The History of German Police Pistols 3-3

                    

Chapter 3 : ワルサー復活 1950-1969
3-1 Page1: 東西分裂、Manurhin Walther PP, PPK、FN M1910, M1922
3-2 Page2: MAB Model D, Walther PP, PPK、BKA, BGS
3-3 Page3: SIG P210-4
3-4 Page4: Walther P-1, Heckler & Koch 4

SIGモデルP210-4ピストル

 連邦国境警備隊(BGS)は、創設当初、口径9mm×19(9mmパラベラム)のスペイン製アストラ・モデル600-43ピストルによって武装した。
 アストラ・モデル600-43ピストルは、第二次世界大戦中に、ピストル不足を補う目的でドイツがスペインに発注したピストルだ。第二次世界大戦中に多数のアストラ・モデル600-43ピストルが、ドイツによって発注されたが、わずか6,000挺(ほかの説によると10,450挺)が、ドイツ軍に納入されたにとどまった。1944年7月にフランスの側のドイツ兵器輸入商社バケラ、クシュー&マルチン社向けに発送された28,000挺は、連合国側の強い圧力によってフランス国境を越えることができず、スペインのブルゴスにあったスペイン軍砲兵倉庫に収められた。すでにドイツ側によって支払いを終わっていたそれらの未納入分の中から、1,400挺のアストラ・モデル600-43ピストルが、戦後になって西ドイツに送られ、連邦国境警備隊の武装用にあてられた。
 アストラ・モデル600-43ピストルは、強力な9mm×9k?
 それらの理由から、連邦国境警備隊(BGS)は、スイス・SIG社製のモデル210-4ピストルを、アストラ・モデル600-43ピストルの後継機に選択する。
 スイス・SIG社製モデルP210-4ピストルは、連邦国境警備隊(BGS)によってS.P.SIG9mm(セルブストラーデ・ピストーレSIG9mm:自動装填式SIG9mmピストル)の制式名称を与えられて採用された。スイスSIG社は、1951年から1954年までの間に、約5,000挺のSIGモデルP210-4ピストルを、連邦国境警備隊(BGS)に納入した。

    

 SIGモデル210シリーズ・ピストルの開発は、1930年代にさかのぼる。
 1930年代、フランスは、兵器近代化プログラムの一環として、軍用セミ・オートマチック・ピストルのトライアルを繰り返しおこなった。このトライアルの結果、フランスは軍用ピストルの制式弾薬として、7.65mm×20を選択した。この弾薬を使用する軍用ピストルとして、スイス人シャルル・ガブリエル・ペッター(Charles Petter)が設計し、ソシエテ・アルザシエンヌ・ド・コンストリュクション・メカニック(Societe Alsacienne de Construction Mechaniques:S.A.C.M.)が製造したPAモデル1935Aピストルと、国内のMASで設計されたPAモデル1935Sピストルを採用した。
 スイス軍は、1940年代に入って製造工程が複雑で、構造的にも旧式化していたスイス軍用制式パラベラム06/29ピストルに代わる、後継の軍用ピストルのトライアルを開始した。
 このスイス・ピストル・トライアルに、SIG(Schwiezerische Industrie Gesellschaft:スイス工業会社)は、9mm×19弾薬を使用するモデル1938システム・ペッター・1モデルを提出した。
 ペッターが設計したこの試作ピストルは、フランスのPAモデル1935Aピストルにそっくりな外見を持っていた。1943年に一部改良が加えられ、翌1944年に、ニューハウゼン・モデルP44/8ピストルの名称が与えられた。
 1943年後半になると、グリップ・フレームに大幅な改良が加えられて、バック・ストラップがなくなり、ラップ・アラウンド・タイプのグリップ・パネルが装着されたニューハウゼン・モデルP44/8第3期改良型が出現する。モデルP44/8と名付けられているのは、いずれも8発の弾薬が装填できるマガジンを装備させたモデルだからだった。
 1944年になると、グリップ・フレームとマガジンに改良を加え、15連発のマガジンを使用する試作型のSIGモデルP44/15ピストルが出現する。この試作型から、ニューハウゼン・モデルのピストル名称に代わって、SIGモデルのモデル名称が使用されるようになった。
 同じ年、さらに装填できる弾薬数を増加させて16発の弾薬を連発できる、試作型のSIGモデルP44/16ピストルが完成された。
 8連発のマガジンを装備させたニューハウゼン・モデルP44/8ピストルは、1947年に大幅な改良が加えられて、試作型のSIGモデルP47/8ピストルに生まれ変わる。
 この8連発マガジン装備のSIGモデルP47/8ピストルが、後のSIGモデルP210シリーズ・ピストルの直接の原形となった。
 スイス軍は、SIGモデルP47/8ピストルに小改良を加えて、1949年10月に軍用ピストルとして選択・採用し、”ピストーレ9mmモデル49”の軍制式名称をつけた。
 SIGモデルP47/8ピストルは、しばしばSIGモデルSP47/8とも表記される。
モデルSP47/8ピストルのSPは、ドイツ語でセルブストラーデ・ピストーレを略した表記で、英語のセルフ・ローディング・ピストル(セミ・オートマチック・ピストル)の略語にも重なる。
 SIGモデルP210ピストルは、一般市販モデル名で、Pはドイツ語のピストーレとも英語のピストルとも、ラテン語ののピストラを略したともとれるところから、そのまま使用された。もともと開発年の1947の下二桁と、装填弾薬数を組み合わせたモデルP47/8ピストルが、オリジナル・モデル名だったが、製造を継続してゆくうちに年がたち、モデル名から旧式化したと考えられたくないとSIG社は考え、200番台の数字をピストルのモデル名に割り振って新しいモデル名とした。
        

  西ドイツの連邦国境警備隊が採用したモデルP210-4ピストルは、スタンダードのモデルP210-1ピストルやモデルP210-2ピストルに比較すると、スライド上面のエジェクション・ポート後方にローディング・インジケータが追加されている。バレルのチャンバーに弾薬が装填されると、インジケーターが、スライド面から持ち上がり、装填済みであることを表わす形式だ。原形となった、ペッター・ピストルには、同様のローディング・インジケーターが装備されていた。
 ドイツの連邦国境警備隊(BGS)に納入されたSIGモデルP2104ピストルには、ドイチェラント(ドイツ)を表わすDが頭についたD0001からD5000までのシリアル・ナンバーが打たれている。
 SIG社が製造したモデルP210ピストルのシリーズには、表面がブルー仕上げのモデルP210-1、表面がマット仕上げのモデルP210-2ピストル、デンマーク軍用に納入されたモデルP210-3ピストル(M/49ピストル:1948年8月選定)、西ドイツの国境警備隊(BGS)に納入されたモデルP210-4ピストル、150mmのロング・バレルとアジャスタブル・サイトを装備させたターゲット・モデルのモデルP210-5ピストル、スタンダード・バレルを備えてスライド後端にアジャスタブル・サイトを装備させたモデルP210-6が製造された。その他に、変則的な重量のあるスライドを装備させたスウェーデン向けの特別仕様モデルがある。
 SIGモデルP210シリーズ・ピストルは、生産に手間がかかるため、一時生産を中止していたが、その高い命中精度から、射撃愛好家の高い要望もあって、コンピューター制御のNCマシンを導入して生産が再開された。
 再生産されるようになったモデルには、SIGモデルP210-7ピストルの名称が与えられた。現在生産されているモデル210シリーズ・ピストルは、モデルP210-8ピストルと呼ばれる。SIGモデルP210-8ピストルは、マガジン交換を容易におこなえるよう、プッシュ・ボタン式マガジン・キャッチを装備させ、大型のサム・セフティ・レバーとアジャスタブル・サイトが備わっている。
 SIGモデルP210ピストルのシリーズは、軍用の大型ピストルとして設計されたにもかかわらず、たいへん高い命中精度で有名だ。高い命中精度は、スライドをフレームの長いレールが包み込む設計をとり、ガタつきが少ないところから得られる。いうまでもなく全体の工作精度、特にバレルの工作精度が、スイスの誇る精密な機械工作で、精度良く製作されている点も大きい。
 スライドを外部からフレームが包み込む形式は、後にチェコスロバキアのモデルCZ75/85ピストルでも採用された。またこの形式は、モデルCZ75/85ピストルのコピー製品(タンフォリオ・ピストル、スピットファイアー、ジェリコなど)にも利用されている。
 このスライド結合形式を何と呼ぶべきなのだろうか。英語一語でこれを表す単語はないようだ。強いて表現するなら、inntenal assembled slide supported total frame length drive grooveとでもすべきだろうか。(今回原稿チェックのため多くのSIGモデルP210ピストル・シリーズの記事や書籍を読み返したが、スライド・レールとスライド形式について言及しているものはほとんどなかった。SIG社のカタログ、取り扱い説明書もチェックしてみたが、それらにも、とくにこのスライド形式について記述がなかった。)

                    

Chapter 3 : ワルサー復活 1950-1969
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