ボアサイター 
                                     2007年9月7日掲載

 センターファイア・ライフル射撃の試合にも、いろいろなレベルのものがある。真剣にXポイントの差を競い合うものから、リラックスして参加できる草試合までさまざまだ。
 過去に草試合レベルの試合で、スコープを載せただけで、ゼロインをおこなわずに参加したシューターを何度か見掛けたことがある。
 銃やバレルを新調したまま、1発も撃たないまま試合当日になったとか、スコープを交換したものの、ゼロインをする時間が無かったとか、事情は様々だろう。
 50m程度の試合なら、ゼロイン無しで撃ち始めても、それほど困らないかもしれない。しかし300mで撃つ場合は、かなり困ったことになる場合が多い。
 何発撃っても標的に着弾しない。試射は無制限だからといっても、どんどん弾数がかさみ、着弾不明のまま持ってきた弾薬が尽きて、結局試合放棄をせざるを得なかったシューターもいた。
 彼らがもし、ボアサイターを使っていたら、そんな恥は掻かずに済んだ・・・・・かもしれない。

Bore sighting
 センターファイアライフルを所持して以来、スコープを何度も交換した。現在はNightforceに落ち着いたが、最初に使ったスコープはアメリカで買った$76のTasco mag-IVだった。それ以来、数々のスコープを使ってきた。
 その間、スコープを交換して、ボアサイティングを行なわず、ボアサイターも使わず、レーザーボアサイターも活用せず、いきなり標的に撃ち込んでみて、着弾不明を何度も経験した。
 取りあえず、ボアサイティングはやるべきだっただろう。ボルトアクション・ライフルならボア・サイティングは簡単にできる。
 ボア・サイティングのやり方については、あまりにも基本的なことのためか、誰も書かないので、あえてここに書いてみよう。

1. まず、銃を扱うにあたって100%安全な場所を確保する。
2. 続いてボルトを取り外す。
3. 銃をしっかりした台に載せる。ライフルレストがあればベストだ。
4. レシーバーの後ろから銃身を覗き、25m〜50m地点にある対象物を捉える。レストに銃を置いただけではそれはムリかもしれないので、レストごと方向や角度を変える必要がある。
5. 対象物を捉えたら、その状態で銃が動かさないように固定する。
6. そのままの状態でスコープを覗く。
7. レティクルを調整し、中心にその対象物が来るようにする。
8. 再び、レシーバーの後ろから銃身を覗き、対象物が前と同じに見えるかどうか確かめる。
9. 射撃場で試射をおこなう。距離は25m程度が望ましいが、50mでも良いだろう。標的紙はできるだけ大きいことが望ましい。ボア・サイティングが適切なら初弾から標的に入るはずだ。
10. その距離でレティクルを標的の中心に合わせる。
11. Zero-inさせる距離で射撃をする。最初に射撃をおこなった距離と、zero-inさせる距離との着弾点の差は、バリスティック・テーブルで確認すれば予測できるので、概ね何クリック動かせば良いかが判る。

 以上だ。日本では25mで標的を設置できる射撃場はあまり無いだろうから、50mでも良い。しかし100mだとちょっと厳しいかもしれない。
 しかし、それ以前にレシーバー後方から対象物を捉えることは、ちょっと面倒だ。30口径前後の細く長い銃身なので非常に見え難い。410番のスラッグ銃なら、少しは見え易いかもしれない。

 ボルトを外して、チャンバー側、バットプレートの位置からバレルを覗いた図。径の細いバレルを通して対象物を捉えるのは、ちょっと厄介だ。

 見え難いのは、レシーバー後部に目を近づけて覗こうとしても、顔がストックに当たってしまうからだ。結局、ストックのバット・プレートの位置から覗かなければならない場合が多い。ストックを外せば、レシーバー後部に目を近づけられる。

 かつて、このボア・サイティングやって100mで撃ってみたら、着弾不明だった。100mでは距離があり過ぎ、ムリだったのだろう。しかし、それ以来、ボア・サイティングなど“あてにならない”、という意識が自分の中に生まれてしまった。
 そんなわけで、道具を使ったボア・サイティングに移行した。

Boresighter
 ボア・サイターは、サイト合わせの補助ツールだ。
“No more missing targets or wasting ammunition. You'll get on target the first shot with the ***Boresighter. ”
(サイト合わせの時、弾痕不明でムダ弾を撃つ、なんてことからサヨウナラ。この***ボアサイターを使えば、1発目からターゲットをヒット!)
こんな広告を見たことがある。しかし、ボアサイターは、そんなに便利な道具なのだろうか。

左:Tasco SHOT SAVER   右の上:Leupold Scopesmith Magnetic Boresighter, 右の下:Leupold Zero Point Boresighter 

 左のボア・サイターはアーバー(arbor : 軸)をマズルに差し込む形式だ。金属の棒をマズルから差し込むわけだが、正直なところ、マズルのクラウンを傷つけそうでちょっとイヤだ。
実際には、それほど神経質にならなくても良いのかもしれないが、口径にピッタリ合った金属棒を差し込むのは、やはり気を使う。
たぶん、同じような意見はあったと見えて、金属のアーバーを使わないマグネット式のボア・サイターが出てきた。それが右の写真だ。Leupoldブランドの旧型(Scopesmith)と現行モデル(Zero Point)を用意した。
バレルは普通、クロモリかステンレスだ。だからマグネットが付く。マグネット式なら、アーバーを差し込む必要が無い。またアーバー式の場合、口径にピッタリ合わせないといけないので、何種類も銃を持っている場合は、それぞれの口径に合わせたアーバーが必要になる。アーバー式のスコープサイターには、主要な口径のアーバーが何本もセットされており、これはほとんど問題はないだろう。

左:Leupold Scopesmith Magnetic Boresighter 2001年発売  右:Leupold Zero Point Boresighter 2005年発売 光学部分にイルミネーターがセットされ、暗い場所でも使用できるようになった。
 アーバー式でもマグネット式でも、機能は一緒だ。これをマズル部分に装着し、スコープを覗くと、格子状のグリッドが見える。スコープのレティクルの中心を、グリッドに合わせる。とりあえず中心に合わせるのが基本だ。そうすると、50mから100mの距離で撃った場合、弾痕が標的上に見つからない、ということはほとんど無い・・・と思われる。
 ボア・サイティング同様、これもできるだけ近い距離で撃つことをお奨めする。

左:Leupold Scopesmith Magnetic Boresighter   右:Leupold Zero Point Boresighter  ボアサイターのグリッドは、このようになっている。

アーバー式の場合、光学パーツとアーバー間の長さは常に一定だ。一方、マグネット式の場合、ボアラインとサイターの光学パーツ部分との距離は一定ではない。マグネットの部分は上下に長く、ボアサイターを低く付けることも可能だし、高く付けることも可能だ。
 事情を知らないと、この段階で疑問を持つだろう。ボアサイターを低い位置で付けた場合と、高い位置で付けた場合では、スコープを通して見える像(グリッドの位置)に違いがあるはずで、そうなると具合が悪いではないか・・・。しかし、実際は心配御無用だ。

 ボアサイターの使い方は、以下の方法が正しい。
 まず、チャンバーとマガジンからアモも抜く。万一、発砲してしまうようなことがないように、これは厳重に注意しなければいけない。ボルトを開くだけでなく、センターファイアなら、チャンバーに指を突っ込むぐらいして、空であることを確認すべきだ。

 チャンバーに指を突っ込んで、間違いなくチャンバーが空であることをチェックする。センターファイア・ライフルはボルトを開いただけでは、チャンバーが空になっていると断言できない。エキストラクターがリムに噛み込まず、チャンバーにAmmoが残っている可能性がある。エジェクション・ポートから覗いても、チャンバーは奥にあるので、目視確認もちょっとやり難い。一番、確実なのは、チャンバーに指を突っ込んでみる事だ。もっともボルトを外せば、目視確認は簡単だ。セミオートライフルなどの場合、この“指を突っ込む”方法が有効だ。但し、ボルトに指を噛まれないよう、注意すること。

 この確認をおこなった後、マズルにボア・サイターを取り付ける。
 Leupoldの旧型は光学部分が大きいが、アーバー式に比べるとずっと小さくなっている。旧型に比べて現行型(Zero Point)はさらに光学部分が小さい。

マズルにサイターを装着する際は、出来る限り、垂直に取り付けるべきだ。但し、多少傾いても、困ることは無い。
 マズルにサイターを取り付けたら、スコープを覗いてみる。背景は明るい方向が良い(現行型はイルミネーションが内蔵されているので、onにすれば背景が暗くてもOKだ)。
 取り付け位置が大きく外れていない限り、グリッドが見えるはずだ。スコープのレティクルは、ほとんどの場合、水平線と垂直線がある。スコープのレティクルとグリッドの水平垂直線を極力合わせた方が良い。具体的には、サイターの取り付け角度を動かし、水平垂直が合うように微調整する。
 そしてレティクルを調整してグリッドのセンターに概ね合わせる。

Leupold Scopesmith Boresighterを使用、Nightforce スコープ NP1-RRレティクルで覗いた状態、スコープの倍率によって違うが、レティクルとグリッドはこのように見える。

 概ねというのは、ここで正確に合わせても、あまり意味はないからだ。ボアラインとサイトラインは、以前書いた通り、一致しない。またバレルは僅かに曲がっている可能性が高い。だからこの段階で、グリッドのセンターにピッタリと合わせてもあまり意味はない。
 光学式ボアサイターの重要な特性は、装着する高さや角度が変わっても、レティクルとグリッドの一致する位置が変わらないということだ。
 但し、スコープの視野から外れてしまうとどうにもならないので、マグネットタイプを装着する高さは注意しないといけない。
 Zero Point Boresighterは非常にコンパクトだ。しかし、ここまでくると小さすぎると言える。マズルに取り付けても、位置が低すぎると、肝心のグリッドが見えないのだ、また、高さは合っていても、傾けて取り付けた場合、ボアサイターはスコープの視界から外れて、グリッドが全く見えない。これは新型に顕著な問題だ。

 上の画像は上下装着位置の変化を示しているが、この程度のズレは, 問題にならない。Zero Pointは光学部分が小さいので、その使用可能範囲(高さ方向のズレ許容量)は非常に小さい。
 また装着角度が一致していなくても、レティクルのセンターが示すグリッドの位置は変わらない。すなわちスコープサイターが少し曲がって取り付けられても、サイターのグリッドと、スコープのレティクルセンターが一致する位置が変わらないのだ。さきほど水平垂直を微調整して合わせると書いたが、必ずしも必要が無いかもしれない。

 Leupoldの光学式ボアサイターには大きな弱点がある。高倍率スコープだと役に立たないのだ。低倍率スコープの場合、グリッドがはっきり見える。しかし倍率を上げていくとグリッドがぼやけ始める。

 旧型Scopesmithの場合、9倍程度までは問題が無いが、それ以上になるとだんだん苦しくなる。18倍が限界で、それ以上の高倍率スコープだとグリッドが見えない。
 Zero Pointはもっと厳しい。12倍が限界だ。イルミネーションをONにすると多少、見やすくなるが、それでもこれ以上の倍率にするとダメだ。36倍以上の固定倍率が標準のベンチレスト用スコープだと、全くグリッドが見えず使用できない。

 さて、レティクルのセンターと光学式ボア・サイターのグリッドが一致したら、ボア・サイターを取り外す。このとき確実に取り外したことを確認しよう。とくにアーバー式の場合、アーバーだけが外れてマズルに残っていたら大変だ。実際にアーバーをバレルに残したまま、発射してしまった話を聞いたことがある。銃身が破裂、もしくは途中で膨らんでしまったらしい。バレルだけでなく、銃そのものをダメにするかもしれないし、人身事故になる可能性も高い。
 サイターの取り外しを確認したら、射撃場で弾薬を装填して、撃ってみよう。
 距離はできれば50m以下が望ましい。初弾は標的に入る・・・ハズだ。100mでも大丈夫だろう(保証はできない)。
 標的に着弾したら、エレベーションとウィンデージ・ノブを回して着弾がターゲットの中心に来るように調整する。
 そのあとzero-inする距離で撃ち、レティクルの最終調整をする。

 これで終わりではない。zero-inが終了したら、再び、弾薬を確実に取り除く。そしてボアサイターを再び装着する。今度は銃とスコープは確実に合っている状態だ。このとき、スコープのレティクルはサイター・グリッドの、どのポイントを指しているだろうか?おそらくセンターではない。
 グリッドのどの位置を指しているか、これを記録しておこう。図に描いておくことをお奨めする。なぜか?
 何かの理由で、スコープをいったん銃から外し、再装着することもあるだろう。銃を落とし、スコープに衝撃を与えてしまうこともあるかもしれない。そんなとき、ボアサイターを装着し、レティクルとグリッドの位置を確認すれば、スコープの装着位置がずれているかが確認できる。記録(図に描いた)しておいたグリッド位置に、スコープのレティクルが重なっていれば、スコープはズレていないことになる。
 これは100%確実ではないが、安心感を得ることができるはずだ。スコープサイターの存在意義は、ここにもあるはずだ。

Leupold Zero Point Boresighterはコーデュラ・ナイロン製のケースに入っており、小型であることもあって、ベルトに装着できる。常に持っているべきものだとは言えないが。

Laser Boresighter
 レーザー・ボア・サイターは、光学式ボアサイターとは違う道具だ。マズルもしくはチャンバーに差し込むレーザーポインターで、エクステンデッド・ボア・ラインに沿った可視レーザーが表示される。

 スコープであれ、アイアンサイトであれ、サイトからの延長線がライン・オブ・サイトだ。エクステンデッド・ボア・ラインとライン・オブ・サイトも交差する点は1点しかない。その距離でサイト合わせができれば、一番良いのだが、もっと近距離でも構わない。

 高出力レーザーならともかく、屋外で数十m先にある標的にレーザーを当てても、シューター自身には見えない場合が多いだろう。夜なら数百m先でも見えるが、明るい日中なら、ほとんど無理だ。
 たとえば10mの距離に標的を貼り、レーザー・ボア・サイターをマズル、もしくはチャンバーにセットする。この場合もチャンバーから確実に弾薬を抜いてあることを確認するのは言うまでも無い。

 スコープやアイアンサイトで標的の中心を狙う。レーザーは標的のセンターより少し低い位置に当たる状態が正しい。標的のセンターとレーザードットとの距離は、スコープやサイトのボアラインとの差、すなわちsight heightと概ね同じであるべきだ。

 Xやyがsight heightだ。
 サイトで狙った標的の中心とレーザードットとの間の距離が、sightheightと比べて、もっと短い場合、あるいはもっと長い場合、また左右にズレがある場合は、スコープのレティクルやアイアンサイトを調整する。
 この状態で射撃場に行って射撃すれば、標的に収まるはずだ。
 これも、最初はできるだけ近い距離で撃つことが望ましい。その後、Zero-inする距離で射撃をおこなう。
 マズルに入れるタイプの場合、口径の差に応じて、アダプターを何種類の用意すれば、汎用的に使える。チャンバー側から入れるタイプは、カートリッジ型が多いが、これも口径違いのアダプターがあれば、汎用的に使える。但し、チャンバー型のアダプターは、けっこうコストが高い。

 写真は、223 Remington用のレーザー・ボアサイターと、それを内蔵する12ゲージ用のアダプターだ。チャンバーに入れて、ボルトを閉じるとレーザーがonになる。
 マズル型もチャンバー型も、それがボアラインに正確に合っているかが問題だ。
 この223 Remington型のボアサイターを使って、サイト合わせを実施した。そのあとチャンバーからレーザー・ボア・サイターを抜いた。しかし、もし一度、確認しようとして、チャンバーにレーザー・ボアサイターをセットし、レーザーの当たる位置を確認した。すると先ほどおこなったサイト合わせの時とは、数cm違う位置にレーザードットが当たった。
 この時は、なぜそのようなズレが生じるのか、一瞬判らなかった。チャンバーからボア・サイターを抜いて、再度、入れ直した。
 また違う位置にレーザー・ドットが当たる。
 原因は、レーザーの発光部が若干、偏心していることにあった。

上の写真は、判りやすいように、わざと強調している。実際にここまで、レーザー発光部が偏心しているわけではない。赤いドットおよびレーザー光は、実際のものではなく、加筆したもの。

 すなわち、カートリッジ型ボアサイター発光部の中心から正確にレーザー出ているのではなかった。
 マズル型も同様の問題がある。但し、こちらは側面の文字等を見ながら、毎回同じ位置でマズルに差し込めば、少し偏心していても、それほど問題ではない。
 これらのレーザー・ボア・サイターは、サイト合わせの際の目安であり、それ以上のものだとは考えなければ良いだろう。

 以前はボアサイターといえば、光学式だった。しかし現在アメリカでは、レーザー・ボア・サイターが主流になっている。

 ボア・サイターはzero-inを容易にするための道具だ。ボア・サイターを使っただけでzero-inができるわけではない。スコープを装着した後は、できるだけ近距離で試射をおこない、その後zero-inする距離でレティクルを最終調整しないといけない。しかしそこに至るまでに使用する弾薬は大幅に減らせる可能性がある。持っていなければいけないわけではないが、あると、非常に便利な道具である。

2007年9月7日

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