| The History of German Police Pistols Chapter 1-3

ワルサー・モデルPP/PPKピストル (Walther Model PP/PPK)


製品名の表記にこだわるわけではないが,Waltherはワルサーと表記する。
Mauserをモーゼルと発音するような古いドイツ語発音でWaltherはヴァルテルと表記するのが正しい。しかし,Waltherは,古くからドイツでバルターと発音されている。正確な表記では,バルターとするのが正しいが,日本でワルサーと表記することが余りにも一般的になってしまっているため,便宜的にワルサーと表記することにした。
ツェラ・ザンクト・ブラジー(のちにツェラ・メリスに併合される)の銃工だったカール・ワルサーは,6.35mm(.25ACP)のセミ・オートマチック・ピストルを,1908年に完成した。このピストルがワルサー・モデル1ピストル(Walther Model 1)だ。ワルサー・モデル1ピストルは、ドイツで開発された初めての小型セミ・オートマチック・ピストルだった。
ドイツで開発・生産されるセミ・オートマチック・ピストルは、軍用向けの大型ピストルが中心だった。それに対してワルサー社は,民間向けの中・小型ピストルを中心にして開発した。ワルサー・モデル3ピストル,ワルサー・モデル4ピストルは、ともに7.65mm口径で,警察官の武装にも利用できるものだった。
余談ながら,ワルサー社のモデル3およびモデル4ピストルは,ともにエジェクション・ポート(排莢孔)がスライドの左側面にある。世界中で製造されるセミ・オートマチック・ピストルのほとんどは,カートリッジ・ケース(薬莢)を,ピストルの右側方か上方に排出する。ワルサーがその後に作り,世界的に有名になったワルサー・モデルP38ピストルやモデルP5ピストルも左側方に排出する。その排出方向のルーツは,ワルサー・モデル3ピストルにあった。
第一次大戦後,ドイツはヴェルサイユ条約によって銃器類の生産を一時停止させられた。とくに大口径で、銃身長10cm以上の軍用セミ・オートマチック・ピストルについてはきびしく規制され,生産が禁止させられた。しかし,中・小型ピストルを中心に製造していたワルサー社は,その規制の影響が少なく,早期に生産再開の許可が出た。
1936年,ベルサイユ条約を一方的に破棄して再軍備宣言が出されるまで,ドイツに対する軍用ピストルの生産に対する制約が継続されていた。
第一次世界大戦後,ベルサイユ条約の規制を受けることが少なかったワルサー社は,早くも1920年にモデル8ピストルを発売した。モデル8ピストルは、トリガー・ガードを引き下ろしてスライドを分解法式が組み込まれていた。この分解法式は,後のワルサー・モデルPPピストルに受け継がれる。
翌1921年に小型のモデ9ピストルを発表した後,ワルサー社は,しばらくの間、新型ピストルを発売しなかった。
沈黙を破って1929年に,ワルサー社は,モデルPPピストルを発表する。モデル名のPPは,ポリッツァイ・ピストーレ(Polizei Pistole)、ポリス・ピストルを意味する。
ワルサー・モデルPPピストルは,ハンマー露出式で,ダブル・アクション・トリガー撃発機構を組み込んであった。加えて,ダブル・アクションの安全性を確保するため,安全にハンマーを前進させるハンマー・デコッキング機能を組み込んだマニュアル・セフティが装備され,前進位置のハンマーをブロックするオートマチック・ハンマー・ブロックや,ファィアリングピンの前進をブロックするマニュアル・セフティも組み込まれていた。
ダブル・アクションを組み込んだ,セミ・オートマチック・ピストルは,ワルサー・モデルPPピストル以前にも、フランスのル・フランセやオーストリアのリトル・トムなどがある。しかし,いずれもワルサー・モデルPPピストルほどの完成度がなかった。
信頼性の高いセフティ・システムを組み込み,コンベンショナル・ダブル・アクションで,シングル・アクションとしてもにダブル・アクションでも射撃でき,即応性が高いセミ・オートマチック・ピストルを完成させたのはワルサーが最初だ。
ワルサー・モデルPPピストルは,その名前のとおり,警察官の武装用ピストルとして開発され,高い評価を受けた。しかし,警察用ピストルとして,さらに小型なピストル開発の要請が出され,翌1930年に小型のワルサー・モデルPPK(Warther Model PPK)が完成され,1931年に発売された。
モデル名のPPKは、ポリッツァイ・ピストーレ・クルツ(Polizei Pistole Kurz),ポリス・ピストル・ショートを表わす。1930年のワルサー社カタログには、PPKがポリッツァイ・ピストーレ・クルツを表わすと明記されており,モデル名PPKのKをクリミナル(Kriminal),犯罪の略だとする説は誤りだ。
モデルPPKピストルは、モデルPPピストルのスライドをそのまま切り詰めた結果,スライド前端部分に不自然な段が残っている。このスライドの段は、メーカーも気になっていたらしく、戦後モデルPPKピストルが再設計された際にデザインが改められて,スムースなカーブになった。また,ハンマーの側面のフラット部分が大きく,中心の開口部が小さい。リア・サイトも小型で引っかかりにくいことを重視して設計された。
ワルサー・モデルPP/PPKピストルは,生産時期によって,いくつかのマイナー・チェンジが加えられた。イラストのPPは初期生産型だ。初期生産型の特徴は,マニュアル・セフティのレバーの回転角が90度になっている点だ。改良型のモデルPP/PPKピストルは,マニュアル・セフティの回転角が,75度に改ためられた。写真のモデルPPKピストルは、その改良型だ。改良型のハンマー部分にも改良が加えられ,開口部の内径が大きくなり,周辺部も少し削りこまれている。リア・サイトも初期型の小型のものに変わってやや大型の狙いやすいものに変更された。
内部メカニズムにも改良が加えられた。基本的な構造こそ同じだが,トリガーやスライド後端部のブリーチの部分が改良され,また,ダブル・アクションアクセルの形状も改良されえた。
モデルPPピストルとモデルPPKピストルのグリップ・パネルとマガジン底部のフィンガー・レストは,ブラウンのものとブラックのものが作られた。マガジン底部のフィンガー・レストは,必ずしも付属しているわけではなく,スチール製のマガジン・フロアーだけのものも同時に作られた。
モデルPPKピストルは、軽量化のために金属製のグリップ・フレームのバック・ストラップの部分を切り取り、ラップ・アラウンド・グリップを取り付けた。戦前型のモデルPPKピストルのグリップは、ワンピースだったが,戦後に再生産されたもの(Mark IIタイプとも呼ぶ)は、生産性の向上と,変形を防ぐ目的で,左右ツー・ピースに改められた。
7.65mm口径のワルサー・モデルPPKピストルは,グリップ・フレームを貫通させたボタン・タイプのマガジン・キャッチを,トリガー・ガード後方に装備している。一部例外として,軽量のアルミニウム製グリップ・フレームつきの製品や,口径9mm×17(.380ACP)の製品には、グリップ・フレーム下端にコンチネンタル・タイプのマガジン・キャッチが装備された。
ワルサー・モデルPPピストルやモデルPPKピストルは、ドイツ警察の標準ピストルの指定を受けたほか、ナチ党の指定ピストルにもなり,1936年にドイツ再軍備宣言がだされると陸軍,空軍,海軍の標準将校用ピストルの指定も受けた。軍への納入が優先されて警察に十分なモデルPPKピストルが納入されなかったことも想像がつく。
 

ドイツ警察が1930年代に使用したピストルはこれらだけでなかった。さらに数多く機種のモデルがドイツ警察によって使用された。たとえば、ドイツ軍制式だったモデルP08ピストル、ワルサー・モデルP38ピストルも使用され,19世紀のライヒス・レボルバー・モデルM1880やモデル1884など旧型ピストルも地方の警察で使用され続けた。
中型ピストルとしてマゥザー社のモデルHScピストルも40年代になってからドイツ警察で使用された。マゥザー・モデルHScピストルは,ワルサー社のPP/PPKに対抗すべく,マゥザー社がそれまでのモデル1934ピストルの改良を止め,新規設計を行なったものだ。試作のモデルHSaピストル、モデルHSbピストルをへて,1941年に生産が開始された。 スナッグ・プルーフに徹底し,全体を滑らかな線でまとめている。ハンマーは小さく,わずかに外に突き出ているに過ぎない。サイトはスライド上面に溝を掘ってその中に収めている。
モデルHScは警察用の他,ドイツ軍にも採用された。HScはHahn Selbspanner c/セルフ・コッキング・ハンマー・C型の略である。
ドイツ軍は自国製のピストルの他,占領した地域の銃器メーカーにも,ドイツ軍ならびにドイツ警察用に製造を継続させて使用した。それらのうちの一部モデルはchapter 2で紹介する。
chapter 1: 第二次世界大戦前,1930年代 終了

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chapter1 : 第二次世界大戦前,1930年代
1-1 Page 1 : Mauser M1914, Sauer & Sohn M1914, M1934
1-2 Page 2: Sauer & Sohn M38(H), DREYSE
1-3 Page 3 : Walther PP, PPK, M1880 Revolver
Chapter 2: 占領時代,1945-1949
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