Case Cleaning by Satoshi Maoka                   June 19, 2006掲載

 センターファイア・ライフルシューターにとって、ハンドローディングは必須科目のようなものだ。年に数十発しか撃たないハンティング主体のシューターはともかく、標的射撃をおこなう以上、ハンドローディングはほとんど避けて通れない。自分の銃にあった弾を作る、精度の高い弾を作ることは、ひとつの楽しみであり、ポジティブなものだ。
 最近は、工場製装弾も精度の良いものがあるようだが、ハンドロードをやめる理由にはならない。
 ハンドローディングは使用済みのケース(薬莢)を再利用するわけだから、必然的に使用済みのケースをキレイにするという工程が出てくる。
 しかしケース洗浄は基本的に精度にほとんど影響を及ぼすものではない為、注目を浴びることはない。今回はその注目されないケース洗浄にあえて焦点を当ててみようと思う。
 繰り返し使用するケースは、よほど汚れていない限り、チャンバーに入らないというような事はない。ケースネックは毎回リサイズされ、チャンバーに適切なサイズに矯正される。
 だから使用済みのケース(empty case)はある程度までキレイにしておけば良いのであって、新品同様のピカピカの状態にしなくてもよいはずだ。但し、キレイな弾薬を使ったほうが気分的には良いだろう。

                      ▲洗浄処理前     ▼洗浄処理後

 ケース(薬莢)をキレイにする方法は、クルミの殻等を粒状にしたメディアが入った専用のタンブラーに入れて、振動を与えて洗浄することが一番だ。
 しかしまず、それ以外の方法を各種試してみることにする。
 かつて黒色火薬が使用されていた時代、日本のマタギなどは射撃後、銃腔内および使用済みの薬莢を熱湯で洗っていたという。黒色火薬の燃えカスは水溶性の場合が多かったからだ。もちろんその後、銃腔内にはオイルを塗ったのは言うまでもない。また薬莢は熱湯のほかにヌカミソで洗浄したらしい。ヌカミソは酸性で、これによって黒く変化した薬莢がキレイになったそうだ(どの程度を、“キレイ”というかは判らない。“キレイ”という言葉は基準が曖昧だ)。現代はスモークレスパウダーであり、この手法は通用しない。
 一応、味噌で使用済みケースを洗浄してみたが、ほとんど効果はなかった。ヌカミソはウチに無かったので試していない。
 次の手法として超音波洗浄器を使ってみる。よくメガネショップの店頭においてある小さな超音波洗浄器は、レンズについた汚れ等をキレイにする。なぜか私はあの装置を持っている。さっそく使用済みのケース(薬莢)を放りこんだ。
 私の持っている超音波洗浄器は3分で自動停止するという初代ウルトラマン仕様だ。超音波洗浄器に水を入れ、ケースを沈めた。スイッチを入れると超音波が水に振動を与え始めた、振動する水がケースに波状攻撃を加える。ぴったり3分後、振動が止まった。引き上げてみると全く変化なし。汚れたままである。
 焼きついたようなカーボンの汚れはこの手法では無理だ。
 試しに洗剤を少量入れてみた。これも効果はない。3分といわず、30分や3時間連続で作動させたら違う結果が出るかもしれないが、ウルトラマン機能はキャンセルできないので諦めた。まあ、正直なところ、超音波洗浄器は初めからあまり期待はしていなかった。

                      左:超音波洗浄器  右:電動歯ブラシ

 汚れを取るならブラシだ。というわけで歯ブラシを用意した。ゴシゴシ磨いてみる。多少、汚れは取れるがあまり効果はない。歯ブラシなら歯磨きというわけで、通常の歯磨きを付けてみた。多少の研磨剤が入っている。これでちょっとは汚れが取れたが、期待したレベルではない。それに手が疲れる。1本毎に数十分磨いていれば効果が出てくるかもしれないが、そんなことは、とてもやっていられない。
 そこで電動歯ブラシを用意した。BRAUNのOral-B プラークコントロール(plak control)と音波式電動歯ブラシ、ソニッケアー(Sonicare)だ。
 Plak controlは上下振動+左右反転による3Dパルスアクション・ブラッシング、Sonicareは31,000回/分の超高速振動と幅広い振幅運動のコンビネーションから発生するダイナミックフルイドアクション(液体流動力)がウリだ…(もちろんこれはメーカーの弁だ)。
 手で磨くよりはるかに効果的かつ短時間で効果がでるだろう・・・。と思ったが、ちっとも効果がない。手動歯ブラシとほとんど差がない。初期段階でとれる汚れ以上のものは超高速振動でも短時間では歯が立たないようだ。ケースの汚れは歯の汚れとは質が違う。
 かなり以前、Fosterの製品で、電動ドライバーの先端につけるケースネック・クリーナーなる製品があった。一種のアイデア商品だ。バレルのクリーニングに使用するボア・ブラシを束ねたようなもので、中心の1本のブラシはケースの内側に差込み、それを取り囲むように配置された4本のブラシがネック外周にあたる。ドリルドライバーを動かせば、5本のブラシが、回転し、ケースネックの内部と外部を磨くわけだ。お値段は$14程度、数種類の口径にあわせたものが供給されていた。ブラシはブロンズではなく、ナイロンのようだ。銀座銃砲店はこれを一時販売していた。
 使用したことのある人によれば、全くキレイにならなかったそうだ。カーボンの汚れを表面から取り除かず、むしろ擦り付けて均等に伸ばした(かえって汚くなった)という。この商品はまもなく消滅した。
 ただ単にブラシで擦るという手法は、どうやらダメなようだ(しかし、研磨剤を使用すれば状況は一変する。それについては後で述べる)。

 かつて私はモデルガン少年だった。銃の基本構造を理解するのにモデルガンは多いに役に立ったし、中学生のころは、しょっちゅう火薬を詰めて撃っていた。当時の火薬は優秀鬼印平玉という腐食性の強い雷管で、のちのキャップ火薬とは全く違う厄介なものだった。
 この火薬を使っても、きれいに1マガジンをジャムも不発もなくブローバックされるのはかなり難しかったと記憶している。そして1発撃つと真鍮のカートリッジが黒く汚れた。その汚れっぷりは実銃の比ではない。イメージでは実銃の100倍ぐらい汚れたと思う。火薬の違いが原因だ。
 黒く汚れたカートリッジとデトネーターは、微妙なクリアランスをきつくし、不発、ジャムの原因となった。仕方がないので、スチールウールで磨いてきれいにしていた。
 そんな時、トイレの洗剤、サンポールがよく効くという話を聞いた。さっそくサンポールで洗浄した。具体的手法はサンポールに黒く汚れたカートリッジを浸けて、しばらくしてからゴム手袋を付けた手で取り出し、水洗いしてからティッシュで拭いた。劇的にキレイになったような記憶がある。昔の話なので、記憶はあいまいだ。しかしサンポールの効果はイメージとして強烈に記憶に残っている。
 10年ぐらい前、昔のモデルガンの記憶を頼りに使用済みケース(薬莢)をサンポールに浸けてみた。ところがキレイにならない。昔とサンポールの成分が変わっているのだろうか?そこで、試しに一晩浸けておいた。翌日見たら、ケースはまだら模様になっていた。汚れが溶けたものの、そのままケース全体を覆ったようだ。そして真鍮を侵して、少し溶かしてしまったようだ。恐るべしサンポール。トイレ以外には使わない方が良い、というのが私の判断だ。
 ピカールという、実に判りやすい名前の研磨剤が昔からある。良く光るから「ピカール」だ。よく滑れば「ヨクスベール」、毛が生えれば「ハゲナオール」(そんなものがあるかどうかは知らないが)というノリの判りやすい商品名だ。いわゆる金属磨きで、研磨剤が入っているのだろう。
 これをケース洗浄に使っているという人の話を聞いたことがある。1個づつ布で磨くのだそうだ。私はどうもそういうのは苦手だ。確かにキレイになるのだろうが手間が掛かり過ぎる。
 ひとつづつ磨くのではなく、やはり薬液にケースを放りこんでおけばよいもののほうが良い。サンポールのように強烈なものではなく、ある程度の能力があれば良い。
 誰でもそう考えるだろう。もちろんそういう商品がある。Birchwood CaseyのCase Cleanerはその一つだ。実はこれ、10年ぐらい前にアメリカで購入したものだ。サンフランシスコの有名なガンショップGuns Exchange(今はもう無い)で見つけた。当時の店頭販売価格$5.99。現在でもBirchwood Caseyから販売されているが、日本に入ってきたのは見た事がない。

Birthwood CaseyのBrass Cartridge Case Cleaner このボトルは10年程度前の物。現在の製品はボトルのデザインが若干変わって、白ボトルに赤い帯が付いたものになっている。

 アメリカで買って持ち帰ってきたものの、その後、全く使用しなかった。10年が経過し、もしかしたら賞味期限が切れているかもしれないが、実験として使ってみよう。
 取り扱い説明には、1クォート(quart)のお湯に2オンスのケース・クリーナーを入れろとある。1クォートは1.13リットル、オンスは30ml,なので、1リットル強のお湯に60ml(60cc)のCase Cleanerを入れれば良い。
 この液体にプライマーを外したケースを沈め、入れた容器を動かして拡散した。すると洗浄中の液体は黒っぽく汚れてきて、汚れを溶かしていることがわかる。3分後、引き上げてよく水洗いをする。そしてティッシュで拭いた。あまり期待していなかったが、ティッシュペーパーが黒くなって、ケースネックの汚れがある程度までキレイになったではないか。完全ではないが意外と効果があることに驚いた。薬品に特別の刺激的な臭いは無い。
 写真は使用済みケースと、ケースクリーナーで洗浄した結果の比較だ。ネックの汚れは完全ではないが、ある程度まで取れている。ボディの真鍮の色が違う。
 Birchwood Caseyのケース・クリーナーは侮りがたい。Iosso Case Cleaner Kitというモノも同じような性能だろう。しかし、この種の薬液は重量がかさむので、輸入すると価格の割には送料が高く、販売価格を引き上げてしまう。だから日本では売られていないのだろう。それに1個づつティッシュで拭くのはやはり面倒だ。浸けておけば、それだけでピッカピカになるものはないだろうか?
 こうなってくると、タンブラーで洗浄するのがやはり一番だということになる。

                   左 VERTEX Vibra Shine, 右 Lyman Turbo 1200

 タンブラーにはクルミの殻やトウモロコシの芯を細かくチップ上にしたものを入れる。これがメディアだ。そこに使用済みのケースを入れる。タンブラーの大きさにもよるが、308クラスであれば100発以上入る。スイッチを入れると。タンブラーは振動し、メディアを微動させ、そのメディアがケースを擦って磨くのだ。作動音は意外と静かであまり気にならない。  
 しかしこの製品はアメリカ製だ。AC115Vでの使用を想定している。日本は100Vだ。この電圧の違いは、振動を弱くしているはずだ。変圧器を使えば、この問題は解決するだろう。しかし115V仕様のタンブラーを100Vで使っても実害はないようだ。
 タンブラー洗浄は通常2時間から3時間おこなう。ところがネック部分はあまりキレイにならない。発射後のケースの汚れはほとんどネック部分に集中している。ここがキレイにならないとあまり意味はない。知人に徹底的にケースをキレイにしている人がいる。彼の使用するアモをも見るとピカピカだ。本人に聞いてみると12時間ぐらいタンブラーを動かすそうだ。
 正直言ってこれはお勧めできない。タンブラー洗浄といっても、物理的に擦って磨いているわけで、過度に磨けばリムのエッジが甘くなり、場合によってはエキストラクターが引っ掛からなくなる恐れもないわけではない。
 私は長期にわたり、タンブラーで2〜3時間の洗浄だけで繰り返しケースを使用し続けていた。ネック部が完全にきれいにならないものの、実害はない。
 しかし、あまり気分の良いものではない。ちゃんとキレイにしたいと考えた。そこで登場するのが、Rooster Bright Case Polishだ。なんだか良く判らないが、粘度のある液体で、タンブラーのメディアにこれを加える。
 まずRooster Bright Case Polishのボトルを良く振る。内部の液体は分離しているので、良くかき混ぜる必要がある。そしてタンブラーを動かしながら、この液体をたらす。分量は3ポンドのメディアに1オンスだ。1.36kgのメディアに28gのロースター・ブライト・ケース・ポリッシュを加える計算になる。別の表現では1ポンド(454g)のメディアにティー・スプーン2杯(小さじ2杯)だ。
 実際にはいちいち計ることは面倒なので、目分量でRooster Bright Case Polishを垂らす。
 タンブラーをそのまま約3分回転させる。Rooster Bright Case Polishがメディアに良く混ぜるわけだ。
 その上で洗浄したいケースを突っ込み、3時間程度そのままタンブラーを動かし続ける。効果はかなりある。これをいれたメディアと、入れていないメディアとでは同じ時間タンブラー洗浄した結果が違う。

 しかし完全にネックの汚れがきれいになるわけではない。長時間動かせばきれいになるだろうが、それは避けたい。
 Rooster Bright Case Polishの色はクリーム色で匂いはレモンケーキのようだ。一説にはピカールでも同じ効果が出るという。確かにそうかもしれない。
 そこでRooster Bright Case Polishを少量ティッシュペーパーにつけてケースを磨いてみた。ピカールと同じ方法だ。予想通り、キレイになる。これはRooster Laboratoriesの製品だ。
 別の手段として、Krazy Klothというものがある。
 ガチャポンのカプセルのようなものに54sq.in(約12cm角)の布が入っている。この布に薬液がしみこんでいる。これは非常に嫌な臭いだ。そして、この布を素手で触ることは避けるべきだ。そこでビニールの手袋をする。この布でケースを磨くと、これがまた驚くほど簡単にネック部の汚れが取れる。強烈だ。真鍮の本来の輝きが戻るというより、なんとなく白っぽくキレイになる。


 Rooster Bright Case Polishの入ったメディアで磨いたものや、Birchwood Caseyのケース・クリーナーで磨いたものは真鍮の輝きが出ているが、これは違う。
 このKrazy Klothは、何か突出して効果のある薬液が入っているのではないだろうか。なにか劇薬っぽい。とにかく効果は絶大だ。
 パッケージにある“Removes IMPOSSIBLE stains instantly”(落とせなかった汚れを簡単に落とす)はウソではない。パッケージには1001回使用できるとある(ようするに“驚くほど何度も使える”という意味だ)。
しかしこれもやっぱり、1個づつ磨かなくてはならない。
 結論としては、Rooster Bright Case Polish入りのメディアでタンブラー洗浄する、どうやらこれが一番の方法のように思える。

    Group A :使用済みケース(洗浄前,大雑把な洗浄で数回射撃、ネック部分の汚れが堆積している),
     Group B :タンブラー洗浄3時間(Rooser Bright Case Polish添加なしのメディアを使用),
     Group C :タンブラー洗浄3時間(Rooser Bright Case Polishを添加したメディアを使用),
     Group D :Krazy Klothで手磨き、そのままだと写真のように白っぽく濁った感じになる。,

 正直なところ、Birchwood Caseyのケース・クリーナーだけでも十分な気がする。1個づつティッシュやタオル等で拭かないといけないということは面倒だが、タンブラーだって、ケース内部に入ったメディアを抜き取る作業が伴う。具体的には、ケースマウスを下に向けて振るわけだ。プライマーをデキャッピングしてからタンブラー洗浄をした場合は、メディアがフラッシュホール内にも詰まっている。これは細いピン(楊枝でも可)などで押し出さないと取れない。
 そのことを思うと、ケースクリーナーで洗浄し1個づつ拭き取る作業など大して面倒ではないのかもしれない。毎日100発づつ撃っているわけではないし、毎週100発づつ撃つわけでもないだろう。そんな頻繁に撃っていたら、あっという間にバレルはエロージョンでダメになってしまう。
 問題は専用のケース・クリーナーを輸入している業者がないことだ。個人輸入でも割高だろう。

左:E:タバスコ洗浄、ティッシュペーパーにタバスコを付けて手で磨いたもの
 F:Rooster Bright Case Polish手洗浄、ティッシュペーパーにケースポリッシュを付けて手で磨いたもの
 G:トイレパワーズ洗浄、数分原液に浸し、水で洗浄したあとティッシュペーパーで磨いたもの
 H:Nver Dull洗浄、Nver Dullで擦ったもの
右:Krazy Klothでの結果(左)とNver Dullでの結果(右)の比較、Krazy Klothも磨いた後、水洗いし、ティッシュで磨くと輝き出す。輝きの度合いは同程度だ。

 せっかくなので、その他の手法も試してみた。タバスコで10円硬貨をキレイにしたことがあるだろうか。すっかり銅の表面が曇って輝き失った10円硬貨にタバスコに1滴、垂らし、ティッシュで磨くと驚くほどきれいになって、10円硬貨は輝きを取り戻す。10円硬貨が曇っているのは表面が酸化しているからだ。酸素と銅が結びついた結果、酸化銅CuOとなって表面が曇る。タバスコには酸化還元作用があるため、銅の酸素が結び付いている状態を還元するわけだ。酸化還元が起こるのは、タバスコに含まれている酸による効果だ。
 酸は醤油やソースにも含まれている。だから、醤油やソースでも酸化還元が起こり、10円硬貨はキレイになる。
 ケースの汚れは酸化ではない。だからタバスコなんかでケースがキレイになるワケは無い。判っているけど試してみた。タバスコをティッシュに付けてケースネックを磨いたのだ。驚いた。キレイになるではないか。完璧ではないが焼きついたようなカーボンの汚れが見る見るうちにとれる。何故だろう?


 左:タバスコ ハラペーニョ・ソース 実験は通常の赤いタバスコ ペッパーソースでもおこなった。どちらでもキレイになる。 右:キューネ白ワインビネガー(醸造酢) 効果なし
 タバスコの成分は、唐辛子、ビネガー、食塩である。ケースに付着したカーボンの汚れをキレイにするのは、この中のどの成分か、おそらくビネガー(酢)だ。
 ビネガーにはそんな力があるのか。早速ワインビネガーで試した。赤か白か迷ったが、白ワインビネガーを使用した。ところがほとんど汚れがとれない。タバスコでキレイになったのは、ビネガーの作用ではないのか。
 もしワインビネガーでキレイになるなら、ワインで試してみようかと思っていたが、ワインで試そうと思っていたがこれは中止だ。
 ちなみに醤油も試してみた。タバスコほどではないが、醤油でもそれなりにキレイになる。

ご存知、お醤油。醤油の写真はいらないと思ったが、ついでなので掲載。左はハワイで売っているAloha Shoyu 中国製、メーカー不明。右はKikkoman Soy Sause。いわゆるキッコーマン醤油。ウィスコンシン州のKikkoman Food Inc.で醸造したアメリカ製。日本の醤油との味の違いは無い(・・・ように思える)。

 実験なので、サンポールをもう一度、試してみようと思った。ところが手元にあったものはエステー化学のトイレパワーズだ。
 この手の洗浄剤は塩素系と酸性があり、この両方を混ぜると有毒ガスが発生することは良く知られている。死亡事故が発生してから、この主の商品には“酸性”“塩素系”と明確に表示され、“混ぜると危険”と注意書きがある。これらを混ぜると発生するのは高濃度の塩素ガスだ。
 濃度3〜5ppmで咳や涙が出て、その5倍になると呼吸困難になり、数十ppmで肺水腫になる可能性があり、この段階で呼吸困難になって死亡する危険性がある。致死濃度は、100ppm以上だ。
 酸性のトイレ洗浄剤洗浄剤が汚れを落とすのは、含まれている塩酸HClによって汚れのもとが分解されていくためだ。塩素系洗浄剤には、次亜塩素酸ナトリウムNaClOが含まれている。NaClOは酸素原子を放出し、この酸素原子により、汚れが分解される。
 トイレパワーズの原液に使用済みケースを浸けて、数分。そこから引き上げて水でよく洗浄した。作業はゴム手袋をしておこなった事は言うまでも無い。長時間浸けると昔、サンポールで失敗したように真鍮を侵してしまうかもしれない。
 引き上げてよく水洗したものをティッシュで拭いた。結果はイマイチだ。確かに汚れは落ちる。しかしタバスコの方がずっとキレイになる。
 塩素系洗浄剤であるトイレハイターでも試したが、結果は同じだった。
 サンポール、トイレパワーズ、トイレハイター、これらはいずれもかなりの劇薬だ。目に入ったら失明の危険があるし、素肌に触れたりしたらすぐに大量の水で洗い流さなければならない。かなり厄介な代物だ。それに本来の目的とは違う使い方だ。サンポールの製造元である大日本除虫菊や、トイレパワーズのエステー化学、トイレハイターの花王も、使用済みケースの洗浄に使われることを望んではいないだろう。この実験でもトイレ洗浄剤は大して効果がなく、お勧めする要素は全くない。
 スチームクリーナーというものがある。水を入れてこれを加熱、水蒸気として対象物に噴射、汚れを浮かせて取るというものだ。試したのはドイツ製ケルヒャー(KARCHER)1102VAPORAPIDだ。試す前からダメだろうと思っていたがやっぱりダメ。ほとんど効果なし。真鍮のケースはかなり熱くなり、水蒸気を噴射した後、しばらく触れない。

 NEVR-DULLという金属磨き剤がある。缶入りで中には綿状の繊維がぎっしり入っており、これには薬液が染み込んでいる。
 NEVR-DULLは、金、銀、銅、真鍮、ガラス、鉄、アルミ、クロム等の金属に使用できる洗浄研磨剤だ。錆落とし効果もある。

 多少臭うし、嫌な臭いだが、Krazy Klothよりずっとマシだ。この綿状のものでケースを磨くとこれも結構きれいになる。Krazy Klothほど劇的な効果はないが、かなり使える感じだ。

                      炭酸水素ナトリウムNAHCO3 重曹

 最後に重曹を試してみよう。重曹とは炭酸水素ナトリウムNaHCO3だ。脱臭剤やふくらし粉としての効果と共に、研磨剤、洗浄剤、消化剤、農薬、胃腸薬、食品としての効果があると知られている。 
 重曹を水で濡らした歯ブラシに付けて擦ってみた。思いのほかキレイになる。3Dパルスアクション・ブラッシングやダイナミックフルイドアクションを使用せずとも、手動で数分磨けば良い。
 重曹は水に溶けると弱アルカリ性を示し、Na+とHCO3-に解離する。汚れは+に帯電しているので、このHCO3-が+の汚れに付着し、ケース自体もマイナスに帯電して、汚れが引き剥がされるらしい。
 重曹は環境負荷が小さい。これも考慮すべき重要なポイントだ。

左:洗浄前の使用済みケースと、重曹による洗浄後の比較。重曹を濡らした歯ブラシに付けて手で数分擦ったもの
右:洗浄前の使用済みケースと、NverDullによる洗浄後の比較。NverDullを少量手にとって、数分磨いたもの
手間は掛かるが、重曹だけでもある程度、満足できる結果になる。

                今回、実験に参加した薬液関係の集合写真。一部欠席あり

 使用済みケースを洗浄する方法はいろいろある。専用の薬剤、金属磨き、身近にある意外なもの、それらの中にかなりの効果を示すものがある。他にも予想外の効果を示すものがあるだろう。最初に述べたように、ケースはピカピカにしなくても特に問題はない。それ以上は気分の問題だ。ライフル・シューターの間ではタンブラー洗浄が主流であろうが、他の方法も捨てたものではない。

注意: 今回、様々な手法でケース(薬莢)を磨きましたが、この結果はあくまでも私がおこなった結果であり、同様の手法で同様の効果が出なかったとしても、私は一切責任は負いません。また各方法で何らかの不具合が生じても同様です。各自、ご自身のご判断、およびご自身の責任でおこなってください。

June 19, 2006
Satoshi Maoka

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