Beretta RS202 ベレッタRS202
2007年10月16日掲載
470年もの歴史を持っているベレッタ社は、イタリア、ガードネに本拠を置き、民間向けのスポーティング・ファイア・アームズと軍警察用のディフェンス・セキュリティ・ファイア・アームズの両方を製造している。
その中で、競技用や狩猟用のベレッタ・ショットガンは、世界的に非常に高く評価されている。
また、アメリカ軍が長期間使用してきた45口径M1911A1に代えて、ベレッタM92F(FS)を制式拳銃M9(として採用したことから、ピストルの分野でも第一級のメーカーとしての地位を獲得した。
ショットガンとピストルという2つの大きな柱を持っていることが、企業としてベレッタのポジションを、より強固なものにしている。
その結果、ベレッタ・ホールディングはイタリアのフランキ(Franchi)、ベネリ(Benelli)といった同業者を傘下に収め、フィンランドのサコー(Sako), トルコのワァルサン(Vursan), アメリカのストーガー(Stoeger)などを擁する巨大銃器産業となった。
ベレッタのアサルトライフルAR70/90, SCS70/90は、イタリア軍が採用しているのみで、他国で制式採用された実績はない。第二次大戦後に開発したSMG, ベレッタM12は当時、第1級の製品ではあったが、その採用は数カ国に留まった。ピストル以外の軍用火器分野では、ベレッタはあまり大きな実績を残しているとは言い難い。
得意なショットガンでは、ベレッタはこれまで様々なミリタリー・ポリス・ショットガンを市場に送り出してきた。
それらは基本的に、民間向けのショットガンと比較して、大きな差はないので、ベレッタにとって開発は難しくなかっただろう。但し、ミリタリー・ポリス・ショットガンの市場はあまり大きなものではないので、この分野が注目されることは少ない。
▲ Beretta RS202P
ベレッタは、上下二連、水平二連、ガスオペレーション・リピーターをショットガンの主力としている。
スライドアクションはアメリカで開発された手動連発方式だ。メタリック・カートリッジの登場は、リボルバー以外の新たな連発方式を生みだすキッカケになった。そのとき生まれたものにレバー・アクション、スライドアクション(ポンプ・アクション)などがある。
しかし、ガス・オペレーションやブローバック、リコイル・オペレーションといった自動、半自動連発方式が完成すると、ヨーロッパでは手動連発方式の多くが消えていった。
ライフルに限っては、手動のボルトアクション方式が生き残ったが、これは連射性能より、精度とパワー、確実性を重視した結果だ。ヨーロッパでレバー・アクションやスライドアクションが定着しなかったのは、これらの手動連発方式にメリットは無いと考えた結果だろう。
自動火器が普及した後も、アメリカ人はスライドアクション・ショットガンを引き続き愛好した。しかし、ヨーロッパの各メーカーはスライドアクション・ショットガンを製造しようとは考えなかった。
その結果、スライドアクション・レピーターのほとんどはアメリカ製が占めている。
ヨーロッパのショットガン・メーカーがスライドアクション・レピーターをほとんど製造しようとしなかったのは、アメリカのショットガンが、あまりにも安く販売されていたということもあると思う。ヨーロッパのショットガンが、高級なスポーツ用品、嗜好品であるのに対し、アメリカのショットガンは実用一点張りの日用品なのだ。
ベレッタがスライドアクション・レピーターを製造した実績があるということは、あまり知られていない。ベレッタRS151が、スライドアクションの、もっとも古いモデルだと思われる。RSとは何か、Repeating Shotgunか、Riot Shotgunか・・・
今となってはよく判らない。しかしおそらく前者だろう。RS151は特に戦闘的フォルムを持っているわけではない。銃身は長く、狩猟用のイメージが強い。この改良型がRS200だ。 RS200Pは銃身を短く取り回しを良くしたものだ。
続いてRS202となった。このショート・バレル・バージョンがRS202Pだ。

▲ Beretta RS202P
いずれもアクションバーは片側(左)のみだ。デザイン的にはごく普通のスポーツ用スライドアクション・レピーターで、ベレッタらしい特徴は特に無い。
RS202はミリタリー・バージョンがある。RS202M1とRS202M2で、1980年代の製品だ。
どちらも独立型ピストル・グリップと左サイド・スイング型のメタル・フォールディング・ストックを持っている。M1の全長は1020mm、折り畳んだ状態で790mmだ。そして改良型M2は金属製ハンドガードがバレルに装着された。このハンドガードはチューブマガジンの先端部も併せてカバーするものだ。連続射撃を行なうと銃身が加熱する。ショットガンのバレルは肉が薄いので銃身加熱は早い。スポーツ用ショットガンもバレルカバーがあると良いと思うのだが、重量増加とバレル上面が複雑な形状となる為、バードショットなどでは不利なのだろう。そしてM2には、マズルアタッチメントも追加された。

結果としてM2は、全長1045mm, 折り畳んだ状態で815mmとなった。重量も3.2kgから3.85kgに増加している。
M1のリアサイトはアジャスタブルだが、M2になってこれは固定式となった。
M2は一部、イタリア軍特殊部隊に採用された。そのイタリア軍から、セミオートマチック化の要求が出たらしい。
常にBuck Shotやスラッグを撃つのであれば、セミオートでも良いだろう。しかし、治安部隊での運用を考えた場合、殺傷力を弱めた弱装弾やラバー弾を使う可能性がある。それらの弾薬を使うとオートでは回転不良が起こる可能性が高い。その場合には、スライドアクションで使用できれば便利だ。
そこで生まれたのが、ベレッタM3Pだ。スライドアクションとセミオートの切り替え機構をベレッタはDual Functioning Mode(DFM)と名付けた。ストックの折り畳み方向として、ベレッタはRS202M1, M2で採用したサイドスイングを改め、上方に回して前方に倒す方式とした。

▲ Beretta M3P Fixed Stock Version
同時期フランキがイタリア軍に納入したものがSPAS12である。ベレッタM3Pと性格は近いが、SPASは非常に重いショットガンだった。
ベネリはこのイタリア軍のトライアルに参加していない。しかし1983年、ベレッタはベネリを傘下に収めている。
ベネリM3が登場したのは1986年、そしてミリタリーバージョンM3Tを後になって送り出した。
ベレッタRS202には民生用、ポリス用、軍用の他、特殊用途モデルがある。極端に銃身を短くし、独立型ピストルグリップを装着、ストック部分を着脱式としたものだ。銃身のカットダウンと共にチューブ・マガジンもカットされた為、通常型では6発装填できたが、この特殊モデルは3発となっている。
しかしストックを外せば、全長は極端に短くなり、コートの下に隠し持つことも可能となった。イタリアの警備当局からの要請で作られたと思われる。
ベレッタのRSシリーズがどの時期に作られたか正確には判らない。しかしレシーバーがアルミニュームで作られていることから判断すると1970年代以降に企画されたものだろう。

▲ Beretta RS202P Rifled Sight
ヨーロッパにテロの嵐が吹き荒れたこの時代、セミオートマチックだけでなく、作動の確実なスライドアクション・レピーターのニーズがあるとベレッタが判断したのだろうか?あるいは公的機関から要請があったのだろうか。アメリカ輸出も視野に入れていたかもしれない。
だが、ヨーロッパではスライドアクション・ショットガンはあまり売れなかったようだ。同時にRS202はアメリカ向けにも本格的に輸出されることも無かった。レミントンやウィンチェスター、モスバーグ、イサカといった強力な競争相手がいるアメリカ市場に普通のスライドアクションを持って殴りこむことは得策ではないと判断したのだろう。ベレッタのイメージを損うと考えたのかもしれない。
ヨーロッパの公的機関の需要が落ち着くと、ベレッタはRS202の製造を止めた。しかし、今回載せたメタルハンドガード付きRS202M1は1995年のディフェンス・ショーにベレッタが展示した製品の写真だ。90年代になっても、ベレッタのディフェンス・セキュリティ・ファイア・アームズ部門は、RS202M1をメニューに残していたわけだ。この頃にはRS202 M2とM1の境界線は曖昧になり、M1にもメタルハンドガード付きが供給された。
同時期、スポーティング・ファイア・アームズとしてのRS202は、とっくにカタログから消え去っていた。その後、ベレッタはシンプルなスライドアクション・レピーターを、市場に一度も送りだしていない。

▲ Beretta RS202P
スライド・アクション・レピーターは、その独特な操作法に魅力がある。現代のベレッタが、ジウジアーロ・デザインのスライド・アクション・リピーターを作ったとしたら、それはまた独特の面白さがあると思う。残念ながら、多分それは実現することは無い。
Oct.16, 2007
Satoshi Maoka
▲ up
|