5.11 H.R.T. Watch
Apr.1, 2006掲載
腕時計は19世紀後半に登場している。当初は女性向けのブレスレットに宝石と共に時計を組み込んだもので、実用品ではなく、完全なアクセサリーであった。その時代、携帯用の時計といえば懐中時計であり、時間を知るためには、その都度、ポケットから取り出して見る必要があった。
実用的な腕時計を求める声は軍隊から起こった。より素早く時間を確認したい、というものだ。1879年、ドイツのヴィルヘルム1世は、ドイツ海軍用に腕時計を2000個、ジラール・ペルゴ (Girard Perregaux)に発注している。おそらくこれが、今日的な腕時計のスタートだ。
もっとも腕時計が普及したきっかけは、航空界の先駆者であったAlberto Santos-Dumont (1873 - 1932)が、カルティエ社に依頼して作らせたサントスからだ。飛行船を操縦しながら、容易に時間を確認する為の道具として、1911年にこの腕時計が完成した。
時計が腕に巻かれるようになったのは、このように機能性を求めた結果であった。しかし、普及のキッカケとなったサントスが、優美な外観をしたものであったことも重要な要件だ。
かくして腕時計は機能性を求めて発展したが、同時に男性が身に着けるほとんど唯一といえるアクセサリーという位置づけもある。
腕に着けている以上、雨に打たれることもあるし、水を被ることもある。水に濡れて壊れるようでは戦場では使えない。第一次大戦には防水時計が登場した。
しかし、これは完全なものでなかった。より高い性能を求めた結果、オイスター社が開発した削りだし一体構造のオイスター・ケースを採用し、ネジ込み式リューズを備えたロレックス・オイスターが1926年に登場している。
本格的な潜水時計はイタリア軍が特殊工作員による潜水攻撃部隊を創設する為、フィレンツェの精密機械メーカー、パネライ社に開発要請をおこなったことで登場した。1936年にプロトタイプが完成、1938年に製品がイタリア海軍に納品されている。
ブライトリングは1942年、掛け算、割り算、速度計算をする対数計算尺を腕時計に組み込んだクロノマットを完成させた。第二次世界大戦中、これは各国の航空部隊に採用された。1952年、クロノマットは燃料消費量、地上速度計算、平均上昇下降速度、上昇下降速度などの計算ができるナヴィタイマーに発展した。
腕時計の歴史を紐解く時、軍と関わる部分をいくつか見ることができる。アポロ計画とOMEGAスピードマスターの話も、広義では軍事的側面があるだろう。
もちろん、ほとんどの時計はそんなこととは関係がない。しかし銃が好きな者としては、そんなミリタリー・テイストを感じる時計に魅力を覚える場合が多い(個人的には、ドレッシーな腕時計も大好きだが)。
銃を撃つ時に、腕に着ける腕時計は何か?
私達は戦場に行くわけではないし、行きたくもない。だから特別な時計である必要はない。
しかし、銃を撃つ瞬間に受けるリコイルは大きい。時計には腕を介して伝わるので、かなり緩和されるだろうが、それでも衝撃に強い時計であるほうが良いだろう。クレー射撃や狩猟なら雨が降ってくるかもしれない。防水性能がしっかりしたものであるべきだ。日常生活防水(3BAR)は最低限の要件で、できれば10BARの方が安心だ。ライフル射撃競技なら残り時間を読み取れる機能があったほうが良いかもしれない。
この条件と、銃を撃つという非日常感覚から考えて、ミリタリーテイストの高い時計が射撃には似合うと思う。
ドイツ連邦空軍のSinn 156.B、GSG9が採用したSinn 403EZM2 GSG9や503.EZM1などを身に着ければ気分も高まる。
Tutimaのミリタリー・ライン 760-02クロノグラフTはNATOが採用したものだ。これに回転ベゼルを加えた750-02クロノグラフTL, クロノグラフなのにシンプルなデザインの760-42コマンドIIなども魅力的だ。
30Gの対衝撃性能を有するIWC のフリーガー・ウォッチMark XVも良い。裏蓋に刻まれた“DIE FLIEGERUHR AUTOMATIK”の文字が嬉しい。
MILスペック(MIL-46374F)のルミノックス(LUMINOX) NAVY SEALS Dive Watchシリーズも、比較的安価だが実用的だ。
実際の戦場には、CASIO G-Shockを持って行く兵士が多いと聞く。過酷な状況では、これが一番タフなのかもしれない。
しかし、これらの時計は軍や特殊部隊が採用した時計、あるいは兵士が好む時計というだけで、射撃に特化した機能を持っているわけではない。
モータースポーツ用のタキプロダクトメーター等を組み込んだレーシング・ウォッチ、極限の防水性能やダイビング・コンピュータを持つダイバーズ・ウォッチがある。ヨット・レース向けのヨット・タイマー、多数のLAPメモリーを記憶したり、心拍数を常時モニターするアスリート・ウォッチもある。高度計、気圧計や方位磁石を組み込んだ時計はクライマーやトレッカーにとって役に立つものだろう。
それならば、シューターの為のシューティング・リストギアというものがあったら面白いと以前から思っていた。
そして発見したのが、5.11 H.R.T.Watchだ。これはスナイパー・ウォッチというべきものだ。

5.11 H.R.T. Watch
大きな時計だ。ここ数年、PANERAI人気をきっかけに大型腕時計が流行していたので、あまり違和感はないが、45mmケースはやはり大きな方だろう。このサイズが本当に似合うには、身長185cm以上が必要だと思う。3針アナログとデジタルの組み合わせだ。デジタルなので言うまでもなくクォーツだ。
文字盤の周囲のベゼルには経過時間計測用の数字が刻まれている。ベゼルの回転方向は左のみ。ダイバーズ・ウォッチの場合は、左回転のみが一般的なので、これで正解のように思えるが、ブライトリング・クロノマットやロレックスGMT Masterなどは左右どちらにも動く。操作し易さを重視するとこうなる。ダイバーズの場合、いったんセットした後、間違って回ってしまった場合の危険を回避するために右回りにならないようにしている。
いうまでもなく5.11H.R.T. Watchはダイバーズ・ウォッチではない。なにしろ10BARだ。これではダイビングには向かない。そしてこのベゼルは、かなり回転させにくい。ベゼルの角がカーブを描いているので、ベゼルに指が掛かりにくいのだ。これなら左右に回っても問題ないはずだ。
風防は推測だがミネラルガラスだと思う。サファイア・ガラスではなさそうだ。平面ガラスで、ベゼルとほぼフラット。カーブガラスほどではないが、カラスを守るデザインではない。ガラス破損を防止するのは、ベゼルよりガラス面を一段低くする手法をとる。あるいは、ベゼル部分に突起を設け、ガラスが何かにぶつかる可能性を低減させる。
風防ガラスには、反射防止処理が実施されていないように見える。視認性を高めるのであれば、風防ガラスの両面に無反射コーティングを施すべきだろう。
ベルトはウレタンだが、付属のレンチを使えば、このベルトは容易に外せる。そしてブラック・レザーのベルトがこの時計の購入時に入ってきたナイロン製のケースに入っている。
本体を見た瞬間、プラスチックのボディだと思った。個人的にはプラスチック・ケースの時計は好きではない。ピストルのフレームやライフルのストックがポリマーになっても気になら ない。しかし時計となるとプラスチック・ケースは嫌なのだ。しかし、本体の裏蓋には、タイタニウム・ケースと謳っている。プラスチックにしか見えないが、これはタイタニウムなのだ。
昔、初めてタイタニウムの時計を買ったとき、ウォーム・グレイだった。艶のない独特な色だが、けっこう高級感があった。そしてその軽量さに驚いた。その後、タイタニウムでも鏡面ポリッシュ仕上げができるようになったらしく、ステンレス・スチール削り出しの時計と区別がつきにくくなった。
この時計はグレイだ。反射防止の為にグレイ仕上げであることはスナイパー・ウォッチとしては正解だ。ならば尚更、風防に反射防止コーティングをするべきだ。
この時計は通常のアナログ・デジタルのハイブリット・モデルの基本デザインを踏襲して、アナログの文字盤をデジタル表示に利用している。
デジタル表示は、カレンダー表示、セカンド・タイムゾーン、アラーム、クロノグラフ(ストップ・ウォッチ)、逆算タイマー、そしてHorus Vision Functionsを搭載したターゲット・モードだ。
高機能デジタル時計の欠点は、操作が複雑なことだ。いつも利用していれば、操作が複雑でも構わないが、必要に応じて装着するような場合、操作方法を忘れてしまう。かつて小規模なライフル射撃会を開催した。4分間10発撃ちという独自ルールで、それには逆算タイマーがあった方が便利だと思い、普段は使用していないデジタル時計を装着していった。ところが、滅多にその時計を使わないので操作方法を忘れて、結局逆算タイマーを使用できなかった。高機能化はけっこうだが、操作性がそれに伴わなければ、意味がない。道具は直感的に使えることが理想だ。
デジタル時計とアナログ時計は連動していない。連動していないことで、マルチ・タイムゾーン対応ができるともいえるが、個人的には連動していたほうが好みだ。
アナログ機能はリューズ(竜頭:crown)を半時計方向に回してから引き出す。ロレックス・オイスター以来、伝統的防水時計の基本スタイルだ。一段引き出すと秒針が止まる。さらに引いて長針を操作する。短針のみを動かず機能はない。この時計は正確な時間にセットする事がかなり厄介だ。長針を正しい時間にセットして押し込むのは、普通の時計と同じだが、この長針調整機能がユルユルなのだ。リューズを押し込む際に、ちょっとでもブレるとずれてしまう。ヨーロッパ製や日本製のムーヴメントはこんなにユルくない。こんなユルい時計は初めてだ。これは中国製のムーヴメントを搭載している。
時計としての精度を見てみよう。通常のクォーツ時計は月差±25秒、もしくは±15秒だろう。高級なモデルになるとQuartz Chronometre規格である年差±25秒となる。年差±25秒の場合、電池交換までの間、ほとんど狂いがない。実質的に5年で5秒程度しか誤差がでないのだ。電波時計には敵わないが、外力に頼らない時計としては、非常に正確だ。
5.11H.R.T. Watchの精度は公表値がないのでわからないが、価格から見て、一般的な月差±25秒だろう。2週間でチェックしてみたら、実質誤差は+3秒だった。まあ、クォーツ時計としては並みの精度だといえる。
HORUS VISION FUNCTION
さて、肝心のHorus Vision Functionsを見てみよう。射撃は常に一定の距離で撃つわけではない。ゼロインをした距離で常に射撃をおこなうのであれば簡単だが、射撃距離は常に変動する。距離に応じて着弾点を修正しなければならない。別に軍や警察のスナイパーでなくともこれは言える。狩猟では距離は常に変化するし、大口径ライフルであれば、射撃場によって距離が変わる。国内でも50m、100m、150m、300mがあるし、海外遠征すればヤード設定の射撃場で撃つことになるだろう。Palma matchなどに出て長大射程を撃つ機会もあるかもしれない。
そして射撃は風との戦いだ。風の向き、強さを読めないと正確な射撃は不可能だ。弾丸は確実に風に流される。そして射撃角度の問題もある。射撃場では通常、角度差はないだろうが、実戦や狩猟では角度があるのが普通だ。仰角、俯角での修正ができなくてはいけない。都市で戦う特殊部隊のスナイパーは大変な角度で撃つこともある。高いビルの上から、あるいは下から容疑者を狙うこともあるだろう。角度60度射撃なども在り得る。

SONYの作ったPalm, CRIE.
PalmやWindows CE, Zaurus等のPDAのほとんどが、日本ではあまり定着しなかった。携帯電話の高機能化に負けてしまったからだ。
経験値でこれを把握すべきだろうが、それを計算できる道具があれば便利だ。モバイルPCにバリスティック・ソフトウェアをインストールして、これを持って移動すれば、計算ができる。しかしモバイルPCは、バッテリー消費の問題や、強度の不安がある。そして液晶モニターは、明るい野外では見えにくい場合がある。晴天の野外では見えないといっても良いだろう。
PDAの場合、小型軽量で使い勝手はかなり向上する。Horus Vision Targeting SoftwareはPDAで動くことが魅力だ。しかしPDAは日本ではあまり普及しなかった。一時期、ZaurusやPalmなどがある程度まで普及したが、携帯電話の高機能化の波に埋没した。PalmハンドヘルドPCは面白い道具だったし、拡張性が魅力だったが、日本では各社が撤退、最後まで残ったSONYも、2005年、CLIEをディスコンとした。そして英語版のソフトウェアが日本語版のPDAで動くかは、試したことがないので不明だ。
しかし、これが腕時計に組み込まれたとなれば、話は違ってくる。それが5.11H.R.T. Watchだ。
Horus Vision Targeting Softwareは機能別にAtrag1P, Atrag2P, AtragMP, そしてPC用のTrag1S5がある。もっとも高機能なのはAtragMPで、基本機能に加えてTarget Speed Estimator, Target Range Estimator等が追加されている。5.11H.R.T. Watchは最低限の機能を搭載した簡易ヴァージョンだ。
操作方法を説明してみよう。

INITIAL SETTING
まずはInitial setting(基本データ入力)だ。Setボタンを押そう。デジタル表示はどの設定になっていても、Setボタンを押せば、Target Result Screen modeになる。文字盤の9時から10時の位置に、スコープのようなアイコンが表示され、これがTarget Result Screen modeであることを示す。

そしてもう一度、Setボタンを押す。今度は押しっぱなしにする。するとTEMP (Temperature:気温) screenが表示される。-100Fから+140Fまで選択できる。そう、これは華氏なのだ。華氏表示はカンベンしてほしい。そこで、Select ボタンを8回押そう。UNIT表示が点滅し、ENG(English)かMETRC(Metric)かの選択ができる。プラスボタンかマイナスボタンを押して、METRCにしよう。
華氏表示でも全く問題なしの国際派なら、ENGのままで良い。METRCにしたことで別の弊害がでるのだ。これはまもなく判ってくる。
Selectボタンを押して、TEMPに戻す。今度は気温設定になっているはずだ。プラスボタンかマイナスボタンを押して−50℃から+60℃まで選択が可能だ。しかし、この5.11H.R.T. Watchがこの温度に耐えられるかどうかもかなり疑問だ。とにかく表示上は−50℃から+60℃までいける。
またSelectボタンを押す。ALT表示になる。Altitude(高度)だ。25m単位で-300mから6100mが選択できる。6100mは極限高度だ。こんな場所で長距離射撃をやることはないだろう。プラスボタンかマイナスボタンを押して選択する。自分の位置の高度が判らない?だったら高度計を買わないといけない。
Selectボタンを押す。BHと表示がでる。Bore Hightだ。銃軸線(ボアライン)とサイトライン間の距離だ。スコープ付きの場合、3.8cmから5cm以内のはずだ。プラスボタンかマイナスボタンを押して選択する。
Selectボタンを押す。B.C. (Ballistic Coefficient)になる。自分が使用する弾のB.C.値をプラスボタンかマイナスボタンを押して設定する。
Selectボタンを押す。今度はMV (Muzzle Velocity) だ。ここに来て、METRCを選択した弊害がでてくる。日本はメートル表示が一般的だが、普通、弾速はfps(フィート・パー・セコンド)を使用しているだろう。リローディング・マニュアル等はアメリカのものを使用しているからだ。銃の情報の大半はアメリカから入ってくる。またアメリカは射撃に関する研究が盛んだ。ヨーロッパに行けば、メートル表示だが、アメリカ系の文献が圧倒的に多いし、それらはほぼ確実にfpsだ。だから私達も弾速はfpsで考える。
仕方が無い。ここはメートル換算で入力しよう。
Selectボタンを押す ZR (Zero Range) 入力だ。自分がサイトインをどの距離でおこなったかは判るが、本当の意味でそれがゼロ・レンジではない。ここは150mから200mあたりでセットするのが得策だ。
Selectボタンを押す DISP (Display in MILS)モードだ。TMOA か SMOAの選択をする。TMOAとはTrue Minute of Angleだ。本当のMOAということだ。SMOAはShooters Minute of Angleで、射撃用に修正されたMOAを言う。
MOAとは角度1分だ。100ヤードで1.047インチになる。これがTMOAだ。しかし射撃の場合、100ヤードで1インチとした。これがSMOAだ。約4.6%の誤差がある。ここではどっちを使いますか?という選択をする。
メーター表示では100mで29.08mmがTMOAで、100mで27.78mmがSMOAだ。この場合、SMOAを選択すべきだと思う。だってスコープはSMOAで作られているはずだからだ。
Selectを押す CLKS (Clicks) モードだ。1クリック何分の一MOAなのかを選択する。通常は1/4だから4だ。ベンチレスト用スコープだと1/8で、ピストルスコープなどの場合は1/2だ。2, 3, 4, 8, OFFが選択できる。OFF?これはなんだ?よく判らない。しかたがない。無視だ。
Selectボタンを押す UNITモードだ。これはさっき選択しただろう。English or Metricの選択だ。これでセット完了だ。
SHOOTING SETTINGS
いよいよShooting Settingとなる。
通常、時計として使用している状態から説明しよう。表示がカレンダーであれ、時間であれ、逆算タイマーであれ、Setボタンを押すと、TARGET RESULT screenになる。
そしてSelectボタンを押す。RNG(Range)モードになる。距離入力だ。すでにMETRCモードにしているのでメートル表示だ。プラス・キーとマイナス・キーを押してセットしよう。1プッシュ50m単位でセットされる。最低50m、最大値はなんと2,750mだ。こりゃCarlos Hathcockでもお手上げだ。
Selectボタンを押す。WD(Wind Direction)モードになる。風向き入力だ。射撃方向を12時と考え、上から見た状態をアナログ時計として考えれば良い。すなわち正面から風を受けている場合は12Hと入力する。向かって右横から風を受ければ、3Hだし、左横から右に向かって風が流れていれば9Hだ。
Selectボタンを押す。WS(Wind Speed)モード、風速だ、これはちょっと厄介だ。なんと表示がkmhなのだ。もの凄く小さな文字で、kmhと表示されている。8と入力すると、8km/hだ。
通常、私達は風速何メートル(m/s)という。これは空気が1秒間に何m移動するかという意味であることはいうまでも無い。より厳密には地上10mの高さで、10分間の平均値を算出している。いずれにしてもkm/hなどとは言わない。国際的にはノット(kt)だ。
おそらくアメリカではmile per hour(mph: 空気が1時間に何マイル移動するか)なのだろう。Eng.modeにするとmphと表示される。これをメトリックに直したのでkm/hとなってしまった。馴染まない単位だが仕方が無い。mphでもktでの私達には馴染まない。仕方が無い。何メートル毎秒の風力を何キロメートル毎時に換算しよう。3600を掛けて1000で割る。単純な話、風速4mだったら、14.4km/hだ。
ついでなので、どんな状態だと風速が何mなのかを書いておこう。顔に風を感じたり、木の葉が動いたりすると風速4m程度だ。紙が舞いあがったり、小枝が動いたりすると風速8mだ。傘がさしにくいような風は風速12mだ。もうこうなってくるとまともに射撃はできないだろう。Tony Boyerなら撃てるかな?風速16mになると、風に向かって歩けない。看板が飛んでくるかもしれない。

左:R(右)方向に2クリック, U(上)方向に18クリック調整することを示している。
右:R方向に6クリック, U方向に26クリック調整することを示している。
Selectボタンを押す。次はIA(Inclination Angle)の略だ。射撃角度だ。入力は0度から60度。仰角でも俯角でも関係ない。水平で撃たないのであれば、その角度を入力する。
これで入力は終わりだ。設定した距離、風向き、風力、射撃角度での補正値が表示される。2R 18Uと表示されると、右に2クリック、上に13クリックだ。
実態と違うかもしれない。最大の変動要素はZR(Zero Range)だ。100mでゼロインしたとしても、それがゼロレンジではない。
これを正確に確認しようとしたら、数箇所で着弾点を確認し、バリスティック・ソフトウェアの値と照らし合わせるしかないだろう。
たとえば308 Sierra HPBT Hollowpoint Boat Tail MatchKingで2700fps. 角度ゼロで射撃をする。150mのbullet pathをゼロとしたら、50mでは1.57cm高い位置に着弾する状態が正しい。25mでは0.65cm低い。二アゼロは31.3cmだ。しかしスコープはレティクルを調整できるので、150mでゼロインしてもそれがゼロレンジだとはいえない。このあたりは微調整が必要だ。

▲ 長針が重なって大事な情報が読めない。針の形式はペンシル型で、極力、デジタル表示を隠さないようにとの配慮はしている。しかし、長針は1時間に1回転するのだ。デジタル表示をスクロールさせるか、あるいは針退避機能が欲しい。
この5.11 H.R.T. Watchには大きな欠点がある。アナログ時計とデジタル時計が組み合わさったものに多く見られる欠点だ。針の位置によってはデジタル表示の数字が読み取れない。ごく稀に針退避機能があるものが存在する。例えば、CITIZENのPromasterシリーズにこの機能がある。しかし、この5.11 H.R.T. Watchにはない。Horus Vision Functionsを使おうとした時、針で数字が読めないと、どうにもならないだろう。

5.11とは、アメリカのフリー・クライミングの難易度を示すクライミング・グレードだ。Class 5はロック・クライミングを意味し、その中の難易度を、Yosemite Decimal System(Y.D.S) 5.0〜5.9で表していた。しかし、その後、さらに高度なレベルを示すために5.10が追加され、5.11はさらにその上を意味する。現在では5.12+というレベルもある。
5.11 Tacticalは1968年にできたミリタリー・ウエアおよびアクセサリーショップのブランド名だ。
H.R.T WatchのH.R.T.はおそらくFBIのカウンター・テロリズム・ユニット、H.R.T.(Hostage Rescue Team)の名称だ。別にH.R.T.がこの時計を採用しているわけではないし、FBIのH.R.T.がこの時計の開発に関わったわけではない。小売価格$244.99、実際にはディスカウントされて売られている。
Final Notes
5.11 H.R.T. Watchの欠点を並べすぎたかもしれない。しかし、射撃データ計算機能を有する、射撃用腕時計が作られたことは嬉しい。いままで射撃用腕時計などというものは無かった。
この機能を使いこなす人は少ないだろう。でも良いではないか。射撃はある意味でロマンなのだ。気分を盛り上げる道具は大歓迎だ。それに単なるイメージ先行型商品ではない。実際に使える。
日常生活でこの時計を使うつもりはない。ライフル射撃に行く時にしか装着しないだろう。できればもっと高品質な時計として作って欲しかった。価格が数倍になったとしても構わない。腕時計は男性が身に着けるほとんど唯一のアクセサリーだ。大人の男である以上、あまりチャチな時計では困る。
高級である必要はないが、高品質感は大人の腕時計に必要なものだ。そんな射撃用の腕時計なら、所有する満足感を得ることができるし、日常でも身に着けていたいと思うだろう。そういう意味ではちょっと残念だ。
Satoshi Maoka
Apr.1, 2006
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