Benelli Nova  ベネリ・ノバ 
                                       2008年2月22日掲載

 1967年に登場して以来、ずっとイナーシャ・ドリブンのセミオートマチック・ショットガンを製造してきたイタリア・ベネリ社が初めて市場の送り出したスライドアクション・レピーターがNOVAである。



 厳密には、ベネリ社もスライド・アクション・ショットガンを全く製造してこなかったわけではない。ベネリM3はセミオートとスライド・アクションのハイブリッド(hybrid)だ。これはイナーシャ・ドリブンのセミオートマチックをベースにスライド・アクション機能を追加したものであり、あくまでも補助的な機能だ。
 スライド・アクションのメリットは、作動が確実なことに尽きる。ガスオペレーション、イナーシャ・ドリブン、ロング・リコイル等、発射に伴うエネルギーを使ってボルトを動かし、セミオートマチック射撃をおこなおうとした場合、弾薬との適合性に制限が付きやすい。ショットガンは様々な種類の弾薬が使われるので、適合範囲の広さは重要な要素だ。
 射撃用として考えた場合、現在主流の7.5号、9号の24g弾薬は大半のセミオート・ショットガンで正常に作動せず、28g以上が必須となる場合が多い。24g弾しか入手できなかった時は、1回づつボルトを引いて、手動排莢、手動装填となってしまう。
 警察活動や、警備、軍、および平和維持活動でショットガン使用を想定した場合、通常のスラッグ弾、OO Buckから非致死性のプラスチック散弾やゴム製スラッグ弾、催涙弾なども平行して使用できることが望ましい。しかし、それらの弾薬は抜弾抗力が大幅に異なる為、セミオートマチック・ショットガンですべて正常作動させることは難しい。
 ベネリM3やSPAS12はそういう状況でも使用できるようにセミオートマチックとスライドアクションのハイブリッド・システムを導入した。SPAS12は銃自体が重すぎたので普及は限定的だったが、ベネリM3は射撃用、狩猟用、軍警察用として人気があった。
 しかし、スライド・アクション機能として使用する場合、フォアエンドの作動が多少重くなり、必ずしも使い易いものではない。
 それならば、スライド・アクション専用モデルを作ろうということになるのは、ある意味で必然の流れだ。アメリカでは長い間、スライドアクション・ショットガンが主流であった。
 スライド・アクションはトラップ射撃には若干不利だが、フォアエンドを動かすことは瞬時にできる。片手では連射できないが、ショットガンは通常、片手で撃てなくても困らない。

 スライドアクション・ショットガンの需要は、ヨーロッパではかなり限られている。これは文化の違いというものだろう。
 1999年時点で、Benelli USAはまだ設立されておらず、ベネリ・ショットガンの代理店はHK USAだった。Novaの登場は、HK USAの意思も強く働いていたのかもしれない。
 公的機関にヘッケラー&コッホのウェポン・システムを提案する際、ショットガンの要求もあることから、HK USAはベネリの販売権を持っていた。アメリカでベネリが普及したのは、製品の優秀さと同時に、HK USAの販売力に負うところもあったはずだ。
 1997年、アメリカ陸軍のピカティニー造兵廠で、アメリカ全軍統一制式ショットガン選定プログラム(XM1014選定プログラム)がスタート、スラッグ弾から非致死性弾まで確実に作動するセミオート・ショットガンの開発が始まった。しかし、このプログラムに適合できるショットガンがほとんど存在せず、まもなく候補はベネリ・モデル4スーパー90だけに絞られた。
 Benelli Nova Pumpは1999年に発売になった。だからこの時期、ベネリはセミオートマチックのM4と、スライドアクションのNOVAの両方の開発を進めていたわけだ。同年、アメリカ軍はM4スーパー90を仮採用している。
 M4がM1014JSCSとして制式採用された2001年には、既にBenelli USAが設立され、HK USAとは関係が切れていた。関係解消の背景には、HKの納期要求にベネリが従わなかったことが背景にあるといわれている。会社同士の思惑もいろいろあっただろう。HK USAは、ベネリに代わってイタリアのFABRAM社の製品を販売するようになった。
 Novaは、2 3/4”, 3", 3 1/2”シェルに対応するショットガンだ。アメリカ市場は、スライドアクション・レピーターとして、すでにレミントンM870、モスバーグM500が普及しており、これらに対する不満はほとんど無い。HK USAの意向があったとしても、ベネリには、アメリカのスライドアクション・レピーター市場に殴りこみをかけ、ある程度のシェアを獲得するだけの勝算があったのだろう。
 NOVAは20世紀末の新型ショットガンとして, ポリマー・レシーバーで登場した。といっても、すべてがポリマーというわけではない。スチールのサブフレームに、ファイバーグラスで補強されたポリマー・フレームがかぶさる形だ。
 トリガーメカニズムが収まるトリガーハウジングもポリマーで、2本のピンでレシーバーに接続されている。もっともモスバーグM500, M590もトリガーハウジングはポリマーだ(M590A1は違う)。



 グリップとストックはレシーバーと一体だ。その為、ストックを別の形状のアフターマーケットパーツに交換することはできない。
 グリップ部はチェッカリングではなく、独特のグルーブが刻まれている。伝統的なショットガンでは、まず見られない形のグルーブだ。フォアエンドもポリマーであることが言うまでも無いが、その形状も独特だ。なんとなく爬虫類風というべきだろうか。しかし、人間工学に基づいてデザインされていて、手によく馴染に引きやすい。

  

 このフォアエンド下部にある四角いボタン(上写真 左)は、マガジン・カットオフ(magazine cut-off)だ。マガジン・カットオフ機能は異なる種類の弾薬を使用する際に、非常に便利なものだ。
 チャンバーに入っている弾薬を発射した後、急遽、次は違う種類の弾薬を撃とうとする場合、あるいは、チャンバーに入っている弾薬を発射せずに排出し、別の種類の弾薬をチャンバーに送り込もうとする場合に使用する。
 公的使用状況として例を挙げると、暴徒対応にゴム弾を撃っていたところ、突如、武装した敵が現われた場合、OO buck等の対人用弾薬に切り替える必要がある。
 狩猟の場合、カモを撃つために3号弾を撃っていたが、突如、熊に遭遇、スラッグ弾に切り替えるというような状況だ。
 マガジン・カットオフ・ボタンを押しながら、フォアエンドを引く。するとチャンバー内のシェルは排出されるが、チューブマガジンに入っていた次弾はマガジンから抜き出されない。通常は、フォアエンドを引くと、マガジンから次弾が抜き出され、アクション・キャリアに載ってチャンバーへの送り込み体制が整う。
 マガジン・カットオフ・ボタンを押しながら、フォアエンドを引くと、アクション・キャリアは空の状態を維持されるわけだ。ここに、新たに使いたいと思った別の弾薬をエジェクション・ポートから放り込んで、フォアエンドを前進させる。これにより、素早く別の弾薬をチャンバーに送り込むことができる。
 マガジン・カットオフ機能が無い場合、フォアエンドをゆっくり引いて、チャンバーのシェルが排出されたところで止める、という動作をすれば、取り合えず同じ状況を作れる。しかし、そっとフォアエンドを引かなければならないので、緊急時には使えない。
 フォアエンドを引く前に、次弾をチューブマガジンに突っ込む、という手もあるが、ハンマーがコックされている状態では、チューブマガジンにアクセスできない、というモデルもあるし、既にチューブマガジンは満杯状態という場合もある。
 ショットガンは、様々な弾薬の種類があるため、弾薬のチェンジを必要とする場合も多く、やはりマガジン・カットオフ機能があると便利だ。しかし、この機能を持っているスライドアクション・ショットガンは意外と少ない。



 写真のモデルはNOVA Tacticalだ。タクティカル・モデルといっても、特別なものではない。通常のモデルとの違いは、18.5インチのシリンダー・バレルと、LPA製ゴーストリング・サイトの組み合わせの部分だけだ。マガジンは3 1/2” Shellで4発が入る(日本に輸入される場合は当然、マガジン容量2発となるし、バレルも20インチとなる)。
 ハンティング用、スキート用としても、このタクティカル・モデルは有効に使える。もちろん遠射用やトラップ用としては、もっと長いチョークバレルを組み合わせるべきだろう。でも18.5インチバレルでも、トラップを楽しむことはできる。
 写真のモデルはマズルブレーキが装着されている。



 市場には、優れたスライドアクション・レピーターが数多く存在する。Remington 870, Mossberg 500&590, Winchester 1300, Ithaca 37, FABRAM SDASS・・・スライドアクション・ショットガンは既に完成しつくした感がある。傑作といわれるレミントンM870は1951年に登場、大きな改良をすることなく、現在の製造が続いている。変える部分が無いのだ。
 ベネリNOVAはもっとも新しいモデルだ。最大の特徴はレシーバー外装部が、ポリマーであることだ。
 そこに不安をおぼえるシューターもいるだろう。ハンターやクレー・シューターは保守的な場合が多い。しかし、現代の新しいセミオートマチック・ピストルの大半はポリマーフレームだし、全体をポリマーで覆ったアサルトライフルも珍しくない。
 軍、警察用の銃はポリマー化が進んでいる。ポリマー・ストックの方がリコイルショックも少ない。もはやポリマーが嫌などというのは、軍、警察では通用しない。
 もちろんスチール・レシーバーと木製のストックの組み合わせに魅力を感じる、という意見も少なくない。スチール・レシーバーのM870は、スライド作動させたときの音が良い。スチール・パーツの作る、硬そうな澄んだ音がする。アルミニューム・レシーバーのモスバーグは、曇った音しか出ない。ポリマー・フレームMOVAの作動音については、言うまでも無いだろう。


 ベネリNOVAは、もっとも今日的なスライドアクション・レピーターであり、新しい時代の銃を愛好できるシューターの為のものだ。従来型のレミントンM870, モスバーグM500はこれからも作り続けられるだろう。スライドアクション・レピーター・ショットガンに限っていえば、今後、更に新しいモデルが登場することは、もう無いかもしれない。

Feb.22, 2008

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