は、1970年代前半に9mmポリス弾(9mm×18)を使用するピストルのトライアルをおこなった。
このトライアルに試作ピストルを供給したのは、ワルサー社と、スイスとドイツの合弁であるSIG/ザゥアー(SIG/Sauer)社だけだった。
ベルギーのFN社も、イタリアのベレッタ(Beretta)社と共同で、ベレッタ・モデル70ピストルを発展させて9mm×18(9mmポリス)口径に改良したピストルを完成させて提出する計画だった。だが、開発計画が遅れ、FNベレッタの9mm×18(9mmポリス)口径のピストルは、西ドイツ警察のトライアルに提出されることはなかった。
ベレッタ社は、このときの研究成果をもとにして、後に一般的な7.65mm×17口径や9mm×17口径のベレッタモデル80シリーズを完成させ、FN社にもFNモデルDA140ピストルの名称で供給した。
また、ドイツのヘッケラー&コッホ社も、H&KモデルP9Sピストルを小型化したH&KモデルP9Kピストルを、9mm×18口径で製造する計画を立てた。だが、この計画も、西ドイツ警察が、9mm ポリス採用直後、制式口径計画を大転換したため、計画だけに終わり試作品も作られなかった。

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