FNH Special Police Rifle
1936年に発売されたウィンチェスター(Winchester)M70ボルトアクションライフルは、“rifleman’s rifle”として知られるもっとも成功したスポーツ用ライフルのひとつだ。そのデザインは改良の余地がないほど完成されていた。
しかしウィンチェスターは1964年、レミントンM700に対抗する目的で、M70のモデルチェンジをおこなった。一言で言えば簡略化だ。その結果、M70はその評価を大きく落してしまうことになる。
低価格かつ高性能を武器としたシンプルなレミントンM700と同じ土俵で戦おうとしたことが、完全に裏目にでてしまったのだ。
民生用のライフルである以上、生産工程に無駄があったとしても、必ずしもマイナスの要素とはならない。たんなる実用品ではなく、クラフトマンシップに溢れた製品を所有することにオーナーが喜びを見出していたなら、その製品に対する生産工程のショートカットは逆効果だ。ウィンチェスターM70は正にそれだった。M70はメーカーが予想していた以上にシューターに愛されていたのだ。
新型のM70はユーザーから完全にそっぽを向かれた。深く愛していたのに裏切られたら、憎さ100倍だ。
そして64年以前のM70はPre-64と呼ばれ、中古銃ながら高値で取引されるようになった。
1992年、ウィンチェスターはM70 Classicとして、Pre-64アクションを復活させた。約30年間の技術革新がClassicの復活を可能にしたのだ。CNCマシンがなければ、Pre-64を蘇らせることはできなかったといっても過言ではない。
M70は再びアメリカン・ボルトアクション・ライフルの傑作として市場に返り咲いた。
現代のウィンチェスターは、そのブランドを所有するUS Repeating Armsと共にハースタル(Herstal)グループの傘下にある。ウィンチェスターはブラゥニングに買収され、そのブラゥニングをハースタルが所有している。ハースタル・グループは、ベルギーのFNを中心に、軍事用兵器の開発をおこなっているが、ウィンチェスターは民生用だ。
FN Herstal(FNH)がアメリカ市場に向けてボルトアクション・スナイパーライフルを開発するにあたって、ウィンチェスターM70 Classicをベースに使うことは至って当然のことだった。事実、FNH Special Police Rifle(SPR)のアクションはPre-64そのものだ。

FNH A4 with McMillan A4 stock
ボルトはコントロールド・ラウンド・フィード(Controlled Round Feed)と呼ばれるタイプだ。アモがマガジンから抜き出され、チャンバーに送り込まれる初期の段階で大型のCrawタイプ・エキストラクターが確実にケース(薬莢)のリムをくわえ込む。Mauser 98以来の特徴だが、エジェクション・ポートからアモを直接放り込んでボルトを閉じる場合、不都合が生じる。
しかしPre-64は、エキストラクターの先端に傾斜を付け、チェンバーにはいったカートリッジのリムに、閉鎖と同時にエキストラクターが食い込むようになっている。
エジェクターは固定式だ。Post-64の時代ではプランジャー・タイプだった。
セフティは3ポジション仕様だ。前進位置ではオフ、中間位置ではファイアリングピンとトリガーをロックするが、ボルトの操作は可能だ。最後部にするとボルトを含めてすべてロックする。
バレルはFNのオリジナルでクローム・モリブデン・スチール、24インチと20インチのフルーテッド・バレルとがある。1−12” 4本右回転, 当然のことながらフリーフローティング(fully free-floated)だ。
FNH PSRは0.5MOA以下のタイトなグルービングを確実に叩き出す。昔のM70でこれだけの精度をコンスタントに得るためには、カスタムバレルと腕の良いGun smithに頼る必要があった。FNH Special Police Rifleは精度面でも確実な進化を遂げている。
使用されているストックはMcMillan のA4,及びA5, チークピース固定とアジャスタブルタイプがある。
バイポッドはハリス製6-9インチ・バージョン、またはパーカーヘイル・タイプのバイポッドが付く。
使用する弾薬は308Win と300WSMだ。
マガジンは308仕様であれば、一般的なヒンジタイプのフロア・プレートを持つ固定式マガジンと、デタッチャブルマガジンとが選択できる。300WSMの場合はデタッチャブルマガジンにはならない。
FNHが用意したスコープは、3種類あり、Leupold 3.5-10×40 Tactical, Schmidt & Bender 3-12×50 PMII, そして Nightforce NXS 3.5-15×50 NP-Mil Dotで、この中から選択する。もちろんユーザーは別のスコープを載せることも可能だ。スコープベースはMil-Spec M1913 ピクティニー(Picatinny)レイルが付いている。

FNH SPR A5 Suppressor model with McMillan SPR Tactical stock
FBIはこのFNH Special Police Rifle をPrecision Tactical Rifleとして採用した。FBI仕様はFNH Model A3、およびA3Gだ。GはGovernmentの“G”だ。
FBI用は固定マガジン仕様のみでデタッチャブルマガジンは採用されなかった。FBIはストック下部に突起物があることを認めなかったのだ。
スコープやバイポッドは別として、無闇な突起物を好まない。この感覚は一般的なハンティング・ライフルと同じだ。スナイパーライフルというと、あたかも特殊な武器という印象を与えるが、基本的にはバーミント・ライフルと何も変らない。ピクティニー・スコープ・レイルも寸法上はたんなるウェーバー(Weaver)マウントだ。特別なものではない。
サウンド・サプレッサー付きとなれば軍、警察の専用だが、それ以外は何も特別なものではなくハンティング・ライフルと同じだ。
スコープとバイポッド付きで6.6kg(14.5pounds) これはM24やM40A3と同等レベルで、バーミントライフルと比べればちょっと重いが、特に問題はない。
FNH PSRは極めてオーソドックスなスナイパーである。FNがヨーロッパで展開しているウルティマ・ラティオ(Ultima Ratio)スナイパー・ライフルのようなモデュラーシステム(Modular System)を用いたものではない(余談だが、Ultima Ratioを別の言葉に置き換えるとLast Argumentとなる)。アメリカ市場では、この種の大げさなスナイパー・ライフルは好まれない。
スナイパー・ライフルは、いかなるときでも瞬時に正確な一弾をターゲットに叩き込むことができる道具であるべきだ。必要なものは、凝ったメカニズムやシューターの姿勢に合わせるための微調整機構ではない。使いやすさと精度が最優先される。それにはバーミント・ライフルが最も近い。FNH SPRはこの思想に従って作られたアメリカン・ライフルだ。
June 5, 2005
Satoshi Maoka
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