Fundamental manners of shooting 射撃のマナー 基礎の基礎

Chapter 1:トラップ射撃 射台間の移動と装填タイミング
Chapter 2:銃口の向き
Chapter 3:チャンバーセフティ・フラッグ
Chapter 4:スキート未経験者の為のルールとマナー

Chapter 5: Dress Code 射撃の服装
  現在はあまり使われなくなったが、“TPO”という言葉がある。“Time”(時)“Place”(所)“Occasion”(場合)を組み合わせた省略語で、その場の状況や、目的に合わせた服装や態度をとることを意味する。
 一見、英語のようだが実際には完全な和製英語だ。英語圏では全く通じない。英語でこれに近い意味の言葉を捜すと、おそらく“common sense”がそれにあたるだろう。“常識的な判断力, 良識, 分別”を意味する。
 社会生活の中で人はその場に合った服を身に着けることが求められる場合がある。わが国でもっとも身近な例は会社における服装だろう。日本の会社は営業職、事務職、管理職等の男性社員に対し、スーツとネクタイを身に着けることを「社会人のマナー」であるとして、半ば強要している場合が多い。社外のクライアントやお客様と会う必要のある部署であれば、スーツ、ネクタイの着用も理解できる。しかし、全く社外と接触する機会のない人もスーツを着用しなければならない。
 これはプライベートと仕事の区切りを付けるという意味があるのかもしれないが、スーツは必ずしも働きやすい衣装ではない。合理的な発想をするアメリカ人の場合、特に西海岸企業では、会社でスーツなど着用している人は少ない。カジュアルな服装の方が働きやすいからだ。
 しかし彼らとて、全く自由な服を着て仕事をしているというわけではない。そこにはbusiness casualというドレスコードが存在する。会社にもよるが、原則的にジーンズやTシャツはダメだ。コットンパンツやポロシャツなどは良い。意識や価値観は時代と共に変化するので一定ではないが、くだけ過ぎるカジュアルは仕事ではダメということだ。
 そんなカジュアルウェアで仕事をしている彼らも、クライアントやカスタマーに会うときはスーツにネクタイを着用してくる。この感覚がいわゆるcommon senseだ。

 スポーツの場においても、ゴルフやテニスには時としてドレスコードがある。動きやすい服ならなんでも良いというわけではない。通常ではあまりウルサイことは言われないが、格式のあるゴルフクラブや、伝統のあるテニスクラブなどではスポーツウェアに対して決まり事がある。それは古典的ルールに基づいたものであるが、そのスポーツの持つ格式を維持するためのスタンダードとして生き残っている。
 では、射撃というスポーツにはドレスコードがあるのだろうか。普段はあまり意識することはないテーマだが、たまにはそういう決まりごとについて考えてみよう。

・クレー射撃のドレスコード
 クレー射撃場ではベストの着用を義務付けているところがある。そのような射撃場は、それをマナーとして明確に表示している。射撃ベスト、あるいはそれに準ずるものを身につけずに射台に立つと、プラーから注意される。このようなルールを明確に打ち出している射撃場は、格式が高いかというと必ずしもそうではない。

  確かにベストは便利だ。スキートの場合、これは明確だ。ベストを身に着けないと、待機姿勢から銃を構える際にストックが服に引っ掛かる可能性がある。これは危険な場合もある。予めストックを肩の近くまで上げて待機するアメリカンスタイルならこの問題は少ないが、日本ではほとんどが公式ルール、またはそれに準ずる形で競技がおこなわれている。
 またスキートは25発のショットシェルを身につけてラウンドを回る。そのためには、ある程度大きなポケットが必要だ。ベストを身につければ、これらの問題は解決する。
 トラップの場合はベストを身につけなくても特に困ることはない。5つの射台を5回まわるので、その都度ショットシェルを補給でき、10発程度のシェルを収めることができるポケットやポーチがあれば事は足りる。それでもクレー射撃のマナーとして、ベストの着用を求められる場合がある。

その時は、“ベスト着用は一種のお約束事”と解釈し、ベストの着用を義務つける射撃場ではそれに従うべきだろう。

 ベストを着ることがマナーだ、と言われない射撃場なら、無理に着なくても良い。但し、公式射台に立つとみんなベストを着ているので、自分だけ着ないと浮いてしまう可能性が高い。この場合、ベストは一種の制服に近いものとなる。あるいは不文律だ。着ていないと、「何でベストを着ないのか?」と他のシューターから注意を受けるかもしれない。
スキートと違ってトラップなら無理にベストを着なくてもなんら支障はない。しかし、その場合は銃の扱いや態度で人に注意を受けるようなことが無いようにしないといけない。もちろんこれはベストの有無に関係なく、当然守らなければいけないことだ。
 だが制服に近いものを着ない以上、必然的に目立ち、周りからそのシューターに注がれる視線はその分、厳しくなる。見知らぬ人物がとんでもない素人でないだろうかと、しっかりと値踏みするわけだ。なにしろ銃を使うスポーツだ。安全な銃のとり扱いが身についていない人物といっしょに射台に立つことは誰でも嫌だ。だからベストを着ていないと、それだけでチェックが厳しくなる。それに耐えられるだけの的確な行動が求められる。

 ベストを身につける場合、その下にも何か別のものを着ている。では、その衣装にもルールはあるのだろうか。
 たとえばテニスの世界、ウィンブルドンのセンターコートでは、男性プレーヤーは襟の無いシャツでプレーをすることはできない。また男女共にウェアの白の面積が何パーセント以上であることという規定がある。こんな決まりごとが射撃の世界にもあるのだろうか?

射撃ルールを調べてみると、どうやらISSFのルールとして袖のないシャツはダメという決まり事があるらしい。TシャツならOKだが、いくら暑いからといって、スリーブレスやタンクトップはダメというわけだ。
 またパンツ関係では、ショートパンツの丈について、ひざの中心部から上、15cmより短いものはダメと設定している。女性の場合、スカートはOKだがその丈もこの基準に準じている、これは安全とか機能性といったことは関係なく、たんなる品位として設定されているものだろう。このあたりの感覚はゴルフに近い。非常に短いショートパンツやタンクトップが、必ずしも品位がない服装だとは思わないが、もともと貴族のスポーツであることから、このようなルールができたのだろう。
 身体を激しく動かすスポーツであれば当然、ショートパンツやタンクトップもウェアとして機能的な面から認められるわけだが、クレーの場合、身体の動きは限定的だ。

 このスポーツで使う道具、すなわち銃は、使い方を間違えれば、自分自身及び周囲の人々に大きな危険を及ぼすものだ。いいかげんな気持ちで銃を扱わない為にも、服装は整えておくべきという感覚もあるのあろう。
 しかしこれは公式ルールに基づく正規の試合などに適用されるもので、通常の練習や草試合であれば、それほど問題にならないかもしれない。
 ISSFルールには明記されていないようだが、サンダルでの射撃はマナー違反とされている。サンダルは足元が不安定で、転倒する可能性が普通の靴より高いということがその第一の理由だ。ならば踵を固定するスポーツサンダルなら、安全上問題はなさそうだ。しかしサンダルをだめだという第二の理由は、タンクトップがダメだということと同じだ。サンダル履きはタンクトップと同じようにラフ過ぎるということでダメだとされている。ページの最初の方に“射場のルールとエチケット”という全日本指定クレー射撃場協会の看板の画像を載せている。その中に“必ず靴を履くこと”と書かれている。それはこのサンダル履きを規制しているという意味だ。

 どういう服装なら良いかどうかは、最終的にその場の雰囲気で決まる。公式ルールに基づく正規の競技会であれば、それに見合った服装が必要だ。たんなる練習なら、ある程度の自由は認められる。
 しかしスポーツとしてのクレー射撃に相応しい服装であることが条件だ。会社で仕事をするときに相応しい服装があるように、クレー射撃に相応しい服装というものがある。それを的確に判断できる感覚がcommon senseだ。クレー射撃にはこの感覚が必要ということになる。

 ごく稀にタクティカルベストやBDU、コンバット・ブーツに身を包んだシューターが参加する射撃会がある。自分もそういう服装も可とした射撃会を何度か開催している。
 しかしこれは射撃場の了解を得た上で、貸切りとし、細心の注意を払っておこなうものでなくてはいけない。スポーツの場である射撃場の雰囲気を大きく損なうことはあってはならないのだ。
 なぜそのような射撃会を私が開催したかといえば、時には制限を緩めてガスを抜く場があっても良いと思うからだ。
 かつて日本の会社でも、カジュアルディというものが盛んであった時期がある。週末の金曜日は、ネクタイを外し、ある程度、楽な服装で仕事をしよう、というものだ。結果的にはあまり定着しなかったが、時には自由な服装で気分転換を図るということは重要だ。
 クレー射撃は服装制限があるという状況に対し、しかるべく配慮のもと、カジュアルディを持ち込んだわけだ。
 カジュアルディだからといって、仕事を気軽におこなうということは許されない。自由な服装の射撃会も同様だ。服装が自由だからこそ、誤解を招かないためにも、より高度な安全に対する配慮と順法精神が必要だ。それが伴わなければ、自由な服装の射撃会というものはおこなうべきではない。


・ライフル射撃競技のドレスコード
 ライフル射撃の場合は、クレー射撃のような通常の服装規定はあまり無いように思える。ポジション・シューティングではシューティング・ジャケットの着用がほとんど常識化しているため、シューティング・ジャケットの規格が服装規定とイコールとなる。
 このシューティング・ジャケットというものは実に厄介だ。
 服は肌を保護する(覆う)という目的や、着飾ることで、身分、地位を示したり、自己主張(あるいは自己満足)するとしての機能の他に、温度コントロールという重要な機能を持つ。夏は涼しく、服は暖かく、快適に過ごすためにも人は服を選ぶ。しかしシューティング・ジャケットには、ほとんどその機能がない。夏に着ると非常に暑い。冬は凄く寒い。
 真夏の暑い日など、これを着るのは一種の拷問だ。硬く身体を締め付ける上に、スリングもきつく張って左手を固定する。暑くて汗がダラダラと流れる。オマケにこの服は洗濯ができない。身体の動きを止める為に硬さが必要なのだ。洗濯して柔らかくなってしまったら意味がない。

 Kurt Thune Shooting Jacket  Black, Gray, Yellowの組み合わせがKurtのスタンダードカラーだ。

 冬の寒さを防ぐためには、保温効果が高い薄手のアンダーウェアがある。セーターなどをシューティング・ジャケットの下に着込むとルール違反となる場合がある。生地の厚さに規定があるし、重ね着の枚数にも規定があるからだ。そして通常の場合、厚手のセーターを着るとシューティング・ジャケットを着ることが不可能となる。シューティング・ジャケットが身体にフィットするように作られているからだ。既製のサイズのものもあるが、体形がちょっと標準から外れた場合はオーダーメイドとなる。
 シューティング・ジャケットは銃を構えた姿勢を補強する機能がある。ルール上では生地は柔軟で、特殊な作用あるいは変化を起こすことのないものである事とされている。
 しかし実際には柔軟な生地など使われていない。キャンバスもしくは革で非常に硬い。ルール上、厚さは2.5mm以下となっている。長く使って硬さが取れてしまったキャンバス生地に対する硬化剤などというものまで使われている。
 しかし極端に締め付けているわけではない。ジャケットは前をボタンで固定する。このときのボタンの位置には制約がある。ボタンを留めないで前をしっかり合わせたとしたら、ボタンホールの外側からボタンの中心部まで70mm以上なければならない。これにより身動きがとれないほどきついジャケットの着用は禁止されている。
 銃を構える姿勢は容易にとれるが、それ以外のことをしようとすると、とても困難だ。立射専用のStanding coatがあり、また伏射専用のProne coat、そして三姿勢に対応する3P(position)coatがある。

 Kurt Thuneの3姿勢対応モデルを示すマーク。背中の肩の部分と袖にある。Jの文字が見えるが、これは日本人用J patternであることを示している。
 
 しかし1つの試合で着用できるシューティング・コートは1つだけだ。3姿勢競技中にジャケットを着替えることはできない。
 背中にはゼッケンを止める金具が2つ付いていて、左腕上部にはスリングを止める金具がある。
 下半身を固定するためのシューティング・パンツもある。これも硬く、これを身に着けた状態では歩行も困難だ。硬すぎて膝射の姿勢をとることができない。そのため裾から腿裏まで、ジッパーで開けることができる。
 靴にも専用品があり、靴底が平らで、くるぶしを固定する。靴底の厚さは10mm以内、踵の部分で30mm以内とされている。靴の高さは靴底の長さの2/3以内だ。これを履くと極めて歩き難い。

 左手はシューティング・グローブをはめる。これがないと重い射撃銃を支えることが困難だ。厚さは手から外した状態で12mm以内となっている。
 シューティング・ジャケットやパンツのブランドはクルト・ツーン(Kurt Thune)が圧倒的だ。90年代の初めまではステンバーグ(Stenvaag)が人気だったようだが、今ではほとんど見かけない。その他クスターマン(Kustermann), ザゥアー(Sauer), モナード(Monard)といったヨーロッパ製が主流だ。それらと比較して安価なのが韓国製のマークスマン(Marksman)で、学生シューターに愛用者が多い。オーダーメイドでもヨーロッパの既製品より安い。最近、チェコのハイテックス(HITEX)というメーカーも現れた。これも比較的安価だ。


 これらの射撃専用衣装は立射の際に最大の効果を発揮する。実質的にはこの衣装を身に着けないと立射の場合、マトモなスコアを撃つことができない。シューティング・パンツは無くても良いが、身に着けたほうが有利であることは確かだ。
 プローンではシューティング・パンツはほとんど役に立たないため、身に着けていないシューターも多い。ショートパンツでも良いだろう。女性の場合、スカートでも良いはずだが、足を広げて地面に伏せるため、常識的にいってもスカートで撃つ女性シューターはいない。
 
 90年代前半にポジション射撃をテーマにしたTV番組がNHKで放送された。1980年代後半より一流シューターであり、NT(National Team)の一員としてオリンピックにも繰り返し参加している源洋子が出演していた。その番組はポジション・シューティングについて紹介し、10点を撃ち続ける一流シューターの高い集中力とその技術を、ちょっとだけ科学的に解明しようとしていたが、予想通り中途半端な内容であったと記憶している。
 番組の中で、司会役の中山秀征と源洋子が、スタジオでビームライフルで勝負するというシーンがあった。ところがシューティング・ジャケットもグローブも身に着けていないためにNTの源洋子が撃っても6点や7点に飛ばしまくり、中山秀征との差はほとんどないという状態だった。
 源洋子も、「射撃服がないとダメです」とエクスキューズしていたが、このシーンは本来はボツにするべきだっただろう。一流のポジションシューターであっても、専用のウェアを着ないと一般人と全く差がないことを露呈してしまったからだ。
 こんなスポーツは他にないだろう。一流の短距離走の選手は、スーツにネクタイ、ビジネスシューズであっても物凄く速く走るだろうし、水泳選手は競泳用水着でなくても、とんでもないスピードで泳ぐだろう。アスリートは自らの肉体を鍛え上げ、スコアやタイムを追求し、身に着けているものは僅かにそれを助けているに過ぎない。
 しかしポジション・シューティングの場合は、事情が違う。シューターはシューティング・ジャケットとシューティング・パンツを身に着けた状態で最高のスコアを叩き出すように身体を作りあげる。だからポジション・シューティングの競技会はシューティング・ジャケットを着ることが常識だ。ほぼ100%のシューターがシューティング・ジャケットを着ている。これを着ないで競技に参加することもできるが、その場合、参加するだけであって上位に入賞することは不可能だ。
 しかし、この服に依存する部分が大きいことが、ポジション・シューティングの普及の大きな足枷となっているようにも思える。

 近年、この射撃専用服についてより厳しい制限を加える動きがある。ISSFのルールは、オリンピックの翌年から改定される。昨年(2004年)のアテネオリンピックを終えて、今年から新ルールがスタートした。
 結果的にはウェア関係にはとくに変更は加えられなかった。しかし次の北京オリンピックの後、大きく修正が加わる可能性があることが示唆されている。
 本来ならシューティング・パンツは今年から禁止のはずだった。しかしこの方針はリセットされた。またジャケットをもっと薄い素材にするというプランがあったらしいが、これも見送られた。
 しかし、国内競技では今年から硬さ規定をより厳格に適用するという話だ。以前は素材の厚さを2.5mmに規定していたに過ぎないが、薄くても非常に硬い素材を作ることはできる。極端に硬い素材にして身体を固定することを禁止する意味で硬さ規定ができた。
 それに合わせて硬さ測定器が作られた。この測定器は中心部に、直径60mmの上下に可動するプレートがある。このプレートは無負荷状態では周辺部分とツライチとなっている。この上に測定するシューティング・ジャケットを載せる。
 この可動プレートにあたる部分に直径20mm、重さ1kgのおもりを乗せる。可動プレートはそのおもりの重さを受けて沈むわけだが、シューティング・ジャケットが硬ければプレートの沈み具合は小さくなる。規定では3mm以上沈まなければならない。特例として2005年中は2mmでも許可されるが、2006年からは、3mmルールが適用される。これは規格外のジャケット、パンツを使用しているシューターへの救済処置だ。
 4年後、もしルールが変わり、厚さや硬さの基準が変われば、既存にあるシューティング・ジャケットはすべて新しいものに変えなければならなくなる。今あるものをあと4年使い続けられるのなら十分だという考えもあるが、一般のシューターはシューティング・ジャケットを頻繁に買い換えたりはしない。
 上級シューターなら使用頻度も高く、使い続ければ柔らかくなって効果が落ちてくれば買い換える。
 毎年新しいものにするシューターも少なくないだろう。しかし、趣味的に射撃を行なっているシューターなら10年以上、同じジャケットを使い続けることも多い。ルールが変わったといって簡単に買い替えを強要されるのはあまり嬉しい話ではない。
 このシューティング・ジャケットはヨーロッパ製のオーダーメイド品の場合、10万円以上と比較的高価なものだ。ポジション・シューターの中には、あまり装備にお金を掛けたがらない人もいる。一般的な射撃大会などでは、少なくとも15年以上前のものと思われるような年季の入ったシューティング・ジャケットを身に着けている人を何人も見かける。


 サポート性を低くするためにジャケットの生地を薄くしたり柔らかくしたりするなら、いっそサポート性のある衣服は全面禁止にしてしまったらどうだろうか。スコアは一気に悪くなるだろうが、みんなevenな条件なら有利不利はない。
 決して快適とはいえない身体を締め付ける服を好む人は少ない。アメリカではほとんどポジション・シューティングが普及していない。それは規定が多すぎる上、射撃姿勢が窮屈で爽快感に欠けるということが一番の理由だろう。
 その一方で、アメリカにはナショナル・コートと呼ばれる独自規格のジャケットがある。ISSFのルールは無視、独自の締付け機能で、身体をギリギリまで締付けるというものだ。どうせキツイのなら、とことんまでキツくするということが、アメリカ的発想だ。東京オリンピックのころは、まだISSF(当時はUIT?)ルールが確立されておらず、アメリカのライフル射撃選手は皆、このナショナル・コートを身に着けていたらしい。

 参考として、アメリカで行なわれているいくつかの射撃競技における服装規定について書いておこう。



写真はIBS Nationals 2004
Photo by Turk Takano
copyright (C) 2005 by Turk Takano

 ベンチレスト競技にはドレスコードはない。服装でスコアが変わることは全く無いのでシューティングジャケットのようなものは全くない。各自が自由な服を着ている。袖がなければいけない、とか、パンツの丈にも制約はない。サンダル履きでも特に問題はない。写真を見ていただければお判り頂けるように自由な服装で楽しんでいる。短パン、タンクトップのシューターもいる。
 肩に銃をかついている写真があるが、これが移動時の標準的なスタイルだ。装備はカートに乗せて引っぱり、銃は肩にかついて車から射座に移動する。
 肩に銃をかついでいても事故が起こらないのは、射撃時以外ば常にボルトを取り外すというマナーが徹底しているからだ。腰のあたりを注目して頂きたい。多くのシューターが、ボルト・ホルスターにボルトを入れている。ボルトが外されていれば、120%事故はありえない。

IPSCはカモフラージュ・ウェアが禁止だ。かつてCombat Shootingと呼ばれていたとき、この競技の持つ戦闘的なイメージがスポーツとして市民権を得ることにはマイナスであったのだろう。競技の呼称を変え、服装もよりスポーツ的にしたわけだ。

反対にライフルのTactical MatchはカモフラージュやBDUでの参加がむしろ当たり前だ。実戦的な状況の対応する技術を競うこの競技では、現実的なシチュエーションに対応する服装をすることが基本だ。
 この競技に参加できるシューターは限られている。決まった距離でしか銃を撃ったことがないポジションシューターでは、とても足を踏み入れることはできない高度な世界だ。800mの距離を撃った直後、50mという至近距離の標的を撃たなくてはならない。その間、試射は許されない。
 特殊な世界であるゆえ、世間体を気にすることはない。バトルドレスがこの競技をおこなう上で最も快適だ。

最後のアテネオリンピックのドレスコードを書いておく。

 原文のままだが、簡単な英語なので読んでいただきたい。世界最大規模のスポーツイベントだが、意外と簡単かつ合理的な基準しか定められていないということがお判り頂けると思う。

Shooting events can have pretty strict clothing regulations, especially the rifle events. Shooters must wear special gear made according to ISSF (the sport's governing body) specifications.

Shooters normally wear a combination of tights, a sweatshirt and a stiff leather or canvas shooting jacket. Flat-soled boots are also usually standard equipment to aid with balance in the standing and kneeling positions. Leather gloves with rubber-padded palms can be worn to minimize the discomfort of holding a rifle for long periods of time.

In the pistol events, shooters are not obliged to wear special uniforms, but may wear shooting shoes.

In the shotgun events, there is no special outfit for trap and double trap shooters. Skeet competitors must have a line on their clothing at hip level so that it is possible to see whether the stock of the gun is above the hip or not as they wait to fire.

In the Running Target event, competitors must wear a special shooting jacket with a line at hip level for the same reason.

Most athletes also wear special shooting caps with extensions on the sides to limit any distractions from the peripheral vision.

Safety goggles and hearing protection are worn by all athletes.

Satoshi Maoka
Apr.20, 2005

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