| Book Review 「カラシニコフ」松本仁一著 朝日新聞社 刊 2004年7月15日発売
朝日新聞朝刊に2004年1月12日から4月8日にかけて連載された「カラシニコフ − 銃・国家・ひとびと」をもとに、加筆してまとめたものが本書だ。
「朝日新聞が、カラシニコフのことを調べている」 2003年秋、私はこの事を聞いた。ミハエル・カラシニコフ本人にもインタビューをしたという。
きっとカラシニコフ・ライフル、ならびに銃というもの全般に関して、非常に否定的な話にまとまるに違いない。私はそう感じていた。おそらくその情報を聞いたなら、誰でもそういう記事が新聞紙上に掲載されると予測しただろう。
しかし本書を読んで、私の予測は半分は当ったものの、ある程度、外れたと感じている。
冒頭から、銃によって引き起こされた悲劇が並んでいる。銃さえ無かったなら、カラシニコフ・ライフルさえ無かったら、アフリカの国々で悲惨な内戦は起こらず、彼ら、そして彼女たちは平和に暮らしていた。
単純な構造で故障しない、整備しなくても動く銃 − AK、この銃が少年兵や少女兵を作った。
この事が、たたみ掛けるように語られている。
そして、ミハエル・カラシニコフが、この銃を作った背景が明かされる。「祖国を守ること」、カラシニコフは、自国の若者が敵に次々と倒されていく事を黙ってみていることはできなかった。銃器設計の専門教育を受けていないカラシニコフは、逆転の発想でこの銃を作った。
再び、舞台はアフリカへ戻る。東西冷戦のさなか、両陣営から植民地解放運動に多数の武器がばらまかれた。その後、東側の崩壊により新興社会主義国家の銃は無管理状態になった。崩壊した国家は大型兵器ではなく、アサルトライフルによる内戦の泥沼に陥った。
内戦から抜け出して、銃のない平和な国家を作る、この事に成功した国(まだ国際社会は国家として承認していない)の事例を挙げて、この本は終わっている。
ここで語られているのは、「失敗国家」の姿だ。国家が持つ武力をコントロール出来ず、国民の安全を守ることが出来ない国、若者に必要な教育ができなくなった国、それら失敗国家にカラシニコフ・ライフルが蔓延している悲劇。彼らがここから抜け出すには、国民が武器を手放し、国家が武力をコントロール化に置かなかればならない。
誤解してならないのは、欧米や日本は「失敗国家」ではないことだ。治安は確かに悪化している。しかし内戦に明け暮れる国家とは比較にならない。政治家は国民の安全を守り、国の将来を考え正しい舵取りをしているだろうか。疑問の声も数多く聞こえてくるだろが、「失敗国家」のそれとはスケールが違う。
本書は銃の存在を否定するものではない。国が国民を守るために、武装することを否定するものでもない。
私達がふだん意識していない遠い場所で悲劇は起きている。
銃を愛好し研究する、そして射撃を安全にスポーツとして楽しむ私達も、時にはこの事実に目を向ける必要があるだろう。
銃とは何か、国家とは何か、
<本書を紹介することについて、また表紙の画像を掲載することについては, 朝日新聞社書籍編集部の承認を得ています>
Satoshi Maoka
July 21, 2004
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